朝食
久しぶりの極甘回でグラントの溺愛炸裂です
「このまま多恵様のお部屋に行きませんか?」
「ダメですよ。陛下がグラントの客間に送るとお約束したでしょ」
「…貴女を婚約者の所へ連れて行きたくない…」
「っと言われても」
陛下との食事を終えてシリウスさんにエスコートしてもらいグラントの客間に移動中。足の遅い私以上に足取りが重く中々前に進まないシリウスさん。
後ろにいるバートンさんが何とも言えない顔をしている。
陛下とチェイス様は今後の話をしている。私はあまり遅くなるとグラントが突撃してくるので先に退室した。
「シリウスさん。グラントは後2日しか居ません。悋気が過ぎると嫌いになりますよ。婚約者がいる事も含めて私です。もし私に想いを向けていただけるなら、そこの事情も含めていただかないと無理です」
「はい…分かっているのですが…やはり貴女を他の男の所へ行かしたくない」
何度も思ったけど箱庭の男性は美貌と強い悋気を標準装備している様です。これもリリスの趣味なの?リリスごめん…正直なところ面倒くさいよ!
いつもの倍時間がかかったけどやっとグラントの客間が見えて来た。すると歩みを止めたシリウスさんが
「俺…出来るだけ我慢します。だから頬に口付けをいただけませんか⁈」
なんか可愛いお願いの仕方で聞いてあげたくなる。無言でシリウスさんを見上げて手で屈んでとジェスチャーすると屈んでくれたので、シリウスさんの肩に両手を置いて左右の頬に口付けをした。そしたらシリウスさんは背中に手を当てたので咄嗟にシリウスさんの首に腕をまわしてしまった。するとシリウスさんは首の力だけで私を上げ腕をまわして抱きしめた。足が地に着いていなくて抱きかかられて状態になり
「シリウスさん!重いから下して!」
「羽の様に軽すぎて飛んで行きそうで離せません!」
「ちょっ!バートンさん!」
後ろに控えるバートンさんに助けを求めたが後退りしながら
「私にはシリウス様を止めるなんてとても!」
扉前で揉めていたら突然
“バン!”
凄い勢いで客間の扉が開き殺気立ったグラントが出て来た。
「シリウスさん!下して!」
「・・・」
シリウスさんに頭を抱き込まれ周りは見えないが背中から殺気を感じ鳥肌がたつ。藻掻く私を無視し恐らく2人は睨み合いをしている。唯一のお助けマンのバートンさんは硬直し使い物にならない。
「シリウス殿。我が婚約者を送っていただき感謝する。だが何の間柄も持たない貴殿が我が婚約者に抱き付くのは我慢ならない」
「間柄は未だないが心から多恵様を愛し想いを告げている所だ。そして彼女に乞いそれに応えてもらった結果だ無理強いはしていない」
「もっ!シリウスさん怒るよ!」
ここまで言ってやっと離してもらった。も…ぐったりである。まだ睨み合いの2人に
「見つめ合う位に仲がいいなら、邪魔者の私は遠慮します。バートンさん部屋に帰りましょ!」
「えっ?あっ!」
あたふたし使い物にならないバートンさん。お坊ちゃまは不意打ちに弱いのか?
『もういい!一人で帰るもん!』
踵を返し歩き出す。本当はここから自室までの順路は分からない。でもきっと城内は誰かいるから何とかなるもん!
数歩行くと目の前に壁が…見上げると2人仲良く立っている。そして跪き手を取り許しを乞う。
「私は悋気が過ぎると怒るって言ってありましたよ。だから怒りました!何か⁈」
「済まなかった」「申し訳ない」
完全に先生に叱られた小学生の様な2人。手を取り合わせて仲直り何てしませんが、傍が困る喧嘩は止めてね。2人を許し頬に口付けた。
「シリウスさん。エスコートありがとうございました。作戦の時は護衛よろしくお願いしますね」
「貴女の盾となりあらゆる者から護りましょう」
その言葉に眉を顰めるグラント。グラントの嫉妬MAXでこの後が恐怖でしかない。こうして無事に?グラントの客間に到着。入室と同時に人払いされソファーに押し倒され強烈な愛情をいただく事になりました。
そろそろ日付が変わろうという時に、グラントに抱っこさら部屋へ。機嫌が戻ったグラントを見てHPを使い切った甲斐があったと自分を労った。
部屋に戻り寝室まで運んでくれるグラントの後ろをアイリスさんが不機嫌について来る。
『ここも難ありだった…』
疲れと眠気で意識を保つのに必死な私。グラントにベットに下してもらいグラントは機嫌良く部屋に戻って行った。
湯浴みする元気のない私はアイリスさんに着替えを手伝ってもらい夜着に着替えベッドに潜り込み、“呼んで”アピールの凄いてん君を呼んで秒で眠りについた。
翌朝。怠さMAXの私はベッドから出れない。アイリスさんの呼びかけに返事するのがやっとだ。すると
「多恵様あれ!」
「?」
アイリスさんが指さした先は大きな掃き出し窓。窓から光の玉が何かを運んでくる。光の玉は恐らく妖精だが持っているのはなんだろう?
近くまで来ると私の手に見たことも無い果物を置いた。意味不明なので妖精とコンタクトをとってみる
『ねぇ?これ何?』
『たえ おつかれ これ たべる げんき』
『食べたら元気になるの?』
『おう なる いった』
どうやら疲労困憊の私を見かねてフィラが贈ってくれたようだ。妖精にお礼を言い果物をアイリスさんに預け剥いてもらう。その果物は見た目はリンゴだが匂いは桃の様な匂いがする。
身支度し部屋に行くとグラントが来ている。私より先にてん君がグラントに駆け寄り座るグラントの膝にダイブした。尻尾の振り方は私の時と同じだ。朝からご機嫌のてん君に少し癒される。
「多恵」
ソファーに座るグラントは片手でてん君を撫でながら私に手を差し伸べる。その甘く優しい眼差しに頬が一気に熱くなる。吸い寄せられるようにグラントの隣に座ると抱き寄せられる。そして耳元で
「朝一番に多恵がいると婚姻後の生活が想像できて顔が綻びます。早く多恵と一緒に朝を迎えたい…」
「もぅ!朝から深夜臭を出さないで!」
「多恵は可愛すぎる!頭から食べてしまいたい…」
朝からエロ全開のグラントは耳朶を甘噛みして首元から鎖骨に指をすべらせ、思わず身震いしてお臍奥に熱を持ち出す。
「オッホン!」
「!」
コントの様な咳払いに思わずグラントから離れると、目が笑っていない笑顔のアイリスさんが前に立っていて
「多恵様、閣下。朝食のご用意が出来ております」
「あっありがとう!グラント食べよう!」
グラントは先ほどまでと違い、冷たい蝋人形の様な表情でアイリスさんを見ている。一触即発の雰囲気に私が2人の間であたふたする事に!
てん君にキスをしてから下ろして静かに立ち上がったグラントは、無言で私を抱き上げて席まで移動する。数メートルの距離なんだけど下ろしてと言えない雰囲気だ。
『朝からバトらないで!』
心の中で呟くとてん君が思念で
『グラント アイリス しっと なかわるい』
『なんで?』
『ふたりとも たえ いちばん すき』
『あ…』
てん君と思念で話していると、いきなりグラントに口付けされ
「私がモーブルにいる間は他の者を見ずに私だけを見て」
「えっあっはぃ」
「いい子だ…」
今度はうなじに口付けされ朝からエロ全開のグラントに困っていると、グラントが徐に下を向いた。
つられてグラントの足元を見るとてん君が前足でグラントの脚を叩いている。そして牙を剥いて
『ぐらんと すき でも たえ こまる だめ』
当然てん君の思念はグラントが分かる訳もなくキョトンなグラント。仕方なく通訳すると私を食卓の椅子に下し、てん君の前に跪いててん君に謝罪する。てん君が頷きながらグラントの膝に前脚を置いている姿は尊い。美丈夫と気高い聖獣絵になります。
『あ…スマホが欲しい!』
なかなか食事をしない私達にアイリスさんが困り
「多恵様。閣下。お食事が冷めてしまいますわ!」
アイリスさんの一声で我に返りグラントと食事を頂くことになった。
グラントはずっと私を見ていて食が進んでいない。何が言いたげだ。
「食欲ない?」
「いや…あるにはあるんだが…その…」
「?」
パンを一口に切り食べていたらグランドの視線が…何となくちぎったパンをグラントに差し出し
「食べる?」
はしたないと思いながらもパンを差し出すと、グラントの表情が明るくなり嬉しそうに口を開けて待ってる。
『これって…”あーん”?』
恐る恐るグラントの綺麗な口元にパンを運ぶと、嬉しそうに咀嚼している。
そしてまた鳥の雛のように口を開けて”あーん”している。
意味の分からない状況に戸惑いながら、グラントに朝ごはんを食べさせている。
思わず雪の幼い頃を思い出し懐かしく感じる。48歳のおばちゃんが高速で戻ってきた。
パンばかりでは味気ないと思い、カットしたチキンをあげてみたら目が喜んでいる!後で聞いたがグラントはチキンが好物らしい。
ひとしきり食べたら果実水を飲み、口元を拭いて立ち上がるグラント。
ポカーンと見ていたら椅子を私の横に移動させ真横に座り、今度はグラントがパンをちぎり…
「あーん」
「へ?」
「あーん」
美しいお顔で”あーん”と言うグラント。世の女性が見たら卒倒しそうだ。
戸惑っていたら口元を緩まし手に持ったパンで私の唇に軽く突いた。
「なっ!うぐっ!」
ビックリして口が開いた瞬間にパンを放り込まれた。するとグラントは破顔しまたパンをちぎり、私の咀嚼待ちをしている。
そしてのみ込むと
「あーん」
「…」
結局その後デザートまで全てグランドに食べさせてもらった。
『何?罰ゲーム?何かのプレイ?』
最後は果実水を飲まされ、ナプキンで口元を拭こうとしてら口付けられた。
もうポカーンだ。
「あの…グラント…これなに?」
「夫婦になったら時の予行練習ですよ」
「箱庭では夫婦は食事を食べさせて合うの?」
「いえ。しかし私達はしましょうね」
「はぃ?」
もう振り切っている。グラントにこんな一面があるのだと知った日だった。
この食べさせ合いはこの後婚約者達のブームとなり、暫くの間自分で食べさせてもらえなくなりました。
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