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見せしめ

やっとお仕事のお話をします。

「不当雇用されているバスグル人の確認は進んでいるのですか?」


陛下に聞くと眉間に皺を寄せて


「正直進んでいないのだ。ジャスら自身横のつながりが無い様で実態がつかめない。恐らく不当雇用している貴族は全体の2割はいると思われ、ほんの少ししか把握できていない。先日会ったジャスから聞き取りした情報からほぼ進んでいない状態だ」


全然進んでいない。それにアルディアに潜伏しているバスグル人も何とかしないと…

暫く沈黙が続く。痺れを切らしたグラントが


「不当雇用している貴族をまず捕まえ問い詰め、他の貴族も捕まえれいいではないですか⁉︎」

「グラントそれでは解決しないの。不正をはたらいた貴族を捕まえた時点で他の不正を働いている貴族は隠ぺいして雲隠れしてしまう。そして忘れたころにまた同じ事をしだすわ。裁くなら一斉に押さえ膿を出しきらないと治らないだよ」

「ならばアルディアに潜むバスグル人をこのままにするつもりですか?」


困った…色々考えていたら陛下に後ろに控えるシリウスさんが


「確か陛下がお会いになったバスグル人はチーキス子爵領地で雇われていたはず。チーキス子爵領は国境に近く取りあえずチーキス子爵に引き取らせては?」

「ジャスさんの雇われ先…」


『きた!これ!』


一瞬にして閃いた!私出来る子!


「はい!」


勢いよく手を上げて声を出したものだから美丈夫の3人は鳩豆(鳩が豆鉄砲を食ったよう)の顔をして私を見ている。でも3人ともキョトンな顔もかっこいいぞ!そんな事を思いながら私は興奮気味に説明をする


まずはチーキス子爵を“こちら側”に引き入れる事。ジャスさんとモナちゃんの証言から不正は間違いない。陛下にチーキス子爵について詳しく話を聞きたいとお願いする。すると陛下はチーキス子爵令息(次男)が城内の金庫番の文官であることを教えてくれた。その次男の為人を知りたくて上司の方と会いたいと願う。

すると陛下は宰相補佐のチェイス様を呼んでくれる。


『何で宰相補佐なの?金庫番(所謂経理)なら金庫番の文官さんの上司じゃないの?』


私の疑問な表情に気付いたグラントが説明してくれる。どこの国でも文官さんの人事は宰相補佐が行うらしい。宰相は王族と外交に関する事を。騎士団長が騎士の人事と処遇の決定権を持つらしい。だから金庫番(経理)の責任者は宰相補佐のチェイス様となる。

陛下に呼ばれた文官さんがチェイス様を呼びに足早に退室した、そして陛下はグラントに向って


「グラント殿。ここからはモーブルの内情となるので遠慮いただけないか。其方が帰国するまでに例の問題の解決すると約束しよう。それに話が終わり次第、其方の部屋へ多恵殿を送りとどけよう」


『ですよね…ここまでも結構モーブルの内情を話しているけど、これ以上は聞かせられないよね…』


恋敵ライバルが居る所に私を残すのが嫌なのか眉間の皺が深いグラント。

申し訳ないけどお仕事だから退室願おう。立上りグラントの元に行き手を引っ張り抱き付いた。そして背伸びをして耳元で


「遅くなっても(部屋に)行くから寝ないで待っていてね」

「多恵…」


やっと表情が柔らかくなったグラントは二人にけん制するかの様に口付け退室していった。


ここからの話は陛下の執務室で行う為移動する。移動するのにどちらがエスコートするかで睨み合いになり、早く話を終えたい私はバートンさんの手を取り


「さぁ!早くいかないとチェイス様が来ちゃいますよ」

「「・・・」」


お仕事の話に悋気やちもちとかいいから早くして下さいね。2人を差し置いてエスコートするバートンさんの顔色は悪い。心の中で謝って置こう。

そして陛下の執務室前で宰相補佐のチェイス様と会う。1度挨拶しただけで話すのは初めましてだ。

綺麗な所作でチェイス様からご挨拶を頂く。チェイス様は陛下より少し年上の30代半ばの男盛りの男前で色気が半端ない。

濃紺のくせ毛にレモン色の瞳が素敵な男性だ。


「女神の乙女様におかれましては…」

「あ…挨拶はいいのでサクッと話をしましょう!」


挨拶もそこそこに陛下の執務室に入る私を驚いた表情で見ているチェイス様と、楽しいそうに見ている陛下とシリウスさん。

思っている事を早く話したいのと、長くなるとグラントの嫉妬が増幅してしまう。私保身に走ります!


「お忙しいところ申し訳ございません。金庫番の文官さんチーキス子爵のご子息の為人をお聞きしたいのです」

「ハワードですね。あの者は…」


チェイス様の話し方は感情が無く淡々としているが、無駄な情報が無く分かりやすい。頭がいいのが分かる。チェイス様と話していてお仕事モードのグラントみたいだと思った。宰相補佐って皆こんな感じなのかなぁ?

話の合間に陛下が


「監視の為にエリアスを宰相としているが、この問題が解決したらチェイスを宰相におくつもりだ。故に…」

「信用して大丈夫って事ですよね」


陛下は何故か嬉しそうでチェイス様は恐縮している。

チェイス様曰くハワード様は一言で言うと実直で真面目。次男であり実家を継ぐ事がない事から実家に関心がない様だ。

関心がないどころか、早く何処かの令嬢と婚姻し婿養子になり家から離れたいそうだ。


「以前同僚に父親や実兄は農地を広げて金儲けしか頭にない。先祖からの領地を守ろうと気がない。私がどんなに諭しても変わらなかったと話していたと聞いています」


それなら確実にハワードさんはこっちサイドに来てくれる筈だ。


『きた!これ!』


今日は私イケてる!いい案が次々と湧いてくるぞ!

多分顔が緩みっぱなしの私を温かい眼差しで見守る皆さん。さぁ!私の計画を聞いてちょだい!


「貴女は未知数だ!ずっと側で見ていたい!」

「多恵様は私を魅了し離さない。ずっと側に置いて欲しい…」

「いや!今は愛の囁きは要りませんから!サクッと計画を進めましょね!」


こうして『ハワードさん親離れ大作戦ミッション』を始動します。ネーミングセンスの無さはスルーしてね


まずはハワードさんに会いに事実を話すとこから。その次に子爵様と長男さんを邸宅から連れ出し、その間にハワードさんが裏帳簿を探し出し内容をチェックし偽物とすり替える。ハワードさんは金庫番をしているから、帳簿を見れば不正かはすぐわかる筈だ。


「帳簿を見つけたらどうするのだ?」

「突きつけて二者択一してもらいます」

「「二者択一?」」


そう選択肢は2つしか与えない。罪は免れないから陛下に協力して他の不正を働いた貴族の摘発に協力し罪を軽くしてもらうか、他の不正をはたらいた貴族と共に身分の剥奪と領地の返還するかだ。


「優しい多恵殿から想像できぬ案だな…」

「本当に貴女の1人の考えなのか?」


陛下もシリウスさんも私の案に引き気味だ。あれ?やっちゃった?

意外な2人の反応に少し自信がなくなって来た時にチェイス様が


「流石でございます。モーブルの歴史の中でも悪質な行いに対して厳罰を与えないとまた罪を犯すものがでてきます。今回の罰は謂わば見せしめです。ここ数年貴族共は王家を蔑ろにしてきた。ここで締めるべきです」

「チェイス様!ありがとう!」


思わぬ援軍に嬉しくなる。陛下とシリウスさんもチェイスさんの助言に提案を了承してくれた。詳細はこれから詰めて行くとして大まか計画は決まった。ずっと静かに話を聞いていたシリウスさんが表情を明るくして


「思い出しました。あっでも昔の話ですよ!多恵様誤解なきように」

「?」


シリウスさんが思い出した話はある夜会の話しだ。数年前にシリウスさんにアプローチしていた令嬢から夜会の招待状を何度ももらい、断るのに苦労したそうだ。

ある日その令嬢はこれらのモーブルで力を持つ貴族が集まる夜会だから参加した方がいいと半ば脅しの様な台詞をシリウスさんに言ったそうだ。

モーブルで大貴族であるサザライス公爵家嫡男に強気な発言した令嬢に別の意味で感心をした。

淡々と話すシリウスさんは全くその令嬢が眼中に無かったのがよく分かる。だって名前すらうろ覚えなんだもん。


「今思えば輸出で財を得て国内でも力を持つ様になった家ばかりでした。恐らくチーキス子爵と同様ではないかと…」


思わずお指を立てて


「シリウスさんナイス!」

「は?」

「その夜会まだしてますか?参加したいです!」

「「「!」」」


恐らくその夜会はチーキス子爵と同じ様な悪さをしている貴族で、触るだけで埃がでる筈だ。参加している貴族が分かれば、その家を重点的に調べればバスグル人の不当雇用と税の滞納が分かり捜査も早く終わる!


「いかん。危険だ!これ以上貴女を危険な目に合わす訳にいかない!何かあれば3国に私は何と言えばいいのだ!」

「俺も反対だ!」

「大丈夫ですよ。変装して多恵じゃない田舎者の令嬢で潜入しますから」


そう私のこの容姿はこの世界にない。黒髪は居ても黒目はいないそうだ。だから妖精王フィラの力を借りて瞳の色を変えればいい。毒を中和したり怪我を1日で治すから出来るよきっと!…出来るよね⁈


「夜会の参加はまだ承諾出来ぬ…が、計画にはついては賛成だ」

「では陛下、チェイス様。ハワード様との面会のセッティングよろしくお願いします」


こうして作戦名を略して『巣立ち大作戦ミッション』が静かにスタートした。


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