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甘い時間

大好きなグラントの抱擁…

夕刻になり着替える為に一旦自室に戻る。グラントはアルディアの宰相イザーク様の親書を届ける為にエリアス様の執務室に行くそうだ。

今回は仕事も兼ねているらしくグラントは陛下とエリアス様と夕食を共にする。

何度もいいと言ったのにグラントは部屋まで送るときかない。グラントは自室までの道のりはまた沢山の女性の視線を集めた。当の本人全く気にしていない。だってアルディアでも同じ現象が日常だからね。グラントは上機嫌で私をエスコートしている。久しぶりのグラントの香りに心躍る私がいる。


「多恵殿」

『ん?この可愛い声は!』


振返るとそこにはグレン殿下とシリウスさんが居た。どうやら勉強が終わり自室に戻られようだ。

グラントはグレン殿下に挨拶をし深々と頭を下げる。何故か殿下もシリウスさんも顔が怖い!シリウスさんはグラントに絶賛ヤキモチ中なのだろう。でも殿下は?

殿下は頬を膨らませグラントに


「其方が多恵殿の婚約者か?」

「左様にございます」

「“婚約者”と言う事はまだ夫ではない。モーブルでも多恵殿を恋う者が多い。婚約しているからとあまり油断せぬことだ。私はまだ小さいが多恵殿が涙するようなら王子の権限を使ってでも私が娶る」

「「「はぁ?」」」


今殿下何て言いました?殿下の隣のシリウスは完全に男前が崩壊している。けどそんなシリウスさんもカッコいいから不思議だ。

宣戦布告されたグラントは子供相手に嫉妬心剥き出しだ。

って言うか殿下の冗談は笑って済ませる事ではない。誰かお助けマンはいませんか?

困っていたら背後から靴音が…


「殿下。一国の王子が軽はずみな発言はお控えになって下さい。王子の婚姻は国の情勢をも変えるものです。政務・経済の講師から習いませんでしたか?」


この渋い声は…アラン団長だ。振り返るとアラン様はグラントに騎士の礼をし、殿下のフォローをしなかったシリウスさんに鋭い視線を送っている。恐らくシリウスさんはこの後説教部屋行き確定です。


「アラン!私は本気なのだぞ」

「だとするならば尚更発言には慎重になっていただかなくては。今の発言で多恵様が貴族の争いに巻き込まれるやもしれません。王族たるもの発言は常に気を付けなければなりません」

「だって…」

『あ・・・殿下の雲行きが怪しくなってきた』


泣き出しそうな殿下の前に行き、抱きしめて背中をポンポンし宥める。


「殿下のお気持ちは嬉しいのですが、殿下にお似合いのご令嬢がいらっしゃいますわ。私では年上でおばさんだし」

「だえどの…は…ゔつぐしぐ…ずできた!」

「ありがとう。殿下にそう言ってもらえて嬉しいわ」


目に涙いっぱいの殿下は私に抱き付いてくる。ハンカチを取り出し涙を拭ってあげる。殿下が少し落ち着いたところでシリウスさんが殿下を抱き上げ側に来て、私の手をとり指先に口付け顔を寄せて小声で


婚約者グラントがいても貴女の心の隅でいい俺を置いて欲しい」

「!!」


熱を帯びた視線を送ったシリウスさんはアラン様と一礼し去って行った。耳元で囁かれて一気に頬が熱くなる。そして斜め上から痛い視線が…グラントの嫉妬の視線だ。

嫉妬神のグラントをこのままにしておくのは危険だ。取りあえずグラントの嫉妬を治めないと!宥める一番の方法は…


背伸びをしてグラントの首に抱きつき、触れるだけの口付けをし、少し不機嫌な顔をして


「怖い顔のグラントは好きくない」

「多恵…」


グラントの瞳から嫉妬神がいなくなり、代わりにその綺麗な菫色の瞳が熱を持ち、綺麗なお顔が近付いてくる。


「ストップ!人が見ている所では嫌です」 


更に口付けようとしたグラントを止め、部屋に戻る様に促す。私からのキスですっかり機嫌が治ったグラントはやっと部屋に戻ってくれた。

やっと部屋に着いて入室すると何故か交代のモリーナさんと今日の担当のフィナさんが仲良く待っていた。どうやらグラントを見たかったようだ。ならお世話になっている2人を…


「グラント。今お世話になっているフィナさんとモリーナさん。ご挨拶してくれる?」


するとグラントは2人に順番に握手をして


「私の大切な婚約者フィアンセをお願いしますね」

「「はい!誠心誠意お仕えさせていただきます」」


と綺麗にハモる2人。可愛いらしくてほっこりする。陛下との食事の時間が迫っているグラントは抱き寄せ口付けて機嫌よく部屋を後にした。

グラントが退室すると2人は頬を染め興奮気味に萌えている。乙女な2人に着替えを手伝ってもらいやっとリラックスできた。

まだ興奮冷め止まぬ2人はPOPな音楽が聞えてきそうな足取りで夕食の準備をしてくれる。

今日はグラントの激愛に疲れたので夜はゆっくりしよう。そう思いながら美味しく食事をいただいた。

夕食後は早めにゆっくり湯浴みをして寝室に籠っててん君と戯れる。するてん君が


『グラント くる いっぱい なでて もらう』


そう言いベッドから降りてドアの前に行き前脚でドアを叩く。ノックに気付いたフィナさんが開けてくれ居間の方へ走って行くてん君。陛下と会食があるし、その席で仕事の話もあるから、今日はもうは来ないと思うけど…

少しするとフィナさんが来て


「多恵様。グラント様の使いがお見えになりこの後部屋にお越しになるそうです。如何なさいますか?お疲でしたらお断りなさいますか?」


本心はゆっくり眠りたいが、てん君がグラントのなでもふを期待していて可愛さMAXで断れない。


「少しならお受けしますと伝えて下さい」

「畏まりました」


小さい溜息を吐きガウンを羽織り居間の方へ。


「ぷっ!」


てん君が扉の前でお座りしテンポよく尻尾を振っている後ろ姿が最高に可愛い!

てん君は婚約者の中でグラントが一番好きみたい。だが他の婚約者と仲が悪い訳ではない。キースとも仲がいいしフィラとは兄弟みたいでよくケンカもする。

暫くすると外の騎士さんがグラント訪問を告げグラントが入って来た。てん君は入ってきたグラントの前で愛想を振りまく。グラントも破顔しててん君の抱っこし撫でている。そしててん君を抱っこしたまま私の元へ来て当たり前の様に口付ける。背後からフィナさんが小さな悲鳴を飲み込んだ声がした。

安眠できるハーブティをフィナさんが入れてくれソファーに腰掛ける。

グラントは私の腰に腕を廻し、私はグラントの肩に寄りかかり身を任せ、てん君はグラントの膝の上で気持ちよさそうに寝ている。

特に話をする訳でもなくお互いの体温を感じながらゆったりとした時間が流れる。

熟年夫婦の様だがこのエロ無しのこの触れ合いは心を満たしてくれる。グラントはずっと私を見ているのが分かる。時々見上げると目を細めて口付けて来る。

グラントが来るまでお仕事で頭が一杯でグラントの溺愛が少し鬱陶しく思っていたが、こうやって同じ時を過ごし触れ合っていると、ずっと側に居て欲しいと思ってしまう。


「我儘だなぁ…」

「?」


私の独り言に反応するグラント。発言の意図を素直に伝えるとグラントの体温が一気に上がる。何かを察知したてん君はグラントの膝から降りてフィナさんの元へ行き、エプロンの裾を引っ張り外へ出る様に促す。空気を読める聖獣に笑え、それから日が変わる時間ときまでグラントの腕の中でいっぱいのエネルギー充填チャージしてもらう事になった。

日付が変わる少し前にフィナさんとてん君が恐る恐る様子を見に来た。疚しい事はしていませんよ。ずっとべたべたしていただけです。

お帰り頂く時間になり扉まで見送ると瞼に口付けて意味有り気に微笑みをし


「良い夢を…明日の朝食も共にしましょう。楽しみにしていてください」

「はぃ。ん?」


何か楽しい事でもあるのだろうか?グラントは機嫌がいいので安心して眠れそうです。去り際にグラントが顔を寄せたのでキスかと思ったら耳元で


「早く貴女を妻と呼び夜を共にしたい…」

「なぁっ!」


いい声で閨を連想する事言わないで!頬が熱く両手で押さえると

「可愛い…」と呟きやっとグラントは客間に戻って行った。部屋に戻ると悶絶しているフィナさん。


「私にもグラント様程の方でなくても、あんな風に愛して下さる殿方は現れるでしょうか!」

「あはは…大丈夫フィナさん綺麗だし素敵だからすぐ現れるよ」


こうしてグラントが来て1日目を終えた。てっきりキースと同じで明日帰ると思っていたら、仕事を兼ねているから後2日滞在すると翌朝に聞く事となる。

まだ初日なのに許容オーバーの愛を注がれ、グランドが帰る頃には痩せた体は元に戻るかもしれないと思った夜だった。


お読みいただき、ありがとうございます。

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