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夕日

モナちゃんと別れ王城に戻ると思いきや森の方へ向かう馬達。どこに行くの?


陛下にケーキを買ってもらい夕食が楽しみでテンションが上がる私。気分は上々だが体は結構疲れている。慣れない乗馬が堪えている。今日は確かモリーナさんだったから、湯浴みの後にマッサージをお願いしよう。そんな事を考えていたら行きと道が違うのに気付いた。建物が減って来て木々が増えている。


「あれ?帰るんじゃないの?」


少し不安になって来た私に陛下が


「この先に夕日が綺麗に見える丘がある。折角来たのだ夕日を見て帰ろう」

「あっはい」


陛下はそう言いまた私を引き寄せた。馬は丘を登り森を抜けると広場に着いた。シリウスさんが来て馬から下してくれる。そしてエスコートしてくれ…


「うわぁ!!」


夕陽がモーブル城を照らし城下が夕陽色に染まりとても綺麗だ。初めてモーブルを訪れた時も夕陽に照らされたモーブル城を見て美しいと思った。


「我がモーブルは美しいだろう…」

「はい!」


陛下は私の肩を抱き誇らしげに景色を眺めている。無言で見ているシリウスさんもモーブルを愛しているのがよく分かる。陛下とシリウスさんに挟まれ絶景を拝め贅沢な時間を過ごす。暫く無言で見ていたら陛下が肩を引き寄せ頬に口付けた。そして


「私は先に戻るから後はシリウスさんに時間を与えてやってくれ。シリウス。あまり長くなるな。そして無事に多恵殿を連れ帰りなさい」

「御意」


こうして陛下は騎士5名と先に帰って行った。

突然の事に口を開けてポカン状態の私。残りの騎士さんは離れた所に待機し、丘の広場にシリウスさんと2人きりになってしまった。

シリウスさんは広場の隅の切り株にハンカチを置き座らせてくれた。

目の前に跪いたシリウスさんと目が合い、これから口説かれるのが分かり顔が熱くなってくる。


『こんなの聞いて無いよ!』


シリウスさんは私の手を取り指先に口付け微笑む。


「貴女の優しさは全ての人を魅了し、貴方を慕う者を増やし俺は気が気じゃない」

「至って普通だと思いますけど?」

「先ほどのジャスとモナに向けた優しさに俺も心が温かかくなり、愛する女性ひとの素晴らしさを再認識しました。しかし…」

「?」


私の両手を取りしっかり握るシリウスさん。手からシリウスさんの体温を感じ少し冷えて来た体が指先から温まって行くのが分かる。そういえばそろそろ日が沈むが帰らなくて大丈夫なのかなぁ⁈


「多恵様は陛下をどのように想われているのでしょうか…」

「へ?どのようにって…頼りがいがあり素敵なお方です」

「そこに恋愛感情はあるのでしょうか?」


シリウスさんの瞳は揺れている。恋敵ライバル?だが忠誠を誓う君主。複雑な思いがあるのだろう。でも…


「陛下が独身で私にお相手がいなければ恋愛対象になったかもしれません。でも…王妃様がいらっしゃるし私には婚約者もいる。恋愛しない様に理性が働いているのが正直なところです」

「もし…王妃様とお別れになり陛下が真剣に貴女に向き合ったら?」

「分かりません。それに今は恋愛する気はないんです。バルグルとの問題で頭が一杯で…」


私の返答に溜息を吐いたシリウスさん。寂しげな表情をした時、風が吹きシリウスさんの黒く艶やかな髪が靡いた。

私と同じ黒髪だが明らかにシリウスさんの方が綺麗だ。あまりにも綺麗で思わずシリウスさんの髪を一掬い取ってみた。キューティクルたっぷりのつやつやで触り心地良くずっと触れていたい。手入れ方法を聞いたら教えてくれるかしら⁈


「多恵様…」

「ん?」


シリウスさんを見たら破顔し焼けそうなくらい熱い視線をいただく。


『この雰囲気…ヤバい…迫られる!』


思わず仰け反ると手を引かれシリウスさんの腕の中。耳に聞こえるシリウスさんの少し早い鼓動と少し冷えた体を温めてくれる高めの体温。


『絆されては駄目!』と必死に留まろうとするが…心地いい抱擁に決心が揺らぐ。


「シリウスさん離して」

「俺は不快ですか⁈」


益々抱きしめる腕が強まりシリウスさんの体温とオリエンタルな香りに包まれる。


「嫌いじゃないけど愛があるかは分からない…そろそろ疲れて来たし寒くなって来たので帰りたいです」

「不快ではない?」

「はい。嫌ならビンタしちゃいます」


多分明日来るグラントの影響か積極的なシリウスさん。マジな話今はバスグルとの労働協定で頭がいっぱい。

グラントの溺愛も出来れば遠慮したい位だ。


『なんて事言ったらまたグラントは窶れるくらい落ち込むんだろなぁ…』


「シリウス殿そろそろ…」


待機していた騎士さんが声を掛けてきた。シリウスさんの腕の隙間から辺りを見ると日は落ち薄暗くなってきている。騎士さん達はランプの用意をしだした。

そしてマクルスさんが外套を持ってきてくれる。日が落ちると一気に冷えてくる。

シリウスさんは不満気だが騎乗しやっと城に帰ります。

丘を下り城下に来るとシリウスさんはぐっと引き寄せ耳元で


「忠誠を誓った君主だが、陛下に貴女を渡す気はありません。貴女が俺を見てくれるように、俺にもバスグルの問題の手伝いをさせて欲しい」

「あっありがとうございます。心強いです。でもね今学びが必要なグレン殿下を優先して下さいね」

「貴女のその万人に向ける優しさが偶にもどかしく感じる。早く俺の元に落ちてきて甘やかせて欲しい」


耳元で低音ボイスで囁かないで⁉︎声だけで陥落しそうだから!シリウスさんはイヤホンで聴きたい声の持ち主です。日本にいたら間違いなく人気声優さんです。

シリウスさんの囁きに危うくなりながらも城に帰ってきました。シリウスさんの手を借り馬から降りると生まれたての小鹿状態で足がガクブル!踏ん張り歩きだそうとしたら不意に体が浮いた。


「慣れておられない乗馬でお疲れのようだ。こんな時こそ俺に頼って下さい」

「シリウスさんもお疲れなのにすみません」

「謝罪より”ありがとう”の方が嬉しい」

「えっと…ありがとう?」


微笑み頬に口付けるシリウスさんをすれ違う女性が溜息を吐き見つめている。プチ羞恥プレーに赤面しながらシリウスさんに運ばれて部屋に戻ってきた。待ち構えていたモリーナさんとアイリスさん2人がかりで湯浴みとマッサージを施してもらいバキバキの体は動かせるまでに戻りました。


部屋に行くと夕食が用意されていて、勿論陛下が買ってくれたチーズケーキも可愛らしいお皿に盛り付けられている。今日はお仕事頑張ったからお腹がぺこぺこで意気揚々と食べ始め…


「多恵様。無理に召し上がらなくても…」

「あっ…ごめん。無理してない。食べたいんだけど…」


湯浴みもして少しお腹が膨れたら猛烈に眠い。何度も手が止まったが食べ続けお肉を一切れ食べたところで限界が来た。


『このままだと赤ちゃんの様に食べ寝してしまう!』


また騎士さんにベッドに運んでもらう事になるのが目に見えている。お水を一気飲みして立ち上がりモリーナさんの肩を借りベッドに…

何とか間に合いベッドまでたどり着いた。

何度も呼ぶてん君を呼び、ベッドに倒れ込むと同時に意識を手放した。


“ペシペシ”

『たえ あさ グラント くる』

「ゔ…ん あぃ…」

「多恵は寝てていいぞ。グラントはシリウスに相手をしてもらえ」


そうだ!グラントが来る日だ!


起き上がろうとしたら肩を抱かれ起きれない。横を見ると朝から麗しいフィラの笑顔が…


「おはよう。起きるから離して」

「昨日は大変だったようだな。ゆっくりすればいい」

「ダメだよ。昨日の話も陛下としないといけないし、ゴードンさんの所にも行かないと」

「多恵は真面目過ぎるのだ。少しぐらいはサボ…」


急に口籠ったのが不思議でフィラの視線を辿ると…

てん君が鋭い牙をむいてフィラを威嚇している。流石私の相棒!不服そうに離してくれたので起き上がり私からおはようのキスをした。機嫌が戻ったフィラは


「グラントが帰るまで危険が伴わない限り来ない。お前がやろうといちゃつくのは見たくないし、悋気やきもちで雷で済むか自信がない」

「あははは…雷は止めてね」

「グラントが帰れば妖精城にくるんだろ⁈」

「約束だから行くよ」

「泊りの用意は心配するな。お前の物は全て妖精城に揃っている」

「はぁ?泊り!」


知らない間に“遊びに行く”が“泊りに行く”に変換されている!訂正しようとしたらモリーナさんが様子を伺いに来る。


「多恵様。ご起床でございますか?」

「あっはい」

「陛下が朝食を共にと申されておりますが…」

「分かりました。お受けします。用意するので少し待って下さい」


陛下に話があったから丁度いいし、エリアス様と貴族達が証拠を隠滅する前に打ち合わせておかないと。

ベッドから降りると後ろから抱き付かれ見上げるとフィラは触れるだけの優しい口付けをし、満足気な顔をしてフィラは帰って行った。

どうやらお泊りすると思っているらしく引き際がいい。昼からグラントが来るだけでも糖分の過剰摂取を危惧しているのに、フィラのお泊りまであると病む未来しか見えない。何度目かになる溜息を吐くとてん君が喝を入れるかのように私の背中を叩いて


『たいじょうぶ フィラ ぼうそう したら かむ』

『いつもありがとうね!その時はよろしく!でも加減してね…』


てん君はフィラに対して加減がない。だからてん君に噛まれたと聞くと焦ってしまう。妖精グリスの薬草ですぐ直るのは分かっているけど、痛みまでは取ってはくれない。

再度モリーナさんが声をかけてくれ洗面所に行き顔を洗う。化粧水をつけながら


『朝一から陛下の色気に当てられて体力が持つだろか…』


最近体力に不安に思う事がある。沢山食べてていっぱい寝ても体力が回復しない事が増えてきた。とりあえず倒れない様に気をつけよう。洗面所を出て衣裳部屋に着替えに向かいます。


「多恵様。お昼にグラント様お見えの際にお着換えがございますので、こちらのワンヒースはいかがでしょうか?」

「はい。何でもいいです」


モリーナさんが選んでくれたのは淡いレモン色のロングワンピース。ウエストを幅広のリボンで結ぶシンプルだがカワイイデザインだ。


「・・・」


背中の釦を留めて貰っていたモリーナさんの手がとまる。


「モリーナさん?」

「私陛下に進言しますわ」

「何⁈怖いよ」


どうやらここ数日のハードスケジュールで痩せたようだ。しっかり食べてるし睡眠もとれている方だと思う。元の48歳の多恵は万年寝不足で、目のクマを化粧で隠すのに必死だったけど、そこまで不摂生してないよ⁈


「心配してくれてありがとうね。少ししたら落ち着くから大丈夫だよ」

「しかし!」


不服そうなモリーナさんをスルーして黙々と準備をし、着替えが終わり部屋に移動したら誰かが来た。モリーナさんが応対すると王妃様付の女官さんだった。

女官さんは王妃様の手紙とリラックスするアロマキャンドルを持って来た。


「ありがとうございます。すぐお礼のお手紙を書きたいのですか、この後予定がありますので、後日に伺わせて頂きますと王妃様にお伝え下さい」

「畏まりました」


凄いタイミングで王妃様からの届け物。陛下との食事を知っての事だろうか?

忘れていたが王妃様の問題もあったんだった。気が重くなってきたところに今日の護衛のリチャードさんとレイズさんが迎えに来てくれた。リチャードさんにエスコートしてもらって陛下の元へ。右上から強い視線を感じ見上げたら、眉間に皺を寄せたリチャードさん。


「失礼なのを承知で言わせていただきたい。多恵様。お痩せになられお体が心配でございます」

「大丈夫だよ。結構体は強いから」


どうやら皆が異常に心配している様だ。 『痩せた⁈』なんて誉め言葉で嬉しいのに、箱庭では違うの?


お読みいただき、ありがとうございます。

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