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騎士の誇り

”毒入ドレッシング事件はフィラの機転で事なきを得た。しかしこの事件は根が深くて…

2時間ドラマみたいな事件の後に図太く朝食をいただきやっと落ち着いた私。昔から寝起き後1分で食事出来るほど食に関する欲求が強い私である。

食事中はフィラと陛下が同席し、更に部屋の端にエリアス様、シリウスさんと騎士さんが2名待機し人口密度が高く空気が薄く感じる。


やっとお腹の鐘が止み、ほっこり茶していたら陛下が


「多恵殿。バスグルの少女に会いに行くのは…」

「変更なしで!」

「あい分かった」


するとすごい勢いでエリアス様が


「多恵様!なりません!あのような危険な目にあったばかりではありませんか!」

「婚約者想いのフィラのお陰で何も無かったし、騎士の様にお強い陛下と精鋭の騎士様と…」

「「「…と?」」」


さっきから”呼んで!”とアピっていたてん君を呼ぶと、ここ最近で一番大きいてん君が現れ私の横に座り胸を張っている。


「リリスの聖獣のてん君もいますから」


フィラは笑いながらてん君を乱暴に撫でて


「てんが居たら最強だな。襲撃者がきっと大怪我するぞ。俺も何度も噛まれ傷を癒すのに数日かかったからな」

「妖精王の貴方様がですか…」


そう言い青い顔をしたエリアス様をてん君が鋭い視線を送り牙を剥いて笑っている?

取りあえずモナちゃんとの面会は決行される。並行して事件解明にアラン団長が指揮をとり今回の“スイマン”を調理場に持込んだ犯人の捜索をする事になった。

ドレッシングを作ったマイクさんは微熱はあるが話せるまでに回復し事情聴取を受けたそうだ。

マイクさんはドレッシングの材料を貯蔵庫から取り出し調理、調理中の厨房は料理人しかおらず外部の者は見なかったと証言している。


「という事は…納品前にスイマンにすり替えられていたことになりますね」

「はい。今レックス団長と相談しニールを納めた農家に騎士と文官を送る準備をしています。何か分かりましたら報告いたします」

「よろしくお願いします。それとマイクさんに良くなるまで静養するようにお伝えください」


こうして毒入ドレッシング事件はエリアス様?とアラン団長に任せ城下に行く準備を始めます。フィラにお礼を言うと


「礼は落ち着いたら妖精城に来てくれればいい」


と言い帰って行ってしまった。あっさり帰って拍子抜けしてしまった。まぁ予定を調整して半日くらい遊びに行けばいいかなぁ…

フィラを見送りフィナさんと衣裳室で着ていく服を選びます。衣裳部屋を見てびっくり。ドレスの枚数は変わっていないが、前に見たのと違う。

フィナさん曰くちょこちょことゴードンさんがリメイクしているそうだ。新たに作らないからいいけど、リメイクも材料代かかる。またちょっと注意した方がいいかもしれない。

ゴードンさんの創作意欲は底なしの様だ。

フィナさんのお見立てで明るいライトグレーのシンプルなワンピースとクリーム色のカーディガンに決めた。黒の編み上げのロングブーツを履いて準備OK。部屋に行くと平民の装いの陛下とシリウスさんが優雅にお茶を嗜んでいる。2人共平民の服装では溢れ出る高貴なオーラが隠せていない。陛下に至ってはまだ昼なのに深夜臭がしている。2人共帯剣し凛々しく福眼で目が幸せだ。侍女のフィナさんと交代で来たモリーナさんは目がハートで二人に熱い視線を送っている。


「多恵殿。参りましょうか」

「はい」


陛下に手を取られ左からはシリウスさんに腰元を支えられ廊下を歩く。すれ違う人がお約束のように2度見しているのが笑えた。

裏門に着くと馬が待機していて騎士が10名ほどいた。半分以上何かしら護衛してもらった方々で人見知りの私には嬉しい。


「あっ!マルロさん~」


港に視察に行った時にお世話になったマルロさんもいた。マルロさんに駆け寄りご挨拶すると爽やかな微笑みを頂き騎士の礼をしてくれる。

マルロさんと他愛もない話をしていたら後ろから抱き付かれた。見上げると陛下で


「多恵殿出発の時間だ。あまり他の者と仲良くすると私は嫉妬を抑えられなくなる。王と言えども普通の男だ」


ヤキモチ満載の表情で抱きしめられた。慌てたマルロさんは一礼をして愛馬の元へ行ってしまった。唖然としていると今度は横から手を取られ


「俺も悋気ヤキモチが強いので知って置いてください」

そう言いながら私の指先に口付けるシリウスさん。この箱庭は美形と嫉妬深いのが男性の標準装備なの?嬉しいやら面倒くさいやら複雑な気分だ。


陛下に手を取られ陛下の愛馬に乗せてもらい城下に出発します。

陛下が腹部に腕をまわし引き寄せたから背中が陛下の胸に密着し陛下の体温を感じ恥ずかしい。自己申告されている通り鍛えられている様でかなりのカップと推測します。


並走して走るシリウスさんの視線は鋭く居た堪れない。しかし視線が合うと蕩ける用な微笑みを下さりまたまた居た堪れなくなる。

視線の置き場に困りふと私の腕の中にある籠をみる。昨日お願いしておいた焼き菓子とパンだ。モナちゃんに布を織ってもらったお礼に用意した。今朝の事件があったから心配でフィラに安全か確認してもらいお墨付きをもらったので大丈夫。


前にモナちゃんにあった時に彼女は痩せていた。食べ物の差し入れを考えていたが、やっぱり女の子は全年齢甘いもの好きだからこれにしたのだ。きっと喜んでくれると思う。

籠にかけてあったハンカチをめくって中の焼き菓子を見ていたら陛下が


「食べたいのか?」

「美味しそうですよね~でもこれはお持たせだから…」

「侍女たちに王都で美味しいケーキのお店を聞いておいた。帰りに寄るといい」

「やった!先日王都を散策した時は買い食いできなかったので嬉しいです」

「っつ!」


陛下はぐっと抱き寄せて頬に口付けた


「へっ陛下⁉︎」

「あまりにも可愛い事を言うから我慢できなかった。許せ」

「あっはぃ…」


手に持つ焼き菓子より甘い陛下にドキドキさせられた。ダメだ…モナちゃんの件に集中しないと!


結構長い距離走りやっと王都端の約束の場所近くに来た。こんな大勢で行くとびっくりするだろうから、とりあえずてん君とシリウスさんと聖騎士のマクルスさんと3人と1匹で向かう。陛下と他の騎士さんは約束の場所が見える建物の影から見護る。


待っていたら遠くからモナちゃんと男性が歩いて来た。男性は20代前半くらいで体が大きく帯剣している。モナちゃんを心配してくれる人がいる事に安心しモナちゃんに手を振る。


「モナちゃん!」

「タエちゃん!」


再会できて嬉しくてハグしようとするとモナちゃんが汚れるからと遠慮する。

気にしないと思いっきり抱きついた。

私より大きいのに体は薄く肉がない。元々美人だからしっかり食べればダイナマイトボディになりモテる筈だ。


「来てくれて嬉しい!」

「よかった…タエちゃんに似合うように丁寧に織ったのよ!依頼してくれた生地よ」

「うっわぁ!」


モナちゃんが織った生地は緑から黄緑色に変わる光沢のある生地。凄く綺麗だ!

付添いのシリウスさんもマクルスさんも見入っている。


「その生地のドレスを纏った多恵様はきっとこの世の誰よりも綺麗だろう…」

「シリウスさんは一度お医者さんに目を見てもらった方がいいよ!」

「私も同感でございます」

「じゃマクルスさんも受診してくださいね!」


コントの様なやり取りをしていたら、モナちゃんの視線が籠に釘付けなのに気付いて。

おっと渡すの忘れてた!


「モナちゃん。これ依頼を受けてくれたお礼。日持ちするものばかりだから、皆んなで食べてね」

「ありがと…」


モナちゃんが伸ばした手を付添いの男性が払った。その瞬間シリウスさんが私を抱えて後方は下がった。


「だからモーブル人を信じるなって言っただろう!前も優しいフリをした貴族令嬢に屈辱的な扱いを受け傷付いただろう。

生地は渡したんだ。これ以上はやめておけお前が傷付くだけだ」

「ジャス!タエちゃんは信用できるよ」


ジャスと呼ばれる男性はモナちゃんの手を引っ張りこの場を立ち去ろうとした。


「待って!ベンさんがモナちゃんを心配してて手紙を預かっているの!」

「ベン兄が!何故タエちゃんがベン兄を知っている⁈」


疑いの目を向けるジャスさんに困惑しているモナちゃん。

少なくともモナちゃんは私を信用してくれている。だから変に誤魔化さずに真実を話しジャスさんにも信頼してもらうしかない。



「シリウスさん。ごめんなさい。私の判断で私の身分を二人に伝えます」


シリウスさんが止める間なく私はてん君を呼んだ。ジャスさんとモナちゃんは目の前にいきなり現れたてん君に驚き固まっている。

いち早く再起動したモナちゃんが


「あの時のワンちゃん」


てん君は尾を下げで私を見て


『てん ワンちゃん ない』

『てん君は私の大切な家族だよ』

『たえ だいすき!』

『今からお仕事するから協力してね』


そう言うとてん君はモナちゃんの元に行き頭をモナちゃんに向けた。

モナちゃんは嬉しいそうにてん君の極上のもふもふを堪能している。その横でジャスさんがもふもふしたそうにてん君を見ている。


「てん君は女神リリスの聖獣。そして私はリリスが召喚した乙女です」

「「!」」


再度固まる二人。先に再起動したジャスさんが信じられないと大声で拒む。

『ですよねー』簡単に信用できるわけない。

だから…


「モナちゃん。ベンさんから手紙を預かって来たわ。まずはそれを読んで。ベンさんは貴女に会いたがっている。モナちゃんが望むなら会う機会を作るわ」


そう言いベンさんからの手紙を渡した。モナちゃんはジャスさんに気を遣いながらも受け取ってくれ読んでくれた。

きっとベンさんはモナちゃんに私が乙女だと告げ頼る様に書いている筈だ。

読み進めるモナちゃんを見守ると次第に大きなオレンジ色の瞳から綺麗な涙が…

読み終えたモナちゃんは涙を拭いながらジャスさんに


「ジャス兄。ベン兄の手紙は本物だった。ベン兄はタエちゃんが女神の乙女だから助けてもらってくれって」

「ベンって奴はそいつらに脅されて…」

「それはない。ベン兄が本当の事を言う時の口癖が書いてあった。だからタエちゃんは本当に乙女様なんだよ」


下を向いて黙り込んだジャスさんが暫く考えて


「そこの騎士さんよ!騎士の誇りにかけてこの女性が乙女だと断言できるか⁈」


ジャスさんはシリウスさんを真っ直ぐ見てそう言った。”騎士の誇り”とは命をかける事態や、君主に忠誠を誓う時にかけるものだと後々にシリウスさんに教えてもらった。


「”騎士の誇り”に誓い敬愛する女神のリリスにも誓って嘘は言わない。多恵様は女神の乙女様だ」

「私もモーブル国王の名にかけて多恵殿が女神の乙女だと証言しよう」


背後から陛下の声が聞こえて慌てて振り返ると陛下が左胸に手を当てて立っていた。


「陛下まだ出てきちゃダメですよ!」

「多恵殿。部屋を用意させた。ここで話し続けるのは危険だ」


確かに悪目立ちしてきた。モナちゃんとジャスさんに部屋でゆっくり話したいと持ちかけたら了承してくれ、陛下が用意してくれた宿の一室に移動する。


移動の道すがらジャスさんがまじまじと私を見ている


「?」ジャスさんを見上げたら


「異界の乙女は絶世の美女だと思っていた。案外普通だな」

「そうなんです。ジャスさんの評価は正しいですよ」


「お前!今なんと言った!」


シリウスさんはじめ騎士の皆さんが剣に手をかけ殺気だし、てん君に至っては牙むいている。するとモナちゃんがジャンプしてジャスさんの頭を叩き


「こんなに可愛い人いないよ!ジャス兄は性格だけでなく目も悪くなったの!」

「いや…モナちゃん。ジャスさんの意見は尤もでね…あぁ…」


斜め前から陛下の視線を感じ見てみたら怖い!視線だけで人をヤレそうだ。


『もー!今からヘビーな話をするんだから、ここで揉めないで!』


前途多難な話合いになると感じ始まる前にから疲れてしまった。皆さん冷静に粛々と話し合おうね!

お読みいただき、ありがとうございます。

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