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箱庭にポテチを伝授し後々モーブルの名物になるなんて多恵はこの時は思いもよらなかった。


調理場から戻り書物をしていたら、あっという間に夕食の時間に。おやつにポテチを沢山食べたから、全くお腹が空いていない。どうしよう!夕食が食べれ無い!

何て言い訳しようかと考えていたら、フィナさんが夕食の準備が出来たと伝えに来た。

食べれてもサラダとスープ位だ。申し訳なくてテンションを下げてテーブルに行くと…


『あれ?すくなっ!』


テーブルにはサラダとカップのコンソメスープとフルーツが少し。テーブル前で目が点になっていたらフィナさんが


「料理長が“多恵様の世界の“ポテチ”なるモノを沢山召し上がられたので、夕食は軽食に致しました。足りなければ遠慮なく仰って下さい”との事です」

「そうなんです。美味しくて止まらなくて…後で料理長にお礼の手紙を書くので届けてもらえますか」

「畏まりました。…多恵様。私もポテチなるものを食したいのですが…」

「その辺も料理長にお願いておきますね」

「ありがとうございます!」


こうしてポテチはリリスの箱庭に定着していったのでした。 



明日はモナちゃんに会うから料理長への手紙を書き終えたら早めに就寝準備をして休んだ。


翌朝、日課のフィラの朝の訪問を受け少しイチャイチャしてから身支度して部屋へ。

フィナさんが朝食を用意してくれている。もうすっかりポテチは消化されお腹が空いて来た。テーブルにはもう美味しそうな朝食が並んでいる。

テーブルを見ていたら見たことないドレッシングが並んでいるのが目につく。香草がみじん切りにされ入っている。好き嫌いは無いが初めての食材は気になる。


「フィナさんこのドレッシング初めてです。この中に入っている香草何ですか?」

「これは“ニール”という癖のある香草で、ベコンなどの肉料理に合います。今日のサラダは焦がしベコンが入っているので、このニールのドレッシングにしたのでしょう」

「へぇ~美味しそう」


着席したらフィナさんがサラダを取り分けてニールのドレッシングをかけてくれた。一番にスープをいただきお腹が温まったらニールのサラダをいただきます。

ニールがかかったベコンをフォークに刺したら…


「?」


急に私の周りを光の玉がぐるぐる回りだした。気になって食べれない!


『てん君!妖精が”ぐるぐる”するんだけど!』

『ようせい こうふん なにいってる わからない』


“ぐぅ~”とお腹が鳴ったので


『食後にゆっくり妖精達から話を聞けばいいか…』と妖精達を後回しにしてサラダを食べようとしたら


「多恵!」

「へ?」


フォークを持つ手を誰かに捕まれた。びっくりして見上げたら…フィラだった。

あれ朝来たのに何があったの?


「それを食べてはならん!」

「何で?」


珍しくフィラが焦っているし、まだ妖精達の”ぐるぐる”が止まらない。 


「そこの侍女!料理長とドレッシングを作った者をここにつれて来い」

「はっはい!」


慌ててフィナさんが部屋を出ると、外の騎士さん達が部屋に飛び込んで来ても戸惑っている。

まだお腹が鳴っている私はパンなら大丈夫だろうとパンを手に取ったらそれもフィラに取り上げられた。フィラは私を抱え上げソファーに座り、他の人に聞こえない位の小さな声で


「安全が確認できるまで何も口にするな!」

「へ?分からないけど…うん」


暫くすると料理長とエリアス様とシリウスさんが部屋に駆け込んできた。


「料理に何か問題がございましたでしょか⁈」


額に汗をした料理長が聞くとフィラは私をソファーに座らせテーブルに行きドレッシングの瓶を持って来た。そして料理長に渡して…


「よく見てみろ!」


料理長はフィナさんに小皿を取ってもらい小皿にドレッシングを少し入れて香りと香草を注視して…


「これは…」

「流石王宮の料理長をするだけはある。下っ端なら気付かないだろう。危うく女神の乙女を中毒死させるところだぞ」

「「「「中毒死!」」」」


途端に料理長の顔色が無くなり、私に向って跪いて深々と頭を下げて謝罪された。


「妖精王の仰るとおりこのドレッシングには”ニール”では無く”スイマン”が使われています」

「どうせ区別のつかない下っ端が作ったのだろう」

「妖精王の仰る通りでドレッシングを作るのは見習いの役目です。見習いでは“ニール”と“スイマン”との区別はつきません。”ニール”は王室御用達の栽培農家からの仕入れで安心し、チェックが襲ろ過になっていたのでしょう。これは料理長の私の責任で…」


皆んなは”スイマン”を知っていて事の重大さが分かっている様だが、私はいまいち理解出来ていなくて…


「料理長。“スイマン”って食べれ無いんですか?」

「はい。”スイマン”の実は食材の色付けに使われ、花は観賞用に用いられます。実も花もどちらも無害ですが葉は違う。毒素を持ち食べると吐き気と腹痛を起こし、大量に摂取すると体が痙攣し死に至ります。それ故に取扱が難しく“スイマン”は収穫後すぐに葉を落とし、葉はその場で燃やす決まりになっているくらい危険なのです」

「えっと…フィラ…このドレッシングの香草は…」

「“スイマン”だ」


血の気が引いて目の前が真っ暗になった。


『私毒殺される所だったの⁈』


誘拐や拉致などは経験した事があるが命を狙われたのは初めて…勿論元の世界でも…

恐怖で何も考えられず固まっていたら、フィナさんが青い顔をして果実水を持って来てくれた。顔を上げ果実水を受け取ると皆の顔が見えたが皆の顔色も悪い。恐らくみんなもショックを受けたのだろう。でも皆んなを気遣う余裕がない。フィラが再度横に座り口付けて


「大丈夫だ。もしも口にしてもグリスの薬草を煎じて飲めば癒せるし、俺がそんな事させない」

「うん。ありがとう」


フィラのお陰でやっと落ち着いて来たら料理長の怒鳴り声が聞こえ来た。


「ドレッシングを作ったのはマイクか⁈彼奴はどこに行った!」

「それが…昼食の調理の後には体調を崩しトイレに籠っています」

「まさか!スイマンの毒にあたり…」


するとフィラが天を仰ぐと窓の外から黄緑色の光の玉が来てフィラの掌に葉っぱを数枚置いて消えた。


「この葉は薬草の妖精グリスの葉だ。毒素を中和出来る。葉を磨り潰し水に混ぜ見習いに飲ませろ。事情を聞かねばならない」

「御意!直ちに」


料理長と騎士さんは慌てて部屋を出た。

フィナさんはじっとエリアス様を見ている。もしかしてエリアス様の仕業だと思っている?

悪代官のエリアス様の顔色は悪い。エリアス様の仕業ならあの動揺は演技なのかなぁ⁈

脂汗をいっぱいかいているエリアス様は、陛下に報告と言い足早に退室して行った。


応援にきた従僕さんと侍女さん達により朝食は片付けられた。程なくして陛下が部屋に駆け込んで来た。


「多恵殿!」

「陛下…」


陛下も顔色が悪い。陛下はフィラの前に跪き深々頭を下げて謝罪する。

顔を上げた陛下と目が合うと陛下はフィラに許可を得て私を抱きしめた。

微かに震えている陛下。

本当に心配かけてしまった。


「一報を受け生きた心地がしなかった。必ず犯人を見つけて裁く故時間が欲しい」

「はい。陛下…見習いさんの具合は?フィラが解毒剤を用意してくれたから大丈夫だと思うんですが…」

「貴方は人の心配ばかりだ。もっと自分を大切にしなさい」


陛下は腕を緩め額に口付ける。陛下も私の顔を見て落ち着いた様だ。これならモナちゃんのところに行けそうだね。

陛下の顔を見てそんな事を考えていたら、後ろからフィラに引っ張られ今度はフィラの腕の中。


“ぐっ〜”


また腹の虫が空腹を主張しだした。するとシリウスさんが戻ってきて、見習いさんはグリスの薬草で少しづつ良くなっていると報告してくれた。

『よかった…助かって…』胸を撫で下ろす。

そしてシリアスさんが、



「今、調理場では騎士が監視の元に料理長が多恵様の朝食を再度作っております。多恵様しばらくお待ちいただきたい」

「シリウスよ。騎士が監視しても安全とは言えんぞ」


陛下やシリウスさんが険しい顔をしている。

でも疑い出したら何も出来ない。それに私のお腹の虫は大合唱を始めてしまった。話を聞いていたフィラが


「妖精達が見張っているから変なものが入れば分かるし俺が最終確認する」

本当マジ!お願いします!」


なんとか食事にはありつけそうだ。暫くしたら料理長とアラン団長が食事を乗せたワゴンを運んで来た。

団長自ら出向いてくれるなんて恐縮する。

光の玉がフィラに近付き何か報告している。そしてテーブルに並べた熱々の料理にフィラが手を翳す。


「よし。大丈夫た。多恵食べて腹の鐘を止めてやれ」


やっぱり盛大に鳴る腹の音は皆んなに聞こえていた様で、陛下をはじめ皆んなの眼差しが温かく更に恥ずかしくなる。

こうして動物園のパンダ…じゃなかった…私は皆さんに見守られ?朝食を食べたのでした。


お読みいただき、ありがとうございます。

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