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恋文

グラントの手紙ラブレターのおかげでダラスの激甘な雰囲気ムードから逃れ…



噂をしていたら悪役エリアス登場で陛下の甘々な雰囲気は終了し胸を撫で下ろす。陛下は明らかに不服そうだ。

エリアス様は私と陛下との会話が気になる様。しきりに食事会を終了しようとしている。私的にはその方がいい。だって本題は終わり口説かれていたから


「陛下。食事に誘っていただきありがとうございました」

「また誘うよ」


ダイニングを出て部屋に戻ろうとしたらエリアス様が引き留める。


「何か?」

「やはり私はバスグル人に直接面会するのは反対です。あの者達は粗暴でいつ牙を剥くか分かりません。私が面会の場を設けますので」

「大丈夫ですよ。陛下の許可ももらいましたし、リリスの聖獣も妖精王の加護もあります。それにモーブルの騎士は優秀なのでしょ⁉︎」


後ろに控えるケイスさんは胸を張り自信に満ちている。表情を曇らせたエリアス様はあっさり引き下がり、やっと部屋に戻る事になった。道すがらケイスさんが


「宰相様は優秀ですが黒い噂もございます。あまり気を許されない様に」

「ありがとうございます。大丈夫ですよ。人を見る目はある方です」


ケイスさんは王族派だから陛下の味方なんだ。…という事は貴族派のバートンさんへの発言は注意しないといけないかもしれない。


疲れて部屋に戻り楽な部屋着に着替えてソファーに座り一息つく。夕方エリアス様が来るから英気を養わないとやってられない。

ふとテーブルに置いた手紙が目に入る。グラントからだ。まだ1ヶ月経ってないのに懐かしく感じる。アイリスさんからペーパーナイフを借り開封したら…


『グラントの香りが…』

便箋にグラント愛用の香水がつけられているようで、開封するとグラントの香りに包まれる。あ…たった今!私の匂いフェチが確定しました。


グラントの香りに包まれると抱きしめられている様で頬が熱くなって来た。

香りを堪能し早速手紙を読むが…


「多恵様!お風邪でしょうか?顔が真っ赤です!」


熱烈なグラントの愛の言葉に汗腺が壊れて、額から滝の様な汗が出てきた。大概求婚者達から愛の言葉をいただき耐性がついて来た私だが今回はやられたー!

初めは愛の囁きだったのに最後の方は夜をに匂わす内容で、まるで官能小説のみたいだ。

私がいない間に官能小説家に転職ジョブチェンジしていたの⁉︎


アイリスさんが慌てて冷やしタオルを大量に持って来てくれ、とりあえず冷やす事に集中する。


『香り付きの恋文は危険だ…』

これからは婚約者の手紙は寝室で一人で読むと決めた。手紙をなおそうと便箋を手に取ると追伸が目に入る。


“やっと仕事か片付き6日後にそちらに行けそうです。待っていて下さい。愛しい君”


グラントが来る様だ…6日後?あれ何かあった気がするけど…


『あっ!モナちゃんと約束していた!被った!』


頭を抱えてどうしようか考えていたら外が騒がしいのに気付く。どうやら部屋の外で言い合いをしている様だ。後ろに控えるアイリスさんの表情が怖い。恐る恐るアイリスさんに何が起こっているのか聞くと


「ご心配いりませんわ。ケイス殿が対処なさいますから」

「?」


恐らく高位貴族が約束も無く強引に会いに来たのだろう。そんな認識でいたら急に女性のヒステリックな声が響く


「私が誰か知っての無礼。陛下に抗議いたしますわ!」


突撃者は女性の様だ。面倒くさいなぁ…この後に悪者エリアスとも対峙しないといけなし、グラント訪問がモナちゃんと会う日にダダ被りの件もあるのに!

中々治まらない言い合いに見かねたアイリスさんが参戦するようだ。

言い争いにアイリスさんも加わり少ししたら、興奮した女性の怒鳴り声がした瞬間


“バン”

“ドン”


扉に何かがぶつかった。驚いて扉を開いて飛び出たらアイリスさんが倒れていて、イライザ様に侍女に抱き付き止めている。


「アイリスさん!」


駆け寄りアイリスさんに手を貸し立ち上がらせ、怪我が無いか確認する。その場に居たケイスさんに


「何があったの!」

「イライザ様がアイリス嬢を突き飛ばしまして…」


するとイライザ様が更に興奮して怒鳴り散らし


「その性別不明な侍女が偉そうに乙女の面会を拒否したのよ」

「約束がないなら受ける義務はありません。身分が高ければなんでも有りなんですか?面会したければ出直して下さい」

「私は貴女に話があって来たのよ!部屋に入れなさい」

「はぁ⁈」


何こいつ!久しぶりにムカつく奴だ。


「お断りいたします。この後予定がありますので。どうしても話があるなら正式な手順で面会の申込をなさって下さい」

「私を誰だと!」

「何をしているんだ!」


やっと話が分かりそうな人が現れた。ニコライ殿下はヴァスラの騎士をつれ慌てた様子で登場。もう少し早く来てよ!

まだ興奮気味のイライザ様を連れて行くように騎士に命じ、私に深々と頭を下げて謝罪される。


「ニコライ殿下。謝る人を間違っていませんか!」

「多恵様。私の様な侍女に謝罪は…」

「否!身分関係ありません。傷つけた相手に謝るべきです。それに当事者イライザが謝るべきで、ニコライ殿下が謝るのはおかしい」

「多恵様…」


何故か頬を染めて距離を詰め許可なく私を抱きしめるニコライ殿下。意味が分からず固まる私を今度は後ろから誰かに引っ張られ背中に何か当たった。


『もう!なんなの?』


背後を見上げるとそこにはシリウスさんがいて怖い顔をしてニコライ殿下を見ている。


「殿下。多恵様はこの箱庭の”女神の乙女”でごさいます。身分的には国王陛下や妖精王と同等…いや上の存在。王族である殿下ならお分かりの事と存じます。陛下に報告し正式に抗議させていただきます」

「我が国の者が乙女に対しての非礼を公式の場で謝罪させていただく。多恵様…多変失礼いたしました」

「謝罪は受けます。あと…お忘れでは?」


“謝れ!”と言いているのに何故か楽しそうな顔をしたニコライ殿下が


「乙女様の侍女。其方も済まなかった」


いつも勝気なアイリスさんが恐縮している。取りあえず謝罪を受けて場を治める。ニコライ殿下がお詫びに何か贈らせて欲しいと言ったが断わりお帰り頂いた。

『とりあえず帰れ!』と心で悪態をつく。

陛下に報告するためにシリウスさんが状況を確認したいと私の部屋で事情聴取する事に。


そして事の顛末はこうだ

イライザ様がアポも無く私に会いに来た。ケイスさんがお約束されてないので断るとゴテ出すイライザ様。

ケイスさんの身分を聞き自分の方が上だと知ったイライザ様は更に強気に要求して来た。

押し問答をしていたところに状況確認にアイリスさんが出てくる。

そこでイライザ様が男装した侍女を従える乙女は変わり者で大したことなく、本当に”女神の乙女”か疑わしいと言い放った。そして妖精王フィラの伴侶とに相応しくないと難癖をつけて来た。


「私の事は何を言われても構いません。しかし多恵様をあんなふうに蔑み黙っていれません」


どうやらアイリスさんはイライザ様に言い返したようだ。すると頭にきたイライザ様はいきなりアイリスさんを突き飛ばした。アイリスさんは倒れたが咄嗟に受け身を取った為怪我はなかった。

怪我がない事に安心していると眉間に皺を寄せたシリウスさんが


「イライザ嬢はトラブルが多くその都度ヴァスラ皇国側に抗議している。イライザ嬢は王太子の従姉妹に当たり、第5女神の箱庭の妖精王からも求婚された事もあるらしく、プライドが高く留学当初からトラブルが絶えません」

「酷いならお帰りいただいたらいいのに」

「モーブルはヴァスラ皇国に恩義があるため無下に出来ないのです。エリアス様の話ではイライザ嬢の悪評は有名で当初はアルディアに留学を希望されていましたが、イライザ嬢があれなので…」


シリウスさんは明言しないが、どうやらアルディア王が断ったそうだ。

『でしょうね!私も勘弁だわ』

そして恩義があるモーブルに押しかけ留学したそうだ。


「強烈なキャラですね」

「はい…」


モーブルの皆さんは相当迷惑をかけられている様で、うんざりした顔をしている。

ふと疑問に思ったが私の所になぜ奇襲…もとい突撃してきたのだろう?

みんなに聞いても思い当たる節が無いそうだ。今後絡まれそうなので皆さんから情報をもらい、対策を考えておく必要があるようだ。


「シリウス様。多恵様はこの後予定がございます。皆さまそろそろ退室を…」


アイリスさんが声をかけてお開きになり、シリウスさんは陛下の元へ行き、ケイスさんは護衛の任に戻る。


「すげー疲れた…アイリスさんオヤツは激甘でお願いします」

「畏まりました」


甘々なケーキとお茶を飲み一息つく。

「もう直ぐ悪役登場だ…閉店したい〜」


独り言を言っていたらエリアス様の先触れが来た。

『お仕事…お仕事…』と自分に言い聞かす。


ソファーの横に立ちエリアス様をお迎えする。


「お時間いただき、ありがとうございます。先程シリウス殿からイライザ様の報告は受けております。あの方はトラブルが多いので、あまり関わらない様になさって下さい」

「はい」


ソファーに座り明日から6日間の予定を聞く。


1日目 午前 ランティス公爵様と面会

    午後 ヴァスラから公式の謝罪

2日目 港町視察(宿泊)

3日目 港町観光

4日目 ランティス領 農地視察

5日目 フリー

6日目 グラント訪問&モナちゃん面会


『中々ヘビーなスケジュールだ』


グラントの訪問を1日でもずらせたらなぁ…


『てん グラント いく』

『へ?行くって何処に?』


驚く事にてん君は女神の台座を経由すれば箱庭の何処でも行けるそうだ。今からグラントに手紙を出しても入れ違いになる可能性がある。てん君が行ってくれるなら…


『お願いしていい』

『おまかせ』

『おぉ!』


てん君がまた難しい言葉を覚えてる!いつかは普通に会話する日が来るかもしれない。


「エリアス様。今からグラントに1日遅らせてもらう様に連絡します。OK出たら変更になりますから対応お願いします」

「多恵様!今から出しても入れ違いに…」

「てん君がアルディアに届けてくれるから、夜には返事が来ます」

「聖獣様が…」


てん君を呼ぶとドヤ顔だ。その顔が可愛すぎて夜いっぱいもふるのを約束する。


なんとも言えない顔をしてエリアス様は退室をした。ずっとポーカーフェイスのアイリスさんがエリアス様が退室したら、口元を緩ませてん君ガン見している。

直ぐにアイリスさんから便箋と封筒を用意してもらい、直ぐにグラントに手紙を書く。

早く変更を知らせたいから、内容は少し素っ気無い。このまま送ったら恐らく彼なら落ち込むだろう。だから…


『てん君。書けたからお願い出来る?』

『まかせて!』


我が子の成長を感じる母の気持ちだ。するとてん君は前足で私の足を軽く叩いて


『グラント よろこぶ』

『だったら嬉しいなぁ…てん君もグラントにもふもふしてもらっておいで』


てん君は尻尾をMAX振ってグラントの元へ向かった。


この後夕食までてん君に興奮するアイリスさんの独演会に苦笑いしながら相槌を打つ事になった。


お読みいただき、ありがとうございます。

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