再び
フィラに愛され過ぎお疲れ気味です
昨日はフィラに愛され過ぎて(いたしていませんよ!)疲れ、朝起きれず目が覚めたのは昼前だった。起き上がったが再度ベッドに沈み起き上がる気力が無くて微睡んでいる。すると今日の担当のアイリスさんが様子を見に来た。
「多恵様お目覚めですか?」
「はぁ〜い。起きてますよ」
「失礼致します」
アイリスさんはカーテンと窓を開ける。窓から風が吹きほのかに野焼きの匂いがする。農業大国と言われるだけあり日本の田舎ような匂いがする。
「アイリスさん今日は予定入っていますか?」
「夕方にエリアス様が今後の予定を説明にお見えになられます」
「じゃあ夕方まで自由?」
「いえ陛下が昼食を一緒にと仰っておいでです。如何なさいますか?」
陛下か…昨日はフィラ登場した事で言いたいことが言えなかった様子。聞いておいた方がいいのかも…
「分かりました。お受けします」
「そうしましたら湯浴みとお着替えを」
『着替えだけでよくない?』
と思ったけどいつも通り湯浴みをさせられまた疲れる。バスローブに着替えドレッサーの前に座り化粧をしてもらう。すると髪をセットしているアイリスさんの表情が曇った。
「?」
「申し訳ございません。このまま少しお待ち下さいませ」
ドレッサー前に座らされたまま待機。暫くするとアイリスさんが1枚のドレスを持って来た。『あれ?ドレスチェンジ?』
髪結いを再開したアイリスさんが低い声で
「フィナから昨日妖精王の元へ行かれた事は聞いておりますが…。この様に目立つ所に痕跡を残されるのは…」
「痕跡?」
意味が分からない私にアイリスさんは手鏡を向けた。目の前のドレッサーの鏡と合わせ鏡になって首元が見えた。
「!」
「妖精王がお付けになった様です。選んだドレスでは目立つので替えさせていただきます」
「・・・すみません」
いつの間につけたのキスマーク!口付けと抱擁で翻弄されて何時付けられたか全くわからん。湯浴みをしたばかりなのにもう嫌な汗をかいて熱くなってきた。
フォローする様にアイリスさんが
「妖精王とは婚約なさっておいでなので、お気になさらなくても」
「すみま…せん」
穴があったら入りたい…。
こうしてハイネックのドレスに着替えて今日の護衛騎士のケイスさんと一緒に陛下の元へ向かいます。
ケイスさんは休暇のお礼を言う。真面目だなぁ…ちなみに休暇をくれたのは陛下だからね。他愛も無い話をしながら廊下を歩く。ケイスさんは友達感覚で気さくで話してて楽しい。
城内を歩くとまた色んな貴族男性から声をかけられる。大半はお茶会の誘いや領地への視察のお願いだ。
しつこいとケイスさんが断ってくれて頼れて、お礼を言うと笑顔を返してくれる。ケイスさんはゴリマッチョだが人懐っこい笑顔で癒される。ふと目が合うと大きな目を細め
「本当に多恵様は愛らしい。ずっと見ていた…」
「見ないで下さい。緊張します」
「申し訳ありません」
そう言えばケイスさんは私の伴侶候補だったけ⁈最近はあまり伴侶候補の話が出ない。
有難いが忘れた頃に急に始まりそうで怖い。
「多恵様。到着いたしました」
「ありがとう」
入室すると前の様にラフな服装にセットしていない髪の陛下が書類を読んでいる。
『休日のイケオジだ』
身惚れていると気が付いた陛下が立ち上がり目の前に来てハグをする。やっぱりいい匂いがする。認めたくないけど…私匂いフェチかもしれない…
「王の姿で無ければ意識してくれるだな…」
「見慣れないだけです」
陛下は手を取り席に案内してくれる。
着席すると給仕が始まる。今日は陛下と2人っきりだ。料理は相変わらず食材豊富でどれも美味しく口元が綻ぶ。
「貴女の口に合うかぃ?」
「はい!美味しいから食べ過ぎて太りそうです」
「それは良かった。しかし貴女はもう少しふくよかになるべきだ。抱きしめると消えてしまいそうで怖い」
「こう見えて見えない所がぷにぷになんですよ!」
「それはこの目で確認したい…」
急に男の顔をする陛下に思わずスープを吹き出しそうになった。
「やめて下さい!食べれません」
「嫌われたくないからこの辺にしておくよ。徐々に私の想いを知ってくれたらいい…」
相変わらず真意が分からないから困る。とりあえず王妃様との仲を解決してほしい。何だっけ?夫婦喧嘩は猫も食べないだっけ?
色々話してくれる陛下。急に優しい表情をして嬉しそうに
「グレンが九九を九の段まで暗記したそうだ。昼に執務室に来て一から九まで披露してくれた。あの子は今乾いた土が雨を吸収する様に意欲的に学んでいる。全て貴女のお陰だ」
「私はきっかけを作っただけです。殿下自身が学びたいと思ったんですよ」
「相変わらず謙虚だなぁ…そんな所も好ましい」
やっぱり何か言いたそうだ。本当に話したかったのはそれだけ?違う気がするよ…私からふった方がいい?
陛下を見ながらそんな事を考えいたら、急に表情を引き締めた陛下は
「やはり貴女は察しがいい。貴女との会話は無駄がなく気持ちいいよ」
「で…陛下本題は?」
「実は奴を泳がせている。頭が回るだけに中々尻尾を出さない」
「あ…」
やっぱり?
「ぷっははは!」
「へっ陛下?」
「貴女は頭はいいが思っている事を隠せない。素直で純粋なのだなぁ…
私は分裂しつつあるこの国を立て直すために、腹の探り合いをし嫌な奴になってしまった。故に穢れの無い貴女に惹かれるのだろうな…王妃も婚約するまでは天真爛漫で愛らしく素直な女性だった。王太子妃になってから表情が無くなっていき、伴侶である私にも本心を言わなくなった。王妃という地位が本来の彼女を奪ってしまったのかもしれん」
『うわぁ…相槌&返事し辛い話をふらないで…』
困っていると陛下は苦笑いして
「すまない。困らせたようだ。私の愚痴だと思って忘れてくれ」
「はい。っであの人は何をやらかしているんですか?」
「それは…」
ここからあの人の悪事を陛下から聞く事になるが…
やっぱりここでも登場か!悪い事しかしませんね!チャイラの人は!
陛下はバスグル人が差別され劣悪な環境に身を置いている人が多いのを把握されていた。一部の貴族が私利私欲の為にバスグル人から詐取し利用している。あの人はチャイラと強い繋がりを持ち、貴族派に便宜を図り富を得て国内で力を持つ様になった。
昔に妖精の加護が増え土地が豊かになり農地が増えたが人不足に悩む。そんな時にバスグルからビビアン王女が留学し、バスグルと国交が結ばれ初めは貴族か行き来しだし、そのうち平民が出稼ぎに来国する様になる。
モーブルは働き手が増え農作物の生産が増え、バスグルは外貨を得られ両国の利害が一致した。
そこに目を付けたのがチャイラ人。
勝手に船を出し入船料のかからない港(漁港)にバスグル人を上陸させた。いわゆる密入国だ。モーブルでは正規で入国したバスグルの労働者は国営の港で出稼ぎ先を決め、その農地がある領主(貴族)が責任をもつ。
正規で入国したバスグル人は生活も保障され当たり前だか納税も義務付けられいる。
そこで裏取引が発生する。労働力は欲しいが世話や責任を負いたくない貴族と納税したく無いバスグル人。その両方の手助けをしたのがチャイラの商人だ。
あの人の実妹がチャイラの島主に嫁ぎ、チャイラとの繋がりが強い。どうやらあの人が手引きをしている様だ。しかし狡猾で決定的証拠が出ない。
眉間に皺寄せ苦々しい顔をする陛下。思わず
「いっそ宰相の任を解いたらいいんじゃないですか?」
「いや、私の手元に置き監視せねばならん。なぜなら一貴族になれば陰で何をするかわからん」
『はぁ…今思うとアルディアの方が問題は簡単だった。流行病対策だけだったしなぁ…モーブルは裕福な割に問題は深刻だ。私に解決できるのかぁ?』
不安が顔を出しブルーになって来た。すると陛下が立上り傍に来て跪いて私の手をとり
「深刻な問題を貴女に頼り申し訳ない。貴女をあらゆる者から王として…いや一人の男として私が護ろう。頼って欲しい」
「えっと…よろしくお願いします?」
「何故疑問なんだ?」
「ゔ…ん何となく」
間近に陛下の美しく凛々しい顔があり気恥ずかしいくなって来た。目を逸らすと陛下は両手で私の頬を包み、美しいお顔が近づく…
『ヤバい!キスされる!』
“コンコン”
「失礼いたします。エリアスにございます。多恵様にアルディアより文が届いておりお持ち致しました。入室許可を」
「はっはい!どーぞ!」
陛下は苦笑いをして私に額に口付けご自分の席に戻った。程なく入室したエリアス様からご挨拶を受け手紙を受け取る。
『誰からだろう?』
差出人を見たらグラントからだった。このタイミングで手紙を受け取るなんて、グラントの悋気が遠く離れたモーブルまで及ぶなんて思いもせず、思わず一人で笑ってしまった。
心の中で呟く『グラント!ぐっじょぶ!』
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