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援軍

バスグルの労働者と繋がりを持てた多恵。今回の問題の本質を知る事が出来るのか?

『お昼も街で食べたかったなぁ…』


モーブル城の裏門が見えて来た。バスグルから出稼ぎに来ているモナちゃんと知り合いになりまた会う約束をした。

私はモーブルの問題解決の糸口になると喜んでいたが、騎士団からしたら女神の乙女がバスグルの労働者と接触するなんて思って無かった様で困惑している。


“まだ城下に居たい”なんて言える雰囲気でも無くて、真っ直ぐ城に戻ります。

城に着くと何故かエリアス様が居て、笑顔でエスコートされ何処に拉致られます。行き先は何処でしょう?


『やっぱりか!』


正解は陛下の執務室でした。

今日はラフな格好では無く威厳のある王だ。


部屋に入るなり陛下に手を取られソファーに座らされ、後ろにレックス団長とジョエル分隊長が立っています。

陛下がレックス団長から報告を受けると、陛下は溜息を吐き2人を下げた。執務室には陛下とエリアス様の3人となり重たい空気に包まれ気不味い。


「貴女は本当に無茶をする。貴女の身に何かあればアルディアやレックロッド、妖精王になんと言えばいいのだ」

「ご心配かけてすみません。てん君も居たしレックス様もいらっしゃるから、危険はないと判断しました。それによく考えたら問題に関して貴族や王族側の話しか聞いていません。両方の意見を聞かないと問題は解決しない。だからこれからも無茶します」

「多恵様!」


エリアス様が苦言を呈する中、陛下は難しい顔をしてじっと見てくる。でもここは折れないぞ!

すると風が吹きフィラが現れた。

びっくりして口を開けてフィラを見ていたら、横に座り口付け抱きしめてきた。まだ私は状況が分からずキョトンだ。

陛下とエリアス様は立ち上がりフィラに挨拶をしている。相変わらず私以外には冷たいフィラは無表情。やっと頭が回り出しフィラに


「何かあった?」

「お前の味方をしに来たんだが、必要なかったか?」

「味方?」


どうやらフィラは過保護なモーブルサイドに物申してくれる様だ。これくらい一人で大丈夫だけど⁈


「多恵は我が番であり婚約者だ。護りの指輪や妖精が常に助けとなる。故に心配要らん。多恵は自由を好むあまり囲い込むな」

「ありがとう。でも皆さん心配してくれてるだけで、束縛している訳では無いから」


陛下は眉間に皺を寄せたまま何か言い及んでいて、エリアス様が私の身を守る責任があるとフィラに説明している。


「俺はいつも多恵を見ているから、其方達の過剰な心配は不要だ」

「フィラ!前にも言ったけど、それストーカーだからやめてね!」

「いや!お前を心配してだなぁ」

「干渉が酷いと鉄の布でローブを作って着るようにするからね!」


そう鉄の布はフィラや妖精の妖力を通さない。だから鉄の布を被っちゃうとフィラはストーキングが出来なくなるのだ。悋気が酷いと本当マジにやるからね!とりあえず釘は刺したから暫く様子を見る事にした。


『でも干渉して欲しくない時用にゴードンさんに鉄の布でローブ作成をお願いしておこう…』



困り顔の2人を見て心配をかけたのは事実だから、勝手な行動をした事を謝る。


「今日出会ったバスグルから来た出稼ぎの少女は酷く怯えていて、酷い扱いを受けているのが見て取れました。確かに勝手に来て納税もせず国の施しだけ受けるバスグル人に、モーブル側が不満に感じるのは分かります。しかしバスグル人にも言い分がある筈。陛下が知らない事実があると思うんです。両方の意見を聞かないと正しい答えも解決策も出せない。私は両方の生の意見こえが聞きたいです。貴族だけの意見ではなく…」

「でしたら私共がちゃんと場を設ける…」

「それでは本音は聞く事が出来ないでしょう?雇われる側の立場は弱いんです」


私は元の世界で総務部門で事務をしていて、少し労働基準法や労務の知識が有る。立場の弱い労働者を守る決まりは必要だ。

私とエリアス様のやり取りを陛下はじっと見ていて何も言わない。けど何を思う所がある様だ。片や苦々しい顔をしているエリアス様は私が勝手に動くのが嫌みたい。


『エリアス様実は何か陰で悪い事してます?私に探られたくないみたい』


少しエリアス様に不信感を持ち出した所でやっと口を開いた陛下が


「分かった。貴女の思う様にすればいい。しかし貴女の身の護る責務は我々モーブルにある。故に危険と判断した時には止めたり反対をするがそこは理解して欲しい。また、最大限貴女の意向に添うようにする故、事を起こす前に相談して欲しい」

「ありがとうございます。緊急時は事後報告なっちゃいますがその時はごめんなさい。でも、聖獣のてん君もいるしフィラがいつも見守ってくれているから大丈夫です」

「女神リリスの聖獣か?」


そっかモーブルではてん君はまだお披露目してなかったんだ。陛下とエリアス様には紹介しておいた方がいいかもしれない。てん君を呼ぶと嬉しそうに足元にすり寄って来てフィラを見て冷たい視線を送り


『フィラ いる しっと うっとおしい』

「多恵は俺の番だ。居て悪いか!」

「陛下の前で喧嘩は止めてね!てん君モーブルのダラス陛下と宰相のエリアス様よ。仲良くしてね」


てん君はさっきまで尻尾を全開で振っていたのに、急に尾を下げてじーっと二人を見て


『たえ ダラス まあまあ えりあす よくない』

『やはりてんは本質が良く見えている。多恵、てんの見立ては合っているぞ。エリアスには気を付けろ』


フィラは表情と目線は変えずに思念で話しかけてくる。えっ?何?エリアス様は悪役なの?

1人困惑していたらてん君が私の膝の上に乗って私のお腹を前脚で叩いて


『たえ おなか ぐー しょくじ いる』


と言ったらフィラは腰に手を回し引き寄せて陛下に


「もういいだろう。我が番はお腹が空いたようだ。食事を用意してくれ。俺が妖精城に連れ帰ってもいいぞ」

「なっ!なんて事言うの!恥ずかしいでしょう!」

「何が恥ずかしい。生きるもの全て食事が必要だ」


てん君はずっと私のお腹をぺしぺし叩いている。やっと表情を柔らかくした陛下が


「お疲れの所を済まなかった。部屋に食事を用意させよう。妖精王フィラはご一緒なさいますか?」

「久しぶりに人の食事もいいかもしれん」


こうして陛下から体育館裏に呼出…じゃなかった事情聴取…でも無かった…一応話が終わりフィラと部屋に戻る事になった。

陛下の執務室を出て廊下を歩くとキースが来た時と同様に女性から視線を独り占めしているフィラ。四方から女性の溜息が聞こえてくる。当の本人は全く秋波に気付いていなくてお美しい微笑みをくれる。


「フィラ陛下!」


女性の群れの中から色っぽい令嬢が駆け寄ってくる。フィラは片眉を上げて不機嫌にその令嬢を見ている。本当に私以外には興味がない様だ。

私たちの前に来た女性はヴァスラ皇国のイライザ嬢だ。色気を振り撒きクネクネとフィラにすり寄る。


『何て顔してるのフィラ!』


フィラはビスクドールの様な綺麗な顔だが表情が無くイライザ様を見下ろしている。恐怖ホラーだ!怖くなって後退りしたがフィラががっつり腰を抱き動けない。


「またお会いできると思っておりました。運命ですわ。陛下と私は…」


頬を染め両手を頬に当て熱の籠った眼差しをフィラに送っているイライザ様。フィラは舌打ちをして挨拶も返さずに無言でイライザ様の横を通り過ぎた。


「ちょっと挨拶くらいしないと」

「必要ない。今はお前と食事をする事が大切だ。食事が遅れてお前が空腹で倒れたらどうするのだ」

「空腹で倒れないから!」


フィラは聞く耳持たずどんどん歩いて行く。寒気がして振り返ると強烈な視線をイライザ様から受けている私。どうやらイライザ様はフィラに本気の様だ。

でもリリスの箱庭でフィラがあれだけ私を“番だ”と言いまくっているのに、アプローチするなんてすごい精神ハートの持ち主か自信家のようだ。


『って言うか面倒くさい事になる事が今決定しました…』


気分と足が重くなった私と反対に機嫌がいいフィラ。部屋に戻ると食事が用意されており、部屋で待っていたフィナさんは初めて見るフィラに顔を真っ赤にしている。


「そこの侍女。我が番である多恵を頼む」

「誠心誠意お仕えいたします!」


フィラの予想外の発言にぽかーんとなっていたら、てん君が私の足を前足で叩いて見上げて


『フィラ すこし おとな』と感心していて笑えた。


この後楽しくフィラと昼食をいただき、帰るフィラを見送ろうとしたら、前ぶれも無く抱き上げられた。そして慌てているフィナさんに


「多恵は妖精城に連れて行く。心配要らん。夕刻に帰す」

「ちょっ!」


目の前が歪み妖精城に拉致らた。この後夕方までどっぷり砂糖漬けにされたのは言うまでもない。


お読みいただき、ありがとうございます。

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