表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
231/442

第5の…

激甘なシリウスと意味不明な王妃に戸惑いながらお茶会はスタートした。只々無難に終えたい多恵だが…

貴族と一部の豪商が陛下と王族への挨拶が終わると、次は私への挨拶が始まるらしい。それまではのんびりして下さいとアイリスさんがお茶菓子をいっぱいテーブルに運んでくれる。

挨拶をするまで話掛ける事は禁止されているそうで、声はかけて来ないが強烈な視線は送り続けられていて私は瀕死状態だ。

左横に待機してくれているリチャードさんに 


「ダメ元でお願いします。私の前に立ち他の方の視線を遮ってくれませんか?」

「申し訳…」

「あっ…いいです。忘れて下さい」


「多恵殿!」


向こうから聖騎士に付き添わてグレン殿下が走って来ます。正式な行事で殿下も正装で美男子全開です。


『ゔ…んグリード殿下の縮小版だ…』


殿下はシリウスさんと私の間にねじ込んで来て私に抱き付き座ります。


「今日の貴女は綺麗ですね」

「ありがとうございます。殿下もいつも以上に凛々しい紳士ですね」


そう返すと頬を染め私の頬に口付けたグレン殿下。横に座るシリウスさんが凄い顔をしています。

子供相手になんて顔をしてるんですか⁉︎

やっぱり婚約者たちと同様にシリウスさんも悋気やきもちが強い様だ。

そんな殺気だったシリウスさんに気付かないグレン殿下は美味しそうにお菓子を頬張ります。


「多恵殿!九九は7の段までいきましたよ!」

「お早いですね!後8と9です!頑張りましょう」

「はい!数を学ぶのは楽しい」


殿下は算数を理解すると学習意欲が上がり他の勉強も進んでいるそうだ。知識は邪魔にならず財産だからいっぱい学んで欲しい。


グレン殿下と話をしていたら一際強い視線を感じ、視線の先を辿ると鮮やかなワインレッドの長髪に黄金色の切長の瞳の男性だ。面立ちからリリスの箱庭の人ではない様だ。


『誰だろう?』


「グレン殿下。そろそろ乙女様への挨拶が始まりますので、控え席にお戻りを」

「分かった。多恵殿!後程な」

「はい」


グレン殿下は立ち上がり一丁前に跪き私の手の甲に口付け去って行った。


「小さくても紳士なんですね〜」

「… 殿下と多恵様は9歳しか差がない。候補として…」

「はぁ?ないない!ショタコンの趣味はないですよ!どちらかと言うと母的な目線です」

「しょた?」


説明が面倒なのでスルーした。


それより赤髪ワインレッドの男性が気になりリチャードさんに聞いてみた。急に質問され驚いているリチャードさん。他の男性の質問なんてシリウスさんにしたら、グラント並みの嫉妬でまた面倒くさくなりそうだ。


「あぁ…あの御仁は第5女神カノの箱庭のヴァスラ皇国の第5皇子のニコライ殿下です。今、モーブルに短期留学中でございます」

「ふ…ん。なんか凄い見られてるんですけど」

「カノの箱庭は聖人様しか召喚されたことが無いと聞いております。異世界の乙女が珍しいのでしょう。しかし多恵様が不快にお感じになるなら、陛下に…」

「不快じゃないから陛下に言わなくていいよ!」


揉め事反対!私に甘い陛下ならニコライ殿下にクレーム言いそうだ。


『第5女神カノの箱庭住人か…どおりでお顔立ちが違うと思った』


第2女神イリアの箱庭住人とリリスの箱庭住人はどちらかというと北欧系の容姿で、第4女神アリアの住人はラテン系だ。ニコライ殿下は何系だろう…。昔近所に住んでいたトルコ人の男性に似ている。アラブ系でも無いし欧州系でもないオリエンタルな顔立ちだ。

それにしても凄い見られている。リチャードさんの話では乙女が召喚された事無いって言っていたから物珍しいのだろう。どちらにしても挨拶をする事になるだろうから気にする事ないか…。

それよりシリウスさんの方が怖い。ニコライ殿下に敵意丸出しだ。外交問題になるから止めて欲しい。


「シリウスさん!殺気立って怖いです」

「いくら皇子とは言え、あのように不躾な視線を女神の乙女に向けるのは許せない」

「害は無いからスルーして下さい。揉め事は嫌いです」


何とかシリウスさんを宥めたところで私の挨拶が始まる様だ。エリアス様に促され定位置に立つ。右斜め後ろにシリウスさんが控え、左右にリチャードさんとバートンさん、ケイスさんが護衛に就く。

身分順に挨拶が始めるらしく貴族で一番位の高いサザライス公爵様がお見えになった。

公爵様はシリウスさんにとても似ていてシリウスさんの20年後が窺い知れる。めちゃイケおじ!後ろに控えるこ子息はシリウスさんの弟さんの様だ。お母様似かあまりシリウスさんに似ていない。


「お目文字が叶い光栄でございます。モーブルをお救いいただけるとお聞きしております。乙女様にお力になりたく存じます。私共に出来る事があれば何なりとお申し付け下さいませ」

「丁寧なご挨拶ありがとうございます。無知で教えを請う事が多いと思いますので、よろしくお願いいたします。えっと…前妖精女王の番がサザライス家の方だとお聞きしています。そちらの話もお聞きしたいのですが…」

「乙女様のお望みなら何でも…よろしければ我が領地にご招待したい。資料が沢山ございますので」

「ありがとうございます。伺わしていただきます。日程はエリアス様にお任せいたしますので」


公爵様の後ろには凄い列が出来ていて長話出来る状態ではない。文官さんが交代を促すと公爵様は


「我が愚息からお聞きして通り聡明で愛らしい女性だ。愚息が女性にここまで執着した事がありません。是非息子を伴侶に一人に加えていただきたい」

「えっと…今はリリスのお仕事が優先なので、今はそのお話は…」


するとシリウスさんは険しい顔をして


「公爵様。今は乙女様にご挨拶をする場です。個人的なお話は遠慮願いたい」


あれ?お父様と仲悪いの?2人共同じ眉間の皺を作り険しい顔をして睨み合っている。後ろに控えていた弟さんが慌てて


「父上、その話は挨拶の場ではしない約束です。兄上にも言われていたではありませか!」

「えっと…公爵様。今日は時間が無いのでまた別の機会に…後ろも閊えているので…」


後ろからシリウスさんの舌打ちが聞こえて来た。品のいい公爵子息がそんな事していいのかぃ⁈

のっけから波乱の始まりとなり挨拶に不安を感じながら次の方の挨拶を受ける。

次はランティス公爵家だ。温和な雰囲気の公爵様は白髪で顎髭をたくわえたダンディなこれまたイケおじです。無難なご挨拶をいただいた。


「バスグルからの小作人の雇用状況をお聞きしたので、一度領地を訪問させて頂きたいのですが…」

「光栄でございます。是非お越しくださいませ」


ランティス公爵家は流石無害認定だけありサクッと挨拶が終わった。『はい!次!』


「あははは…」


この後は…圧の強い方ばかりでご子息の売り込みが凄くて終始引き気味で、反り過ぎて背筋が痛くなって来た。

ふとダラス陛下と目が合うと陛下の表情も険しい。何か問題でもあったのだろうか?

ガッツポーズをして『ファイト!』と心の中でエールを送る。すると破顔した陛下に会場がどよめき反対に私が焦る。

陛下の横で相変らずビスクドールの王妃様は表情一つ変えない。ここまで来たら“ホラー”だ。


そしてとうとう例のニコライ殿下が挨拶に来た。


「お会いでき光栄にございます。第5女神カノの箱庭から参りましたヴァスラ皇国の第5皇子のニコライと申します。お見知りおきを」

「丁寧なご挨拶ありがとうございます。お聞きしましたら女神カノの箱庭は聖人(男性)しか召喚された事しかないと聞きました。異世界の女性は珍しいのでしょうね」

「多恵様!」


エリアス様が焦っている。

あれからも不躾な視線にいい加減イライラしていたから思わず嫌味を返してしまった。…いかん疲れていて抑えられなかった。


『あれ?』


ニコライ殿下は口元を緩め笑っている?


「不躾な態度で陳謝いたします。お恥ずかしながら我が箱庭にお出ましになった聖人様は好色で箱庭住民を惑わした過去があり、警戒し穿った目で貴女様を見ておりました。しかし違った…ご挨拶の様子を拝見しましたら、謙虚で聡明なお方だと感じました。少し前の失礼な自分を殴ってやりたいです」

「はぁ…」

「色々お聞きした事があり正式に面会を申し込みいたしますので、出来ますならお受けいただきたい」

「えっと…今はモーブル優先なので、お時間がありましたら?」


微笑んだニコライ殿下はとても美形で目がイタイ!リリスの箱庭男性と違う美しさだ。

ふと背後から冷気が…恐らくシリウスさんだ。振り向けない!きっとホラーだ。

ニコライ殿下が終わり次も後圧の強い方々のご挨拶を受け心身ともにボロボロだ…

遠い目をし出した私にリチャードさんが


「多恵様…あと1組で終わりです。頑張って下さい。この後は一旦控室に戻りますので」

「はぁ…い。がんばりましゅ」かっ噛んだ!


最後の豪商の方の挨拶が終わるとエリアス様は私が一旦控室に下がると皆さんに伝え、シリウスさんのエスコートで会場を後にした。

控室は少し歩くようだ。会場を出て少し歩いたが足が限界突破ししゃがんでしまった。


「ごめんなさい。少し休憩し…」


シリウスさんが屈み私を抱き上げ歩きだす。“下して”という元気も無く大人しくシリウスさんの腕の中。見上げて


「ありがとうございます」

「貴女はよくがんばりました。今ぐらい俺に頼って下さい」


やっと控室に着くと男性陣は退室しアイリスさんとモリーナさんが足を湯に浸けた後に香油でマッサージをしてくれた。

施術が終わるとシリウスさんと騎士の皆さんが入室してきた。

皆さんも座ってもらい、みんなでお茶をいただき休憩する。

ケイスさんは容姿に似合わず甘党な様で茶菓子を嬉しそうに食べていてちょと和んだ。


この後会場に戻ったらフリータイムになるそうだ。シリウスさんをはじめ護衛騎士御三方は気合が入っている。


「皆さん!少し前にご挨拶頂いたけど、正直ほぼ覚えていません。ごめんなさい!フォローお願いします」


「「「「お任せを」」」」

「「お任せくださいませ」」


チーム”乙女”第2ラウンドに挑みます!


お読みいただき、ありがとうございます。

続きが気になりましたら、ブックマーク登録&評価をよろしくお願いします。


『いいねで応援』もポチしてもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ