表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
229/442

キース - 回想 3 -

キース回想話の最後です。

多恵様の部屋に着くと先客が居た。先客は第1騎士団女性騎士隊長のジャンヌ様だ。許可を得て入室しジャンヌ様にご挨拶する。

彼女と母は再従姉妹はとこで遠縁になる。ご挨拶していたら衣裳室から多恵様が騎士の服装で出て来た。


「・・・」


あまりの可愛らしさに言葉が出ない!小柄の彼女には隊服は少し大きく更に幼く見える上、普段ドレスに隠れている足のラインが露わになり男の欲が湧き上がる。

横にいるジャンヌ様が苦笑し、気を利かせて退室していった。私の邪な視線に気付いてか彼女は着替えようとする。もっと見ていたい!止めると


「“女性が脚を出して!”って言わないんですか?」


他の箱庭男性ならそう言うだろう。しかし私は他国に行くことも多く異文化に触れ女性の服装に偏見がない。それこそ暑い国の女性は最低限隠すだけで脚や腕…更に腹部や腰元を出す国もある。そんな国に出向いても私は男の欲に支配された事はない。しかし…今の私は危うい!内にいる野獣を抑えるのに必死だ。


何故隊服なのか聞くと騎士団からの依頼で、運動前後に行う”すとれっち”なるものを指導するそうだ。


『駄目だ!』


彼女の脚を騎士に見せるのか!聞けばグレイブ殿が発起人らしい。

今巷で堅物のグレイブ副団長が乙女様に骨抜きになり乙女を溺愛していると言われている。

その点を彼女に忠告すると妹枠だから心配無いと言う。


『そんなわけ無い!』

しかし彼女はグレイブを信頼しているのであまり強く言えなかった。

そしてあと一つ聞きたかった事が…


「我が領地の訪問の前日アーサー殿下とお出掛けですね…他の元候補者の方々はその…候補に戻られたのでしょうか⁈」

「えっと…」


気不味そうに妖精王フィラが候補に戻ったと言う彼女。大方の予想はついていたがショックだ。彼女の感じでは(元)候補者全員を受け入れるつもりは無いだろう。恐らく妖精王フィラ以外は多くて3人くらいか…


1人はグランド殿で間違い無いだろう。彼は宰相補佐の立場上彼女に関わることも多い上、悔しいが彼女の心情をよく理解している。まだ候補者に戻っていない様だが、領地視察の際にアプローチするに違いない。


後は…私かアーサー殿下か⁈もしくはアルディアでは選ばないかもしれない…

『嫌だ!彼女の人生に寄り添いたい!』


彼女に領地訪問の際にありのまま私を見て欲しいと懇願した。すると彼女はまた自分を卑下する様な発言をする。

彼女の自己評価の低さにいつも不思議に思う。あんなに愛らしく凛とし素晴らしい女性なのに…異世界の彼女はあまり褒められずに育ったのだろうか⁈それともその世界では普通なのか⁈

私の愛で包み甘やかし愛されているのを感じて欲しい…

この後港町を楽しみにしている彼女に領地の話をしこの日は一旦領地に戻った。帰路では彼女に領地を案内するシュミレーションをし心弾む。


後日お茶会の報告を受け安堵する。彼女は誰も選ばれ無かったようだ。やはりイーサンはやらかしたようだ。彼奴は女性に拒否される事は無いと思っている。

乙女様に不埒な事をした罰として第2騎士団に入隊が決まった。あの多恵様を溺愛するグレイブ殿のしごきに耐えれるのか?

まぁ少しは性根は治るだろう。


それよりアーサー殿下とグランド殿との逢瀬が気になる。特に…アーサー殿下だ。アーサー殿下が彼女に心を受け取ってもらったならば恐らく私は選ばれない…

心配で夜も寝れない。寝室のソファーで強いお酒をあおり彼女を思い溜息を吐いた。


そして昨日のアーサー殿下の報告書が届く。執務室の人払いをし目を通すと…


「良かった…」どうやら多恵様はアーサー殿下のお心は受けていない様だ。

気が抜けだらし無く体をソファーに沈ませる。明日は彼女が我が領地に来る。彼女の心が欲しい。気合を入れ準備に入る。


翌朝。朝から湯浴みをし身支度に時間をかける。普段の装いは専属侍女に任せているが、今日は母上が朝から忙しそうに準備していた。

街を散策する為あまり目立たない様にラフな格好にする。親父殿は朝から屋敷のチェックをし気合をの入れ方が違う。陛下訪問時でもここまでしない。


張り切る両親を苦笑しながら見ていたら約束の時間が来た。馬車に乗り待ち合わせのホテルに向かう。

ホテルで待っていると陛下専用の馬車が入って来た。護衛騎士を見て苦笑いする。

それにしてもすごいメンツだ。各騎士団No.2が揃い、多恵様に好意を向けるグレイブ殿とレオ殿に眉を顰める。馬車の扉が開きグレイブ殿のエスコートで多恵様は降りて来た。


『まるで女神の様だ…』

シンプルなデザインのワンピースがとても似合い眩しい!

駆け寄り彼女を抱きしめる。エスコートしていたクレイブ殿の小さい舌打ちが聞こえたが気にもしない。今は腕の中の愛しい人の香りを堪能したいのだ。


長い抱擁にジャンヌ殿が咳払いし我に返り今日の予定を伝える。王宮騎士の方々はこのホテルで待機して貰い街での護衛は公爵家騎士団がつく。街を熟知している騎士団の方が不測の事態に対応できるからだ。公爵家騎士団は王宮騎士に引けを取らない。昔から仕えてくれる忠誠心の強い者が揃っているので問題ない。それに彼女との逢瀬に彼女に好意を向ける者を同伴させたくはない。今日一日彼女を愛でる権利は私にある。

しかし女性にしか対応できない事もある事からジャンヌ殿に平民の装いで公爵家騎士団と共に護衛に付いてもらう。

恨めしそうなクレイブ殿とレオ殿を後目に街へ繰り出す。お昼時で彼女を海の幸が有名なレストランに案内する。


眺めのいいテラス席で食事をするが彼女は食が細い。女性用のコースを頼んだが食べきれなかったようだ。申し訳なさそうにする彼女は勿体無いと眉尻を下げる。気を遣わせない様に彼女の許可を貰い残りを頂くことにした。

彼女は元の世界では身分が無く一般人だった言うが、所作は綺麗で箱庭の令嬢と遜色は無く食事をする姿も綺麗だ。

食事を終え店を出ると領民が集まり多恵様が私の伴侶となると喜んでいる。彼女に気負って欲しくなく領民に


「見ての通り魅力的な女性でライバルも多い。いい結果につながる様にどうか見守りそっとしてほしい」


と告げると彼女の表情が柔らかくなる。

やっと領民が居なくなり彼女が探し求めている侍女への婚姻祝いを買いに行く。

彼女は優しい。この世界は身分があり目下の者に贈り物などしない。彼女の心遣いに感動し事前に贈り物になりそうな品を見当をつけていた。提案すると表情を明るくし喜んでくれる。

そして異国の食器を扱う店に案内し淡い青色のシャンパングラスを2セット購入した。多恵様が他の品を見ている隙に実は私も青色のグラスを対で購入し、グラスにお互いの名前を彫ってもらった。彼女との婚姻し共に過ごす様になった暁にはこのグラスを使いたい。

店を出て歩いていると大型船が入港したようで人が増えて来た。向こうから歩いて来た柄の大きな男が彼女にぶつかりそうになり引き寄せると頬を染め見上げて


「いつも素敵だけど今日は一段とカッコいいです」

『なっ!』


我慢出来なかった…。思わず引き寄せ路地に入り抱きしめ頬に額にと口付けを落とす。抑えが効かない!口付けこのまま護衛を撒いて攫ってしまいたい!

しかし強引にしてしまえば途端に嫌われてしまう。必死で内なる野獣を抑えていたら血相を変えてジャンヌ様が来た。私を見て苦笑いし『自重しない』と目が言っている。

路地を出て彼女ご希望のショコラーテの店に急ぐ。


店で彼女は指を折りながらショコラーテを計算して大量のショコラーテを買い込んでいる。


「多恵様…こんなに必要ですか?」

「あっ!私が食べる為じゃないですからね!お城仕えの皆さんにお土産です」

「!」


また目下の者への気遣いに感動する。ふと店の隅で待機するジャンヌ様も温かい視線を送っている。彼女を見つめていたら急に慌て出した彼女は店主に


「こんなに大量に買ってしまったら、他のお客さんが買えないですよね!減らした方が…」

「お嬢さん。大丈夫ですよ!今急ピッチで作っております。ご安心ください」

「よかった…」


また彼女の心遣いに胸が熱くなる。振り返った多恵様はショコラドリンクを飲めるか聞きいてきたので、慌てて店主に頼み席に彼女を案内し向き合って着席する。

口元を緩ませ美味しそうにショコラドリンクを召し上がっている。今彼女に口付けたら甘いだろう。私は彼女の唇に釘付けになっている。今日は私の忍耐を試す日なのかもしれない。

思わず手を握り早く2人っきりになりたいと囁くと、彼女は更に頬を染め芳しい香りを放つ。私の理性はどこまで持つか不安になって来た。


ショコラーテの店を出て海岸を目指す。公爵家の海岸で伴侶候補になりたいと求愛するつもりだ。砂浜に着き彼女を抱き上げると更に軽くなっている。体を壊さないか心配になる。母が病弱だった事もあり彼女の華奢な体が心配だ。用意してあったチェアーに彼女を下ろして求愛する。すると…


「でもキース様は公爵家を継ぐ役目がありますよね。妻を娶り世継ぎが必要なはず。待って…」


またご自分を卑下しまた距離を取ろうとする彼女への想いが爆発して


「多恵様!いい加減怒りますよ!何万回でも言います。私は貴女を以外は要らない!私が不快ならいっそはっきり仰って下さい!諦めますから…」

『しまった!』


彼女は驚いた顔をしていたが申し訳なさそうに


「嫌いな訳無い!私は自己評価が低く自分に自信がないんです。それなのにこんな素敵な男性達に恋われて怖い。フィラとグラント様に心を貰いその上キース様からも受け取ると分不相応でバチが当たりそうで…」


と泣きそうな顔をして俯きそう呟いた。誰が彼女の自信を奪ってしまったのだろう…もしその元凶に会うことがあったら殴ってしまうだろう。それより彼女の今の言葉なら…


「私を嫌いでは無い…」

「はい…」

「ならば…その…」

「はい。好きです」


内なる野獣を放ってしまい彼女に抱き着いた。勢いでチェアーから落ちたが抱きかかえ下が砂浜でだっため彼女に怪我はない。彼女を組み敷いて口付けを求めた。

赤い顔をし頷いてくれ甘い彼女の唇に酔いしれる…



「キース殿…そろそろ…えっ!」


離れた所からジャンヌ様の声がして我にかえる。血相変えて駆け寄るジャンヌ様。状況が分からず彼女の綺麗な瞳を見つめていた。


「まぁ!なんて事を!離れなさい!」

「?」


ジャンヌ様に腕を取られ彼女から離された。

冷静になり彼女を見たら!

砂浜の上で抱き合った為彼女は砂まみれになっていて、ジャンヌ様が必死で砂を払っている。しきりにジャンヌ様に謝る彼女。


「キース殿!このまま公爵家に伺うのは無理です。着替えを購入し湯浴みが必要です!お時間ございません!お急ぎになって!」

「分かった!」


そこから大変だった。彼女は申し訳無さそうに皆に謝罪しジャンヌ様が殺気立ち怖い。後でお叱りを受けるのを覚悟した。


予定よりかなり遅れて屋敷に着いた。

親父殿が探るような視線を送ってくる。無視して彼女をエスコートし屋敷に入る。


『良かった…』

親父殿も母上も多恵様を気に入った様で、娘の様に接し初めは硬い表情をしていた彼女も自然に笑ってくれる様になった。そして帰り間際に親父殿と母に


「急な訪問で慌ただしくてすみませんでした。アルディアに戻って来ましたら、お伺いします」


彼女も両親に良い印象を持ってくれた様だ。

こうして帰城する彼女について王都に向かう。城に着いたのが遅くなったのに誰が待ち構えている。嫌な予感がする…


『やはりか…』


馬車を降りるとグラント殿が待ち構え私に敵意を向ける。私も嫉妬深いが争う気は毛頭無い。が彼の嫉妬心は強くは妖精王フィラにすら敵意を向けるくらいだ。

グラント殿は彼女を部屋に送ると言い、私の腕から彼女を攫おうとした。争う気は無いが今日の相手パートナーは私でまだ終わっていない!珍しく苛立ち敵対する。

揉めながら部屋に送ると待ち構えていたケイティ嬢に、2人共追い帰された。


『はぁ…もう少し一緒に居たかった。仕方ない…王都の屋敷に行くか…』

「キース殿…話がある。私の執務室まで来てくれませんか」

「?」


先程の高圧的な態度と違い紳士な態度で聞いてくる。了承し彼の後をついて行く。


「私は多恵様がモーブルに移られる前に婚約を申込むつもりです。キース殿も婚約した方がいい」

「勿論愛しているから何れ婚約は申込つもりだが…多恵様は責任感強くリリスの役目を終えられないと、(婚約が)負担になってしまう」


するとグラント殿は

「バース領から戻った多恵様はモーブルに移る事に不安を感じ涙される事が多い。モーブルには知り合いが少なく、気を許せる者も居ないはずだ。そこで提案だ!私と貴殿と交代で出来うる限りモービルに会いに行きましょう」


あれだけ敵対していた彼の提案に驚愕し、マジマジと彼の顔を見ていた。私の考えが分かったようで、視線を外し気不味そうに


「本当は恋敵と協力などしたくは無い。しかし不安に感じ涙する多恵様を放っておけない。それにモーブルの男どもが寂しい多恵様に言い寄りそうだ。これ以上恋敵を作りたく無いのだ。婚約者の立場なら面会もし易いでしょう」


彼は自分の信念を曲げてまでも彼女の心を守りたいのだ。少し見直し彼の提案を受け入れた。


そして準備をして期待と不安を胸に彼女の部屋に向かう。城内を歩いていると至る所から視線を感じる。正装し両手いっぱいの花束を持っていて求婚するのが分かるのだろう。

早る気持ちを抑え歩いていると、以前から何度も縁組を申し込まれていた侯爵令嬢に声をかけられる。最低限の挨拶をし立ち去ろうとしたら腕を掴まれた。


「まさか乙女様に求婚されるのですか⁉︎」

「貴女には関係無い話しです」

「私は乙女様召喚されるずっと前からお慕いしていたのです?乙女様には妖精王フィラやグラント様がおいでです。私を見ていただきたい!」


はしたない…良家の令嬢が男性に言いよるなんて!嫌悪感しかない。


「私の心は多恵様にしか向きません。故に貴女に向くことは無い。失礼する」


顔色を無くし俯いた令嬢を一礼し彼女の部屋に急いだ。

部屋に着き入室すると事情を察した彼女は真っ赤な顔をして慌てている。

『あ…可愛すぎる!』


跪き婚約を申込む…受けてくれた!

泣きそうになりながら彼女を抱きしめる。幸せを感じていたら


「何故青い薔薇何ですか?」


花の色を疑問に思った彼女が聞いて来た。

彼女の世界の”さむしんぐほぉー”なるものから選んだと伝えると、瞳を輝かせて喜んでくれた。


こうして私は多恵様の婚約者となった。

嬉し事に彼女は敬称は付けず名を呼び捨てして欲しいと言い、私の事も”キース”と呼んでくれ更に距離が縮まった。



そしてモーブルに移る前日に見送りの為に王都の屋敷に滞在していると、王城から使いのが来て明日の朝、登城する様に連絡が入る。

何だろ?一抹の不安を抱え翌朝登城する。

陛下の執務室に案内されるとグラント殿も居て彼女がらみだと理解すり。暫くすると陛下がお見えになり…


「昨晩の食事の席で多恵殿が“婚約者達との婚姻は明言できない”といっておった。どういう事なのだ!多恵殿との縁はアルディアに安寧をもたらす故に軽視できぬ。どう言う事だ」

「「…」」


グラント殿も私も青天の霹靂で意味が分からない。隣に座るグラント殿も困惑し顔色が悪い。しかし…私には思い当たる節がある。

彼女は謙虚で慎重な性格だ。恐らく確定していない事は明言出来ないのだろう。その旨を陛下にお伝えしようと発言許可を得ようとしたら、彼女が執務室にやって来た。

入室すると私達に気付き驚いている。


陛下は昨晩の婚姻を明言出来ない旨の真意を問う。すると彼女の答えは


「私なりに考え婚姻をお受けしました。しかし未来は決まっていない。不測の事態で元の世界に帰るかもしれないし、病気で皆より先に死んでしまうかもしれない。今の時点で先は誰も知り得ない。それに未来を決められたら苦しくなり、きっと私は逃げたくなる」


返答を聞いた陛下は


「我々が安心したいが為に多恵殿を縛る事は確かに良くない。しかし多恵殿はこの2人を愛して婚約したのだろう⁈」

「えっと…頭が足りない私なりにちゃんと添い遂げる事を視野に入れてお返事しています。だから…その…」


彼女は照れ屋で恐らく”愛してる”と言うのが恥ずかしいのだろう…

“好き”とは言ってくれている。ちゃんと愛はあるはず…

するとグラント殿が彼女の世界では”愛してる”と言う表現はあまり使わず慣れていないといい、”好き”と言う愛情表現は頂いていると助け船を出す。彼女は頬を染め頷く。私も加勢し


「陛下。多恵様は大変奥ゆかしいのです。私も“好き”と言う愛情表現を頂いております。ご安心下さい」


彼女はブロスの実の様に真っ赤な顔をして愛らしい過ぎる。2人きりなら抱き寄せ口付けているだろう。ふと隣のグラント殿を見たら前のめりになり彼女に熱い視線を送っている。この後執務室を退室しモーブルに出発まで2人きりになり彼女の甘い唇を堪能する。


彼女とは一旦別れ部屋に戻った。この後は別れの儀が行われる。時間が来て謁見の間で彼女が来るのを待っていた。すると何も知らない彼女は挨拶するだけだと思っている様でリラックスした様子で謁見の間に現れた。

この部屋にいる貴族には知らされているが彼女に爵位か叙爵される。陛下が他の3国救済の後にアルディアに戻って来てもらう算段をし子爵位と領地、屋敷を用意していた。急な話に眼を白黒させ驚く多恵。

慌てている貴女も愛らしい!

こうしてアルディア貴族にカワハラ子爵が誕生した。


あからさまな囲い込みにモーブル一行が顔を顰める。そしてモーブル代表でシリウス殿が挨拶をするが、好戦的な発言に場の雰囲気が悪くなり彼女が焦り出す。

雰囲気の悪い中別れの儀はイザーク様が進め最後に彼女にひと言を求めた。


『多恵…』


会場の者が彼女の言葉に感涙している。そして思いを伝えるのに必死な彼女は、自分が涙している事に気付いていない。


『!』


するとシリウス殿が愛おしそうに彼女涙を拭い抱きしめた。私は気がつくとシリウス殿の手を掴んでいた。多恵はグラント殿が抱き込んでいる。グラント殿も同じ気持ちだ。


『我が婚約者に触れるな!』


程なく妖精王フィラも来てシリウス殿を牽制する。ショックを隠せないシリウス殿に妖精王フィラが辛辣な言葉を投げかける。グラント殿も私も同じ気持ちだ。

しかし優しい彼女はシリウス殿やモーブルを庇い、我ら婚約者に悋気が過ぎると注意する。本当に彼女は優しい…


そして別れの儀を終え見送る事になった。我ら婚約者は一番最後に挨拶をする。先にグラント殿が彼女に口付け別れをするが…


『やはり…知っていたか…』


彼は瞼、指先、唇の順に口付け愛を囁く。この口付けを許されるのは婚約者と伴侶だけだ。古人の習慣で知るものは少ないと聞く。古き歴史がある家柄の者なら皆知っている。


意味は…

『他の異性からの視線と接触を防ぎ、婚約者(伴侶)意外に愛を囁かない様に』

という古いまじないだ。


彼女は意味が分からず、ただ人前で口付けられて焦っている。無意識に周りの人を魅了する彼女に虫除けもまじないも効かないかもしれないが、それをせずにはいれなかった。

恐らくモーブルでも多くの男に恋われるだろう。私は嫉妬に支配されないか今から不安だ。暫くは騎士団と訓練し心身共に鍛錬が必要になるだろう…



彼女との思い出に浸っていたら休憩地に着いたら、側近のアスランか報告書を渡して来た。滞在中にモーブル貴族の内情を調べさせていた。

彼女が”寂しい”と弱音を吐くのが気になり念の為調べている。


報告書を受け取り読み眉を顰める。不本意だがグラント殿にも話しておく必要がある様だ。アスランを下がらせ1人になり、また多恵のハンカチの香りに酔い彼女に想いを馳せアルディア戻った。


お読みいただき、ありがとうございます。

続きが気になりましたら、ブックマーク登録&評価をよろしくお願いします。


『いいねで応援』もポチしてもらえると嬉しいです。


長かった回想が終わり、次話からモーブルの話に戻ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ