リメイク
キースの訪問でシリウスさんの嫉妬心が強くなり…
「多恵…また来ます。私をいつも感じて欲しい」
「うん。分かったから!皆見てるからそろそろ離して…」
帰るキースを馬車まで見送りに来たが、別れ難いキースが離してくれず抱きつかれて視界ゼロだ。キースの腕の中でもがくが、サイズアップしたキースの筋肉に囲まれ動けない。モーブル側もファーブス公爵家の皆さんも困り出した。
「キース!皆さんを待たせてるよ!」
「本当に後少し…」
「しつこいのは嫌いよ!」
やっと腕を緩めたキースはまた口付けてくる。埒があかなくて背伸びをして両手でキースの頬を包み
「怒るよ!」
真剣に怒った顔をするがなぜか破顔するキース。落ち着いてきたキースに来てくれたお礼を言う。やっとお見送りとなりダラス陛下が挨拶を述べられ、キースは馬車に乗り帰って行った。別れ際にわちゃわちゃしたがやっぱり寂しいなぁ…
見送りが終わり解散となったので、改めて陛下にお礼を言い部屋に戻る。すると今日の護衛騎士のリチャードさんが来てくれた。リチャードさんの手を取ろうとしたら、横から別の手が伸びてきて…
「へ?」
「私が送るからリチャードはいい」
「…畏まりました」
見上げるとシリウスさんで、リチャードさんはすんなり引いた。あれよあれよという間にシリウスさんに腰をホールドされ連行される。見上げたシリウスさんは眉間に皺寄せ険しい表情だ。
道すがら気まずい空気が流れ足取りは重い…
「シリウスさん。グレン殿下はいいんですか?」
「今は地学の勉強中ですので大丈夫です」
「えっと…部屋では無くて中庭に行きたいんですが…」
「畏まりました」
シリウスさんはもう一人騎士さんに何かを指示して、騎士さんは何処かに行ってしまい完全に2人だ。不機嫌?悋気?のシリウスさんと部屋で2人は耐えれそうにないから庭にしたのに早くも2人になっちゃいました。でも何で私がこんなに気を使わないといけなの?ちょっとイラっと来て思わず
「シリウスさん。何が気に食わないのか分かりませんが、機嫌が悪いと怖いからリチャードさんと変わって下さい」
「…いえ…大丈夫です」
『いや!私が大丈夫じゃないよ!』
それ以上シリウスさんは何も言わないから私も放置した。気まずい沈黙の中やっと中庭に着くと、テーブルと椅子がセットとされていて、侍女さんがお茶とお菓子を用意してくれていた。お礼を言って着席すると…
何も言わずに私の背後に立つシリウスさん。これじゃ気が休まらない
「シリウスさん。お時間あるなら一緒にお茶しましょう!」
「いえ、俺は…」
「1人のお茶は美味しくありません。お茶の相手は任務になりませんか?」
一瞬躊躇したシリウスさんだが侍女さんがお茶と入れてくれ対面に座った。
シリウスさんが手を上げると侍女さん達は離れていった。二人きりになったが外だから少しマシ。お茶とフルーツが乗ったタルトを堪能していたらシリウスさんが
「キース殿の腕の中でリラックスしている貴女を見ていたら心の底から嫉妬心が湧きだし、キース殿から貴女を奪い取りたいと思った。そんな事をしたら途端に貴女に嫌われるのに…」
「えっと…嫉妬は分かりましたがその不機嫌を私にぶつけられても…自分の機嫌は自分で何とかするものです。人にとってもらうものでは無いですよ」
「仰るとおりです。やはり俺はまだまだです。しかし知って欲しい。嫉妬に狂うほど貴女を欲している事を…」
「はぁ…でも何で私なんですか?この箱庭には美しく素敵な女性が沢山いるのに」
「多恵様はご自分の魅力を分かっていない…」
「自分では至って平凡で“可もなく不可もなく”て感じで、そんなに熱烈に恋われる人物では無いです。皆さんの瞽ではないかと心配になります」
シリウスさんは溜息を吐いて
「理屈じゃないんですよ人を想う気持ちは…
多恵様はパンがお好きだとお聞きしています。それに明確な理由がありますか?」
「えっと…」
やっと優しいまなざしを向けてくれたシリウスさんは諭す様に話し出す。
「誰かに何かに惹かれるのに明確な理由はなんて無い。心や魂が惹かれるのです。
俺は乙女の召喚の儀で貴女に惹かれた。それからこの世界の女性は貴女しかいない。願うのは貴女が俺の側に居てくれる事だけだ」
「前にも話しましたけど私は一人です。沢山の方の心を受け取れるキャパはない」
「受け取りたいと思ってもらえる男になります!俺とキース殿と何が違うのでしょうか⁈失礼だが容姿や能力が彼に劣っているとは思えない。やはり年上過ぎるのでしょか⁈」
いやいやアラサーのシリウスさんは男盛りで十分すぎるくらい魅力的ですよ。中身おばちゃんの私からしたら十分若いです。でもそんな事言える訳も無く
「相性ですかね…」
「俺たちは合いませんか?」
「シリウスさん。私達まだ知り合って日が浅い。そんな簡単には分かりませんよ。少なくとも婚約した彼らとは数ヶ月共にして為人を知った上でお心をいただきました。その彼らと比べるのは違うかと…」
「今から全力で距離を詰めていきます」
「お手柔らかにお願いします」
やっと眉間の皺が無くなったシリウスさんと雑談をしながらお茶いただきリラックスする。
今ここで言わないけどモーブルで伴侶を選ぶ気はありません。もし私の子が必要ならキースかグラントのとの間に儲けた子を養子出せばいいと思っている。彼ら婚約者は嫉妬深い上に恐らく絶倫だ。そんな彼らの相手でいっぱいいっぱい!これ以上増やせは確実に死に急ぐ。
そんな事を考えながら正面に座るお美しいシリウスさんを眺めていた。彼のストレートの黒髪は萌えポイント高しで鑑賞するには最高なんだよね…
リリスの箱庭男性は素敵な人が多すぎる。もしかしてこの美形集団はリリスの趣味なのだろうか?そんなつまらない事を考えていたら…
「多恵様?」
小鳥の囀の様な綺麗な声で誰かに話しかけられ振り返ると王妃様がいて驚く。シリウスさんと私は慌てて立ち上げりご挨拶と礼をすると、王妃様は空いている席に座り手で着席を促す。流石に騎士のシリウスさんが同席する訳にいかず立ち私の後ろに控えた。
「アルディアのファーブス公爵のご子息をお見送りされたそうね。ちらっと拝見しましたけど素敵なお方ね。確か多恵様の3番目に婚約者だとか…」
「えっと…婚約はしていますが、彼らに順番はありません。皆さん同じくらい大切です」
「まぁ!ごめんなさい失言でしたわ。シリウスも頑張らないと婚約者になれなくてよ」
なんか言葉に感情か無いなぁ…やっぱり嫌われている?でも頑張って話しかけ
「王妃様はお散歩ですか?今日は天気がいいですからね」
「・・・」
『返答がない…それに意味ありげに見ないで欲しい。気まずいよ』
王妃は微笑むだけで何も言ってくれない。どおすんのこの空気!気が回る方じゃないのよ私…
やっと王妃様は口を開き
「聞いておいでですか?近々舞踏会では無くお茶会が催されるのを」
「そうなんですか?それって私が舞踏会が嫌だって言ったから?」
「恐らくそうでしょうね。陛下は多恵様を一番大切に想ってらっしゃるから」
「・・・」
なんか棘がある…こういう場合どうすればいいの?
「女神の乙女のお勤めをしっかして、皆さんの期待に応えないといけませんね」
一生懸命王妃様に陛下の配慮は“乙女の為”だと強調して話す。決して私が横恋慕している訳はありませんよ!と一生懸命アピールする。
失笑気味のお王妃様は立ち上げり、形式的な挨拶をして立ち去って行った。
思わずシリウスさんに
「王妃様!意味不明なんですけど!」
「困りましたね。俺にも分かりません。陛下に今日の事は報告しておきます」
美味しかったお茶も微妙になり、シリウスさんはグレン殿下の勉強が終わるので殿下の元に向かい、いつの間にか来ていたリチャードと部屋に戻った。
そして夜部屋に宰相様がお茶会の説明にやって来た。どうやら王妃様が言った様に私が舞踏会…もといダンスが嫌だと主張した事により、陛下の鶴の一声でお茶会になったそうだ。貴族からはクレームが来たようだが陛下が抑え込んだ。
ダンスなら周りから邪魔されずに二人きりで話す事が出来るから、私に近づきたい貴族には絶好のチャンス。もし私が気に入れば後日逢引きの機会を得れて伴侶候補へとつながる。
しかし私は全く面識のない人とのダンスは正直嫌だ。親しくも無い人と密着とか考えられない。元々スキンシップが苦手な私だから尚更イヤ。宰相様曰くお茶会は3日後でモーブル中の貴族と豪商が揃う。
その際にエスコートするパートナーを決めないといけないらしい。
「シリウスでよろしいでしょうか?」
「あの…モーブル貴族社会ではこのような催しでエスコートする事に意味を持ちますか?」
「?」
宰相様はキョトンとしている。アルディアではエスコートで”すったもんだ”があったから初めに確認しておかないと!同じ轍は踏まないぞ!
「建国祭の舞踏会のパートナーには意味がありますが、それ以外には意味は持ちませんからご安心を。シリウスがお嫌なら他の者を…」
他の者って面識薄だからそれもちょっと…
「パートナー(エスコート)なしは駄目?」
宰相様は眉間に皺を寄せた。『あ…ダメなのね』了解。揉め事は回避します。
「シリウスさんがお嫌でなければ」
やっと表情を明るくさせて宰相様は当日の説明をして退室していった。
ソファーで放心状態でいたらまた誰か来た。モリーナさんがゴードンさんが来ていると言い面会をどうするか聞いてくる。
短い時間ならと答え入ってもらう。
もう夜なのに元気いっぱいのゴードンさん。こんな遅くに何の用?
「お茶会用のドレス作成の許可を頂きに参りました。間に合わすには明日朝から取り掛からないといけませんので!」
「沢山用意いただいてますから必要ありませんよ」
「しかしそのドレスの大半は夜会用です。ディドレスは少ないのです。是非作成許可を!」
「前にも言いましたよね!“もう作らないで”って」
疲れていてちょっと語彙が強くなってしまったけど、この手の押しが強いタイプははっきりと言わないと分かってもらえない。
するとゴードンさんは持って来たデッサン帳を開きデザインを見せくれる。悔しいどのデザインも私好みで思わず“作って”っていいそうになった。
「お茶会に催されるとお聞きしてからデザインが溢れ出て止まりません!1枚でいいので作らせて下さい。今回はちゃんと貴女にお伺いをしましたよ俺!」
「これ以上作ったら陛下に叱られますよ!」
「陛下からは許可は得ています!」
「私にかかる費用はモーブル国民の血税です。無駄遣いしないで下さい!私が心苦しくなるんです!」
「血税…」
急にテンションを下げ黙ったゴードンさん。無駄遣いは絶対ダメ!元の世界の私は生活がギリギリで節約していた。無駄遣いはいずれ自分の首を絞める事になる。何でも初めが肝心だ!アルディアでもその精神で身の回りの品は極力増やさない様にルーク陛下とイザーク様にお願いしてあり、衣装もここの半分以下で、アレンジして着まわしていた。結構考えてます私!
「どうしても作りたいなら、今あるドレスをリメイクしてください。でしたら許可します」
「リメイク?」
『あれ?リメイクの概念が箱庭には無いのかぃ?』
ゴードンさんもモリーナさんもキョトンだ。折角だからリメイクを広めよう!
美しい顔が更に輝き話に聞き入るゴードンさんに
「資源は無限にある訳じゃない。使えるものは再利用して自然を大切にしないと」
“ダッ!”
「うわぁ!」
凄い勢いで立ちあり駆け寄ったゴードンさんに抱き付けれた!モリーナさんが悲鳴を上げ外からリチャードさんと今日の護衛騎士のライさんが部屋に飛び込んできた。ゴードンさんはライさんに首根っこを掴まれ、私はリチャードさんに抱きかかえられた。
険しい顔をしたライさんに部屋の外に追い出されそうなゴードンさんを呼び止めた。そしていきなり抱き付かないと約束してもらっい部屋に戻ってもらう。その後、いつもは部屋の外の騎士さんもさっきの事があり扉内でゴードンさんに厳しい視線を送っている。
ソファーでデザイン帳を見ながら好きなデザインを選び、ゴードンさんと一緒に衣裳室に行き選んだデザインと近いドレスを探す。
「このドレスが色合いやシルエットが似ていますね…これはリメイク出来そうですか?」
「はい。やってみます!」
ドレスをトルソーに着せてゴードンさんは腕組みをして考え、既成のドレスを見て触り新しいデザインのページにメモをとっていきます。流石デザイナーだ!リメイクの要領が分かったようで、表情を明るくして作業を進める。一頻りデザイン画に書き込んだゴードンさんは私の前に来て跪いて手を取り
「これが異界の知識なのですね。感激しました、また何か有ればご教授いただきたい」
「ドレスのリメイクが出来ればサイズが変わってしまい着れなくなってしまったドレスがまた着用できるようになったり、子供や孫に作り直してあげれます。私の国では1枚の衣類(着物)を仕立て直し、子や孫が着たりしますよ。親が着た思い出の衣服を着れるなんて素敵だと思いませんか⁈」
モリーナさんが感動して話を聞いている。そして彼女は後日に祖母様のドレスのリメイクをゴードンさん依頼をしていた。
こうやってリサイクルやリメイクが進めば結果リリスや妖精そして妖精王であるフィラの負担軽減に繋がるだろう。
話を終えたゴードンさんが帰り、ソファーに深く座り両手を挙げ伸びをし”私ナイス!”と心中で自画自賛する。
こうしてゴードンさんとの未解決の問題も解決してスッキリし、てん君を抱きしめてベッドに入り長かった1日を終えた。
お読みいただき、ありがとうございます。
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