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九九

やっと城内ツアーに出かけます。

「モーブル城はアルディア城とあまり変わりありません」

「書物庫はありますか?」

「多恵様は本が好きなんですね」

「はい。暇つぶしには最適です」

『本当はスマホが一番暇つぶしになるんだけど…』


主だった施設を見て周り最後に中庭を案内してくれた。『あれ?誰か居る』


エスコートしていたシリウスさんがいきなり


「多恵様に失礼。バートン頼む!」


池の淵に立つ人物に駆け寄るシリウスさん。

あれ?子供?


「殿下!今の時間は数の授業のはず!また抜けて来たのですか!」

「数の勉強など意味が分からない。文官が計算するし、読み取り表が有れば計算など必要ないだろう!」


近くまで来てグレン殿下だとわかる。

間近に来てお辞儀して挨拶する。


「グレン殿下。こんにちは。いい天気ですね」


私の存在に気付いた殿下は驚いてシリウスさんの後ろに隠れた。


「シリウス!何故乙女様がいるんだ!」

「多恵様に城内を案内しております。それより早く授業にお戻りを!」

「数の勉強はつまらないから嫌だ!」


言い合う二人を見ていて、学校入りたての雪を思い出した。雪は『将来美容師になりたいから勉強はしなくていい』と訳のわからん持論で勉強を嫌がった時期があった。

小さい頃にみんな通る”勉強の意味”だ。

懐かしく思いながらグレン殿下を見ていた。


あの位の子はきっかけが有れば勉強も好きになるし、順序立てて説明したらちゃんと理解できる。頭ごなしに勉強しろって言っても響かない。


「殿下は数の勉強は嫌いですか?」

「え?」


私の問い掛けに驚くグレン殿下。顔を真っ赤にして頷く。この感じは周りが勉強しろしか言って無いなぁ…

グレン殿下の前に屈み目線を合わせて質問する。


「何故嫌いなんですか?」

「何故って私は王子だから、家臣が計算して教えてくれたらいいんだ」

「人に計算してもらったら、その数がどの位か理解できないですよね?」


私の言っている事が理解出来ない殿下は小首を傾げて私を見てる。例えてあげないで分からない様だ。


「では質問しますね。9人の騎士へ褒美に金貨を3枚与えます金貨は何枚要りますか?」

「沢山用意したらいい」

「その金貨は国のお金ですよ。間違ったら平民の納めたお金を無駄にしますよ」

「そんなの文官が…」

「どの位金貨を使うか分かってなかったら、金貨はあっという間に無くなりますよ」

「…そんなまた平民から…」

「何の落ち度のない平民は殿下の間違いの為に、また納税するのですか?」

「…」


この後正確な数を知るために計算が如何に必要なのかを説明した。気不味そうに聞いていたグレン殿下はその内真剣な顔をして私の話を聞く。


「さっきの答えは27枚です」

「乙女様は紙もペンも無いにどうやって計算されたのですか?3を9回足したのですか?」

「九九を用いれば簡単に…」

「「「くく?」」」


あれこの世界に四則演算は無いのかぃ?

シリウスさんに聞いたら計算に特化した文官がいるのと、日常よく使う計算は読み取り表で数を知るらしい。九九を覚えたら簡単なのに…


驚いた顔をしたシリウスさんとバートンさんも食い気味に九九を聞いてくる。一の段から九九をリズミカルに言っていくと…


「計算室の文官がより計算が早い!多恵様の世界では普通なのですか?」

「はい。丁度グレン殿下の歳くらいに身分関係なく全ての子供が習います」


グレン殿下は九九に興味が出た様で、さっきの計算を説明した。意味が分かったグレン殿下は瞳を輝かせ九九を教えて欲しいと言ってきた。私の一存では…するとシリウスさんが


「多恵様が宜しければ是非ご教授いただきたい。ちゃんと陛下に許可はいただきますので!」

「乙女様!私も習いたい!数の勉強が必要なのが分かりました。ちゃんと学びます!」


シリウスさんとグレン殿下に言い寄られ苦笑いする。ふとグレン殿下が持つ筆記具が目に入り、殿下の気分転換になればと…


「グレン殿下。紙を1枚わけていただけませんか⁈」

「いいぞ」


お礼を言い平たい場所を探し東屋にあるテーブルに行きある物を作る。

良かった!作り方覚えていたよ!

出来上がった物を持ってグレン殿下の元に行き思いっきり飛ばす。


「わぁ!乙女様何ですかそれは⁉︎鳥の様に飛んだ」

「私の世界で紙で作る遊び道具です。紙ひこうきっていいます」

「カミヒコウキ?」


グレン殿下は嬉しそうに地面に落ちた紙ひこうきを拾い戻ってくる。まるでボール遊びする犬みたいでかわいい。


やりたそうな殿下を手招きし、飛ばし方を教えてあげた。殿下は飛ばしてみるが、力んでいてすぐ落下した。私が後ろから手を添えてあげ飛ばすと3m程飛び、グレン殿下は大喜びしている。

勉強を頑張る殿下の息抜き位にはなるかなぁ⁈殊の外喜んだ殿下を見て木版タブレットで他の紙ひこうきの作り方を調べてみようと思った。


こうしている間に文官さんと護衛騎士さんがグレン殿下を捜しに来て、殿下は勉強に戻られた。後日、陛下から正式に九九をグレン殿下とまずは計算室の文官さんに教えて欲しいと依頼された。大した知識ではないから私でも教えれそうだ。


ツアーを終えて部屋に戻る道すがら、貴族令嬢達と遭遇する。やっぱり令嬢は美人が多く、自分の平凡さを痛感する。

令嬢達は廊下の端に寄りカーテシーをして挨拶してくれる。軽くお辞儀をして横を通り過ぎようとしたら


「やっぱりシリウス様には不釣り合いだわ…」


あっどこでも陰口はあるなぁ…位には思っていたら、シリウスさんが踵を返し令嬢の元に歩いて行き


「あのお方は”女神の乙女”様だ。知った上か?」

「いえ…あの…」


口籠る令嬢。自分の発言には責任を持とうね!シリウスさんを引っ張り”気にしない”と言い部屋に戻ろうと促す。

令嬢達は慌ててその場を去った。


気にしてたらリリスの仕事は完遂出来ない。

シリウスさんが帰った後にバートンさんが教えてくれたけど、シリウスさんはモーブルの令嬢の憧れらしく慕う令嬢が多いらしい。

普段から女性を相手にしないシリウスさんが溺愛?する私は嫉妬対象になっている様だ。

暫くは仕方ないよね…


色々あったけど今日も無事に終わり、就寝準備をしベッドに寝転がりながら木版タブレットで紙ひこうきの作り方を調べている。

また暫くモーブルに慣れるまで木版タブレットを使う事が増えそうだ。


てん君が私の背中に乗っていて温かい。

『たえ すこし なれた?』

『ちょっとずつね』

『つかれた てん いう』

『ありがとうね。まだ大丈夫』

『しりうす びみょう』

『そうなの?』

『だらす いい やつ』

『てってん君?』


急に陛下推しに焦っていると、てん君は背中から下りて枕を前足で叩く。あー寝たいのね!私も木版タブレットをなおして就寝するけど、てん君の発言が気になりなかなか寝付けなかった。長い夜になりそう…

お読みいただき、ありがとうございます。

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