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新任

まだまだモーブルに慣れず疲れが蓄積していき…

「多恵様。明日から貴族が登城します。きっと面会を求める者が続出すると思われます。しかし近い内に舞踏会がありますので、挨拶にお答えになる必要はごさいません。申出が有っても私共が対応しますのでご心配なく」

「えっ!舞踏会あるんですか⁈嫌だなぁ…」


出来るだけダンスは遠慮したい…。ふとアルディアでの事を思い出した。


「お茶会とかでは駄目?」

「お茶会ですか?」

「はい。顔合わせならお茶会でもいいのでは?また私の伴侶候補を選びたい様だけど正直そんな気無いの。そんな事に時間を割くよりモーブルの事学びたいし」


アイリスさんは目を見開きフリーズしている?そんな非常識な事言ったかなぁ⁈

すると頬を染めたアイリスさんは私の手を取り


「分かりました!宰相様を通して陛下に多恵様のお気持ちをお伝えいたしますわ。お任せて下さい!」

「あっはい」


こうして鼻息荒いアイリスさんに一抹の不安を感じつつ、就寝準備をして寝室に行きベッドに潜り込みてん君を呼ぶ。


『たえ 疲れてる』

『てん君…頑張ったから癒やして』

『たえ がんばった』


てん君は労わるように私の頭に前足を乗せパシパシ叩く。てん君のもふもふは最高の癒しだ…


『アイリス たえ すき』

『だといいねー折角だから仲良くしたい』

『…アイリス すき すこしちがう』

『どう言う意味?』

『てんには むずかしい』


てん君の発言が気になったが、疲労困憊で考えるのをやめて寝る事にした。



朝…自然に目が覚めると胸元に水色のもふもふんの塊があって背中は固いが温かい。この状況は慣れたから見なくても分かる。 


「フィラおはよう」

「疲れているようだな。中々起きないから、そろそろ起こそうと…」

「ちょっ!朝からさからないで!」


フィラは私の髪をかき上げ首に口付け腰を引き寄せ密着する。


『フィラ やめないと かむ』

『朝の挨拶だろう!』

『たえ いや ぜんぶ だめ』


“ちっ”舌打ちしたフィラの腕が緩み解放された。


「どうやらモーブルでも多恵を囲む為に、伴侶を充てがうつもりだな」

「みたい…これ以上婚約者が増えたら私多分死ぬよ」

「我慢ならん時は俺に言え」

「どうしても無理な時は相談するね」


フィラは私の腕を引き頬を両手で包み優しい口付けをくれる。朝からほわほわして来て、この時間が続けばいいのにと思っていたら…


“ドンドン”


寝室の扉を誰から叩きびっくりして思わずフィラに抱きつく


「失礼します!多恵様。話し声が聞こえますが、誰かいるのでしょうか⁉︎お身の安全確認の為、入室する事をお許し下さい!」

「えっ!」


アイリスさんが話し声に気付き入って来ようとしている。


「フィラ帰って!話しがややこしくなるから!」

婚約者フィアンセだからいいだろう。疚しい事をしている訳でもないし」

「じゃ!取りあえずベッドから出て!」


慌ててフィラを押すと嫌そうな顔をしながらも出て、ベッドサイドに腰掛けたタイミングでアイリスさんとリチャードさんが入って来た。


「「!!」」


入室後、すぐフィラに気付いた二人は礼をして恭しくフィラに挨拶する。


「ごめんなさい心配させて…多分毎朝フィラが来ると思うから気にしないでね」


リチャードさんは頬を染め気まずそうにしている。方やアイリスさんは無表情でフィラをみて…


「陛下。恐れながら婚約者とはいえ早朝から女性の寝室に赴くのはお止め下さい。まだお2人は婚姻しておられません」

「俺は夜来てもいいんだが、多恵が朝がいいと言うか…」

「ストップ!もうそれ以上言わないの!」

「アイリスさんの言いたい事は分かりました。でも疚しい事は無いの。まだモーブルに慣れない私の為に来てくれているの。だから話し声がしてもフィラだと思ってくれていいから。気にしないで」


納得していないアイリスさんをリチャードさんが宥め二人は一旦退室していった。

眉間の皺を深めたフィラは


「あの侍女…替えてもらえ」

「何で?悪い人では無いよ」

「あの女この先絶対やらかすぞ」


フィラのいう事の意味が分からず困惑しているとフィラが


「あと、モーブルの貴族はアルディアの貴族より押しが強い。気を許すな」

「分かった…明日も来る?」

「来て欲しいか?」

「うっうん?」


すると噛みつく様な口付けをされベッドに押し倒される。『もー朝から止めて!!』


『ヴー』


てん君が唸り声をあげるとフィラは離れた。どうやらてん君が噛むとかなり痛いようだ。

こうしてバタバタしたがフィラが帰った。ベッドから出て居間にいくと専属侍女のフィナさんがいてお手本の様な綺麗な礼をして挨拶してくれる。どうやら交代の様だ。

フィナさんはアイリスさんと違い侍女服を着ている。アイリスさんにお疲れ様を言って、フィナさんにお願いしますを言う。そして身支度をしている間に朝食が用意されていた。相変わらず私の好きなものが並び苦笑してしまう。食後は騎士さんの交代時間の様で新任の専属聖騎士さんがお見えになった。

2人目の専属騎士はバートンさんで薄水色のつり目気味な塩顔イケメンの細マッチョさん。やはりモーブルも美男美女しか生存できない様だ。


「お初にお目にかかります。この度”女神の乙女”であらせられる多恵様の専属騎士に命ぜられ僥倖でございます。貴女様のお心に添うようお仕えさせていただきます」

「ご丁寧なご挨拶ありがとうございます。お聞きだと思いますが畏まられるのは慣れていないので、普通に接していただきたいです」

「貴女様の仰せのままに」


後でシリウスさんから聞いたが、バートンさんは貴族派であわよくば私の伴侶候補になりたいそうだ。『ご遠慮したい…』

そして初めに就てくれたリチャードさんは中立派だ。『うーん無害っぽい』

明日最後の一人が分かる。話の流れから王家派の聖騎士さんが付くのだろう。あまり権力闘争に巻き込まないで欲しいなぁ…


挨拶が終わるとフィナさんが今日の予定を教えてくれる。3刻半から港の責任者と面会できるそうだ。入国管理について話を聞こう。そして午後から城内の見学ツアーに出掛けます。暫く住むから早く城内を覚えないとね!


時間になり部屋を出て応接室に向かう。バートンさんのエスコートで城内を歩いていると、アイリスさんに聞いていた通り其処彼処に貴族様がいて挨拶される。

バートンさんが対応してくれ、応接室に急ぐが偉そうな貴族様が…


「バートン。我々は多恵様とお近づきになりたいのは其方は良く知っている筈だ。橋渡しくらいせぬか!」

「申し訳ありません。多恵様はこの後に予定がございまして…」


ひつこく言い寄るのはキーモス侯爵様で、バートンさんより上位貴族で偉そうだ。権力に翳す人は好きくないなぁ…

するとバートンさんが私を見て申し訳無さそうに…


「多恵様。お時間は取りませんので、挨拶だけお受けいただけませんか⁈」

「えっと…」

「必要ございません!」

「へ?」


振り返るとアラン騎士団長が仁王立ちしている。するとキーモス侯爵様はアラン騎士団長に喰ってかかり


「同朋なら協力なされよ!」

「ふっ…」


アラン騎士団長は私の前に立ちキーモス侯爵様に向かって


「我ら聖騎士は王族を護るのが務めです。今は任務中で己の主義主張は持ち合わせておりません。然るべき場でご挨拶願いたい」

「つっ!」


キーモス侯爵様は舌打ちをして去って行った。振り返ったアラン騎士団長は騎士の礼をとり謝罪される。


「陛下より正式な場以外の貴族からの挨拶は断る様に命ぜられております。バートンは指導が必要な様です。この様な事が無きようにいたします故、お許しを…」

「あっ大丈夫なので気にしないで下さい」

「多恵様はお優しい…。バートン!任務中は多恵様が優先だ。しっかりしろ!」


アラン騎士団長様の登場で無事に押しの強い貴族の挨拶を断る事が出来た。この後アラン騎士団長がそのまま応接室までエスコートしてくれた。言い寄る貴族をあしらっていくアラン団長を感心して見上げていたら、美しい微笑みをいただき焦った。

アラン騎士団長はアラサーで男の色気が半端ない。アルディアで言うならグレイブ様みたいに凛々しく渋いイケメンだ。


アルディアでも騎士さん達にいっぱい助けてもらい心強かった。アラン騎士団長みたいな騎士さんなら頼れそうだ。

少しテンションが上がり港を責任者との面会に挑む。

お読みいただきありがとうございます。

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