理解不能
やっぱり色々ありそうなモーブル。ダラス陛下と王妃様は倦怠期か?
「気にするなって言っても、明らかに私が原因じゃないですか!」
陛下の話を聞くと思いっきり私が召喚された事で、貴族と王家の均衡が崩れている。
貴族派は第2王子フィル殿下を、王家派は第1王子のグレン殿下を王太子に望んでいる。
「あれ?普通長子が継ぐんじゃ無いんですか?」
「モーブルでは代々王が王太子を選ぶ。歴代の王太子は長子とは限らん。前王は第3王子だった。貴族派はグレンの眼病の再発及びグレンが子を儲けた時に、その子に遺伝する事を危惧しているのと…」
ダラス陛下は口籠もり眉間に皺を寄せている
「あの…私が”女神の乙女”だからって全て話す必要は無いんです。どこでも一つや二つ人に言えない話はあります」
「貴女は優しいなぁ…そういう所も好ましい」
眉尻を下げて微笑むダラス陛下。気を利かせ話題を変えようとしたら、巨大爆弾が投下され!
「グレンは私に似ていない」
「!」
「日に日にグリードに似て来る。しかしグレンは私の子だ」
「あっはい。私もそう思っています」
「モーブルは箱庭の3国の中でも歴史が一番古く、保守的で王家が絶対なのだ。私の側近はグレンを私の子と認めてくれているが、他の貴族どもはフィルが直系の子として認識しフィルを次期王に望んでいる。
既に貴女が来る前から対立していたのだ。
そして貴女がアルディアで王族を選ばず貴族の子息と婚約したことから貴族派は貴女と貴族の子息が婚姻し、子が出来ればフィルの妃か側近にと考えている」
だから聖騎士団長が縁組をにおわす話をしたんだ。って言うかこれ以上夫を増やす気は何だけどね…今は言わない方がいいかもしれない。
「私がアルディアから帰り話が更に複雑になった。私が貴女を気に入った事で王家派の一部で貴女を側室に望む者が出てきて、王妃の側近達と険悪になっている。
その上王妃は体調不良を理由に離縁し実家の公爵家の領地に籠りたいと言い出した。そして私に貴女を正妻に娶るようにと…」
「はぁ⁈」
「王妃は元々グレンの眼病が治り世継ぎを産み役目を終えたと考えた。そして後添えに国の為に私と貴女の縁を願い離縁を申し出たのだ。初めはグリードとの縁を願ったのだと思っておったが、そうでは無い様で何度も時間を作り話し合っても王妃の本心が分からん。私としてはフィルもまだ母親が必要だし、政略結婚だが私なりに王妃に気持ちはある。きちんと向かい合い話をしたいのだが、最近の王妃は公務の時にしか会おうとしない」
「陛下…倦怠期ですね。ちゃんと王妃様を愛し大切にしてますか?」
「伴侶としての務めはしているぞ。しかしフィルが生まれたから夜も共にしていないが」
いや…夫婦の夜事情は言わなくていいから!バスグルの密入国以外にも国内にも問題がありそうだ。王妃様が何を思い考えているのか分からないと解決の糸口も分からない。やっぱり一度お茶会に出る必要がありそうだ。
そしてやっぱりモーブルでも私の伴侶選びはあるようだ。シリウスさんだけでも相手が大変なのにこれ以上、新たな刺客(伴侶候補)はご遠慮したい。目の前のダラス陛下も意味不明で乙女ゲーの隠しキャラ状態だし…
ふとダラス陛下と目が合うと蕩ける様な微笑みを頂く。そして
「やっぱりシリウスでは無く私にしなさい」
「はぁ~陛下の冗談は真意が分からないから疲れます」
「私は初めから貴女に本心しか言っていない」
「これ以上伴侶候補も婚約者もご遠慮したいんですが」
するとダラス陛下は座り直し、真面目な顔をして
「それは承知できんな。アルディアのルーク殿が爵位と領地を与えた様に、国としては貴女を繫ぎ止めたいのだ。その手段として婚姻は一番確実で有効な手段。最良は私の妻になる事だが、この国の者が相手ならばそれでもいいと思っておる」
「ダラス陛下!最優先の問題はバスグルとの労働協定ですよね。アルディアでもそうでしたが、本来の目的を間違わないで頂きたいです」
文句を言ったのに何故そんな温かい目をしてるんですか?もう疲れて来て今日は閉店してこの話は後日に仕切り直そうと退席を願う。すると何故か陛下が席を立ち私の横に来て手を取った。
「へ?陛下はお忙しいでしょう⁉︎騎士様がいらっしゃるので大丈夫です」
「私が送りたいのだ。さぁ行こう」
「あーお…お願いします」
『NO!と言えない日本人!』機嫌良くエスコートする陛下に嫌って言える度胸は持ち合わせていない!
隣を歩く陛下を見上げるとやっぱりイケおじだ。確かお年は32歳で男盛り!ルーク陛下はアラフィフでお父さんって感じで父性が溢れていた。両陛下に共通しているのは国王だけあり包容力が半端ない。比べたらきっと怒られるけと、グラントやキースに比べると安心感が違う。
目が合うと…
「惚れたか?」
「無いです」
「私は貴女が可愛くて仕方ない。早く私の所に落ちておいで」
「早く陛下の冗談に慣れるように頑張ります」
「手強いなぁ」
やっと部屋の扉が見えて来た。陛下は部屋には入らず扉前でハグをして頬に口付ける。
「あっ!」
「ん?別れ難いか?」
「違います!レックス団長にお聞きし海の玄関になるモーブルの港を見に行きたいんです。許可いただけますか?」
「来たばかりなのに真面目だなぁ。港は国が所有している。明日にでも責任者との面会をセッティングしよう」
「ありがとうございます。では!おやすみなさい」
礼をしたらダラス陛下に抱きしめられた。陛下は国王なのにがっしりしていて、鍛えているのが分かる。そして温かくいい匂いがする。
「陛下…離して下さい」
「あまりしつこいと嫌われるな。ではおやすみ」
腕を解いた陛下は帰って行った。気配に気付いたアイリスさんが部屋から出てきて私の顔を見て大きなため息を吐く。
またアイリスさんの反応が分からない!とりあえずリチャードさんにお礼を言うと何故か赤面するリチャードさん。アイリスさんに手を引かれ部屋には入ると、冷たい果実水と冷やしたタオルを渡される。
「アイリスさん…なんでタオル?」
「ご覧になってください」
手鏡を渡されて見たら!顔が真っ赤な上に目が潤んでいる!まるで恋する乙女だ。
これじゃまるで陛下に恋してるみたいじゃん!
「違うし!」
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