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爵位

別れの儀が終わればモーブルに出発します

「さぁ!行きましょう」

アーサー殿下のエスコートで謁見の間に入る。既に皆さんお揃いで上座には陛下と王妃様。そこから1段下がり王子がいて、陛下の正面にモーブルのシリウスさんが立っている。

私に気付いたシリウスさんは静かに微笑み熱い眼差しを送ってくる。『うっ!眩しい!マリカさんがここにいたら卒倒するだろうな…』

それにしてもシリウスさんひと回り大きくなった⁈決して太った訳では無く鍛え上げたって感じだ。

いつもと違い私よりキレイな黒髪を後ろで一つにまとめ聖騎士の隊服がとても似合っていて乙女ゲーの攻略対象のスチールの様だ。

ぼーっとシリウスさんを見ていたらシリウスさんの隣にエスコートされ、ここでアーサー殿下が手を離し頬に口付けをしてご自分の位置に戻る。

宰相のイザーク様が別れの儀を宣言し皆一斉に陛下に礼をする。段取りを聞いていない私は慌ててカーテシーをした。

『だから段取りを教えておいてよ!』

礼から直ると陛下が挨拶をされ赤面するくらい私を褒め称えるから恥ずかしくて俯いたしまう。


「アルディアは多恵嬢の功績に対し爵位を与える」

「へ?」

「多恵様、爵位授与の為に陛下の前へ」

「すみません。聞いてません!恐れ多くて辞退し…」


辞退を申し出ようとしたらいつの間にか目の前に来ていたヒューイ殿下に手を取られ陛下の前に誘導される。小声で


「ヒューイ殿下!聞いてませんし、爵位をいただく程の働きはしていません。お世話になってばかりで生活費を払わないといけないのに!辞退は…」

「無しです。やはり予測していた反応ですね。兄上アーサーが事前に伝えると辞退すると言うので内密に用意していました」

「私ハメられている⁈」

「・・・」


ヒューイ殿下は微笑み応えてくれない。出来レースで断れない状況になっていて陛下の前に来るとヒューイ殿下が所作を横で教えてくれる。

跪いて右手を左胸に当て。少し屈む。すると陛下は剣を抜いて刃先と反対側を私の肩にあて宣言する。


「タエ・カワハラ嬢に子爵位を授ける。褒美としてアルディア王都東のマーラ地区をカワハラ領と制定し屋敷を建て与える」

「へ?」


思わず顔を上げるとヒューイ殿下が小声で


「まだ顔を上げないで下さい!」

「ごめんなさい」


すると陛下が

「女神リリスの役目を終えられてらアルディアの領地に戻って来られるといい。待っておるぞ」


謁見の間に大きな拍手がなり耳が痛い。何これ?

完全に囲い込まれた!意外に腹黒いぞ陛下!モーブル勢なんて顔を顰めている。そりゃそうだろう。目の前で女神の乙女が囲い込まれているんだから。将来はまだ分からないってあれだけ言っていたのに…思わず冷ややかな視線を陛下に送ると気まずそうに目線を外す陛下。やっぱり疚しい事あるんじゃん!

予想外の爵位授与が終わりシリウスさんの隣にまた戻ると


「大丈夫ですか?困った時は頼って下さい」と気遣ってくれるシリウスさん。

「ありがとうございます。予想外の事が多すぎて今は気持ちの整理がつかない」


次に苦笑したシリウスさんがモーブル代表として陛下に挨拶をされる。難しい言葉を並べるが要約すると

“モーブルで乙女が困らない様にお世話をするから心配ない。だから余計な干渉は無用だ”と案外挑発的で陛下が眉を顰める。

シリウスさんと陛下と交互に見てひとり慌てていると私を見てウィンクするシリウスさん。それは心配するなって事?

儀式もそろそろ終わるようだ。また何か有ったら嫌だから終わって欲しい。するとイザーク様が私に一言を求めて来た。ここで発言するなんて聞いて無いから全く考えていなくて大いに焦る。すると陛下が


「気負わなくていい。普段の貴女の言葉で聞かせて欲しい」


そう言われ少しリラックスして皆さんにお礼を述べる。


「アルディアの皆さんにお礼を…正直知らない世界は不安しかなく毎晩元の世界の夢を見ていました。しかし皆さんは親切に接してくれ、いつしか居心地のいい家みたいに感じる様になりました。私が来たことで他国から問題を持ち込まれ迷惑をおかけしたのに、皆さん私の身を一番に心配してくれ感謝しながらも申し訳なくて…えっと…話がまとまらないけどアルディアの皆さんが大好きです。役目を終えて帰ってきたらアルディア色んな領地に行ってみたいです。他の国に行っても私の事忘れないでいてくれると嬉しいな…」


纏まらないお礼を伝えていたらハンカチを出す人が増えて来た。そんな感動する話を私しているだろうか⁈すると隣にいるシリウスさんが


「失礼」といきなり私の頬に手を当てた。

「へ?」意味が分からず見上げたら慈愛に満ちた視線を送られハンカチで目元を拭われる。

どうやら私号泣しているみたい。想いを伝えるので必死で泣いてるなんて気づかなかった。


「シリウスさん…ごめんなさい。泣くつもりなくてですね…わぁ!」


そうシリウスさんに抱きしめられた。


「アルディアの方々に嫉妬します。それ以上に多恵様が穏やかにお過ごしになれる環境をお与えになったアルディアの皆さんに感謝を。ご心配なくモーブルでも多恵様が穏やかに過ごせる様に国あげて尽力する事をここに誓います」

「シリウス殿。その言葉をしっかり守ってくれ。多恵殿が泣くことがあれば、騎士団を向かわせ多恵殿を迎えに行くぞ」

「はい。お任せを…」

「陛下もシリウスさんも物騒な話はやめて下さい。リリスはこの箱庭の安寧を望んでるんですよ。私の事で揉めるのは嫌です」

「そうであったな。リリスは揉め事を望まん。シリウス殿。ダラス陛下にアルディアは今後も友好を望むと伝えてくれ」

「御意」


シリウスさんが更に強く抱きしめられ、シリウスさんのオリエンタルな香りに包まれ恥ずかしくなってくる。


「あの…シリウスさん…もう大丈夫です。離して下さい」

「いや…あと少しこのままで…」


するといきな後ろから引っ張られてシリウスさんから離れ誰かにバックハグされる。この香りはグラント?見上げると険しい顔のグラントとシリウスさんの手を掴むキースが居た。2人共顔が怖い。


「シリウス殿。我が婚約者に触れないでいただきたい!」

「婚約者?」

「そう、先日私とグラント殿は正式に多恵様と婚約している」

「多恵様本当ですか⁈」

「えっと…はい」


明らかにショックを受けているシリウスさん。私に手を伸ばそうとしてグラントに払われている。すると陛下が


「シリウス殿これは事実だ。多恵殿はアルディアで3人と婚約している」

「後一人は…」


すると風が吹いて目の前が緑に染まる。見上げるとフィラだ。フィラは無表情でシリウスさんに


「俺だ。認めた訳では無いがグラントとキースは多恵が受け入れたから許すが、そうでないお前は気安く多恵に触れるな。俺は箱庭内で行けないところは無い。多恵が泣いていたり危険な時は遠慮なく行き、多恵を妖精城に連れ帰り保護する。アルディアも何度も多恵を危険な目に合わしたが、多恵が許したから俺は口を出さなかった。多恵は優しい。それに甘んじるな。これは願いではない警告だ」


フィラが凄んだせいで場の雰囲気が悪くなる。


「フィラ。言い過ぎだよ。そんな言い方したらモーブルを信用してないみたいじゃん」

「多恵に関しては信用していない」

「あのね。リリスが救いたいと思っている人達だよ。そんな人達が悪い人の訳ないじゃん!フィラもグラント、キースも過剰反応です。前にも言ったけどあまり悋気ヤキモチが過ぎると嫌いになりますよ」


婚約者フィアンセ3人は気まずそうに黙り込み、シリウスさんはじめモーブルの騎士たちはキラキラした視線を送って来る。私至極当たり前の事しか言っていませんよ。冷静なイザーク様が別れの儀を進行し一応?無事終了となった。私は一旦は部屋に戻り軽く食事と着替えをする事になる。しかしここでまた揉める。誰が私を部屋に送るかだ。も…毎度毎度面倒くさいなぁ…部屋の隅に控えるデュークさんと目が合った。

口パクで『助けて』と言うと困った顔をしてこちらに歩いてきて


「皆さん多恵様がお困りです」

「デュークさんに送ってもらいますから皆さ出立の時にまた…デュークさんお願いします!」


デュークさんの手をとり扉へ向かうと従僕さんが唖然としていたが慌てて開けてくれる。暫く歩いてデュークさんに


「最後の最後に頼ってすみません。確か…初めての謁見の戻りの時もこんな感じでしたよね」

「よく覚えてらっしゃる。あの時と同じだと思いながら見ておりました。あの時に様にお役に立てて光栄ですよ」


静かな廊下を歩いていたらデュークさんが徐に


「多恵様は今幸せですか?」

「急に何ですか?」

「貴女は謙虚で優しい。人は己に余裕が無い時は人を助けれない。無理をすると己が潰れます。貴女は無理をしそうで心配です。乙女という立場故に求められ頼られるでしょうが、辛い時や心に余裕が無い時は全てを無視して己を休ませて下さい。周りは貴女の優しさに頼る傾向がある。兄として心配でならない。今までの様に直ぐ駆けつけれないのがもどかしい」


デュークさんマジ兄貴!凄い嬉しいし言いたい事はもよく分かった。確かに自分が潰れたら人助けなんて出来ない。嬉しい忠告に感謝を述べ部屋までの短い時間を兄貴デュークと語らう。


兄貴デュークにお礼を言って部屋に入るとサリナさん、ケイティさん、マリカさんの3名の侍女さんが待っていてくれた。最後の我儘を言い昼食は4人で食べます。長距離の馬車移動なので軽めの昼食をお喋りしながら食べます。


「多恵様。本当にお荷物あれだけでよろしいのですか⁈」

「何かほぼモーブルで用意済みなようで、”どうしても持って行きたいものだけお持ち下さい”と手紙に書いてあったの」


マリカさんが頬を膨らませ不満げだ。そう持って行くのは小さいトランク1つだけだ。量的に一泊二日程度の荷物だ。


「私の他の荷物は陛下にお願いして戻るまで保管してもらうの。だって勿体無いし」

「あちらで必要になりましたら連絡下さい。お持ち致しますわ」

「それよりあのマントは本当に馬車に持ち込まれるのですか?」

「うん。シリウスさんの意味ありマントだけど、肌触り良くて膝掛けに凄いいいの。馬車で使おうと思って」

「シリウス様から誤解を受けますわよ」

「これがあっても無くても一緒だし、物に罪はないしね」


こうして出立準備が整うと文官さんが呼びに来た。トランクを一番若いマリカさんが持ってくれ、マントはサリナさんが運んでくれる。

扉前で部屋を見渡し深々とお辞儀をして心の中で『お世話になりました。ありがとう』と呟く。気分を切り替えて部屋を出るとグラントとキースが待っていた。


「喧嘩はしませんから2人で馬車までエスコートさせて下さい」

「喜んで。よろしく婚約者フィアンセ殿」


右にグラント、左にキースと両手に花です。2人の温かい手にほっこりしながら歩いていたら、馬車の待機場に着いた。


「へ!」


陛下と王妃様をはじめ王城全ての人が集まった⁈って位の人がいる。気後れし後退りしたら陛下が前に来てハグしてお別れを告げる。

いっぱい泣いたから最後は心配かけない様に笑ってお別れしようと思う。

陛下の後、王妃様で次に王子にご挨拶しハグをする。そして次にイザーク様から書類貰う。どうやら領地と建設する屋敷の図面の様だ。苦笑いし受け取りお礼を述べた。


さてこれで終わり?と思ったらグラントが前に来て頬を両手で優しく包み、瞼にキスして次に手を取り指先にキス。いつもと違う口付けに戸惑っていたら最後に唇に軽いキスをした!

『人前で!』心で叫んでいたら抱きしめられ耳元で


「多恵に永遠の愛を捧ぐ」

「なっ!」


恥ずかしくて何処かに隠れたい!1人焦っていたら後ろから手を取られクルッと半回転させられたらキースがいる。キースも瞼、指先、唇にキスをして


「私の魂はいつも貴女のそばに」


だから人前ではやめて!その場にいる女性陣が奇声をあげる。も!穴があったら埋まりたい!


これが本当の最後でシリウスさんのエスコートで馬車に乗車するが…

凄いゴウジャスな馬車だ。アルディア王家の馬車も凄いがモーブルの馬車も負けてない。気後れしへっぴり腰の私はシリウスさんに支えられて馬車に乗った。車内で着席すると騎士さんが扉を閉め、先導する騎士さんが出発を告げゆっくり馬車は動く。

窓を開け身を乗り出し痛いくらい手を振り「ありがとう!行ってきます!」と叫んだ。


私の心情を察したのか背後から抱えてくれるシリウスさん。みんなが見えなくなるまで手を振り、静かに座り直したら涙が溢れてきた。

シリウスさんは何も言わずに抱きしめてくれる。涙が枯れるまで泣いたら体力の限界を迎えてシリウスさんの腕の中で眠った。



こうして私はモーブルに向かい新たな生活をスタートさせる。

お読みいただきありがとうございました。

アルディア編はこの話で終わりです。

暫くお休みし次のモーブル編の準備をします。

休みの間に読みやすい話を書ける様に精進します。


今後は…

『時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜』

『(仮)選べなかった1度目の人生、2度目は好きにしていいですか?』


この2作を書き進める予定です。こちらもよろしくお願いします。





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