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誤解

アルディア最後の日に朝から大変な事に…

『う!ゔーん』

苦しい…息が…


あまりの苦しさに目を開けると真前に琥珀色の瞳が!


「ん!」


早朝からするキスでは無い!頭を固定され反対の手で背中やお尻を撫でられている!朝から盛っているのはフィラだ!

苦しくて力一杯抵抗したけど中々解放してくれない!新たな殺人方法か⁈

一瞬の隙を逃さずに「イヤ!!」と発すると拘束が緩む。その隙にフィラの胸を押し距離を取った。


「なっ何してるの!」

「多恵が悪い!」

「はぁ⁈」


拘束は緩んだがいまだ解放してくれない。私の足の間にフィラの足が挟まれ何か当ってる!

すっぽりフィラの腕の中で全く動けない!


状況が分からず困惑しているとフィラは耳を甘噛みしながら首元を撫でる。身震いすると悪い顔をして


「このまま妖精城に行き交わるか!」

「はっ⁈うっ…」


また深いキスをされ言葉を遮られる。長いキスの後フィラは不満を口にする。


「婚約したのに”婚姻すると明言できない”とはどういう事だ。モーブルに行き他の男とするつもりか!それに元の世界に帰る話などリリスから聞いていない!」

「取りあえず喋りにくいから開放して欲しいです」

「ダメだ。返事によっては強引にでも交わり俺の妃にする」


『・・・そっか貴方はストーカー少し入っているもんね』どうやら昨晩の陛下との会話を聞いていたのね。


「盗み聞きはしていないぞ。妖精たちが昨晩慌てて俺の所に来て“多恵が王の妃にならない”、“多恵が帰る”と言っていると知らせに来た。昨晩来ようとしたが侍女たちと涙の別れをしていて行ける状況になく今来たんだ」


一応侍女さん達とのお別れは遠慮してくれたんだ。そっか日本人特有の曖昧ファジーなニアンスは妖精王フィラには分からないか…


「あのね。私考えも無しにフィラや他の婚約者と婚約した訳じゃないよ。ちゃんと考えて将来添い遂げるつもりで婚約を受けた。昨晩陛下に話したのはまだモーブルいやその先の事もまだ分からないのに、役目を終えてからの事なんて明言出来ないって言ったの。婚約者を愛していても私が先に死んじゃう事もあるし、突発的な事情で元の世界に帰らないといけなくなるかもしれない。未来は確定してないんだよ。それに将来を決められて縛られたら私絶対逃げたくなる。雁字搦めにされたくない。そんな決められた人生は苦しいよ」

「俺を嫌いになった訳では…」

「ない!好きに決まってんじゃん!」


途端に破顔してまた熱い口付けをいっぱいいただく事になる。モーブルに出発の日に朝からこんな事されると体力奪われヘロヘロになるじゃないか!

するとサリナさんが様子を伺いにきた様で寝室の扉をノックする。


「明日朝また来る」


と満足して帰って行った。フィラは満足だろうが朝から振舞わされへとへとの私。

ぐったりし返事をすると昨晩遅かったのにぴしっとしているサリナさん。流石プロ!


「昼前にモーブルからの迎えが参ります。3刻半まではゆっくりしていただく予定でしたが…」

「?」

「陛下が執務室に来て欲しいと連絡が入りました。お疲れの所、申し訳ありませんが準備ください」

「お疲れの所?んっ⁈それより何だろう…お別れの挨拶はシリウスさんが来たから謁見の間ですると聞いているけど…」

「多恵さんお早く」


ベッドから出て慌てて準備をする。どうせ挨拶の儀で着替えるからシンプルなワンピースに着替え朝食を頂き陛下の執務室に向う。

最後の日の護衛はデュークさんとガイさんが務めてくれる。気心知れた二人だから冗談を言いながら向かうとあっという間に着いた。入室許可を得て入室すると何故かグラントとキースいる。


「なんで?」


2人共微妙な顔をしていて嫌な予感がする。執務室は重たい空気に包まれ息苦しく、まるで酸欠の金魚の気分だ。陛下に促されソファーに着席すると重い空気を切り裂く様に陛下が話し出す。


「昨晩の食事の席で多恵殿が“婚約者たちとの婚姻は明言できない”と聞き、どういう事なのか婚約者である二人に話を聞いていたところだ。

2人はショックを受けとるぞ。お互い合意の上で婚約したと言っているが違うのか⁈貴女と縁を持つことはアルディアに安寧をもたらすのだ。故に軽視できぬ」

「えっと…」


今朝のフィラと同じ事を言っている。陛下にフィラにした説明をすると理解してくれ少し安心したようだ。


「我々が安心をしたいが為に多恵殿を縛る事は確かに良くない。しかし多恵殿はこの2人を愛して婚約したのだろう⁈」

「えっと…頭が足りない私なりにちゃんと添い遂げる事を視野に入れてお返事しています。だから…その…」


こんなみんなの前で“愛しています”なんて純日本人の私に言える訳ないのに、期待した視線を送られ焦る。嫌な汗をいっぱいかいていたらグラントが陛下に


「陛下。発言のお許しを」

「許そう」

「恐れながら多恵様の世界では“愛する”と言う言葉はあまり使われないようで、今言えないのは慣れておられずお恥ずかしいのです。 多恵様から“好き”という愛の表現は頂いております。恐らくキース殿も受けている事でしょう。多恵様から愛をもっといただける様に誠心誠意愛し良き伴侶となります」

「陛下。多恵様は大変奥ゆかしいのです。私も“好き”と言う愛情表現を頂いております。ご安心下さい」

「2人共…」『恥ずかしいではないか!』


“愛している”よりマシだけど“好き”も結構恥ずかしい。顔が熱いから多分真っ赤な顔をしている私。

そんな私に熱いまなざしを送るグラントとキース。陛下はやっと安心した様でソファーに深く座り溜息を吐く。


「まぁ…取りあえず安心して多恵殿をモーブルに送りだせる。グラント、キース両名は出来うる限りモーブルに顔を出し多恵殿に愛を送りなさい」

「「勿論でございます」」

「うっ!」


2人の視線が獲物を狙う猛獣の様で身震いする。最後の最後で何だかなぁ…


疲労困憊なのにグラントとキースはモーブルの使者が来る前に時間が欲しいという!正直遠慮したい。

絶対今朝のフィラの二の舞になるに決まってる。

今日は昼から長距離の移動があるんだよ!でも2人は最近貴族で流行っているじゃんけんで順番を決めている。勝ったのはキースでガッツポーズをし珍しく雄叫びをあげている。


「キース殿時間はちゃんと守って下さい」

「努力はしよう。さぁ多恵!応接室を押さえてあります。行きましょう!」

「はぁ⁈”多恵”だと⁉︎」

「婚約したから当たり前でしょう。どうせ貴殿もそう呼んでいるのでしょう⁈」

「なんか特別感が…」

「喧嘩するなら私部屋に帰りますよ!」

「「我々は仲はいいです!」」


人気無い芸人のコントを見てるようだ。2人のやり取りに少し和み。キースにエスコートされ応接室に向かいます。

「キース…お手柔らかにお願いします」

「何の事ですか?私は多恵に愛を捧げるだけですよ!」


それが怖い…


結局キース→グラントと面会という逢瀬にぐったりしグラントに抱っこされ部屋に戻る。ぐったりした私を見たサリナさんは眉間の皺を深め直ぐグラントを追い返した。サリナさんは果実水を用意してくれソファーに体を沈める。

果実水を飲んでいたらサリナさんは小さな容器を私に渡した。何か分からずぽかーんとしていたら


「蜂蜜から作ったクリームです。唇の荒れによく効きます」

「さっさりなさん!」

「酷くならないうちに塗って下さい。塗ったら暫くは触れない様になさって下さい」

「はい…」


そうなんです。今朝から濃厚なキスをお腹いっぱいにいただき、唇が限界に達しました。恥ずかしいけどシリウスさんが来る前になんとかしないと!

彼は私の小さな変化に敏感だから気付きそうだ。


「多恵さん。あの様に愛情過多の殿方を伴侶に迎えるなら体力と忍耐が必要になりますわ」

「へっ⁈」


サリナさんの呟きにこの婚約が正解なのか不安になって来た。ソファーに寝転がり遠い目をしていたら文官さんが来た。どうやらモーブルの使者到着を知らせられ先触れが来たようだ。

ここから一気に慌ただしくなる。ケイティさんと髪結さんが参戦して別人に変身する。

別れの儀の後直ぐに出発でラフな衣服に着替えるのにこの変身は必要なのかぃ⁈

そんな疑問を抱いている間に準備が終わりデュークさんとガイさんにエスコートされ謁見の間に向かう。デュークさんからモーブルの使者がすでに到着している事を聞く。


「あ…とうとうここを離れるんだ…寂しいなぁ…」

「我々はずっとここで貴女の帰りを待っていますから」


私の手をぎゅっと握りデュークさんが呟く。見上げたデュークさんは涙目だ。駄目だつられて泣いちゃいそうだ。デュークさんの手を握り返して頑張って微笑んだ。


直ぐに謁見の間に着いた。大きな扉の前にはアーサー殿下が居て、ここからは殿下がエスコートしてくれる。


さぁ!踏ん張って最後の挨拶してきます!

お読みいただきありがとうございます。

次話でアルディア編が終わりです。長かった…

初めての書いた小説。下手っぴだけど正直ここまで書けると思わなかったです。

実は大まかに最後まで構想出来ていて、暫く休み練り上げたいと思います。平行して他の作品を集中して書き上げたいと思います。


ラスト1話お付き合い下さい。

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