変化
突然の娘発言に驚き真意を聞く事に…
「ヴァネッサ様?」「お母様?」
突然の娘発言にナタリー様と固まる。ヴァネッサ様は鼻息荒く話し出した。
ヴァネッサ様は元々この箱庭に珍しく言いたいことを言うタイプ。本好きで幼い頃の夢は学者か女官になる事だった。
しかし両親は箱庭の慣習通り女は夫の後ろに控え美しく微笑み夫に従うものだと教育をした。貴族令嬢は成人前に花嫁修行の一貫でアカデミーに1年通い嫁ぐ事が多い。下位貴族の令嬢は行儀見習いと出会いを求め城仕えするが、侯爵家令嬢のヴァネッサ様は許されず家庭教師が付き花嫁修行をした。
何度か反発もしたが想いを聞いてもらえず、建国を祝う舞踏会で親の紹介でクラーク様に会い、とんとん拍子に縁談が進み半年余りで公爵家に嫁いだ。嫁ぐと直ぐに義母に学び子を産み育児がひと段落着くとクラーク様が家督継ぎ今度は女主人として責務が…
「私は女に生まれただけで思う様に生きれないと諦めていました。娘であるナタリーにも同じ事しか出来なかったわ」
「お母様…」
ヴァネッサ様は切なそうに微笑んだ。人と違う事をするのには勇気と強い意志がいる。歴史が古いものほど変化を嫌う傾向がある。まだ未成年の少女が親に社会に争うのは難しいかっただろう。
「半ば諦め日々を過ごしていた所に女神の乙女が召喚されたと聞きました。しかし私には関係ない事と関心がなかった時に、乙女の伴侶候補にグラントがら選ばれた聞きました。グラントからは貴女の素晴らしさを聞き、クラークが甘やかしたナタリーは多恵様と交流を持ちしっかりと主張できる女性に…
そこで確信したのです。多恵様こそ私がなりたかった人物像だと。私はもう歳をとり変わる事は出来ませんが、子供達が多恵様と関わり成長する姿を近くで見たいと思う様になったのです。そうなるにはグラントと多恵様が婚姻すれば義理の娘になり縁ができると思ったのです」
はい!やっと話の全貌が見えました。現代人の私には自己主張し自分で判断するのが普通でも、箱庭では難しいんだ。
「今からでも遅く無いと思いますよ。歳は関係ない。やりたい時が始めどきだと私は思います。夫婦であれ一個人で別人格です。同じ訳ない。思った事は口に出し相反した時は話し合い理解し合えばいいんです。何度かクラーク様と話をさせて頂きましたが、クラーク様は聞く耳をお持ちです。”女が出しゃばるな”なんて言われる方ではありません」
「そうでしょうが…怖いのです」
「私の世界に”案ずるより産むが易し”と言う諺があります。意味は”実際行ってみると心配していた程ではない”と言う意味です。案外一歩だけ勇気を出せば簡単かもしれませんよ」
「私にできるでしょうか…」
「目の前にいい見本があると思いますが⁉︎」
私はナタリー様を見た。つられてヴァネッサ様もナタリー様をみて少し涙ぐみ嬉しそうに
「立派になった娘に乞う事にしますわ」
「はい。いい先生だと思いますよ」
2人に見つめられ照れているナタリー様。やっと穏やかな雰囲気なりホッとしてお茶をいただく。
するとヴァネッサ様が
「多恵様。クラークから2人の事に口を出さない様に言われました。しかし母として一つだけ言わせて下さい」
「お母様!」
私は手でナタリー様を制し座り直しヴァネッサ様を真っ直ぐ見据えた。
「グラントは男性として完璧と言われています。しかし嫉妬深い。もう多恵様はご承知でしょう。でもそれは愛情深いという事。そして話を聞く耳を持ち合わせています。過ぎ時は話せばちゃんと理解します。そこを分かっていただきたいの。私も経験者だから…」
「はぃ?」
「グラントは容姿も嫉妬深いのもクラークそっくり。私も初めはクラークの嫉妬に悩まされたわ」
「あの紳士のお父様が⁉︎」
ナタリー様はショックを隠し切れない様子。ヴァネッサ様は打ち解けたのか結構ぶっちゃけくる!
「箱庭の男性は愛情深いのはご存知でしょ?グラントは生涯貴女しか愛さないわ。受け止めてあげて欲しいの」
「ヴァネッサ様の言いたい事は理解しました。ですが2人の事は2人で話をしたいと思いますので、温かく見守って頂きたいです」
ヴァネッサ様は微笑み頷いた。
その後半刻ほど話しただろうか…公爵様とグラント様が心配そうに様子を見に来た。
楽しく談笑する私たちを見てホッとしている様だ。
「母上、明日は朝早いのです。そろそろ多恵様を開放してください。それにナタリーも殿下はいいのか?明日お帰りになるんだぞ」
「「「はぁ~い」」」
仲良くハモって返事をすると唖然とする2人。
「グラント。こんな素敵な女性は金輪際会えませんよ。分かっていますね!母は早く多恵様を娘と呼びたいのです」
「ヴァネッサ!昨日あれほど…」
「公爵様。今晩は楽しい女子会が出来嬉しかったです。素敵な奥様で仲良くしていただけそうです」
「「!!」」
もっと話をしたかったが7刻になったので解散になった。ヴァネッサ様にお休みのキスをされ皆さんに挨拶をして部屋に戻る事になった。
勿論部屋までグラント様がエスコートされます。
「多恵様。母が失礼な事を言いませんでしたか?」
「いえ、素敵なお母様で色々お話いただき楽しかったですよ」
安心したのか柔らかい表情をしたグラント様。部屋まで来てお休みを言うと柔らかく抱きしめて
「明日は邪魔も入りません。貴女の時間を私に下さい」
「はい。明日はよろしくお願いします」
グラント様は頬に口付け名残惜しそうに部屋に戻って行った。部屋に入るとケイティさんが待っていてくれ色々話を聞いてもらう。
もっと話したかったけど明日ヒューイ殿下が早朝に出発されるので見送る為に早く起きなければならない。話し足りない私を半ば強引に夜着に着替えさせてベッドに押し込むケイティさんだった。諦めてこの日は直ぐに就寝した。
今日はオブルライト領2日目。朝は早い。2刻半にヒューイ殿下が帰城されるのでお見送りをする。2刻に起きて湯あみをして身支度をして朝食へ向かう。
ケイティさんと話しながら歩いているとヒューイ殿下がいらっしゃった。ご挨拶すると朝からロイヤルスマイルを頂きました。
殿下がエスコートして下さり廊下を歩いていると向かいからグラント様が足早に来て殿下にご挨拶され、流れる様な所作で私の手を取りエスコートを変わった。
苦笑するヒュー殿下。
「相変わらず悋気が強いですね!」
私も笑うしかないよ…
部屋に着くと皆さんお揃いで直ぐ給仕が始まる。
心なしか公爵様とヴァネッサ様の雰囲気が変わった様に感じる。仲睦まじ感じが…
ぼーと見ていたらヴァネッサ様と目が合うとウィンクされた。ほんのり頬を染めるヴァネッサ様。公爵様に言いたい事を言えた様だ。
昨日は色々あったけど今日はいい事ありそうだ!
食事が終わり席を立つとヒューイ殿下が話が有ると部屋に呼ばれ、不機嫌なグラント様がエスコートしてくれ殿下の部屋に来た。出発まで時間がないからソファー座ると殿下はすぐに人払いをして直ぐに話し出した。
「多恵殿の耳に入れたい事があります」
「はい」『怖い×2!なになに?』
「昨日の別行動したのは知り合いに会いに行っていました。その者は私の学友で信頼出来る者である情報をもたらしてくれました。その者はモーブルと取引しておりモーブルの貴族事情に詳しい。情報によるとグリード殿下がビビアン王女と縁組する事になり、多恵殿の伴侶候補が激化している様です。正式では無いがシリウス殿が候補とされているが、貴族達はチャンスとみている様です」
「はぁ⁈そんな事になっているんですか⁈」
「はい。また陛下が多恵殿を気に入られていると伝わると、王宮からは陛下の側室にと言う話も出ている様です」
「…」
アルディアでもそうだったが、もう候補は要らないんだけど…
思いっきり嫌な顔をしたら殿下は苦笑いして
「多恵殿がモーブル移られたら暫くは貴族との接触は慎重にお願いします。学友はヘイズと言い伯爵家の嫡男でモーブルに行く事も多い。モーブルに行った際は多恵殿に会いに行く様に頼んであります。何か困れば頼って下さい」
「心遣いいただきありがとうございます」
すると出発時間が来た様で従僕さんが迎えに来た。隣の部屋で待っていたグラント様にエスコートされ、ヒューイ殿下をお見送りする。殿下は予定通り帰城されました。
今からデートなのに殿下が爆弾投下したからテンションが上がらない。教えてくれて有難いが微妙なんですが…
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