朝食
今日はダラス陛下とオーランド殿下が帰国します
昨晩は早く就寝したからいつも通り2刻に目が覚めた。てん君は少し前に起きていたようでスリスリしてくる。あ…朝から癒されるわ!
するといきなり耳をピンと立てベッドから降りて窓に駆け寄る。あ!彼が来たのね。
テラスにつながる掃き出し窓を開けてテラスに出ると目の前が緑色に染まる。フィラの腕の中だ。
肌寒いから温かくて自分から抱きつく。
フィラは挨拶がわりに口付けて来る。軽い口付けだけど何度も何度も…
「フィラ!長いよ!何かあった?」
「見合いは無事終わったようだな。候補になりそうな男はいなかったようだな。あの面々ならケニー方がましだ」
「皆さん素敵な殿方だったよ」
一瞬不機嫌な顔したフィラは腰に廻した腕の力を強めて
「俺よりか⁈」
「何でそうなるかなぁ⁉︎私が口付けを許してるフィラだけだから!今はだけど…」
「朝から煽るな!ベッドに連れて行くぞ」
「朝から誘うような事しないわよ!」
また口付けてきて機嫌がなおったようだ。
「何かあった?」
「妖精王が礼をしたいそうだ。何かして欲しいとか物はないか?」
「ゔーん。皆さんに良くしてもらってるから無い」
「多恵は無欲だなぁ〜まぁいい。思いついたら言ってくれ」
この後少し話をしたら案外すんなりフィラは帰って行った。今日はダラス陛下がモーブルにお帰りになる。昨晩は朝食のお誘いが来て居てお受けした。
朝から湯浴みして準備が大変だ。居間に行くと既にサリナさんが準備をしていた。
「おはようございます。昨日はお仕えする私などに気にかけて下さり、ありがとうございました。
あの後お時間いただいて、エルドとしっかり話が出来、お互い新たなスタートがきれそうです」
「良かった!私も嬉しいよ」
あれ?急に表情が曇るサリナさん。まだ何か心配事が有るのだろうか⁈サリナさんは私の手を取り
「私が退室後にあの輩が多恵さんにとんでもない事を言ったと聞きました。許せない!あの男は女性の敵です」
「あぁ…こっちでは”エッチしよう”なんてとんでもない事なんだね。私の世界では冗談半分で言ったりするから、大した事ではないんだよ。もちろん関係性が無いのに言ったら、こっちと同じでダメだけどね」
眉間に皺を寄せたサリナさんは怒りを抑えながら呟く
「恐らく陛下が処分なさいますわ!」
「処分って怖いよ!」
とりあえずサリナさんを宥めて朝の準備を急ぐ。
準備が終わったら今日の当番騎士のガイさんとポールさんと貴賓室に向かう。朝の廊下は静かだ。騎士さんと楽しく話していたら直ぐ着いた。
入室許可をいただき貴賓室に入る。
朝から大人の色気たっぷりのダラス陛下が迎えてくれる。ゔーん深夜臭がする。
「おはようございます。お招きありがとうございます」
「朝一に多恵殿に会えるのはいいものだ」
着席し食事が始まる。話題豊富な陛下との会話は楽しい。でも会話の合間に口説いて来る。陛下はどこまで本気か分からないから返答に困る。
「多恵殿がモーブルに移る時は、モーブルから騎士と侍女を迎えに寄こす」
「ありがとうございます」
「それより昨日は大変だったな。伴侶候補は妖精王のみか?不甲斐ない。やはり私にしておきなさい」
「陛下。本気に聞こえる冗談やめて下さい。返答に困りますから」
「何度口説いても本気にしてくれぬの…」
「それよりお願いがあります。アルディアでは広い客間を使わせていただき、侍女さんや騎士様まで着けていただきましたが、元も私は平民なので過度な待遇は必要ありません。アルディアでは来たばかりで分からず甘えていましたが、身の丈に合った生活をしたいと思っています」
腕組みした陛下は少し考えて
「多恵殿気持ちは分かった。しかしほぼ用意は終わっておるし、やはり女神の乙女に平民のような扱いは出来ぬ。騎士も安全のためにも必要だ。其方に何かあれば妖精王、アルディアとレックロッドに顔向けできん。モーブルで生活してみて希望があれば、その都度聞こう」
「はい。ありがとうござい」
「貴女の専属侍女に聞き、身の回りの物は全てモーブルで用意している。貴女は身一つで来られるといい」
私の知らな間に準備が進んでいたようだ。もっと早く言っておくべきだった。仕方ないなぁ…次レックロッドに移る時には事前に話しておかないといけないなぁ…
こうしてダラス陛下との朝食を終え、正式な帰国の挨拶は謁見の間で行われる。それまで一旦部屋に戻る事にした。
部屋に戻るとオーランド殿下とカイルさんが居てびっくりする。どうやら道中の道の一部が数日降った雨で道が悪く迂回する為早目の出発になったそうだ。カイルさんが人払いをし殿下と2人っきりになる。
「謁見の間では貴女に触れれ無いし、話が出来ない。また暫く会えない。モーブルとは距離がありますから…」
そうレックロッドにとモーブルは真逆にあるから、馬車で丸3日かかるらしい。簡単には会えないなぁ…
「手紙書きますね」
「俺も書きますね。毎日!」
「お忙しいでしょう?お暇な時でいいですよ」
「抱きしめていいですか?」
「はい」
両手を広げたら柔らかく抱きしめる殿下。鍛錬されているから逞しく高めの体温に眠くなって来る。
すると耳元で
「口付けていいですか?」
「頬に…ん!」
うそ!今唇にされた!目が点になり殿下の顔を見ていたら殿下も目が点に…どうやら故意は無いらしく無意識⁈
殿下は慌てて離れて最敬礼され謝罪される。
あまりの慌てように笑えてきた。正直言って嫌では無い。初めに比べて高感度は上がっているし、ちゃんと向き合いたいと思っている。
きっと私が激ギレすると思ったのか悲壮な顔をしている。何か悪戯して怒られ待ちしている小学生みたい。ちょっと母性が顔を出した。
自分から柔らかく殿下を抱きしめて
「今のはワザとでは無いのでしょう⁈次許可無くしたら怒りますからね」
「許して下さるのか?」
「はい。暫く会えないのに気不味いままは嫌だし、嫌では無かったから…」
殿下の表情が明るさを取り戻し破顔し殿下は抱きしめ、額に頬に口付けてくる。
「殿下!長い!」
「すまない!嬉しすぎて我を忘れた。貴女のいない日々頑張れそうです」
「ふふ…良かった」
扉を誰かがノックし時間だと知らせて来る。
「今度はお願いする。暫しのお別れに貴女に口付けたい。ダメか?」
「…」
手招きし屈んで顔を近づけたオーランド殿下に…
“ちゅ!”
「!!」
私からフレンチキスをした。フリーズする殿下をよそに入室許可を出すとカイルさんとサリナさんか入ってきた。
「多恵様?殿下何かやらかしましたか?」
「いえ!どちらかと言うと私が…」
「よく分からないが、いい雰囲気なのは分かりました。とりあえず時間なので殿下は回収していきます。後謁見の間で!」
そう言ってカイルさんはオーランド殿下を引っ張って退室して行った。私もサリナさんに急かされ着替えをして謁見の間に急ぐ。
さぁ!お見送りしないとね!
お読みいただきありがとうございます
まだ息切れ気味ですが頑張ってます。
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