お茶会
お茶会も後半に入りそろそろ疲れてきた多恵。
無事終わる事が出来るかなぁ…
「…って事がありまして!」
「「「「「あっははは!」」」」」
タイラー家のテーブルは笑い声が響き楽しい雰囲気。侯爵様が騎士のあるある話をしデュークさんやレオ様もあるあるを披露し楽しそう。夫人もツッコミを入れていている。品のある夫人に見えたけど話すとイメージと違い…するとレオ様が
「母上は第1の騎士で皇太后の護衛をしていたんです。今は淑女の様に見えますがかなりの腕の立つ騎士だったそうです。結構怖いんですよ」
「レオ。せっかく多恵様に印象良く見ていただく為に頑張っているのです。余計な事は言わない様に!」
「騎士一家なんですね!楽しそうなご家族で羨ましいです」
「お気に召したらいつでもお越し下さい」
楽しい!マジここに居たい!移動したく無い!
急に表情を引き締めたレオ様が身を寄せて来て小声で
「多恵様。お気をつけ下さい。次のバックス伯爵家イーサン殿は女性との噂が絶えず手が早いと言われています。何か有ればデューク様が対応下さいますからご安心を」
「はい。ご忠告ありがとうございます」
思わずデュークさんを見たら険しい顔をしている。デュークさんの視線の先は次のテーブル。男性がこっちに向かってくる。恐らくイーサン様だ。
イーサン様は美男子特有の金髪碧眼で癖っ毛が甘い雰囲気を出している。マリカさんがいたら喜ぶだろうなぁ…
『へっ?』後ろから冷気を感じ振り返るとデュークさんもサリナさんも臨戦体制で表情が冷たい。こわっ!
タイラー侯爵様と夫人に挨拶しレオ様にお礼を言いイーサン様に向き合います。
「お目もじ叶い光栄でございます。バックス伯爵家嫡男イーサンと申します。多恵様に御目通りできる日を心待ちにしておりました。さぁお手を…」
「初めまして宜しくお願いします」
手を重ねると指で手の甲をなぞられ寒気がした。のっけから距離が近い!
「多恵様は華奢でいらっしゃるから庇護欲を駆り立てられます。私が守って差し上げたい!」
「ありがとうございます。でも見た目と違い結構がっしりしてるので大丈夫です」
女性に拒否された事ないのか驚いている。
「誰かが有らぬ噂話を多恵様にした様ですね。私は女性には常に誠意を心掛けています。多恵様の曇り無き眼で私を見て下さい」
テーブルに着くと伯爵様と夫人が挨拶され着席する。伯爵様はイーサン様に似てイケおじで大人の色気たっぷりだ。伯爵様は領地と伯爵家の歴史を話しだす。イーサン様はずっと私の手を握り離してくれない。そーと手を離そうとする度に握られ微笑まれる。溜息を吐いて
「イーサン様。せっかくご用意いただいたお茶と茶菓子をいただきたいので手を離して下さい」
するとイーサン様はフィナンシェを取り私の口元に運んだ。
驚いているとデュークさんが
「イーサン殿。多恵様がお困りです。距離をお取りください」
「多恵様。私は不快でしょうか⁈」
「不快ではないのですが、私は元々人見知りしますので初対面で距離を詰められるのは正直苦手です」
「…」
またまた拒否された事にショックなのかやっと手を放してくれたイーサン様。しかし何故か頬を赤くし
「この様に奥ゆかしいお方は初めてですし、私が手を握り拒否されたのも初めてです。本当に貴女は愛らしく抱きしめたい衝動に駆られます」
「駆られないで下さい。私は何のとりえもない至って平凡です」
戸惑うイーサン様。呆れる私。
焦った伯爵様が領地に別荘を用意するからきて欲しいと告げる。どうやらバックス領は自然豊かで貴族の別荘が多く避暑地らしい。
「お気持ちは嬉しいのですが。まだ女神リリスの手伝いもまだ終わっていないので、暫くはのんびりする暇が無いんです」
「先日はバース領に行かれたでは有りませんか!」
あ…厄介なタイプで主張が通らないと”ごてるタイプ”だなぁ…
「お恥ずかしい話しですか、リリスのお手伝いに疲れてしまいまして…アルディアのお手伝いがひと段落したので陛下が休暇を下さいました。さっきもお伝えした様に私は人見知りをするので、召喚されてからずっとお世話いただいているサリナ様の帰省に便乗させていただいたんです。また次のお手伝いが終わったらまたアルディア国内を旅行したいと思っています」
「ならばその際は我が領地に!」
「今日ご挨拶し失礼ながらお知り合いになれましたので、旅行先の候補とさせていただきますね」
「ありがたき幸せにございます!」
『ほっ…なんとかやり過ごしたぞ!』
思わず後ろに控えてくれるデュークさんとサリナさんを見て伺いを立てる。良かった!2人とも頷いてくれた!
イーサン様からは質問攻めに合い防戦中。正直イーサン様は鑑賞対象にはいいけど恋愛はご遠慮したい。だって十中八九イーサン様はナルシストだ。”俺イケてる”感が強すぎるもん。
そんな事を考えていたら隣のテーブルから男性がこっちに向かってくる。サリナさんが
「多恵様。次のテーブルのジャスパー伯爵家のマーティン様ですわ」
するとイーサン様が私の手を取り立ち上がり前振り無く抱きしめた。
「「「「えっ?」」」」
イーサン様は耳元で“私を選んだ方がいいですよ!”と囁き耳にキスした!寒気がする!気持ち悪い!
デュークさんがイーサン様の首根っこを掴み引き離しサリナさんが私を抱き抱えた。
「嫌だなぁ!お別れのハグですよ!女神の乙女に不埒な事する訳ないでしょう!ねぇ〜多恵様」
うっわぁー!フリータイムになったらレオ様にくっついていよう!これ以上関わりたく無くてデュークさんに首を振った。めげないイーサン様は私にウィンクして席に戻った。すると険しい顔のマーティン様がサリナさんに抱き込まれた私を除き込み
「大丈夫ですか?無理なさらないで下さい。落ち着かれるまで待ちますから…」
「ありがとうございます…大丈夫です。デュークさんもサリナさんもありがとう」
身なりを整えてマーティン様を見据えると
「お目通り叶い僥倖でございます。ジャスパー伯爵家マーティンでございます。テーブルまでエスコートさせて下さい」
マーティン様の手を取ると手の平が硬い。『あれ?マーティン様も騎士?』
「マーティン様は騎士をなさっているのかですか?」
「あっ!手の平ですね。私は騎士ではなく狩人なんです。我が領地は大半が森で狩人が多く当主を継ぐまでは領民と一緒に狩をします」
へぇ〜狩りかぁ…弓矢とか扱うのかなぁ…
テーブルに着くと伯爵様からご挨拶いただきます。
さっきのバックス伯爵家が強烈だったからめっちゃ普通に感じる。マーティン様は椅子を引いて座らせてくれる。ふとマーティン様を見ると珍しい緑の髪に琥珀色の瞳でフィラに少し似ている。狩をされるからかゴリマッチョで逞しい。
ありがたいジャスパー伯爵家は『普通!』だ。世間話をしていたら、伯爵様が
「我が伯爵家は代々森を守り権力や財に興味がありません。今回の参加は貴族の均衡を守る為です。多恵様がマーティンを気に入って下さったのなら光栄ですが、恐らくそれは無いでしょう。お互い無事お茶会を終えようではありませんか」
「正直ありがたいです。皆さんの圧が凄くて疲れていたので」
ここから穏やかな会話が続きほっこりする。マーティン様が少しフィラに似てると思ったら、昔に伯爵家から妖精女王の番を出したそうだ。フィラとマーティン様は遠い親戚になるらしい。
そういえば最近フィラに会ってないなぁ…って考えていたら、風が吹き目の前に花が現れた。皆んなは驚いていたけど、私は直ぐにフィラだと分かる。だってフィラはストーカー少し入っているからなぁ…
花はフィラからだと説明すると驚く皆さん。ジャスパー領は過去に女王の番を出しただけあり、妖精の加護を受け自然豊かな様だ。いつか行ってみたいなぁ…
後ろで舌打ちが聞こえて見たらサリナさんが険しい顔をしている。視線の先を辿るとこちらに向かって来るエルド様だった。
一悶着の予感が…
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