サムシングフォー
騎士服姿をキースに見られて焦る多恵。キースの反応は…
「「あっ!」」
固まる私とキース様。
「多恵様。少し大きいですが大丈夫そうですね。これより小さいサイズは無いので」
ジャンヌ様は私の横に来てサイズを確認している。我に返り慌てて
「すぐ着替えてきます!」
「あら?慌てなくても…もう少し見せて下さいまし!」
「でもキース様が…」
「あ…キース殿は愛らしさに驚いているだけですわ。ほっておいて大丈夫です」
「でも脚出すのよくないんですよね!」
「大丈夫な理由は直接本人から聞いてみては?私はこの辺で失礼します。侍女殿、お2人は大丈夫です。我々は席を外しましょう」
やっと瞬きしたキース様は頬を赤くしゆっくり歩み寄って抱きしめた。
「えっと…お越しになっているの知らなくてびっくりしました」
「すみません。父上から多恵様がファーブス領にお越しになると聞いて、嬉しくて来てしまいました。ご挨拶しようと部屋を訪れるとジャンヌ殿がいらっしゃりご挨拶しておりました」
「ジャンヌ様と面識があるんですか?」
「はい。ジャンヌ殿とは遠縁にあたりますから」
それで親しそうだったんだ。それより恥ずかしいから着替えたい…
「あの…キース様…着替えたいので離して下さい」
腕を緩めると少し離れて騎士服姿の私をにこやかに見ています。
「“女性が脚を出して!”って言わないんですか?」
「いえ、私はこの箱庭男性に珍しく女性の服装に偏見は無いのです。仕事柄色んな国に行き多文化を見聞きします。それこそ男女逆転している国や女性が男性と同じようにパンツを履き男女差の無い国もあります。私は愛する人に過度の露出はしてほしくありませんが、貴女が好きな装いをすれはいいと思います。
それよりその騎士服はよく似合ってらっしゃる。言葉を失うほどに…」
「良かった…今度騎士の皆さんにストレッチ…運動前と後にする体のケアを指導する事になったんです。その時にドレスやワンピースでは正しい脚の動きを教えれ無いので、騎士服を用意してもらって試着していたんです。変じゃありませんか?」
「・・・」
「やっぱり…ちんちくりんな私ではにあわ…うぇ!」
またキース様に抱きしめられた!不意打ちはやめて!変な声が出たよ。
「いえ、眩しいほどよくお似合いですが、騎士達に貴女のこの姿を見せるのは我慢ならない!やはり止めてください」
「いや!それは出来ないし騎士さん全員の前でする訳ではないですよ!ヒューイ殿下がやはり同じような理由で各団から2,3名選びその方に指導し、他の方は指導を受けた騎士さんが教えるそうです。まぁ女性騎士さんは人数も多く無いので全員とレッスンになるでしょうが」
「それでも嫌だ。特にクレイブ殿は貴女に好意を寄せている!」
「でもクレイブ様は発起人だし副団長だから確実に選ばれますよ。それに愛妻家なんでしょう⁈」
「失礼だがクレイブ殿は家同士の政略結婚だ。仲がいいとは聞きおよんでいますが心配でなりません」
クレイブ様の好意はどちらかと言うと妹的な意味で心配ないと思うんだけどなぁ…それより早く着替えさせて!
マリカさんを呼んでやっと着替える事は出来た。お茶を用意してもらいキース様とお茶しています。
今日はどうやらファーブス領訪問時についてお話に来た様でご機嫌のキース様は終始ニコニコしている。
「父上が是非屋敷にお招きしご挨拶させていただきたいと申しております」
「えっと…買い物に行くだけなので大事にしたくないのですが…でも領主様にご挨拶しないのは失礼ですよね…」
「いずれ家族になるのだからと…その…申し訳ありません。解消の事も知っている筈なのですが押しの強い父でして…」
「取りあえず買い物を優先してお時間があったらお伺いしますでもいいですか?」
「はい!当日は王都からファーブスの港町までは第1〜3騎士団から5名程付き、侍女を付けず第1騎士団の女性騎士から1名つけます。港町では我が公爵家騎士団が護衛致しますのでよろしくお願いいたします」
「お手配ありがとうございます」
「前日はオブルライト領ですね…他の元候補者の方々はその…候補に戻られたのでしょうか⁈」
いきなりのぶっこみに思わず飲んでいた紅茶を吹きそうになった。『まだです』っと嘘をついてもいいけどいずれ分かるしなぁ…
「本当はもうちょっと距離を置きたかったのですが、フィラが…」
「やはりですが…出来れば貴女がモーブルに行かれるまでに貴女の候補になりたのです。離れている間が心配で候補という確約が欲しい」
『ですよね・・・』
キース様は立上り私の隣に移動し手を握り見つめてくる。あ…激甘な雰囲気に持込みましたねキース様。
「侍女殿。悪いが席を外してくれないか?」
「多恵様…いかがいたしましょう…」
「う…少しだけなら…マリカさん扉は開けておいてね」
「かしこまりました。何かございましたらお呼びください」
困った…この状況は口説きの前兆だ。普段のキース様は距離感を持って接してくれるけど、結構ぐいぐい来るタイプなんだよね。前の世界ではモテないから口説かれる事なんて無かった。だから押しに弱いなんて自分でも知らなかった。
「貴族たちが貴女の候補者が居ない今、縁を持ちたがっているのを聞くと私は居ても立っても居られない。明日のお茶会も止めて私の腕の中に閉じ込めておきたい。しかし陛下直々に開かれるお茶会そんな事出来るわけない。だから他の男が貴女に言い寄る前に再度候補になりたい」
そう言うと背中に腕を回して抱きしめてくる。
『あれ?キース様もカップ上がりました?』
元々細マッチョだったけど更にがっしりした気がする。グラント様といい私が居ない間はトレーニング期間だったの?
「キース様。何かがっしりしましたが鍛えました?」
「はい!貴女がバース領で襲われたと聞き貴女を守れるように公爵家の騎士団の訓練を共にしています」
「何かぎゅうされると安心します。私も鍛えたいな…」
「必要ありません!むしろ少しふくよかになって下さい。小柄過ぎて心配です。それに柔らかくて…失礼…今のは忘れて下さい」
本当に抱擁レベルがグレイドアップし抱きしめられると気持ちいい…だんだん眠くなって来た。
「口付けたいと言ったらお許し頂けますか?」
「頬ならいいですよ…」
優しく頬に口付け瞼や額にいっぱいキスが降り注ぐ。凄い心地よくて寝てしまいそう。
「港町を2人で散策しましょう。護衛は付きますが極力離れて付けます。私が貴女を護ります」
「お願いしますね。そうだお聞きしていいですか?」
どうやら箱庭には祝いを贈る習慣はないらしく、エレナさんとケイティさんにお祝いを贈ると言うと驚かれた。そうして何故か破顔したキース様の口付けが更に加速する。
「お祝いの習慣が無いならアドバイス頂けないなぁ…。サムシングフォーの”青いモノ”にします」
「それはどの様なものですか?」
「古いいい伝えで花嫁が”新しいもの”、”古いもの”、”借りたもの”、”青いもの”を身に付け婚姻すると幸せに慣れると言われています。そのうちの”青いもの”で何かあればいいのですが…」
そう!私が大輔と結婚した時は新しい下着と母に借りたハンカチとずっと使っていたヘアピンに薄い水色のネールをした。
まぁ…不幸にはなってないからご利益はあると思う。
「いつも誰か居たりでゆっくりお話しもした事ないので、港町をデートしお互いもっと知り合えたら、答えも見えてくるかもしれません」
「私は公爵家嫡男である故に常に周囲に気にする事が多い。我が領地なら気も抜けて本当の私を見ていただけるでしょう。私の事を知って欲しい」
「私の事もよく見て下さいね。私の素を見たら候補を解消して良かったと思うかも知れませんよ⁉︎」
「女神リリスに誓ってないです。私は命尽きるまで貴女だけだ。諦めて私に愛されて下さい」
さらっと凄い言葉を言うキース様。甘すぎて高血糖になりそうです。
この後港町の話しを色々聞いて楽しい時間を過ごした。
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