違和感
解消後初めて会うシリウス。ある事に気付く…
「えっと…」
「旅は楽しかったですか⁈」
「はい!ハプニングがいっぱいで焦ったりもしましたが、楽しくてですね…」
気不味さから旅の話をした。初めて街で買い物して屋台で買い食いしたり、綿花の収穫で指を怪我したり機織りでお供をしてくれた皆んなにお礼の品を作った事などを色々話した。独演会状態の私を優しく見守るシリウスさん。少し恥ずかしくなってきてつい余計な事を言ってしまう。
「綿花農家の兄弟が押しが強くてリックさんやミリアさんが居なかったらヤバかったです。私押しに弱いから…!」
シリウスさんの眉間に皺が!あれ?ダラス陛下は旅の様子知っている感じだから求婚されたのをてっきり知っていると思ってた。ヤバイ!雰囲気が悪くなったので別の話で誤魔化そうとして自虐ネタをしてみたら…
「っですね!私の元の世界は平和だったから、こちらに来て皆さんに危機感がないって言われてて旅でもやらかしちゃってね!」
「何があったんですか?」
「歩いていたら手を引っ張られて路地に連れ込まれたり、夜に宿の部屋に騎士様が来た時に夜着のまま応対してサリナさんに怒られたんです…よ?シリウスさん?」
シリウスさんは立ち上がり私の前に跪き私の手を取り真剣な表情で
「貴女を害した者は罰しましたか⁈」
「えっと暴漢は領主様が罰してくれましたよ。宿の件は完璧に私が悪いから、反対に騎士様にごめんなさいですよ」
「多恵様は危なかっしくて放っておけない…ずっと側で貴女を護る権利をいただきたい…」
「あのですね…私は元の世界は身分はなく、皆んな自己責任で生活しています。箱庭は女性を護り擁護するのでしょうが私はそれは嫌です。確かに男性に助けてもらったり、護ってもらう事もあります。でも自立した一個人でありたい」
黙り込むシリウスさん。そう…シリウスさんに感じる違和感はここなの。
モーブルが全体的に女性は護るもので頼られない男は半人前っていう考え。初めは大切にしてもらってるみたいで嬉しかった。でも何も出来ない幼子の様に感じ自信を無くしそうになる。そんなの私じゃない。大輔曰く私は『我が強く意地っ張り』らしい。基本なんでも自分でしたい。常に護ってもらうのは息苦しい。多分途中で『ほっていて!』ってキレそうだ。
「陛下に『お前は真面目過ぎて、恐らく多恵殿は息苦しく感じるだろう。お前が相手できるお方では無い』と言われました。初めはそんな事ない!貴女への想いは誰にも負けないし、いつか受け取っていただけると信じていた…」
ゔーん流石ダラス陛下!分かってる!大人の男って感じだ。私が望む事とシリウスさんが私にしたい事は違いすぎる…
フィラは基本私が助けを求め無い限り見守って?…ん?ストーカー?いえ…自由にさせてくれる。
グラント様はヤキモチはNo.1だが、私の意思を尊重しさりげなく振る舞ってくれる。
キース様は心配性で洞察力が有り、隠し事出来ないけど、私が渋る事は踏み込ま無い。距離感を大切にしてくれる。
お心を受けた方は私をそのままにしてくれる。私は我儘だから我慢するくらいなら一人でいいし、なんでも一人でする。
「後10日程したらモーブルにお世話になります。そうしたらお互いの事がよく見えるし分かるはず、答えはそれからでいいのでは?」
今はあまり私を追い詰めないで!最終私はけつをまくっちゃう性格です。
「分かりました。モーブルで俺をしっかり見て知って下さい。貴女には偽らない…俺には貴女だけだ」
取った手を引き立ち上がったシリウスさんは恐る恐る抱きしめる。うーんやっぱりいい香りがする。
いい香りは箱庭男性の標準装備だろうか…
私の頭の上に頬を乗せ溜息吐くシリウスさん。
「口付けたいと言ったら怒りますか?」
「ゔーん…頬になら?」
でた!“No!”て言えない日本人。でも他の元候補者にも頬のキスは許してるからシリウスさんだけダメとは言えない。抱擁が解き腕を腰にまわして頬に口付けた。やっぱり何度経験しても照れる。顔が赤くなった私を目線を合わせまじまじ見て微笑むシリウスさん。お顔が綺麗すぎて直視できません!さっきと反対にまた口付ける。この後なかなか止まない口付けに私が「終了!長い!」と怒りやっと終わった。
この後直ぐにシリウスさんは退室した。もう…ぐったり…
『もう今日は閉店…』
私の表情を理解したケイティさんは部屋の外の騎士さんに今日の面会を断る様に伝えてくれた。
早く休む為に夕食を食べて湯浴みし寝室に籠る。寝室に行くとベッドサイドに綺麗な花があった。見た事ない花で爽やかな香りに気持ちが落ち着く。
『たえ はな フィラ』
『そっか… リラックスする香りでこれ好き』
『いいこと フィラ よろこぶ』
居間に行きケイティさんに花瓶を出してもらう。花を見たケイティさんは妖精の森に咲く花だと教えてくれた。
「その花は確か香りが無くならないリラックス効果のある花です。妖精王は多恵様をよく分かってらっしゃる」
「だってフィラは見守りという名目のストーカーだから」
「それに関しては私は何も申せません」
ケイティさんは横を向いてしまった。だって最近本当にストーカーちっくだもん!
寝室に戻りフィラが贈ってくれた花の香りに包まれ心地いい眠りについた。
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