長い抱擁
オーランド殿下の溺愛に困る多恵。長い抱擁から逃れる為に…
オーランド殿下がずっと抱きしめています。そろそろ離してほしくて背中を叩くと、殿下は腕を緩めまた頬に口付けてくる。
「あのね、キスして欲しいのではなくて離して欲しいんですが」
「嫌です」
「足が疲れました」
殿下は腕を解いたので解放されると安堵したら、殿下は少し屈み抱き上げてソファーに座り私を膝の上に座らせ腰をホールドした。
「殿下違います!自分で座りたいしお茶菓子をいただきたいんです!」
終始笑顔の殿下は私の言葉を理解していないようで、クッキーを手に取り私の口に運んだ。
何度か下ろしてとお願いしたが全く聞いてくれず、仕方なく最終手段にでる。
「カイルさ〜ん!」
凄い勢いで扉が開き険しい顔のカイルさんが足早に来て殿下の頭を叩いた。そして緩んだ殿下の腕から解放してくれた。カイルさんに続きケイティさんが入室して、私を後ろに庇う。
「殿下。多恵様に無体な事はおやめください。この後も予定がございます。ご退室を!」
カイルさんはオーランド殿下を引っ張り頭を押さえて謝罪されます。
「皆さん勘違いしないで下さい。殿下が離して下さらないので、お呼びしただけで変な事はされていませんから!」
「カイル!多恵様に俺を分かってもらえた!少しだか好意も持っていただいている!」
嬉しそうにカイルさんに話す殿下は可愛らしい。殿下は純粋なんだよね…カイルさんは兄の様に殿下の背中を叩き微笑み頷いている。
「しかし、嬉しいのは分かるが強引なのは駄目だ!」
「反省している。暫くしたらレックロッドに帰り暫く多恵様に会えない。暫しの逢瀬を堪能させてくれ」
どんどんケイティさんが無表情になっている。
「誤解が解けてよかった。多恵様次はモーブルですね。俺らは貴女がレックロッドにお越しいただける日を楽しみにしています」
「ありがとうございます。また帰国される際に改めてご挨拶しますね」
ケイティさんの雰囲気に負けたオーランド殿下とカイルさんは退室していった。殿下の長い抱擁としつこい位の頬のキスが更にケイティさんを不機嫌にした。
オーランド殿下が帰りほっとし、ソファーに沈み込む。まだ半分しかお土産を渡せてない。ビルス殿下には直接会えないから、手紙を書きお土産と一緒にてん君にお願いしょう。だったら手紙を書かないといけない。また神経と手を酷使する。
疲れたからまずはお茶菓子で糖分チャージ!
5刻になりダラス陛下から面会申込があった。オーランド殿下の面会がどのくらいかかるか分からないから、面会は明日朝一に申し込んでいた。
でもオーランド殿下の面会が終わったのを聞いようで、前倒しで陛下から申込みがあった。
正直疲れているがお土産も早く渡したいし、モーブルに移る打ち合わせもしたい。
陛下のお部屋に行くつもりで用意して陛下が滞在する貴賓室に向かおうとしたら、前からダラス陛下とシリウスさんが来た。びっくりして固まる私。
シリウスさんと目が合うとシリウスさんの目元が緩む。シリウスさんが何か言いかけた時、ダラス陛下が割って入り私の前に来て手の甲に口付ける。そして流れる様にエスコートし私の部屋に向かった。背後を歩くシリウスさんの視線をバシバシ受けながら部屋に戻って来る。
ダラス陛下の部屋に行ったはずの私が帰って来たのに、慌てる事なくお迎え出来るケイティさんはプロフェッショナル!
ソファーに座りご挨拶をしたら陛下にいきなりぶっ込まれお茶を吹きそうになる。
「バース領でもモテた様だが、多恵殿のお眼鏡に叶う男はいたか?」
「そんな方はいませんよ。楽しく旅行して来ただけです」
「っだそうだシリウス!いい加減お前の厳つい眉間の皺を何とかしろ!」
そう言われシリウスさんを見たら必死に指で眉間を隠している。なんか可愛くて笑ってしまったら、シリウスさんは照れ笑いをし場が和んだ。
気をつかってくれた陛下にお礼を言うと微笑まれた。う…ん渋くで相変わらず男前だ。
「私は3日後に帰国しグリードとビルス殿下、ビビアン王女は2日後にファーブス領の港に移動し翌日にバスグルに帰る。本当は私が帰る時に多恵殿には一緒にモーブルに移って欲しかったが、アルディア側から10日程待って欲しいと言われたよ。まぁ先にモーブルに帰り準備をしておく」
「はい。よろしくお願いします。出来るのならビルス殿下とビビアン王女に帰国前にご面会したいのですが大丈夫でしょうか⁈」
「シリウス。グリードに伝えて調整をしなさい。後、多恵殿がもしモーブルに連れて行きたい侍女や騎士がいたら、アルディアに交渉しよう。うちでも優秀な侍女と騎士をつけるが、気心知れた者の方がいいであろう」
誰かか…サリナさんやケイティさんが付いて来てくれたら安心するけど…お仕えするとなるとモーブルの内情を知る事になるし反対も然り。まして騎士さんとなるとモーブル城の城内を知る事になる。
私が望めばダラス陛下は叶えてくれだろうし、皆んなも来てくれると思うが大変なのは目に見えている。そんな苦労させたく無い。
「ありがとうございます。モーブルにも素晴らしい侍女さんや騎士様がいらっしゃるのでお任せします」
「やはり多恵殿は賢いな…やはり私の元に来なさい。愛し大切にすると誓おう」
「その件は丁重にお断りした筈ですよ」
「やはりダメか…気長に待つよ」
ふと陛下の後ろに座るシリウスさんが目に入ると、眉間の皺が再発している。話題を変えたくてお土産を渡してモーブルに移る詳細を話し合った。
陛下は察しがいいから話が早い。私が話す意図をすぐ理解して提案してくれる。頭のいい人との会話は気持ちいいし無駄がない。
ふと時計を見ると6刻前だ。私の視線に気付いたダラス陛下は退室される。別に早く帰って欲しかった訳じゃ無いよ!陛下は私の考えが分かった様で笑っている。
「旅から帰り面会続きでお疲れのところ押し掛けて悪かった。…すまんが一応元候補の男に少し時間をやってはくれぬか⁈」
シリウスさんはガン見してくる。やっぱり話し合わないといけないよね…
「はい。長く無ければ…」
シリウスさんはホッとした顔をし、ダラス陛下は機嫌よく退室して行った。シリウスさんはケイティさんに退室を指示しケイティさんは私に視線を送り確認してくる。頷くと溜息を吐きケイティさんは退室した。
今からシリウスさんとバトります!
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