見合い
城下の乱闘騒ぎから厄介ごとが続く事に…
夕食の部屋に着くと既に陛下と王妃様が着席していた。遅れた事をお詫びして着席する。
ますば今回の旅に感謝を述べて旅のお土産を渡した。
「バース領産の綿のポケットチーフとハンカチです。下手で申し訳ないんですが陛下と王妃様の名前の頭文字を、私の国の文字で刺繍しました。大したもので無くてすみません」
お2人は手に取り土産を見ている。あまり見ないで欲しい…お2人は喜んでくれ胸を撫で下ろす。
陛下が手を上げると給仕が始まり美味しそうな料理が運ばれて食事が始まる。
綿花の収穫作業や機織りの話をしたら、興味深そうに話を聞く2人。
最後のデザートを食べ終えたら、王妃様が退室していった。入れ替わりでイザーク様が入ってきた。
良くない話だろうか…
「まずは無事にお帰りになり安心しました。旅行中のトラブルは報告を受けています。バース領での暴漢に関してはバース子爵が対処し、荒地の開拓に1年労働する罰を課しました。
朝の城下の騒ぎに巻き込まれた様で申し訳ございません。その乱闘した者達を第3騎士団が取り調べたところ、貴族にお金を渡されたあの場で騒ぐ様に頼まれた様です。恐らく多恵様に面会したい貴族が時間稼ぎに起こした様で」
「イザーク。頼んだ貴族は分かったか⁈」
「何人も仲介しているようで、頼んだ元の貴族まで辿れませんでした」
私に会う為にあんな騒動を起こして、小さい子を巻き込んで許せない!
「ちなみに多恵様を突き飛ばした輩は騎士が締め上げ今牢に入っています」
『締め上げ⁈』過保護な騎士さんが加減間違えて無いといいけど…
咳払いをして陛下が気不味そうに
「今回の多恵殿の旅行を貴族に教えたのは王妃付きの侍女だ。その者は実家に帰省した際にうっかり婚約者に話した様でそこから漏れた。多恵殿が旅から無事に戻るまで王妃には知らせていない。侍女は暇を出し領地に返し領主に領地の一部返上を命じた。この後王妃には話すがショックを受けるだろう。気に入って側においた侍女だからなぁ…
今回の多恵殿の接触を試みた貴族は侯爵家と伯爵家で、年頃の嫡男がおり多恵殿に面会を望んでおる」
旅でリフレッシュして新天地モーブルに行くつもりだったのに…
陛下は頭を下げて
「今、アルディア王家と貴族に溝が生じて危うい状況だ。儂からの頼みだ。不満を抱えた貴族の抑える為に各貴族と面会をして欲しい」
「私近い内にモーブルに移る予定ですよ!」
「分かっている。多恵殿の負担にならない様に、お茶会を催し一度で終わる様にする故、協力願いたい」
恐らくモーブルに行けば数ヶ月は帰って来れない。バスグルにも行く事になるしなぁ。私がいない間にアルディアが揉めるのは嫌だから…
「分かりました。しかし今日帰ってきたばかりなので少し日を空けて欲しいです」
「感謝する。イザーク!早速手配をしてくれ」
面会と言うお見合いをする事になった。これ以上の男性は要らないのに…
陛下との夕食を終えて騎士さんと暗くなった廊下を歩いて部屋に戻る。足取りが重く護衛の2人に心配される。部屋にはケイティさんが居てくれ、顔を見たら気が抜けた。
「ケイティさん。疲れたから休みます。面会や手紙は今日は断って下さい」
「畏まりました」
ドレスを脱ぐのを手伝ってもらいベッドに潜りんたら直ぐに眠ってしまった。
久しぶりの自室のベッドは気持ちよく体の疲れがとれていく様だ。
夢見が悪く機嫌が悪い私をてん君が尻尾を振り機嫌取りをしてくれる。ごめん。でもテンション上がらないわ…居間に行くとマリカさんがお茶を入れてくれる。一息つくとテーブルに沢山の手紙が置いてある。恐らく陛下が話していた面会を希望する貴族からだろう。さらに私のテンションは更に下がる。
手紙の差出人を確認していたらオーランド殿下から面会の申し出があった。これは先に応じないといけないやつだ。開封し読めば2日後に帰るらしい。それまでに会いたいと言う内容だった。そっかダラス陛下、ビルス殿下も帰るんだ。その前に会わないと…テンション下げてる場合ではない。やる事山盛りだ。旅行ボケを脱する為にマリカさんに朝食を用意してもらい、ケイティさんに昼以降にオーランド殿下の面会を調整してもらい昼一に会う約束をした。
お土産を整理して今日渡して回ろう。ケイティさんとマリカさんにハンカチを渡したら喜んでくれほっとする。
午前中はヒューイ殿下とトーイ殿下の元に行き、アーサー殿下の執務室に行くと城下の警らでいらっしゃらずまた来ますと伝言を頼み、イザーク様の執務室に向かおうとしたらお昼になった。
昼からオーランド殿下が来るから戻らないと!
慌てて部屋に戻り軽く昼食をとりオーランド殿下を待つ。先ぶれが来たので身なりを整えてソファーの横に立ちお迎えする。
「お時間いただき感謝致します」
「いえ。帰国が決まったんですね。ダラス陛下やビルス殿下も帰国されるので、アルディア城は寂しくなりますね。どうぞ…」
ソファーに座るとケイティさんがお茶を入れて部屋の隅に控える。するとオーランド殿下がケイティさんとお付きのカイルさんに退室を命じ、ケイティさんが視線を向けて伺って来たので頷いた。
2人は退室し殿下と2人きりになる。
「昨日は失礼な態度をとり申し訳ありません。貴女を不快にしカイルにも叱責されました」
「いえ。私から解消を申し出たんです。避けられたり嫌われても仕方ないです」
「俺が貴女を嫌う事はこの命が尽きても無い!」
思わず顔が綻ぶ。私って現金なやつ…
「貴女に解消を言われたあの日。俺は全て終わったと絶望しました。その日は部屋に籠りどうやって過ごしたのか記憶がありません。翌朝の鍛錬に行かずベッドで塞ぎ込んでいたらカイルが来てぶっ飛ばされました」
「へ?マジで!」
「はい。3日は腫れが引かず酷い顔してましたよ」
旅行出発の見送り中に殿下いらしゃったのは見えてたけど、遠目で打撲痕は見えなかったわ。
「カイルに話したら…
『話を聞くに多恵様は”嫌い”何て言われて無いぞ!ならば好かれる男になればいいだけだ!いつまで幼い子の様に拗ねている』と発破をかけられまして、立直り直ぐ心身共に鍛え直し貴女が帰ったら逢いに行くつもりでした」
カイルさんはオーランド殿下のお兄さんみたいだ。いい家臣いや親友がいるから殿下はいい王になるよ。これなら妖精達との和解も早いかも…
「しかし、貴女が帰って来ると聞き城で待って入れず、一目でも遠目でも貴女を見たくてこっそり城下で貴女を待っていた。そうしたら輩が暴れ始めバレない様に輩を抑えていたら、柄の小さい女性騎士が子供を身を挺して守っていたので手助けしたら…その貴女でして…不意打ちで思わず逃げてしまった…」
納得!ちゃんと話さないとわからないね。シャイで真っ直ぐな殿下に好感をもつ。
「貴女に取り繕わす本当の俺を知ってもらいたい!」
「本当の殿下を?」
「はい…」
私の殿下に対するイメージはシャイだけど真面目な好青年。意外な一面があるのだろうか⁈例えばオネエキャラとか?…いや無い無い!
「さっきの話でお気づきかもしれませんが、俺は女々しい所があり女性恐怖症なのです」
「えっ?」
オーランド殿下告白に固まってしまった。
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