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帰路

バース領から王都に帰ります

朝、気持ちよく目覚める。隣のミリアさんはもう起きているようだ。

洗面所で身支度し居間に行くとサリナさんが私の荷物を整理してくれている。


「多恵さんこのお土産はトランクに入れていいですか?」

「あっベージュの袋に入っているのは馬車で刺繍するから手荷物で馬車に持込みます。黄色の袋は刺繍終えているのでトランクでお願いします」

「ミリアさんは?」

「今リック殿と馬車と馬の最終確認に行っています。ミリアさんから聞いたのですが、ここに妖精王フィラがお越しになったと…大丈夫でしかた?」

「うん。ピートさんとジャックさんの求婚に不安になったみたい。この旅行も見守りという監視をしていたみたいだよ」


と言うとサリナさんは呆れた様に笑う。

2人で雑談しながら荷造りをしていたらミリアさんが帰って来たので朝食に向かう。

子爵ご夫妻は最後なので一緒に朝食をと言って下さったが、また当分サリナさんと会えないだろうからお断りしてローガンさんが達と従業員用の食堂で頂いた。

ローガンさんはほんといい人でお世話になったので改めてお礼を言うと


「滅相もない。ユキさんたちが来てくれたお陰で、いつも静かな屋敷が華やいで楽しかったです。またお越しください」


ほんといい人!


用意が全て終わり出発します。子爵ご夫妻とカーチスさん、マリアンさんがお見送りに出てきてくれ最後のご挨拶をして馬車に乗り込もうとしたらリックさんの表情が険しくなる。リックさんの視線の先には…


「「ユキちゃん!」」


ロドリス兄弟が来ている。リックさんが無言で二人の元に足早に歩いて行き何か話している。中々埒が明かないと無表情のサリナさんが参戦しに行った。

サリナさんは領地のお嬢様だけあって二人は歯向かえないらしく意気消沈していく。サリナさんは戻って来て


「しつこいので一喝してきました。でも彼らは真剣な様でこのままでは可愛そうです。しっかりフッて来てあげて下さい」

「昨日にちゃんと断っているのに、これ以上どう言えばいいのよ⁉」


サリナさんは「失礼します」と言って耳打ちした。なるほど!


「冷たく感情を入れずに言って下さい。そして最後は優しく。これで彼らもいい思い出で終わりますから」

「よっしゃ!がんばる」


ガッツポーズをして二人の元へ  


「ユキちゃん帰らないで。お嫁においで大切にするから!」

「俺がずっと守り幸せにする。だから俺を選んで!」

「昨日もお断りしたはずです。正直しつこい男性は嫌いです」

絶句し青くなる2人。

「でも…優しいお兄さんが出来たみたいで嬉しかったです。妹としてお2人の幸せを王都から願っています。本当にありがとう」

「「ユキちゃん…」」


サリナさんが言った様に最後は微笑んでみました。上手く笑えたかなぁ⁈


「分かったよ。こちらこそ楽しい思い出ありがとう。最後に王都に帰る妹をハグしていいかい?」

「俺も!妹に別れのハグしたい!」


リックさんが私の前に立ち警戒するけど私が「大丈夫」と言いピートさんの前に立ち両手を広げた。

ピートさんは優しくハグし頬に口付けた。次にジャックさんにも同じ様にハグし、ピートさんと反対の頬に口付けた。

サリナさんのアドバイスのお陰で丸く収まりました。流石!!

2人と別れリックさんと戻ります。


「リックさん色々ありがとう」

「これほどしつこい男は初めてです。俺が騎士であったなら締め上げている所ですよ」

「リックさんが付いてきてくれて安心して好きに過ごせたわ、感謝してます。これからもご迷惑をお掛けしますが、よろしくね!」


リックさんは目を見開き驚きながらも、胸に手を当てて礼をして微笑んでくれた。


ロドリス兄弟問題も解決し少し遅れたが王都に戻ります。馬車に乗り込み窓から子爵家の皆さんに手を振り出発!また1日半かけて帰ります。


お昼過ぎにヴァックス領のザナックで昼休憩をしそこからヴァックス領を横断し日没前にヴァックス領とファーブス領の境町のテントンに着き1泊。翌お昼ごろに王都に着く予定です。サリナさんが少しなら気になった町に寄ってもいいと言ってくれ帰りも目新しいものが見れるかもとわくわくする。


っが!結局どこに寄ることも無く予定通りテントンの町に日没前に着き宿にチェックインします。早く皆にゆっくりして欲しくて夕食を早めに食べに食堂に向かいます。ここでは少し無礼講!でお酒を頼みみんなで酒盛りをします。私も甘い果実酒を少し飲み上機嫌。すると隣の席から男性が椅子とジャッキをもって私たちの席に来た。


「兄ちゃん一人にかわい子ちゃん3人も連れてモテるね!俺ら男同士で寂しいんだ!仲間に入れてくれよ」


それまで楽しく飲んでいたのに一気に緊張が走り皆険しい顔に


「すまんな。今日は仲間だけで飲みたいんだ。遠慮してくれ」

「いいじゃないか!俺はこの可愛らしいお嬢とお近づきになりたいから紹介しろよ!」

「嫌だと言っているだろう」


リックさんとミリアさんが臨戦態勢に入る。すると急に酔っぱらいのナンパ男は震えだし仲間と引き下がって行った。

皆何が起こったか分からず男たちが見ていたところを見ると、黒いフードを目深に被った男が立っている。フード男は帯剣している!リックさんとミリアさんは腰の剣に手をかけリックさんが


「あいつ只者ではありません、事が起これば俺が相手するのでミリアとサリナ嬢は多恵様を連れて自警団事務所に走って下さい!」


折角楽しく1日が終わりそうだったのに!酔いが一気に覚めた。するとゆっくり男が近づいてくる。緊張が走る!男は目の前に来てフードを取った。


「「「クレイブ様!!」」


渋くて格好いい第2騎士団副団長のクレイブ様だった。


皆一気に気が抜けて呆然としてしまう。

クレイブ様は空いて居る席に座り、店員にワインを頼みニコニコしながら私を見ている。

運ばれてきたワインを一気飲みし、第一声は…


「リックにミリア。警戒が少し甘いな。酒は飲んでも警戒は続けろ。後、多恵様の庶民の装いは想像以上の愛らしさで福眼です」 


嬉しそうにワインを飲み終え、2杯目注文するクレイブ様。


「副団長で良かったです。正直対治して勝てる気がしなかったので、一瞬覚悟をきめましたよ」


そんなに凄いオーラ出していたんだ。ミリアさんにも聞いたらリックさんと同じ事を思っていたらしい。冷静なサリナさんがクレイブ様に皆が思っている疑問をクレイブ様に聞いてくれた。


「何故クレイブ様がお越しになったのですか?」


クレイブ様が溜息を吐き一口ワインを飲み話し出した。


「実は多恵様が旅に出ているのを漏らした者がいて、それを聞いた地方貴族が自分の領地に招待したくて、バース領から王都までの道のりで馬車を捜索しています。心配された陛下が念のため迎えを出す事を決定。大人数だと反対に目立つので私と部下3名で来ています。他の者は今別の酒場や食堂で多恵様を探しています」


そんな事になっていたんだ。知らなかったよ。クレイブ様は私たちの宿を聞いて空き部屋があるか聞きに行き他の騎士さんたちと合流するために食堂を後にした。お酒も抜けたから宿に戻る。宿のフロントに第2騎士団の方々いて知っている顔に安心感が増す。でも何故か第1騎士団の女性騎士のランさんがいる。疑問に思ったけどこの時は余り気に留めていなかった。ラッキーな事に宿に空きがあったのでクレイブ様達も同じ宿に泊まる事に。


部屋に入るとミリアさんはクレイブ様に呼ばれ直ぐにリックさんと騎士さんの部屋にいってしまった。


湯浴みをしてのんびり過ごしていたらミリアさんが帰ってきた。ミリアさんは深妙な顔をしている。

後でクレイブ様が明日の説明に来るらしい。とりあえず待ってる間、寝室でベッドに寝転がりガールズトークに花を咲かせる。


「そうそう!ミリアさん!また怪談話する?」

慌ててベッドに潜り込み頭から布団をかぶるミリアさん。サリナさんと顔を見合わせ笑う。


「ウソウソ!しないから安心して!」


ミリアさんは格好いい騎士だけどやっぱり年頃の可愛い女の子でした。沢山話したせいか喉が渇き居間に行き果実水を飲んでいたら誰か来た。警戒心のない私は何も考えず扉を開けた。目の前に少しラフな服装のクレイブ様がいて目が点になっている。


「クレイブ様?」


我に返ったクレイブ様は後ろを向き


「多恵様は警戒心が無さすぎます!その様な夜着で訪問者の確認もせずお出になり、邪な思いを持った輩だったらどうするんですか!」


「あっ…ごめんなさい。えっとミリアさんを呼んでくるので、中でお待ちください」


怒られた…でも今のは100%私が悪い。ミリアさんに声をかけ私は寝室に入り、サリナさんに今あった事を自己申請し早目にお説教を受けます。

溜息を吐いたサリナさんに厚手のガウンを着さされた時にミリアさんが呼びに来た。

居間の方に行くとリックさんとランさんもいた。


ソファーに座り少し顔の赤いクレイブ様から明日の帰路について説明を聞く。


「明日は馬車には多恵様の代わりにランが乗車し王都へ向かいます。多恵様は私達と馬で別ルートで王都に向かいます。リックは伯爵家、サリナ嬢は子爵家。今多恵様を探している貴族は侯爵家と伯爵家。もし馬車を停められ多恵様にお目通を願った時、リックとサリナ嬢では拒めない。領地まで連れて行かれなくても、近くの街で食事やお茶に誘われる事になる。私もここに来る途中に伯爵家の捜索隊と遭遇したが御嫡男が居らした。恐らく今多恵様の伴侶候補者不在にあたり、多恵様の縁を結びたいのでしょう」


サリナさんの表情が険しい。一息ついてサリナさんがクレイブ様に


「私は反対です。何故なら乗馬経験が無い多恵様が長距離の騎乗にお体が心配ですし、女性が居ないと体調を崩した時にお世話出来ませんわ。それならクレイブ様が同行するか直ぐにファーブス領です。公爵家から護衛を出して貰えばいいではありませんか⁉︎」


クレイブ様はお茶を一口飲み改まって


「多恵様の流行病対策に港町の検疫に防御靴。それらはアルティア貴族に注目されて、その恩恵は公爵家に齎されその御子息は伴侶候補者。王族と公爵家が乙女を囲い込んでいると不満がでています。ここで我ら騎士団やファーブス公爵が護衛すると、更に不満が募り王族との確執に繋がります。

多恵様には不便をおかけしますが、我慢願いたい」


「私はクレイブ様や騎士の皆さんと面識があるし信頼しているので大丈夫です。それよりランさんと入れ替わってバレませんか?」


「ランは比較的騎士の中でも小柄で遠目なら分かりません。今日何台かの馬車に遭遇した時に、ランと私が一緒に騎乗していたので、多恵様が騎士服を着て私と騎乗しても今日見たランと思うでしょう」


クレイブ様との騎乗は恥ずかしいけど、騎士服はカッコよくて憧れてたから嬉しい!それにこっちに来てずっとスカートしか履いてない。元の世界では反対にズボンしか履かなかったからズボンは久しぶりだ。本当に背格好が似てるか不安になりランさんの前に行き立ってもらった。

並んで立つとほんの少しランさんの方が高い。でもミリヤさんやサリナさんに比べたら差は無い。


まだサリナさんは不満げだったが一応替玉作戦は決まり明日朝決行となった。

お読みいただきありがとうございます。

続きが気になりましたら、ブックマーク登録&評価をよろしくお願いします。


『時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜』


『(仮)選べなかった1度目の人生、2度目は好きにしていいですか?』


こちらもよろしくお願いします。

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