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機織り

いきなりのプロポーズで波乱の予感。

「ダメだ!兄貴にはマリーナがいるだろう!」

「マリーナは幼馴染みでそんな仲ではない。ユキちゃんはこんなに知識豊富で愛らしい。惚れない方がおかしいだろう?」

「ユキちゃんは俺が先に見染めたんだそ!横恋慕するなよ!」


目の前で兄弟喧嘩が勃発しています。他の人達はどうしていいか分からず見守るだけ。

リックさんとミリアさんが溜息を吐いて「毎度の事で慣れましたが、多恵様はホンとに“超・人たらし”ですよね」

「うわぁ!ディスってる?私何もしてないじゃん!」

「ユキ。取りあえずお断りして子爵邸に戻りましょう」

そうだサリナさんの所に帰らないと。

「ピートさん。お気持ち嬉しいのですが私まだ婚姻するつもりないし、王城での侍女の仕事を辞めるつもりありませんからお断りさせて頂きます。

そうそう。ジャックさんも親切にしていただいたけどお嫁に来るつもりないので、そろそろ目を覚ましてくださいね」

「「そんな!」」


小屋にローガンさんが迎えに来てくれた。作業場の皆さんにお世話になったお礼を述べて帰ろうとしたら


「明日、機織り体験に行くのに朝迎えに行くから」

「ジャックさんは畑の仕事があるでしょ?ローガンさんにお願いするので大丈夫です」

「あと2日で王都にかえるんだろう⁈俺まだ諦めてないから!」


リックさんが私の肩を抱き馬車に誘導する。馬車に乗り窓から手を振り綿花畑を後にした。


「はぁ…。リックさんミリアさん付き合ってくれてありがとう。農作業で疲れたでしょう⁈私の護衛受けて貧乏くじだったね農作業とかさせられてるし」

「いえ。貴重な体験でしたよ。それより虫よけ全く効きませんね。ジャックさんは帰る直前まで求婚して来そうです」

「ちゃんと断ったし今恋愛は要らない」


1日作業で疲れたので帰りの馬車では寝てしまい子爵邸に着いてミリアさんに起こされ半分寝たまま部屋に戻った。すぐに湯浴みをしてベッドに寝転がると睡魔に襲われそのまま寝てしまった。

目が覚めると部屋は薄暗く隣のベッドではミリアさんが寝ている。どうやら昨晩夕食も取らずに寝落ちしてしまったようだ。

ミリアさんを起こさない様に隣の居間に行くと知っている香りがする。


「フィラ?」


風が吹き目の前にフィラが現れた。久しぶりに会うけど拗ねているような顔をしている。


「元気にしていたか?」

「うん!チョーカーありがとうね」

「良く似合ってる」

「えっと…」気まずい。何話そうか考えていたら

「あの者達の求婚プロポーズ受けるのか?」

「はぁ?んな訳ないでしょう!ちゃんと断ったし今は恋愛する気ないよ。あっ!突風とか雷とか危ないからやめてね」

「故意にした訳では無い」

「あっ!そうそう!ちょっと待ってね」

音を立てない様に寝室に戻りある物を取りに行く


「これ…帰ったら渡しに行こうと思っていたんだけど、今日会えたから…あんまりじっくり見ないで下手だから」

「これは…」

「この旅のお土産に買ったの。私の世界の文字で名前の頭文字を刺繍してみた。皆ポケットチーフだから見分けつく様に刺繍したの」


実はみんなのお土産買って直ぐに見分けがつくようにイニシャルを刺繍している。良かったフィラの刺繍は終わっていて。


「俺にくれるのか⁈」

「下手だけど貰ってくれると嬉しいな」


じっとポケットチーフを見つめるフィラ。だからあまりじっくり見ないで。箱庭の令嬢に比べ私の刺繍子供レベルだから!


「でもよく考えたらフィラは夜会とかはローブだからポケットチーフよりハンカチに方が良かったかなぁ…」

「…ていいか?」

「えっ?何?」

「触れていいか?」


前にもこんな事あった様な気がする。普段は俺様なのにたまに迷子の子犬の様な表情をする事がある。その顔がたまらなく愛おしく思う。

バンザイをしてフィラを見た。

恐る恐る抱きしめるフィラ。温もりと新緑の香り…。やっぱりフィラの抱っこは好きだし安心する。

耳が丁度フィラの心臓の位置にあり少し早いフィラの鼓動を感じられて私もドキドキしてきた。


「今日はね機織りをさせてもらうの。今回の旅でリックさんとミリアさんとサリナさんにはいっぱいお世話になったから、機織りで何か織ってお礼にしようと思っているんだ。時間があったら自分にも何か作ろかなぁ~」


フィラは旋風にキスをして更に強く抱きしめる。

「あと2日か…楽しんでおいで」

「うん!」


寝室で物音がした。ミリアさんが起きた様だ。


「口付けていいか?」

「頬にならいいよ」

フィラは頬を両手を優しく包み左頬に口付けた。

「多恵様!」

ミリアさんがこっちに来る。フィラは額にキスをして「帰ったら話し合おう」

と言い残し帰って行った。


剣を片手に居間に来たミリアさん。

「今誰かいませんでしたか⁈」

「うん。妖精王フィラが来てた。驚かせてごめんね」

「ご無事ならよかったです」

「昨日はごめんなさい。寝落ちしたんですね」

「夕食の時間に何度か起こしたのですが、よく眠ってらっしゃったので」

「すみません。1食食べ損ねちゃった!へへ…」


ミリアさんはフィラがなせ来たのかあえて聞かない。私もあえて言うつもりは無い。少しするとサリナさんが部屋に来た。

私の様子を見に来てくれたよう。流石出来る女の気遣いは一級品です。

夕食を食べていない私を気遣い朝食は早めに用意してくれるらしい。有難い!さっきからお腹の虫が大合唱中です。

リックさんも早めに起床した様で朝食は早めにいただく事になりました。今日はサリナさんも一緒です。

昨日のピートさんとジャックさんの求愛合戦を聞いたサリナさんは


「ね!やはり虫よけ程度では効かないと言ったでしょう⁉あの二人は帰る直前まで言い寄りそうです。しつこかったら私に言って下さい。〆ます」


静かに笑うサリナさん。たまに怖い時があるよ貴女…。朝食を終わると機織り場に向かいます。通用口を出ると困った顔のローガンさんがいる。どうしたんだろう?屋敷外にはピートさんとジャックさんが居ます。確かに昨日お断りをしたはずだけど…


「ローガンさんあれ…」

「はい。勝手に来て勝手に待っている様です。先ほどサリナお嬢様にも帰る様に言われていたのですが…正直困っていまして」


ふとリックさんが視界に入ると完全に騎士の顔になっている。帯剣して無くてよかった。流血事件が起こっているよ。


「はぁ…ちょい話して来る。ここで待っていて」

2人の元に行き話をしに行く。


「おはようございます。昨日はありがとうございました。確か昨日お迎えはお断りしたと思うんですが」

「俺迎えに行くって言った!兄貴は勝手についてきたんだよ!」

「お2人共お仕事は?私働く男性が好きです」


「「・・・」」


よし!このまま帰って!


「俺さユキちゃんに頼まれたサリナ嬢様の贈り物の件をばぁさんに話して来たんだぜ!お礼に送らせてくれてもいいだろう!」

「お礼はした筈ですが⁈」


黙り込んだジャックさん。ごめんね気持ちは受け取れないよ。


「そっか!あの子供の練習用はユキちゃんの為だったんだ。俺さばぁさんに昨日呼ばれて急遽3台納屋から出してセットしたんだよ。普通の織り機では初心者はほんの少ししか織れないからね。それなら俺もユキちゃんのお願いを手伝ったからご褒美もらえるよな!」


ピートさんはにやけ顔で寄って来る。背後から殺気が飛ぶ。思わず後ろを振り返り首を振ってミリアさんとリックさんの大丈夫だと知らせる。


「ピートさん両手を上に上げて!」

「何故?」

「いいから!」


ジャックさん同様ピートさんに抱き付き“ぎゅー”っとした。ジャックさんよりは華奢だけどやっぱり農作業しているせいか肢体はがっちりしている。


「ユキちゃん!」ピートさんが両手を背中にまわし抱きしめた。


「「「!!」」」


「兄貴!ユキちゃん離せ!俺は“ぎゅ”だけだったぞ!」

「女性に抱き付かれて何もしないお前がバカなんだよ!」


ピートさんの腕の力が強くなり苦しくなる。ピートさんの背中をパンチするが所詮猫パンチ程度の威力で効かない。私が藻掻いているのに気づいたリックさんが駆け寄りピートさんを引き離しリックさんの腕の中に保護された。


「リックさん怒らないで。私が悪いから」

「たっ…ユキは優しすぎる。こいつらがつけ上がるだけだ!」


ピートさんとジャックさんに向かって


「お礼はしました。送迎は必要ないですからお仕事に戻って下さい」

「これで最後だから行きだけでも送らせてくれ」


2人は引き下がらず埒が明かない。結局私が折れて今二人の荷馬車に乗せられて隣町のお2人の親戚の機織り場へ向かい、帰りはローガンさんが来てくれることになりました。

リックさんは超不機嫌でミリアさんは呆れ顔です。押しに弱い私が悪いのは分かっているから許して欲しい…


約1時間で機織り場に着いた。品のいいおばぁちゃんが迎えてくれる。


「子爵様から聞いているよ。今日教えるマーガレットです。よろしくね可愛いお嬢さん」

「ユキです。サリナお嬢様の同僚でお世話になっています。よろしくお願いします」


この後リックさんとミリアさんも自己紹介し、まずは機織り場を見せてもらう。おっと忘れていた2人の元に行き


「ありがとうございました。いい思い出になりました。明日お会いできるか分からないのでご挨拶させて下さい。これからもお…」

「待って!俺ら明日お見送りに行くから!」

「いいですよ!お忙しいのに」

「そんなつれない事言わないでよユキちゃん」


臨戦態勢のリックさんが来て

「いい加減しつこいのは我慢ならん。力づくで排除するぞ」

リックさんの本気の殺気に何かを感じ取った二人は退散していった。


「ごめんね。うちの男どもは執着心が強くてね。爺さんもそうでね、私もしつこく言い寄られて最後は根負けしたの。ユキちゃんは頼れるお兄さんとお姉さんがいる様だから大丈夫そうだね」

「あははは…」もう笑うしかない。


やっと2人が帰り機織り場を見せてもらった。小屋の中には8機の機織りがあり私と歳の近い少女から中年女性がパタンパタンとリズミカルに織っている。

機織り機は元の世界の物に似ている。見てる間に綺麗な布がどんどん織りあがって行く。

説明を一通り終えたおばぁちゃんは隣の部屋に案内してくれた。そこにはさっきの織り機より一回り小さい織り機がある。ピートさんが言っていて子供用の練習機だ、

3人並んで織子さんが一人ひとりついてくれ織物を始める。

私についてくれたのはおばぁちゃん。何を作りたいか聞かれ


「ハンカチ大の敷物を3枚作りたいです。今日中にできますか?」

少し考えたおばぁちゃんは「簡単な柄の物ならできるよ」お願いし早速織りだします。


初めは間違いまくり何度もやり直してけど半時間も経てば慣れてきて順調に織れるようになってきた。

リックさんはのみ込みが早く意外な才能発揮で難しい柄も織れている。反対にミリアさんは苦手みたいで苦戦している様だ。

各々自分のペースで織り時間が経つのも忘れるぐらい集中していたら、知らない間にお昼になっていた。おばぁちゃんがお昼を用意してくれ織子さんと一緒に頂きます。

女性の中に美丈夫のリックさん。他の女性は頬を赤らめたどたどしくリックさんに話しかけている。王都を離れて思うけど王城の男性はみんな格好いい。

バース領の男性も男前ばかりだが比ではないのだ。

少しすると若い男性が一人茶菓子を持って入って来た。どことなくピートさんとジャックさんに似ている。彼はおばぁちゃんの孫のマルクさんでピートさんとジャックさんとは従弟になるそうで紹介してくれた。マルクさんは織れた布を加工場に運ぶ担当。

マルクさんは目を見開きミリアさんの横に椅子を置いて話しかけている。二人の様子を見ていいたらどうやらマルクさんはミリアさんを気に入った様で口説き始めている。ミリアさんは私と違い押しに弱くはなくはっきりと


「マルクさん。もしかして口説いてます?それなら無駄ですよ。私王都に彼氏いますから!」


絶句し項垂れたマルクさん。…がめげずにミリアさんにアプローチしている。するとおばぁちゃんが

「あの子もロドリス家の血を継いでしつこいんだよ」


微笑みながら冷たくあしらうミリアさんとめげないマルクさん。真逆で見ていておかしかった。

休憩を終えてまた作業に戻り黙々と夕方まで織り続け何とかハンカチ大の敷物を3枚仕上げた。大満足!器用なリックさんは綺麗なタペストリーをお織り上げ、おばぁちゃんにスカウトされていた。ミリアさんは…ここまで不器用だとは思わなかった。でも苦戦しながらなんとか1枚仕上げていた。

お茶を頂きながら雑談していいたらローガンさんが迎えに来てくれ、織り場の方々にお礼を述べて子爵邸に戻った。


屋敷に戻るとサリナさんが子爵様からの招待状を持ってきた。最後の夕食を共にとの事。湯浴み後キレイ目のワンピースに着替えて大広間に向かう。

大広間には見知らぬ男性と女性が居た。子爵様が紹介して下さる。


「まずは長男のカーチスと次女のマリアンでございます。さぁ!乙女様にご挨拶を」

温厚で人の良さそうなカーチスさんとサリナさんをひと廻り小さい美人のマリアンちゃんから挨拶いただき、一緒に夕食をいただく事になった。

今日も1日働いたからお腹ぺこぺこだ。和やかに談笑しながら食事が進みデザートになった時点で子爵様が人払いをした。


「乙女様に感謝申し上げます。サリナから綿花収穫の際に賃金体系の問題を指摘頂き改善策までご提案頂いたそうで。領主といえ領民の賃金まで把握しておらず、そんな馬鹿な事をしていたなど知りませんでした。一度領民の労働環境を調査し指導する必要があると感じました。

お恥ずかしい話。財政難の打開策が見つからず困っていたところです。乙女様の博識に驚愕しております。出来るならばもう少し滞在していただき、ご指導していただきたい」

「父上、それは陛下がお許しになりませんし、多恵様は他の国を救う役目がお有りなのです。多恵様を困らせてはなりません」

「また、サリナさんの里帰りについて来ます。今回の旅は楽しかったので、ご迷惑でなければまた来たいです」


子爵様は大変喜ばれまた来る約束した。


10時半になりそろそろお開きとなり部屋にもどって明日の打ち合わせを部屋でする事になった。

明日の帰路の確認が終わり今回の旅の感想を話す。


「今回の私の我儘に付き合ってくれてありがとございました。皆は大変だったろうけど私はすごく楽しくて感謝しかない。

…で。お礼に今日の機織りで敷物を織ったの。貰ってくれる?あまり見ないでね。所々色がずれてるから」


3人に順番に渡した。あれ?反応が無い。中途半端な大きさで用途に困るよね…


「「「多恵様…」」」


サリナさんとミリアさんは涙目で喜んでくれ、リックさんは騎士の礼をして「果報にします」と言ってくれた。

「へたっぴだから果報なんかにせず、花瓶や植木置きにでもして!」と照れ隠しをした。嘘でも喜んでくれてよかった。3人の興奮が収まったところで就寝する事に。この旅に関わったくれた皆さんと召喚してくれたリリスに感謝して眠りについた。


お読みいただきありがとうございます。

続きが気になりましたら、ブックマーク登録&評価をよろしくお願いします。


『時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜』


『(仮)選べなかった1度目の人生、2度目は好きにしていいですか?』


こちらもよろしくお願いします。

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