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怪談話

やっとバース領に着きます

『たえ あさ』

“ペシペシ”

『みんな ごはん こまる』


がっと勢いよく起き上がると既に身支度済みのサリナさんとミリアさんが…

寝過ごしたみたいだ!あ…やらかした…


「ごめんなさい!直ぐ用意します!」

「多恵様落ち着いて下さい!まだ出発までに時間はありますから!」


時計を見たらまだ2刻半だ。焦った!

どうやら先に用意を始めたサリナさんとミリアさんにてん君が焦ったみたいだ。


ミリアさんはてん君を初めて見たらしく、目をキラキラさせててん君を見つめている。

昨晩寝付けない私にてん君が添い寝してくれたのだ。てん君の大っきい毛玉は安眠効果がある。

てん君はいつも通りマイペースで扉を叩いてサリナさんに扉を開けてもらい居間の方に行ってしまった。皆んなを待たせているから急いで用意する。


身支度が済みリックさんと合流し宿の食堂で朝食を食べ出発します。そういえばサリナさんの帰省の理由を聞いていなかった。


「サリナさん。帰省は用事があったの?」

「はい。子爵家の家督を弟に決めるために、私が継承意思がない事を表明しなければならないのです。我が子爵家は男女関係なく長子が継ぐ事が決まっており、女か継承する場合は婿を迎えなければなりません。長子が女で嫁ぐ場合は継承権の放棄を一族の前で行わなければなりません。今回はその放棄の表明ために帰省のしたのです」


「貴族はたいへんなんだね…」

「サリナ様が婿を迎えられて継げばいいのに」

「私が継ぐと弟は分家を立ち上げる事になります。元々狭い領地に分家を立て領地を分けると更に狭くなり子爵家としての力は弱まります。ならば弟が継ぎそのまま保つのが一番いいのです。それに私は侍女の仕事が好きですし、出来ればずっと多恵様にお仕えしたいのです」

「ありがたいけど、自分の幸せ優先してね」


少し困り顔で微笑んだサリナさんは話題を変える様にこれからのスケジュールを説明した。


4刻過ぎに子爵邸に到着。昼食後は休息。

2日目はリックさんミリアさんと私は領地見学と街で買い物。

3日目は綿花の収穫体験

4日目は機織り体験

5日目は帰路に着き、翌日6日目に王都到着


明日から4日目まではサリナさんと別行動。サリナさんが居ない間は子爵家の従僕さんが案内で付いてくれるそうです。

ちなみに私の素性を知っているのは子爵家の方々と執事さんのみで、他の方は私達はサリナさんかの仕事仲間と知らされている。


「ミリアさん。到着し馬車を降りたら多恵様は同僚の”ユキ”です。間違わない様に気をつけて下さい」

「はい!」

「勿論多恵様も間違いなくお願いします」

「はい!」


「それにしても多恵様は偽名を決めていたのですか?」

「う…ん。咄嗟に出た名前。元の世界の知り合いの名前」

「打ち合わせも無かったので焦りましたわ」

「へへ…ごめんなさい」


咄嗟に聞かれてまた娘の名前を出してしまった。

子爵領地にいる間は”ユキ”です。

窓の外を見るとのどかな風景から集落が見えてきた。もうすぐ着くようだ。


街中を抜けて小高い丘の上にバース子爵邸がある。

そんなに大きくないが品があり歴史を感じる。

邸宅入口には子爵様と御夫人と使用人の皆さんが待って下さっている。

緊張した面持ちの私にサリナさんが

「自分の親ですが人当たりのいい人達ですから、緊張は必要無いですよ」

「私礼儀がなってないから、失礼な事しないか心配」


微笑み手を握ってくれるサリナさん。それだけで落ち着いてきた。


ゆっくり馬車が止まり扉が開いた。いつもと違いミリアさんで私、最後にサリナさんが降ります。

サリナさんは子爵様と御夫人に挨拶とハグをし、私達を紹介してくれました。


「遠い所までよく来た。歓迎しましょう。私がバース子爵家当主ランディだ。そして妻のエルザ。長旅で疲れただろう!ジャイロお客様を応接室に」


直ぐに執事さんが応接室に通してくれ直ぐにお茶が出された。侍女が退室のちにバース子爵様と夫人が入室され立ち上がりお迎えする。子爵様と夫人は入室するなりその場で最上級の礼をされ


「お初にお目にかかり光栄でございます。この様な偏狭にお越しいただき僥倖でございます」


「こちらこそ、サリナさんの休暇に付いてきてしまいすみません。お聞きしたらお家の用向きでお忙しいのに申し訳ありません。極力ご迷惑お掛けしない様に心掛けしますので、よろしくお願いします」


お辞儀して直ると子爵様と夫人は唖然としている。

「お父様、お母様。多恵様の元の世界では身分が無く、どなたにも平等に接せられます。あまり型式張ると気を使われてしまいます。私達家族に接する様な感じでいいのですよ」


「はい。サリナさんが言われた様に平民出で無作法なので、気を使わないで下さい」


「そんな!女神の乙女様にそん事出来ません」


「ではサリナさんの友達と思って下さい。烏滸がましいですが、私はサリナさんは友達だと思っているので…」


『勝手に友達発言大丈夫かなぁ』不安になってサリナさんを見たら、微笑み少し涙目で

「光栄ですわ…」


見ると子爵夫人も涙目だ。涙脆いご家族のようです。感動的な雰囲気の中、執事さんが申し訳無さそうに昼食の準備が出来たと知らせてきた。

子爵様は満面の笑みで食堂に案内してくれる。

子爵様は温厚な方で親戚の集まりみたいで楽しい食事会になった。

食後は部屋に案内され建前は侍女だから部屋はミリアさんと一緒。


「なんか修学旅行みたい」

「その旅行はどの様なものですか?」


修学旅行を説明したらサリナさんもミリアさんも興味を持ったみたいで色々聞かれた。


「その就寝前にする”怪談話”とらやをしたいです!

「大丈夫?本当に怖いから夜寝れなくなるよ」

「隊長のしごきに比べたら大した事ありません!」


若いミリアさんは怖いもの知らずだ。ならば歯をガタガタいわせましょう!

結果…一人で眠れなくなったミリアさんは私のベッドで一緒に寝る事になりました。

ちなみにちゃんと歯はガタガタ言わせましたよ!


翌朝、シンプルなワンピースに着替えて朝食をいただき従僕のローガンさんの案内でバース領で一番大きい街トロイスに買い物と観光に行きます。

一応侍女なので使用人出入口から簡素な馬車で出掛けます。馬車は座席は固くダイレクトに振動が尾骶骨に響きます。街まで私のお尻もつかなぁ…


お尻がつぶれる前に何とか街に着いた。街の中心の広場に馬車が止まり降りた。

目の前の噴水に誰かいて手を振っている。


「ん?だれ?知り合いなんて居ないは…ず?」


手を振っているのは男性でこっちに走ってくる。思わずミリアさんの後ろに隠れた。


「ユキちゃん!」


あの爽やかイケメンはジャックさん?なんでいるの⁈

多恵がミリアさんに話した怪談話は『番町皿屋敷』有名なお岩さんの話を洋風にアレンジしました。


お読みいただきありがとうございます。

続きが気になりましたら、ブックマーク登録&評価をよろしくお願いします。


『時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜』もよろしくお願いします

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