想う人
サリナさんの恋愛事情が明らかに
「「婚約者!!」」
「元ですよ元!」
驚く私とミリアさんを後目に平然と話し出すサリナさん。
「プライベートな事だし無理に話さなくていいよ!」
「大丈夫ですわ。過去の事で全く私は何とも思っていないので」
サリナさんの話によれば…
領地が隣りで家族ぐるみで付き合いがあり、親同士が5歳の時に決めた婚約。物心ついた時からの付き合いで兄弟の様な関係で恋愛感情は全く無かった。エルド様は体格どおりおおらかで優しい性格で人が良すぎて断れないタイプ、片やサリナさんは冷静で自分の意見をはっきり言えるタイプ。伯爵様はエルド様をサポートできるのはサリナさんしかいないと婚姻を望んでいたそうだ。順調だった婚約はサリナさんのデビュタントの時に事件が起こった。
サリナさんはデビュタント後に行儀見習いで王城にお仕えする事が決まっており、デビュタント1か月前に準備の為に2週間ほど王都に行っていた。
勿論デビュタントのパートナーはエルド様でドレスも贈られていた。城仕えの手続きや準備も終わり2週間ぶりに領地に帰ってきたら実家は大変な事に…
怒りに震える父に泣き崩れる母。意味が分からず弟に聞くとサリナさん帰宅直前に伯爵家から手紙が届き、婚約解消願いと違約金が送られてきたそうだ。
全く意味が分からず戸惑う間に1日が過ぎ、翌日早朝から伯爵とエルド様が訪問してきたらしい。
「「なにそれ!」」
「そうですね。今改めて考えたら最低最悪でしたね。顔面蒼白のエルド様は深々と頭を下げて解消理由を語り出したわ」
婚約期間中からエルド様に言い寄る令嬢がいた。元は辺境地の豪商でモーブルとの取引で富を得てお金で男爵の位を買ったゲレダス男爵家令嬢ジュリアン嬢。サリナさんが王都に行っている間にアプローチし、色仕掛けでエルド様と情を交わしたようだ。貴族は拘るが平民は婚姻時の処女性は問題にしていない。しかしエルド様は伯爵家嫡男で情を交わしたからには娶らなければと責任を感じたよう。
「婚約破棄され平民上がりの小娘に婚約者を寝取られたんですがね、意外にショックも悲しみも無かったんです。反対に全く興味なかった婚姻や子供産むという事をしなくていい方が大きかったですね。ですから違約金をしっかりもらい妹の進学に使わせて頂きました」
「…サリナさんらしい」
結局デビュタントは遠縁の男性にお願いし無難に終えたそうです。デビュタント終了後にエルド様とジュリアン嬢は婚約。片やサリナさんは王城に上がり侍女としてお仕えする事に…
「婚約破棄後は父上も気を使い暫くは縁談も無く、気楽に侍女生活をしておりました。1年後にエルド様とジュリアン嬢の婚約破棄が決まり、何を考えてそうなったのか分かりませんが、エルド様が求婚して来た訳です」
「なぜエルド様とジュリアン嬢はなぜ破談に?」
「ジュリアン嬢はよく言うと天真爛漫で、悪く言うと我儘で頭の中はお花畑。エルド様の婚約者になった事で位の高い方の夜会に参加するようになり、エルド様より位が高い美丈夫に鞍替えしたようです」
「うっわぁ…絵にかいたような悪女ですね!エルド様と婚約しているのに、相手の男性はよくジュリアン嬢を選びましたね」
「リリスの箱庭の殿方では無いので、その辺の醜聞をご存じなかったのでしょう。確かイリアの箱庭の男性だと聞きました」
ジュリアン嬢はかなりのビッチだ。ある意味エルド様も被害者かも…
「エルド様は性格もいいし伯爵家も由緒正しい家柄なので、縁を望むご令嬢も多いとお聞きします。早く他の方と婚姻されればいいのに、お人よしなので私に引け目を感じ未だに求婚してくるのです。正直もう放っておいて欲しいのに…」
「サリナさんが他の方と婚約したら諦めるんじゃない?」
「それが手っ取り早いのは分かっておりますが、かりそめでも婚約し破棄となると若干でも醜聞となります。お相手にご迷惑お掛けしてしまいますわ」
そっか…あっでも確かサリナさんには想い人が居たはず。その方の未来は望めないのかなぁ…想う人とならサリナさんは結婚する気有るのかなぁ…
サリナさんをまじまじ見ていたら目が合ったら微笑んでくれた。サリナさんは本当に綺麗だし凛としてカッコいい。エレナさんやケイティさんの様に幸せになって欲しい。
「多恵様。ミリアさん。話しは終わりにしましょう。明日も朝から移動で疲れるのでお早くお休み下さい」
ミリアさんはまだまだ話し足りない様だか、サリナさんにベッド押し込まれ寝る事に。
やっぱり疲れていたみたいで、ミリアさんはすぐに寝息を立てて寝てしまいました。
私は目新しいものに沢山触れたせいか寝付けません。隣の部屋には陛下に提出する報告書を書いているサリナさん。仕事の邪魔になるのは分かっているけど…
「多恵さん…眠れませんか?温かいお飲み物を用意しましょうか?」
「大丈夫。ありがとう…邪魔かなぁ⁈」
首を振ったサリナさんは私を見据えて、侍女スマイルで
「私に聞きたい事がおありですか?」
頷いて前に聞いた”想い人”の事を聞いた。サリナさんの”想い人”は他に想い人がいるらしい。
敢えて名前は聞かなかった。
「私ねサリナさんにも幸せになってほしい…でも人の想いはその人なものだから何も出来ない。願う事しかできないから…」
「やっぱり多恵さんは優しいですね。私は幸せですよ。想う方の近くでその方の幸せを見れるのですから…」
「どんな人が知りたいなぁ…名前は聞かないから」
サリナさんは少し考えて言葉を選びながらゆっくり話し出した。
お相手は王城の方でサリナさんより位の高いお方。品があり頭脳明晰でキレ者だが、少しズレている所があり構いたくなるお方らしい。
今私の頭の中はフル回転で対象者を検索中!
「侍女見習いから侍女になり、一時的にそのお方のお部屋付きなりお仕えする事なったのがきっかけです。そのお方は仕事は完璧でなんでもそつ無くこなすのに、お相手の意図から少しズレる事がおありになる。ある日気が緩んでおりついズレているのを指摘してしまい、その場に居た他の殿方に叱責されました。そうしたらそのお方は笑いながら許して下さったのです」
「心の広い方ですね」
「はい。普通自分より身分が低くく、まして侍女に意見されれば殿方は怒るもの。しかしあの方は”その様な考えは持っていなかった。その侍女の意見は私に必要だった故許す”と許してくださいました。恋愛感情と言うより人として尊敬しずっとお仕えしたいと想う様になりました」
えー誰だろう大分絞れてきたけど…
「結局、先輩侍女がその事を侍女長に報告し担当を替えられてしまいました。しかしそれ以降も携わる機会があり、接するウチに想う様になったのです。最近は多恵さんの侍女になってからは更に増えましたね」
って事は私と接触がある方?
誰!3殿下?グラント様?キース様?独身以外もあり得るなぁ…年上でイザーク様とかデュークさん、クレイブさん?
もうちょいヒントが有れば…
「見当つきましたか?」
「まだ…もうちょいヒントがあれば…あっ!」
サリナさんが微笑ましく私を見ている。ヤバイ相手を探ろうとしてるみたいだ!私感じ悪い!
「ごめんなさい。なんか…」
「いえ。本当に聡明で愛らしく構ってあげたくなる多恵さんを、そのお方が好意を抱くのも理解できますわ」
『ん?私に好意?…って事は(元)候補者?王城にいる…ん?分かったかも!』
顔が明るくなった私を見てサリナさんは笑いながら
「本当に多恵さんは同性の私から見ても魅力的で可愛らしい。人の機微には敏感なのにご自分の事には鈍い。またそこが庇護欲をかり立てられるのでしょう」
「そんなに私鈍いですか?」
「鈍いとゆうか…純粋なのだと思います」
「嬉しいやら悲しいやら複雑だよ…」
「うふふふ…」
サリナさんは楽しそうに笑いお茶を飲み真っ直ぐ私を見据えて
「ご察しの通りのお方です。この事は多恵さんの胸に止めていただきたい」
「勿論だよ。誰にも言わないから」
サリナさんは私にお茶を勧め雑談をする。気がつくと8刻になっていた。サリナさんもやる事が終わった様で就寝する事になった。
ベッドの中でサリナさんとその想い人の事を考える。普段は控えめでサポートでき、必要な時に的確に物お静せず意見できるサリナさんはあの方のお相手としてバチっちりじゃん!2人はお似合いだよ!
しかし人の想いは側が関与出来ない。
2人に縁がある事を願いながら眠りについた。
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