民
ボリスの意図は?
ボリスは溜息を吐いて
「フィラも結局他の男共と同じって事ね。リリスは4国を救ってくれるだけで十分だって。後は多恵の好きにすればいいと」
「いいの?継ぐ子を産まなくて⁈」
「これは私からの提案だけど問題が解決したら、アリアの力を借り身を隠してあげる。箱庭で平民として自由に暮らせばいいわ。そこで愛する人が出来たら家庭を持つといい。そして帰りたくなったらいつでも帰してあげる」
「本当に!」
「貴女はその位箱庭に貢献してくれている」
「ありがとう。でもまだやる事が沢山あるから、それが終わったら考えてみるわ」
ボリスは羽を広げて小さく頷く。思わず抱きついた。ボリスの温かい羽毛に包まれまるでお母さんに抱っこされているみたいだ。
「困ったらいつでも呼びなさい。わかった?」
「うん。ありがとう」
ボリスは静かに帰っていった。ベッドに入りてん君を抱きしめて眠りについた。
翌朝、いつも通り2刻に目が覚めた。
てん君はいつも通りベッドから降りて寝室の扉を前脚て叩く。ケイティさんが入室して来た。
てん君はケイティさんの足元に行き頭をケイティさんに向ける。ケイティさんは私に戸惑いながら視線を向けて来た。どうやらてん君はケイティさんを認めた様だ。私が頷くとケイティさんはゆっくり恐る恐るてん君の頭を撫でた。
『けいてぃ たえ みかた』
『そうだね。いい人だから仲良くしてね』
『りょうかい』
おっ!てん君はまた言葉を覚えた様だ。そのうちボリスみたいに難しい話もできる様になるのかなぁ⁈
少し興奮気味にケイティさんが
「多恵様の聖獣様に触れる事が出来ましたわ。なんて柔らかいのでしょう!感動ですわ!」
「てん君って言うの。仲良くしてね」
「はい!勿論でございます」
いつも冷静沈着なケイティさんには珍しく、頬を赤らめ興奮気味だ。
当のてん君はいつも通り軽やかに居間の方へ走っていった。
朝食をいただき予定も無いので、寝室に籠もり久々に木板を出して、労働協定の参考に情報を探す。暫くするとてん君が
『たえ ビルス てがみ いく』
『あっ殿下のお返事?』
『そう!いく』
てん君がビルス殿下の元に行った。私は続けて資料を探す。
『たえ てがみ』
『ありがとうね!』いっぱいてん君をもふる。
手紙を開封し読み出す。初めに丁寧な挨拶から始まり、ダラス陛下に労働協定を提案した事に対するお礼と、候補者の解消を聞き私の身を心配されていた。そしてここからが私の質問に対する答え。
私はこんな質問を殿下にしてあった。
[民が近隣国に密入国する程困っているのに、なぜ民の生活より聖人の供養を優先するのか?]
殿下からの答えは…
マッケン王退位後に王位を継いだサック王は、『聖人を弔い供養が終わるまで、バスグルは幸せを望んではならない』と宣言して国を挙げて喪に伏す事になった。代替わりしていくウチに喪に伏す=質素倹約にすり替わり、民の生活は苦しくなっていった』
解決の糸口みっけ!
さっきてん君待ちの時に聖人正清さんをリサーチしたところヒットした。
正清さんは首都圏のある市の公立中学校の社会科担当教師で私より50年前の人だった。
45歳で市議会議員に立候補し当選し5期連続当選し、地域活性化の為に尽力している。特に地域力向上を掲げて地元企業の応援し、大企業誘致で人口も増えてその市は活気付いたと記録に残っている。
そう正清さんはバスグル国民の幸せを願っていた。王族ありきで民を大切にしないマッケン王と対立する程に。だから供養をするより生活に苦しむ民を救うのが急務なのだ。目薬の花や実が落ちた時、確か現王が国外での就労を禁止した時だ。
そんな決まりが出来ればまた民の生活が苦しくなるのは明らかで、正清さんが嘆き花や実は落ちたのだろう…
現王はモーブルに迷惑を掛けない様にと考えての事だったようだ。
この事をビルス殿下に伝えて、まずはバスグル王家の意識改革が必要だ。
アルディアのオブルライト領の対策が終われば早速バスグルを訪問しよう。
便箋とペンを持ち再度ビルス殿下に手紙を書く。
聖人正清が民の幸せを願っているのと、私がバスグルに伺いたい旨を手紙にしたためてん君にお願いした。あー!良かった!また一つ解決に近づいた様でテンションが上がる!
少しするとてん君が戻ってきた
『ビルス あす また へんじ いく』
『ありがとうね!頼りになるわ』
『てん えらい?』
『うん!』
ベッドの上でてん君と遊ぶ!
寝室の扉をケイティさんが叩き許可を聞いて来た。
返事をするとてん君はまた扉に駆けていく。
扉を開けたケイティさんがてん君を見て顔がほころぶ。てん君をひと撫でし姿勢を直して
「多恵様。イザーク様が面会を求められております。いかがいたしますか?」
お会いする旨を返事するとケイティさんは退室した。イザーク様が来る時は良くない知らせが多いから怖いよ…
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