ビルス王子
バスグルの第1王子はどんな人なんだろう⁈
「はぁ…」疲れた。バスグル第1王子との謁見まで少し時間があり部屋に戻りまた湯浴みと着替えをするらしい。このままで良くない?
部屋に戻るとサリナさんがいて浴室に直行だった。
身支度が終わりへろへろになっていたら、サリナさんが手紙と綺麗な箱を渡してくれた。どちらもキース様からだった。手紙はバスグルの第1王子に気を付けてとの注意喚起だった。どうやら王子は女好きで絵のモデルと称しファーブス家の屋敷の侍女やメイドを口説いているらしい。この手の男性は苦手だ。追伸に謁見時は是非リボンを身につけて欲しいと書かれていた。この手の男性に虫除けは効かないんだよね…
はぁ…箱を開けてみるとキース様の気遣いに感謝しながら、贈っていただいたチョコを一つ口にする。寝室からキース様のリボンを持って来てサリナさんにお願いして左手首に巻いてもらう
キース様のチョコで元気になった。さぁ!第2ラウンドが始まる!
謁見の間に着いた。扉前にアーサー殿下が待っていてくれる。殿下は明らかに疲れていてハグしてきた時に凄いため息を吐く。
「はぁ…最近は忙しい過ぎて多恵殿不足で限界だったんです。この少しの間に補充させてください」
アーサー殿下が抱きしめてくる。殿下の背中を軽く叩くと離してくれたから、殿下を手招きすると意図が分かった様で屈んでくれる。元気がでる様に殿下の頬にキスすると表情が明るくなった。
「多恵殿気を付け下さい。ビルス殿下はかなりの好色と言われている」
「はぁ…多分私は需要はないと思うので心配ないかと…」
殿下が何か言おうとしたら後ろに控えていた文官さんが入室を促す。さぁ!いざ戦場へ!
アーサー殿下のエスコートで謁見の間に入ると陛下と王妃様の前に金髪に近い黄色の髪の美丈夫がいた。どうやらあの人がビルス王子の様だ。
アーサー殿下は陛下と王妃様の間にエスコートし、ご自分の位置に戻られる。
陛下は小さい子にする様に私の頭を撫で、王妃様は私の手を握る。ぅ…ん気分は幼稚園児だ
ビルス殿下が深々と頭を下げられ正式に謝罪され陛下は公式に受け私に受けるかを聞いてくる。このやり取りは本当に形だけで公式文章として残す為のパフォーマンスだと後ほど陛下に教えて貰った。真の交渉はこの後の会談で国家賠償や責任問題が追及されるらしい。
一通り謝罪パフォーマンスが終わり場の緊張感が薄れた時に突然ビルス殿下が私に話しかけて来た。
「我がアリアの箱庭には長く女神の召喚がなされていません。我が生涯の中で女神の乙女にお会いできるは僥倖でございます。この世界に無い美しい漆黒の髪と瞳を私のこの手で描きた。多恵様!ぜひ我が絵のモデルになっていただけませんでしょうか⁈」
はぃ!きたこれ!絵のモデルでナンパ。私はチャラ男が嫌いで断然硬派が理想です!
「お断りいたします。お受けする義理はございませんから」
ビルス殿下は目が点だ。恐らく断られて事が無いのだろう。殿下は王族だけあり美形で少し垂れ目ピンク色の瞳は警戒感を抱かせないチャラ男には最高の武器だ。ここにマリカさんが居たら1日中ビルス殿下を見つめているだろう。あいにく私の伴侶候補達は美形ぞろいで私の目はすっかり肥えているので貴方に惚れる事はございませんから!
ビルス殿下から目を逸らして何気なくモーブルサイドを見るとダラス陛下は私の対応が辛辣で面白かったのか明らかに笑いを堪えていて、シリウスさんに至っては剣の柄に手がかかり臨戦態勢だ。
「多恵様は手厳しい。私は邪な気持ちはなく芸術家として貴女の美しさを後世に残したいのです」
「美しい女性を残したいのでしたらもっと適任の方がこの箱庭には沢山いらっしゃいます。ご滞在中どうぞ存分にお書き下さい」
あまりに私が攻撃的なので陛下が宥める様に
「ビルス殿。多恵殿は大人しく控えめな女性で初対面でいきなりの誘いは戸惑うのも当然。ビルス殿も多恵殿と親交をもってから申し込まれるべきだと思うが」
「その様ですね。申し訳ございません。美しいものを見ると描きたい衝動が抑えられない事がある。多恵様食事会の席でぜひお話させて頂きた」
「・・・」
返事に困っていたらダラス陛下が
「ビルス殿。バスグルの女性はどうかは知らないがリリスの女性は奥ゆかしく心根が優しい。あまり遊びが過ぎると痛い目に合いますぞ」
ダラス陛下はお道化て話すが目が笑っていなくて怖い。
「ダラス殿下。絵のモデルはお受けできませんが、バスグルに興味があります。貴方の国のお話をお聞かせ下さい」
「ありがとうございます。食事会を楽しみにしています」
やっとバスグルの謝罪の謁見はが終わった。後は食事会のみだ!がんばれ私!
ほっとしていたら陛下は抱きしめてくれ、王女様は頭を撫でてくれる
「バスグルに優しくする必要はないぞ。嫌なら食事後部屋に戻ってもよいからな」
「ありがとうございます。陛下!私体は小さくとも子供じゃないのでその扱いは…」
「年齢は関係ない!娘である事は変わらん!儂は多恵殿の婚儀の際に腕を組んでバージンロードを歩くのが目下の夢でな…」
「はぁ・・・」
「私はねウェディングドレスを一緒に選ぶのが楽しみなの」
「その時はよろしくお願いします」
数日でいつの間にか“(仮)両親”から“(仮)”が取れた様です。有難い?のですか…。今は考えるの止めておこう。
食事会はこのまま会場を移動し直ぐ行われるそうです。陛下と王妃様は一旦控室に戻られるそうで、向こうからアーサー殿下が満面の笑みでこっちに向かって来ます。ふと目の前に手が出て来た。主を辿るとダラス陛下だった。
「会場へのエスコートは私が務めよう。嫌か?」
断るなんて出来る訳ないじゃん。拒否権はもっておりません。
「よろしくお願いします」陛下の手に自分の手を重ねると“ぎゅっ”と握られた。
陛下のエスコートは力強い…悪く言うと強引だ。
「すまないね。恐らく伴侶候補のアーサー殿がエスコートを申し出るのが自然な流れだが、ビルス殿も向かって来ていたのでね。
アーサー殿はホスト国の為ビルス殿が来たら譲らねばならんだろう。その点私は国王だからね。私のエスコートを邪魔する事は誰も出来ない。まぁ多恵殿が拒めば別だがね」
ダラス陛下はビルス殿下の接近を察知してエスコートを申し出てくれたんだ。男前だ!陛下は感動している私を見て悪戯っぽく笑い
「惚れたか?」
「それは有りませんが、男前だなぁ!て思いました」
「惚れてくれてよいぞ」
「面倒くさい事になるのでご遠慮いたします」
「多恵殿はやはり側室では嫌であろう。ならば王妃と・・・」
「それ以上の冗談は怒る範囲ですよ」
また、陛下は楽しそうに笑っている。
食事会の会場に着いて着席したら思いっきりビルス殿下が隣りでねちっこい視線を送られる。必死に反対を向き視線を色んな所に泳がす。
末席にキース様発見!やっぱり寝不足の様で顔色が悪い。遠すぎて話しに行けないし…『そうだ!』
キース様もこっちをみているから左手のドレスの袖を少しめくり、キース様のリボンを見える様にしてキース様に控え目に手を振った。気付いてくれたらいいけど…
キース様は目を見開き驚いた表情をして左胸を右手で押さえている。あの仕草何か意味があるのかな?
『あ!胸ポケットの手帳!』今日もちゃんと栞持ってくれているんだ。嬉しくて顔が緩んだらキース様も微笑んでくれた。キース様は何か言いたげだが、隣の貴族男性に話しかけられて横を向いてしまった。ヤバイ次の視線の先を探すと、『あ…』キース様と反対の末席にグラント様が見えた。めっちゃこっちを見て眉間の皺を深める。『悋気だ…』
グラント様にも手を振ろうかと思っていたら、何か思いついたのかグラント様が意地悪な微笑みをして指で鎖骨を撫でている。
『ここでそれは反則だ!』思わずむくれてしまう。
「多恵様は表情豊かで傍で見ていて飽きない。許されるならお傍に居たいものだ」
横から声がして横を向くとビルス殿下が私の方に体を向けてめっちゃ観察されている。
「私は元の世界では一般市民なのでこちらの世界の女性の様な淑女教育を受けていません。無作法で面白く見えるのでしょう」
「いや魅力的だ。ここの女性は確かに淑女教育を幼い頃から習い品行方正だが、皆反応が同じで面白みがない」
あまり話しかけてこないで…この手のタイプは苦手意識があるからあまり関わりたくない。
ビルス殿下の手が伸びて来た!思わずのけぞると背後に気配を感じ見上げると陛下が仁王立ちしていた。
「ビルス殿。儂と王妃は多恵殿を娘の様に思って居る。その娘にちょっかいを出されるのはあまりいい気がせん」
あ…娘って言っちゃったよ。陛下!別の意味に捉えたアーサー殿下がめっちゃいい笑顔してますよ。
不穏な空気を察知したイザーク様が陛下に食事会の始まりの挨拶を陛下に振った。出来る男イザーク様!陛下が挨拶され食事会が始まりました。
食事はビルス殿下に質問攻めに合い食べた気がしない。食事が終わると同時にビルス殿下がいきなり私の前に跪き手を取り愛を囁きます。一瞬寒気がしたが『えっ!』今手の平に紙の感触が…
殿下が小声で「1人で読んで下さい」ビルス殿下の瞳はチャラ男じゃ無かった。一瞬本当のビルス殿下に会った気がした。
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