王子
グラントのキス攻撃に防戦の一途の多恵。このままRに突入か?
「多恵様!そろそろダラス陛下との昼食の準備がございます!入室許可を!」
ケイティさんが帰って来た。グラント様はまだ離してくれない…どころかどんどんキスが下に下に来てちょっとやばい事になって来ている!
グラント様の手が首元から鎖骨にすべり落ちて来て、鎖骨が露わになりそこに口付けを落す。焦りと恥ずかしさから体から火照りだす。
「グラント様!時間が!」
「今は俺だけ見て俺の声以外は聞かないで…」
腰をホールドされ片方の手が首元を撫でる。これ以上はダメ。手でグラント様の口元を塞ぐと色っぽい目をして手の平に口付ける。
「本気で駄目です。皆んなに迷惑かけるしまだこれ以上は…」
グラント様は口元を塞いだ私の手を取り
「今日はここで引きます。本当は全て捨ててこのまま貴女がほしい…しかし貴女の意思は尊重したい。いつか貴女を俺に下さい」
よかった…と安心したのも束の間!
「いっ!」鎖骨に軽い傷み!
そこを指で撫でられ何が起こったか分からない。
グラント様は私のワンピースの首元を丁寧に整えて、扉外に入室許可を出した。
凄い勢いでケニー様が入って来てグラント様から私を引き離し抱き込んだ。必要以上に抱きつくケニー様をマッドさんが引き離しソファーに座らせてくれた。
グラント様はケイティさんに何か伝えて、私の前に跪き手を握り小さな声で…
「落ち着いたら1日私に下さい」
微笑み頬に口付けて帰っていった。
マリカさんが頬を染めながら来て私を浴室に連れて行き
「多恵様。お時間がございませんので直ぐに湯浴みを」
まだぼーとしている私の服をあっという間に脱がせて浴室に入れられた。
慌ててケイティさんが来て湯浴みの手伝いをしてくれます。さっきの余韻で頭も体もまともに動かない。気がつくとバスローブを着てドレッサーの前にいる。マリカさんか髪をセットしてくれ、ケイティさんがお化粧を施す。
鏡に写る自分を見ていて異変に気付く。鎖骨にあかいアザがある。どこでもぶつけたんだろう?触れてみるけど痛みはない…首を傾げていたら鏡越しに映るマリカさん真っ赤な顔をしてチラチラ私を見ている。
ケイティさんはマリカさんに何か指示をしマリカさんは何処かに行ってしまった。ケイティさんが小声で
「多恵様。そのアザは恐らくグラント様かと…ドレスは首元が隠れたものに変更します」
『…キスマーク?生まれて初めて付けられた!』
アラフォーの私の時も付けられた事無い!ぱっと見蚊に刺されたみたいだ。キスマークだと知ってさっきの事を思い出してまだ顔が赤くなる。
一応色んな事は経験済みの筈なんだけどなぁ…
「申し訳ありません。ナタリー様もご一緒でしたのでマリカ一人で大丈夫だと思い過信してしまいました。私が居ればもっと早くお止め出来たのに…
もし多恵様の意思に反した行為であったのなら、それ相応に対処いたしますが⁈」
「あ…ちょっと驚いただけど。拒んだらちゃんとやめて下さったし。ありがとう大丈夫」
ケイティさんは娘を見るような優しい目で心配してくれる。実年齢は私がケイティさんのお母さんに近いんですがね…
マリカさんが変更したドレスを持って来てくれた。総レースのハイネックの物だ。これなら目立たないだろう。すぐ着替えダラス陛下の元へ向かう。
部屋を出るとケニー様が近づいて来ていきなり抱きついて来る。どうやら交代の時間らしくマッドさんは疲れた顔をしている。私が知らない所でケニー様に振り回されだんだろう。マッドさんに心を込めてお疲れ様を告げた。マッドさんに引き剥がされケニー様はマッドさんに連れて行かれ、交代の騎士さんにご挨拶をして昼食会に急ぎます。
昼食の部屋に着くと既に陛下が着席されていて、待たせた事をお詫びし着席し給仕が始まった。ダラス陛下は第一印象と異なり温和でお話は楽しく食事は順調に進み、最後のデザートが運ばれたタイミングで陛下が人払した。
『ぅわ!来た今日の本題だ』
「私は無骨者でキツイ言い方をし気分を害するかもしれない。先に謝っておこう。しかし本音しか言わんからそのまま聞いて欲しい」
「はい」
陛下は淡々とグリード殿下の事を話し出します。
初っ端に話されたのがグリード殿下の想い人の事。グリード殿下の想い人は現王妃でつまり陛下の妃!
「王族は国の為に望まない事でも受け入れ無ければならない。王妃とグリードは幼馴染で小さい頃から好き合っていたのは勿論私も知っていたし、2人が結ばれるものだと思っていた。王妃は大公の次女で長女が王太子である私と婚姻するはずだった。
しかし彼女はアルディアでも問題になっている流行病を患い亡くなってしまったのだ。その後私の妃争いが始まり貴族と王家の均衡が崩れ出した」
グリード殿下は国の為に愛する人を諦めるだけで無く、自分の兄の妻になった想い人をずっと見て来たんだ。悲し過ぎる…
「多恵殿は理解が早い様だ。話が早くていい。
察しの通りグリードの想い人は私の妃に決まった。その時グリードは何も言わず祝いを述べるだけだったよ。私は申し訳無く思い秘密裏に私とグリードそして彼女を王家の避暑地に連れて行き、私は途中で帰り2人に最後の別れの時間をつくった。その後婚礼の話が進み国内の貴族バランスは保たれた」
その後、殿下は王妃の想いを貫き独身を通す。ビビアン王女が留学してきたのはこの時期だったらしい。陛下は王妃に寄り添い第1王子が生まれ、陛下は前王から王位を継いだ。これでモーブルの安寧を誰もが確信した時、王子の眼病が発覚しビビアン王女に頼る事に。こと事がキッカケになり今回の騒動が起こったわけだ。
「当時の私に貴族を抑えるだけの力があれば、グリードも彼女、王子も幸せになったはずだ。今でも2人に申し訳無く思っている」
『ん?何でそこで王子が…!本気で!』
陛下は苦笑しじっと私を見据えて
「貴女は賢過ぎる。今の説明だけで全て分かるなんて…私は未だ本当に想う人がいない。勿論王妃や王子に愛情はある。だが叶わなくとも生涯想えるグリードを羨ましく思う。もっと早く貴女に出逢えて居たら私も想い人が出来たかもしれない」
「その頃に陛下に出逢えていたとしても、私はまだ5、6歳でお相手出来る歳ではありませんよ!」
陛下は楽しそうに笑い場が和んだ。
「グリードの望みは廃嫡しバスグルに渡り妹の様に思うビビアン王女の家臣として支える事。だがしかし私はグリードの廃嫡は許可を出来ない。何故ならバスグルとの間の問題解決をする為に、グリードには王弟の立場でビビアン王女と縁を結んでもらいたいからだ」
陛下の表情が厳しくなり国王の顔になった。今モーブルが抱える問題の言及が始まる。
“コンコン”誰か入室許可を求めて来たようだ。
陛下が許可を出すとグラント様が入室して来た。口を開けて固まる私にグラント様はウインクをして私は一気に頬に熱をもつ。なんでここでグラント様登場なの!
グラント様はバスグル第1王子の入城を知らせに来た様でお仕事でした。私の様子を見た陛下は楽しそうに笑い
「本当に貴女は魅力的な女性だ。早くに出会いたかったよ。グラント殿彼女を幸せにして差し上げなさい。もし悲しませるなら私が貰い受けよう」
「恐れながら、陛下にご心配頂かなくとも箱庭一幸せにいたします」
グラント様!駄目ですよ!不敬になっちゃいますから!
「わかった。しっかり見ておこう。多恵殿。グラント殿が不甲斐ない時はいつでも私の所にくればいい。貴女なら歓迎だ」
「陛下。寝言は寝てからにして下さいね」
また陛下は笑う。それにしても陛下はよく笑うなぁ…って思っていたら視線を感じ、その先を見るとグラント様が私を見てご自分の鎖骨の辺りを指で指している。意味がわから…!
『キスマーク!』さっきの事情を思い出して全身が熱く発汗しだす。あたふたしている私を後目にグラント様は陛下に今後のスケジュールを説明している。予定より早くバスグル第1王子が着いた事で、昼食はおひらきになった。
「多恵殿。先程話せなかったバスグルとの問題はまた別にお時間をいただきたいよろしいか?」
「はい。調整はグラント様にお願いします」
「畏まりました」
こうしてダラス陛下との食事会は無事?いや結構衝撃的だったけど終えました。あとはバスグルの第1王子との謁見だ。まだ今日は終わらないよ…
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