中毒
バスグルの騎士が現れますます状況が変わらなくなった。無事に舞踏会を終える事ができるのか⁈
目の前に跪くウィルソン様がいて困惑するアルディア勢。こんなタイミングで相談されても困る。
「えっと…ウィルソン様でしたよね。お顔を上げてください。ビビアン王女を止めて欲しいって意味が分からなくて説明いただけますか?でもこの後そのビビアン王女から公式な場で謝罪を受けるので、ゆっくり話を聞く時間は有りません。要点をまとめて話して下さい」
顔を上げたウィルソンさんの表情は硬く苦悩がみて取れた。
「この後の公式な謝罪の場で女神の乙女様である多恵様にバスグルへのお越しいただく事を約束を取り付けるつもりです。
もうすでに聞きおよんでいると思いますが、アリアの箱庭の中でも我が国は最も貧しく文化も技術が劣っている。こちらで流行っている流行病も患い多くの国民が亡くっています。しかしどんなに望んでも女神アリアは乙女(聖人)を召喚して下さらない。
国内の一部の過激な思想の者からリリスの乙女を招く計画が持ち上がっている。
その首謀がビビアン王女に就いているエルバス殿。王女はエルバスを側に置くようになってからおかしくなりだした。
元々自己主張が強く暴走気味ではありましたが、家臣の言葉は聞き入れれるお方でした。
しかし今は全く家臣の声はビビアン王女に届かない。まるでエルバス殿に操られているようです。
特におかしくなったのはベイグリーにエルバス殿と視察に行ってからです。少し前にベイグリー公国のレオン元皇太子が乙女様を拉致しようとした話は聞いています。同じ事をしようとしているとしか考えられない」
『たえ これも うそ ない』
またてん君がウィルソンさんをクンクン嗅いでいます。あのナルちゃん(エルバスさん)が側にいる様になってからおかしい…マインドコントロールかも。詳しくは知らないけど極まれに特殊な事件があると聞く言葉だ。
「私もその分野に詳しい訳ではありませんが恐らくビビアン王女様はそのナル…じゃなかったエルバス様に、マインドコントロールされているように思います。もしそうなら正しい判断は出来ていないでしょう。まずはその根源であるエルバス様と引き離す必要がありますね」
「私もエルバス殿を疑い側近から外すように陛下に進言したのですが、エルバス殿が王女に付くようになってから諸外国との交流・交易が深まり貴族の中にはエルバス殿を支持する者が増えて陛下も手を出せない」
「多恵殿。あまり時間ない。どうする体調不良を理由に謝罪を伸ばすか?」
アーサー殿下が焦りだしている。
「…」
何かいい案が無いだろうか…
あの曲者ナルちゃんを王女から離す…そういえば舞踏会が始まっているのに、迷子を理由に場内をうろうろしていた。何かを探していた?もしくは誰かと接触したかった?そうでもなければ王族の居住区に近づくわけない。
何を知りたいか知らないけど餌を撒けば食いつきそう。欲どしい顔してた!
「提案があります。大まかなに考えたので、皆さんの知恵を貸してください」
グラント様が文官に何か指示を出し近くの控室の扉を開けて
「廊下では目立ちます。こちらへ」
空いていた控室に入り打合せをする。
今ここは会場近くの控室でキース様とクレイブ様とてん君が居ます。
外で待機してくれているデュークさんとリックさん。例の訪問者が来た。上手くいくといいけど…
入室されてきたのはビビアン王女と侍女が一人。開いた扉からウィルソンさんの姿が見えた。
ビビアン王女が入室されて入れ替わりキース様とクレイブ様が退室していきます。
室内には私とビビアン王女と侍女さんとてん君の3人1匹です。
「ビビアン王女。ご足労いただき申し訳ございません。お恥ずかしいのですが月のものの影響で体調が芳しく無く、あの大広間で謝罪を受けるのは無理だと判断し控室にさせていただきました」
「いえ。お気になさらないでください。私の辛い時ありますから分かりますわ」
この後ビビアン王女が見本の様な謝罪をされお受けしました。徐にビビアン王女が
「私の側近と面談の機会を頂きたいのです。多恵様がアルディアに齎した功績を学びたいと申しております」
「側近と言うのはエルバス様でしょうか?」
「そうです。舞踏会前にお会いしたと聞いております。エルバスは有能できっと多恵様に助力できる事でしょう。エルバス自身も聡明で美しい多恵様とお近づきになりたいようです」
“聡明で美しい?”そんな丸わかりのお世辞嬉しくもない。
『たえ おんな こころ ない』
『心無いってどうゆう事?』
『かんがえ ない』
『それって操られているって事?』
『あと、いやな におい する』
てん君が確認の為にビビアン王女の近くに行きクンクンしていると
「まぁ!噂に聞くリリスの聖獣ですか⁈聖獣と聞くと恐ろしいイメージがありましたが、こんなに愛らしいですね!触れてもよろしいですか?」
「この子は気を許した者以外は噛みますので、止めた方がいいですよ」
ビビアン王女の手が近づくと低い唸り声をあげている。
『たえ こいつ くすり くさい』
「きゃっ!」
部屋の隅で侍女が倒れていてその侍女をボリスが踏んでいる
『てん。この女の手の小瓶を取り上げなさい』
「へ?何でボリスがここにいるの?」
てん君はボリスの指示通り侍女の元に行き、威嚇すると侍女は小瓶を落とした。てん君は小瓶を咥えてボリスの横に座る。
「アンリ!多恵様これは⁈あの大鷲は!」ビビアン王女が叫ぶ。
突風が吹いてフィラが現れた。フィラは扉を開けてキース様、クレイブ様とウィルソンさん部屋に呼ぶ。呆然とするビビアン王女とボリスに抑えられている侍女に驚きながらキース様は私の前に立ち庇う。
クレイブ様はフィラの指示で侍女から取り上げた小瓶をてん君から預かり、てん君はビビアン王女の前に行き牙を剥き出し威嚇している。
「フィラ状況が見えない。説明して」
「話が複雑でなぁ…掻い摘んで話すとビビアンはその侍女が持っている精神を歪める薬で側近に懐柔されていたんだ。妖精王によるとその薬はベイグリーのレオンからバスグルに渡ったようだ。
レオンの負の産物さ。キース!会場にいるビビアンの側近いるだろうあの気持ち悪い男。そいつを拘束し持ち物を確認してみろ。この侍女と同じ薬を持っている筈だ。持っていたら牢にぶち込んでおけ。明日にでもバスグルから迎えが来るだろう」
「分かりました。クレイブ殿はここに残り妖精王のサポートをデューク殿と第1騎士団の者は私と共に会場に!」
キース様は扉まで行き、振返り私のところ戻ってきて抱きしめてキスをした
「妖精王の傍に居て下さい」
「あっはい…お気をつけて」
フィラはグラスに水を入れ私にグラスと私にさっき飲ませた錠剤を渡し
「ビビアンに飲ませろ。こいつは薬漬けにされている」
「これって中和剤?これで良くなる?」
「かなり長く使われていた様だ。完全に抜けるのには時間がかかるだろう。とりあえず早く飲ませろ」
ビビアン王女の元に行き妖精王がくれた薬だから安全だと説得して、薬をビビアン王女に飲ます。
ビビアン王女はずっとエルバスさんを呼んでほしいと懇願している。部屋の隅で呆然とするウィルソンさんに
「ウィルソンさん。ぼーとしてないで、ビビアン王女を付き添ってあげて。どうやらあの侍女に日常から薬を盛られていたようです。妖精王からもらった中和剤を飲ませたので大丈夫です」
ビビアン王女はウィルソンさんに任せて、ボリスが踏んでいる…もとい抑えている侍女の前に行く
侍女は「私は何も知らない!エルバス様の命に従っただけ!」と繰り返し叫ぶ。
『たえ こいつ うるさい かむ?』
『噛んじゃーだめ!』
「アンリさんでしたか、貴女はあの小瓶の薬をどうするつもりだったの?」
「… 」
てん君が牙を剥き出し『やっぱり かむ?』
『だめ!』
「私は気長だけど、私の聖獣は気が短いの。早く知っている事話した方がいいわ」
更にてん君が侍女に近付き牙を剥く。
「ひぃ!」
侍女は凄い早口でエルバスから薬液を私にかける様に命令されていたと訴える。
やっぱりエルバスは胡散臭かった。
控室が落ち着いたらフィラはリリスの元に行ってしまった。フィラは「また後処理が…」と疲れた顔をしていた。全部落ち着いたらいっぱいぎゅうしてあげよう。
暫くするとキース様が会場に向かう途中に騎士に指示してくれたらしく大量の騎士が控え室にやって来た。薬を持っていた侍女は騎士に牢に連行され、ビビアン王女は第1騎士団の女性騎士さんが監視する事になった。暫くするとグリード王弟殿下とシリウスさんが控室に来た。
呆然とソファーに座るビビアン王女。グリード王弟殿下が目の前に来ても反応がない。
大丈夫かぁ…精神壊れたりとかしてない⁈
『多恵。大丈夫よ。恐らくあの薬の効果が切れて中和剤が効いて来てるのよ。あの侍女はビビアン王女と多恵に薬を盛るつもりだったのでしょう』
『ありがとうボリス』
『また多恵に会えて嬉しいわ。てんを可愛がってくれているのね。あの子の成長しているわ』
やっぱりボリスはお母さんです。
「ビー!大丈夫か⁈私が分かる?」
グリード王弟殿下が必死にビビアン王女に話しかけている。ボリスと話していて王女の事忘れていた。
「大丈夫ですよ殿下。盛られた薬が切れてきているだけで、暫くすると戻るそうです」
グリード王弟殿下とシリウスさん、ウィルソンさんは跪き深々と頭を下げられる。
「多恵様に感謝いたします。やっとビーを元に戻してあげれる」
グリード王弟殿下の表情が穏やかになり、殿下の美しい瞳から涙が零れ落ちた。
舞踏会会場ではキース様がエルバスさんに詰め寄りエルバスさんが大暴れしたらしく舞踏会は中止となった。会場は無茶苦茶だったらしい。陛下!迷惑料バスグルに請求しましょう!
デュークさんによって拘束されたエルバスさんから侍女が持っていて小瓶と同じものが見つかり、第2騎士団によって騎士棟の牢屋に連行された。後でナタリー様に聞いた話だと美男子でアルディアの女性の目を釘付けにしていたが、捕まった時の下衆っぷりに令嬢達が引いていたらしい。
ぅ…ん少し前に同じような人が居たような気がする。
こうして波乱の舞踏会は終わった。
私がダンスすると何かが起きる気がする。これを理由にこれからダンス断るとか有り?
お読みいただきありがとうございます。
じっくり書きたい何て言いながら、時間をかけて割に上手くまとめれなかった…
次話でグリードが全貌を語ります。
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『時空の迷い人〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜』も更新しました。こちらもよろしくお願いします。




