感謝
甘々の溺愛回です。
「きゃーーあーー」女性の悲鳴で目が覚めた。目の前に空色のもふもふの塊が居て前が見えない。
「うぅぅ!」唸り声はてん君⁈体を起こすといつもより大きいてん君が私を庇っている。
「「「多恵様!」」」凄い勢いで扉からケイティさんと騎士さんが飛び込んできた。
床に転がるマリカさん。どうやらてん君を見て腰を抜かしたようだ。
「えっと…皆さんおはようございます。マリカさん大丈夫?」
ジュードさんに手を借り立ち上がったマリカさん。ケイティさんが最敬礼をし謝罪をする。
もう…声をかけれない位怒りに満ちているケイティさん。恐らく誰も止める事は出来ないだろう…でも…
「ケイティさん取りあえず落ち着いて!マリカさん怪我はない?マリカさんは聖獣を始めて見たのね。驚かせてごめんなさい。レオン元皇太子の一件以来一緒に寝ている事が多いから知っておいてね」
てん君を抱きかかえ心でお世話してくれている侍女さんだから、大丈夫と宥めこれから会う事も多いから覚えておいてと話した。
起きるので一旦皆さんに寝室から出てもらう。時計を見たらもうすぐ4刻。お昼近くまで寝ていたようだ。
確か今日は予定が朝から沢山入っていたはずだけど…洗面所で顔を洗い一人で着れるシンプルなワンピースを着て居間に行くとグラント様がいた。かっこよくソファーに座る姿は絵になる。
私に気付くと足早に来て優しく抱きしめてくれる。今日もぶれる事なくグラント様の腕の中は心地いい。
「昨日は大変だったようですね⁈お疲れの様でしたのでケイティ嬢と相談し朝の予定を全て調整しましたのでご心配なく」
「ありがとうございます。もうお昼なんて寝すぎですね…」
精神的にまだ復活していないから今はグラント様の優しさに癒してもらおう
「失礼致します。昼食をご用意いたしました。閣下もご一緒にどうぞ」
食卓を見ると三人分の食事が用意されている。後一人誰か来るの?グラント様に椅子を引いてもらい座ると誰か来たようだ。来たのはキース様。驚いて目が点になる…
颯爽と入室してきたキース様はグラント様に会釈し横に来て挨拶をするかのようにキスをした。
「っつ!」
「へ?」
グラント様は立ち上り私はフリーズする。
「グラント殿。私も多恵様に心を受け取っていただいた。同じ女性を愛する者争うのではなく多恵様の幸せの為に協力しよう。まぁ…多恵様に対す気持ちは負けませんがね」
何キース様来るなり宣戦布告してるんですか?!恐ろしい事しないで下さいよ。思わず睨んでしまう。
「多恵様はいきなり何を言うのかと怒ってらっしゃるのか?しかし可愛いだけですからね。他の男性が勘違いするので向けるのは私だけにして下さいね」
再度キスされて目を白黒させるしか出来ない。
グラント様がキース様と反対側に来て。
「ん?」
何をするのか分からず見上げたらグラント様にもキスをされた
「!!」
「多恵様。愛らしい唇が穢れた様なので消毒致しました。貴殿に言われなくても多恵様を幸せにします。協力はしないが邪魔をする気もない。
想う気持ちは分かりますからね。私も決して負けません」
頭上で激熱の火花が散っています。助けて欲しくてケイティさんを見ると部屋の隅でマリカさんを教育的指導中。お助けキャラがいません
ない頭を絞って…
「私はさっき起きて未だ食事をとっていなくてですね私腹ペコです。せっかく料理人の皆さんが作って下さったランチを美味しく食べたい。
お2人共喧嘩するならお引き取り下さい。一人で食べます」
少し怒り気味に言ってみた。だって今日のパンはブブ豆パンだよ!焼きたてで美味しいに決まっている。睨み合いを止めて2人は詫びられて席に着きます。やっとブブ豆が食べれる…一口食べて幸せ~。キース様とブラント様は微妙な顔をされています。そうでしょうね。ブブ豆パンは庶民の味です。
明言は控えているけどどうやら昨日の昼のグリード王弟殿下との面会を気遣い来てくれたようだ。気遣いながら楽しい話をしてくれるのは有り難い。
そこでふと思う。今はアルディアに問題解決にあたっていてアルディアにお世話になっているけど、レックロッドやモーブルの問題に取り掛かるならアルディアから動く事になる。そうしたらこうやってお2人と頻繁に会えなくなる。
そう思うとテンションが下がってきた。ぐいぐい好意を向けられて困っていたはずなのに、今はすっかりお2人に気を許して支えてもらっている。急に黙り込んだ私を二人は心配そうにみている。
「インフル対策のマスクも大方仕上がってきて後は領民への感染対策の指導のみ。アルディアの問題は近々解決するから、リリスの願い通り次はモーブルかレックロッドの問題に取り掛かる事になります。そうしたらここを出る事になるんですね…城の皆さんによくしていただいて、知らない間にすっかりここが私の居場所になっていた。なんかさみしいです」
私の発言に部屋が静まりかえる。きっとモーブルに行ってもレックロッドに行ってもいい人ばかりなのは分かっている。だってリリスの箱庭の住人たちだから。分かっていても寂しい。
「多恵様。元の世界に戻られる訳ではありません。毎日は無理でも出来る限り会いに行きます。多恵様は魅力的ですから見張っていないと害虫がいっぱいわいてくるので心配です」
「そんなの何処にいるんですか?」
「まだアルディアには貴女が必要です。貴女がこの城を出て何処に行こうと寂しいと思った時は駆け付けましょう」
「ありがとう…」
お2人の気持ちが嬉しく泣けてきた。私は今滅茶苦茶弱っている様です。嬉しくてお2人に抱き付いてキスしたい気分だ。急に涙目になった私に驚いて駆け寄るグラント様とキース様。
立上り二人に抱き付いた。お2人共背が高いから木にぶら下がるナマケモノみたいな私。
そっと下りて手招きすると二人共不思議そうな顔をして屈んでくれた。
「ありがとう・・・」
二人の頬に交互に口付けをした。初めて自分からのキス死ぬほど恥ずかしく俯いてもう二人の顔を見れない
「「多恵様」」
優しい二人の声が心地いいのと恥ずかしいのが混じりきっと今私変な顔している。
「愛らしいお顔を見せて…」
「貴女の澄んだ瞳に私を映してほしい」
「ごめんなさい。今多分…いや絶対変な顔しているから無理です」
「「多恵様…」」
部屋の外の騎士さんが身支度の為の侍女の皆さんが来たと知らせてくれた。恥ずかしくて逃げ出したい。
「本当に変な事してごめんなさい。舞踏会までにいつも通りになるから今は勘弁してください」
キース様が両手で頬包み上に…
「逃げないで…私たちを見て欲しい」
2人の優しい眼差しに少し落ち着いた。
「初めはね…勝手に伴侶候補を決められて、陛下にキレたけど今は感謝してるんです。お二人で良かったて…」
「「はぁ…」」
「また無自覚に」とキース様?
「目が離せません!」グラント様も?
素直に感謝したのになんで私怒られているの?
納得いかない…
ふと視線を感じ部屋の端に目をやると無表情で通常勤務のケイティさんと顔を真っ赤にしてプルプルしているマリカさんが居た。
すっかり二人がいる事を忘れていた!恥ずかしい…ひと呼吸置いてケイティさんが
「グラント様、キース様。多恵様は舞踏会のご準備がございます。そろそろご退室を」
お2人は交互に私の頬にキスをして退室されていった。入れ替わりに針子のケイトさんと髪結いさんが入って来て準備を始める。
サリナさんも来て3人がかりで湯浴みが始まる。ここから1刻(3時間)身支度にかかり仕上がる頃には私の心は完全に逃避行していた。
次話で舞踏会が始まります。ビビアン王女登場するか?お楽しみに!
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