父親(仮)
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「ご心配をおかけしました」
「其方に何が有れば儂は耐えれん」
何故私は陛下に抱きしめられているのでしょう⁈
皆様とは陛下、殿下達とイザーク様の偉いさんの面々です。ふと前のアーサー殿下が目に入る…
「陛下すみません!」
陛下の抱擁を抜けアーサー殿下の元に向かいアーサー殿下の頬に手を添えて
「どうしたんですか⁈誰かと喧嘩したのですか?」
『うっわ!』思いっきり抱きしめられた!
殿下は少し震えてる⁈どうしていいか分からず、とりあえず子供をあやす様に背中をとんとんして
「ご心配をおかけしました。ごめんなさい」
殿下は腕を解いて両手を私の頬に手を当て?綺麗なお顔が近付いて来た!
「ぶっ!」アーサー殿下がのけぞっている!アーサー殿下の後ろに陛下が居て、殿下の首根っこを掴んでいる。
「儂の娘に何をする!」
「父上!貴方の子は私ですよ!息子の愛の邪魔をしないで頂きたい!」
「多恵殿が伴侶に決めてないウチは儂は多恵殿の父親代わりだ!多恵殿に手を出す事は許さない」
なんだこれ⁈陛下いつから父親役になったんですか?聞いていませんよ⁉︎
陛下と殿下の茶番劇を後ろから眺めていたら今度は後ろから誰かに抱き付かれた。
「申し訳ありませんでした・・・」
見上げるとトーイ殿下だ。彼も小刻みに震えている。もーいいのに!あの場は誰が悪い訳でもないのに。トーイ殿下の腕をぽんぽんと叩いて
「トーイ殿下お怪我はありませんでしたか?ご心配をおかけしてすみません」
「貴女が怪我をしたと聞いていますが、それはいつですか?」
「キラスへ向かう馬車の中なので、騒動で負った訳ではありませんよ」
背中で息をつくのが分かった。安心してくれたみたいだ。イザーク様が皆さんに声をかけてくれて、やっと席に着いて話が始まります。
まずイザーク様から今回のスカーフ祭り騒動の顛末を説明してもらった。アーサー殿下の奇行ではなくバスグルとチャライラが誘拐?を企てていた事。私の迷子?は誘拐では無くキラスの村人の人違いであった事が説明された。
「結果的にキラスの村人の人違いがあったおかげで、バスグルの者に私の顔がバレなかった訳ですね。あのままアーサー殿下が私を見つけていたら、その後誘拐されていたかもしれない。不幸中の幸い?陛下。キラスの村人に親切していただきました。お咎め無き様にお願いします」
ダルクさんは本当に私と知らずに連れ帰っている。罰とかしないで欲しい。
「そよのぉ…結果多恵殿を守った事になっておるしな…。その村人は不問とする」
良かった。ダルクさんもルカさんもいい人だったし、お咎めがあれば次遊びに行けなくなる。
「それより多恵殿。怪我はよいのか⁈」
「あ…普通に歩くのには支障はないのですが、力を入れたり捻じったりすると痛みがあります。えっ…と舞踏会のダンスは無理かも…」
お願い!ダンス免除の一言を下さい!
「私が抱いて踊るので問題ありませんよ!多恵殿!」意気揚々とアーサー殿下が右手を左胸にあて嬉しそうに発言されています。
思わずお父さん(仮)の陛下に不安な顔をして目線を送ります。
「まぁ…様子をみて多恵殿が辛いならやめてもよいぞ」
「陛下!ありがとうございます。一応治す方向で頑張ります」
一応やめてもいいの言質は取った!ゆっくり治ってね私の脹脛!
「それにしても国交もないバスグルがなぜ接触を図ったのかが疑問です」
イザーク様の発言を聞いてボリスの言葉を思い出した。やっぱり今この世界に異世界人は私しかいないから、問題を抱えてる国は私の知識が欲しいのだろう。また誘拐・拉致の類に発展するのだろうか…
そのうち私の特技に「拉致・誘拐」が付きそうだ。
「リリスの使いが今この世界に異世界人は私だけだから、ベイグリー公国のレオン元皇太子の様な輩が出てくる可能性があるから注意をする様に言われていました。まさかこんなに早く来るなんて…」
「大丈夫です。何があってもアルディア王国は貴女を守ります」
アーサー殿下が私の前に跪き手をとり手の甲に口付けを落とす。「ありがとうございます。皆さんを信頼しています」
「イザーク。バスグルの情報は何か出て来たか?」
「いえ。キース殿に確認した所、バスグルでは次期国王の跡目争いが起こっている様で、有力候補のビビアン王女の伴侶選びが激化しているそうです。王女の伴侶なので多恵様には関係ない様に思うのですが…。暗部の者に探りを入れてさせていますが国交がない分情報は乏しいのです」
「確か…ビビアン王女はモーブルのアカデミーに留学しておったなぁ…グリード王弟殿下なら何か知っておられないか?アーサーそれとなく探ってみてくれ」
「御意」
結局バスグルの目的が分からずすっきりしない状態で今日の話し合いはお開きになった。
アーサー殿下がまだ話足りなさそうだったが、お仕事がたくさん残っている様でイザーク様に引っ張られて行きました。
皆さんが退室して落ち着いてソファーでまったりしていたら約束どおりグラント様が来てくれました。
グラント様は機嫌が悪いのか体調が悪いのか顔色が良くない。席を立ってお迎えしたらサリナさんとケイティさんにグラント様が退室を指示している。
サリナさんはいい顔をせず何か言いたげだったが、ケイティさんにひぱっり出されていた。
2人きりなり緊張する。恐る恐る抱きしめてくるグラント様。
「悔しかったのです。貴女に私の心を受け入れてもらい安心していたら、モーブルから大きな虫が現れ当たり前の様に貴女に触れ、貴女の事をなんでも知っているかの様に振舞う。嫉妬でおかしくなりそうです。貴女の怪我を気付けなかった私はお傍に置いてはもらえないのでしょか…」
なんか大事になってるよ!この世の終わりみたいな顔しないで下さい。
「えっと…怪我は誰のせいでもないし、動けない程ではないんです。どうやらモーブルの男性は異常に過保護の様です。モーブルでは女性に頼られない男性は半人前と言われるらしい。護衛対象だからかシリウスさんは私の行動を良く見ているから気付いたんですよきっと。歩く程なら痛みもあまり無いから見た目分からないと思うんですがね…騎士様の洞察力は凄いですね!」
「はぁ…やはり手ごわい害虫の様です。彼は護衛対象として多恵様を見ているのではありませんよ。貴女に懸想している」
「いやいや。迷惑ばかりおかけしているので嫌われてます。目を合わせてくれ無し…」
グラント様は私の頬を両手で包み「口付けていいですか…」
「なんで聞くんですか?いつもは聞かないのに…」
引き寄せられ強く抱きしめられ激しいキス。荒々しくて苦しい。苦しく身を捩ると足に痛みが走る。もうダメ!力いっぱいグラント様の胸元を叩いた。
気付いてくれ抱擁を緩めてくれた
「申し訳ない。抑えられなかった…」
いつもの優しい彼に戻ってくれた。彼の温かい体温とマリン系の香りで私も落ち着く。
「やっぱりグラント様の腕の中は心地いいです。帰って来たって感じがします」
「貴女の言葉は私の嫉妬心を消してくれる。ちゃんと嫉妬に狂った私を止めてくださいましたね」
「えっ!私まだ叩いてませんけど⁈」
グラント様は楽しそうに笑い抱きしめてくれ、色んな所に口付けをおとしてくる。こそばゆいけど嫌じゃない。
満足したグラント様はお仕事の途中だったらしく名残惜しそうに戻って行かれた。
なぜか部屋に戻って来たケイティさんは微笑みが深く、反してサリナさんは機嫌が悪そう。何で?
暫くのんびりしていたら文官さんが手紙を持ってきました。差出人はグリード王弟殿下から。
返事を直ぐに欲しいらしい。
サリナさんからペーパーナイフを借り開封する。上質の紙に綺麗な筆跡でしたためられている。
内容は明日昼過ぎに舞踏会のドレスをデザイナーのゴードンさんが持ってくるらしい。衣装合わせと昼食のお誘いだった。脚がこれだからダンスレッスンは中止になったから予定は無い。
助けていただいたし再度お礼言いたいからお受けする事にした。ケイティさんに代筆をお願いし返事を文官さんに預ける。
ダンス踊らないのにドレスか…どんなドレスになっているんだろう。グリード王弟殿下とペアルックスとかだと色々揉めそうだ。
新しく登場したビビアン王女。また事件の予感です。




