一途
やっと想いが届いたグラント。溺愛が始まります
グラント様と目が合った。” 目は口ほどに物を言う”と言うが今のグラント様がそうだ。
目が嬉しいと叫んでいるみたいだ。
沈黙に耐えれず「い…嫌じゃ無かったかも」と呟くと、グラント様がメガネを外し再度キスしてくる。
キスは唇の他に瞼や頬にいっぱい降ってくる。
こそば恥ずかしい…
「全てをいただけたとは思ってません。ほんの一欠片でも嬉しかった。貴女のペースでいい、いずれは…。私の心を全て貴女に」
鏡を見なくても分かる。きっとりんごちゃんになってる。なんで箱庭の男性は表現がストレートなんだろ…私は無理だ。
もー限界!恥ずかしくて俯くと抱きしめてられた。
『温かい…心地いい…』ふとフィラを思い出す。
フィラを好きな感じと似ている。でもちょと違う気もする。元の世界の倫理観がひょこり顔を出し、後ろめたさを感じて落ち込む。
テンションが下がった私に気付いたグラント様がまたキスしてくる。慰める様な優しいキス。
柔らかいお布団に包まれてるみたい…
「何を悩んでいるのですか?」
「私の世界は一夫一妻で、夫や恋人以外の人との恋愛は浮気となり不貞になります。その倫理観があって悪い事してるみたいに感じているんです。
もうお気付きだと思いますが、妖精王から心をいただいていて受け入れています。
グラント様にお心をいただいたら、フィラに悪い気がして…」
素直に今の気持ちを言ってみた。
多分フィラにもだけど元の世界の夫にも罪悪感がある。やはり一番自分を飾らずに居れるのは夫の大輔だ。
私の話を真剣に聞いたグラント様が
「貴女の想いは分かりました。・・・女神リリスは愛情深くその影響で箱庭の男性は一途な者が多いと言われています。一度心に決めたら想いが叶わなくとも一生その女性を愛します。まぁ…万人に該当するわけではありませんが…」
気まずそうに横を向くグラント様。誰の事ですか?“ヒ”で始まる方ですか⁈
「ですから諦めて下さい。多恵様のお気持ちに関係なく私の気持ちが変わることは生涯ありません。多恵様が心をくださらないなら、私が一生貴女に愛を捧げるだけの事。自分の想いを偽って生きるよりその方が幸せなのです。
恐らくキース殿も同じ思いでしょう。アーサー殿下は王家の血筋を残す為にそうはいきませんが…
ですから安心して私に愛されて下さい」
まじまじとグラント様顔を見てしまった。これが見返りの無い愛なんだ。
こんなストレートな愛情を向けられた事なんかない。大輔は言葉にしないけど思いはくれていたと思う…
「変な事したり言ったりしても愛してくれますか?」
「勿論です。愚問ですね」
「おばあちゃんになってしわしわになっても?」
「その時はしわしわ爺さんの私が貴女を愛します」
何か嬉しくて泣けて来た。涙腺だけは若返らなかったようだ。グラント様は優しく抱きしめて私の涙を唇で受け止めてくれる
どうしよぅ・・・ここまで言われたらもう好きになるしかないだろう…
グラント様が何度目になるか分からないキスをくれた後、徐に
「私は嫉妬深いのです。貴女が妖精王や他の男性と楽しそうにしていると心穏やかでない。私が嫉妬でおかしなことをしない様に、私にも愛を注いでください。貴女の一欠けらの愛で私は生きていける」
「えっと…がんばります…」
またキスが降ってきそうになった時に執務室に誰か来たようです。
「ちっ!」舌打ちしたグラント様は不機嫌に返事をしたら、笑顔のナタリー様が入室してきた。
「あら?お兄様お邪魔でした?」
「分かっているなら帰りなさい」
「いえ!ナタリー様!こんにちは。大丈夫です。私もそろそろお暇しますので」
立ち上がり扉の外の護衛騎士さんの所に行こうとしたら手を取られた。
てっきりグラント様だと思ったらナタリー様だった。
「お姉さま。ご相談したいことがありまして、少しお時間いただけますか⁈」
「お姉さま? あの・・・えっと・・・」
「ナタリー。多恵様を困らせてはいけない。お姉さまはまだ早い」
「まだ?早い?」
グラント様はウインクしてきます。この兄妹にタジタジでこの場にサリナさんが居てくれたらと心で助けを求めてみた。
結局ナタリー様の相談は10日後の舞踏会の事。マスク製作の協力者の令嬢とご婦人と歓談の時間をお願いされた。
勿論OKです!こちらからこそです。
当日どうしていいかよく分からないのでグラント様に時間調整をお願いしました。
そろそろ部屋に戻りたくてお二人の隙を見て扉に向かい護衛騎士さんに戻りを連絡する。
暫くすると扉向こうから今日の護衛のマーカスさんが声をかけてくれ(私が指示したんだけどね)やっと帰れそうです。
グラント様が入室許可を出すと護衛騎士さんと一緒にサリナさんがいて驚いた。
私の心の声が届いたと感動する。
「閣下。多恵様は病み上がり故、そろそろお部屋へお戻りいただきます」
「では部屋までお送りしましょう」
「いえ、医師より受診の為に医師棟に寄るように指示を受けておりますので、こちらで失礼させていただきます。多恵様よろしいですか⁈」
「あっはい。グラント様今日はありがとうございました。ナタリー様ご機嫌よう」
会釈をして顔を上げるとグラント様にハグされて、額に口付けをされた。耳元で
「今日は人生で忘れられない1日になりました。
またお時間を私に下さい」
まあ頬が熱くなって来た。ナタリー様が後ろでキラキラした視線を送ってくる。
恥ずかしい…
やっとグラント様に解放されグラント様の執務室を後にした。遠くに夕日が沈むのが見えます。夕焼けで私の頬の色は誤魔化せますか⁈
お読みいただきありがとうございます。
次話くらい?で久々にあの方が登場します。
誰でしょうか⁉︎




