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ワンピース

グラント様と多恵の距離が縮まる?

“ごぉ〜ん”

2刻の鐘の音で目が覚めた。ぼんやり天井を見ながら箱庭に来てからの事を考えてみる。

色々有り過ぎたけど後3日で丸1ヶ月だ。

内容的には半年くらい居た感じだ。濃すぎる…

昨晩、サリナさんが予定を教えてくれた。当初予定の舞踏会は10日後。5日後にモーブルのグリード殿下来城し、翌日にレックロッドのオーランド殿下が来城される。今日は念のため休息日とし、明日からは淑女教育が中心の生活です。その中でも楽しみがあって、以前トーイ殿下が約束してくれていた城下の散策に出かけます。4日後で丁度その日は年に1度のスカーフ祭りが開催されます。女性はスカーフを巻いてお祭りに参加するらしく、首や肩に巻けば既婚者で頭に巻けば未婚となり、男女の出会いの場になっているそうです。スカーフを巻いた女性が多く私が目立ち難くなり、散策し易く護衛も少数で済む。トーイ殿下が気取らず平民の暮らし振りが見られるからと提案してくれました。

私の目的はスィーツだけどね!

 

今日の昼からは針子さんの作業場にスカーフ祭りで着るシンプルな平服の仕立てをお願いをしにケイトさん所へ行きます。前に約束したグラント様も誘います。

針子さんの作業アップの為に協力してもらいましょう!グラント様には昨晩ケイティさんに代筆してもらい、同行のお願いをしています。お仕事ならひとりでいくか…


「多恵様。お目覚めですか?入室許可を」


返事をすると笑顔でエレナさんが手紙を持って入室して来た。朝一になんだろう…


「おはようございます。よく眠れましたか?夜半にグラント様の使いが手紙を持ってまいりました。後になさいますか⁈」


「はゃ!もう返事来たの⁈えっと読んじゃいます」


手紙とペーパーナイフを受け取り開封し読んでみる。相変わらずキチンとした挨拶から始まり、歯の浮く熱烈な内容に朝から赤面する。ちなみに返事はOKで、4刻半に部屋に迎えに来てくれる様です。


ではそれまでのんびりします。


昼食からやっと普通食になりました。大好きな胡桃パンにテンションが上がります。

食事後にケイトさんに貰った刺繍糸で、ハンカチに刺繍をします。こちらの女性の様な本格的な刺繍は出来ないないから、簡単なクロスステッチをします。裁縫はいいね…没頭すると余計な事考え無いからさー


グラント様の先触れが来ました。裁縫道具を片付けてグラント様が来るのを待ちます。暫くするとお見えになりました。

相変わらず美形で毎回見惚れてしまいます?あれ?目の下にくまくま?


思わず駆け寄り背の高いグラント様を見上げて…


「グラント様?寝不足ですか?無理なさらないで下さい。戻られて仮眠して下さい。作業場は又の機会に…」


「多恵様!待って下さい。確かに昼から時間を取るため若干寝不足ですが、貴女との時間を得れるなら苦でも無い。心配いただくのはうれしいが、つれない事言わないで下さい」


グラント様に抱きつかれました。つれない?心配だしなんなら私の我儘なんだけど…

なんだろうグラント様の体温フィラと一緒で高めだから心地よい。護衛騎士さんが咳払いをして気不味そうです。


「ごめんなさい。ではグラント様ご一緒いただけますか⁈」


「勿論喜んで!」


手を差し出され手を重ねた。道すがら色々話をしていて少し肌寒く身震いすると、グラント様が上着を脱いで肩に掛けてくれた。グラント様が寒いから申し訳無いと返そうとしたら


「多恵様といるだけで温かくなるのでご心配なく」

甘い言葉を頂いた。


グラント様の上着は温かくマリン系の香りがする。

フィラと同じくらい好きかも…

そんな事考えていたら、探る様な視線をグラント様は送って来ます。その視線に居た堪れず


「グラント様の体温を感じて心地いいです」


「貴女と言う人は…」


グラント様は私を引き寄せて頬にキスをした。

恥ずかしくて更に温かくなり、また前後の騎士さんの咳払いが聞こえたのは気のせいでは無いみたいだ。


作業場に着くと小さい歓声があがる。直ぐにケイトさんが対応に来てくれた。


「あっ!編み込みされてるんですね!かわいい」


「ありがとうございます。多恵様の様になりたくて、一生懸命練習したんです。今針子の流行はやりなんですよ!」


そう言われ針子さんを見ると、皆んなどこかしら編み込みをしている。針子さんらしく髪と一緒にリボンを編み込んだりしている。


「多恵様。今日はスカーフ祭り着るワンピースのお仕立てですね。サイズは先日測っておりますので

デザインと素材をお伺いいたしましょう」


奥の部屋に行くとグラント様も一緒に来て隣に座り密着します。あの…近いです…


私の希望は肌触りの良いコットンで。シンプルなワンピースで飾りは不要。色はは紺色か黒色で。ケイトさんが紙にデザインを描いていきますが表情が暗い。私何かやらかしましたか⁈すると横からグラント様が


「まるでお仕事着ですね。せっかくの祭りには質素過ぎませんか?」


その言葉に同意したようにケイトさんの表情が明るくなった。


元々シンプルで飾り名の無い単色の服を好んで着ていたから、箱庭の女性の様な華やかな服装は気後れして着れない。

渋っているとグラント様が色見本を見ながら何かを探しています。そして1枚の生地を見てケイトさんに提案しています。

横から覗くとラベンダー色。正直紫系の色も好きだけど、淡色は着たことが無いので似合わない気がする。

そんな事を思っていたら知らない間にデザインが完成していた。

ラベンダー色のひざ丈のワンピースで襟と袖が白色で切替されている。綺麗な人が来たらきっと可愛いだろう。正直私に似合うか疑問だ。

私が押し黙っているのを見てケイトさんは焦り、グラント様は満足そうにデザインと私を見比べています。


「えっと…これは閣下のご希望のデザインで、勿論多恵様のご希望のデザインも描かせていただきますよ!」

「素敵なんですがこのような華やかな服装はあまり着たことが無くて、着こなせる自信がないんです」


いきなりグラント様に手を取られて


「これは私からプレゼントさせて下さい。トーイ殿下とのお出かけに着て行かないで下さい。

後日私とオブルライト領に出かける時に着ていただきたい!」


グラント様の圧に嫌と言えない私。


「あ…はい。ありがとうございます」


満足気なグラント様に安堵したケイトさん。改めて私希望のワンピースをデザインしてもらいます。

濃紺だと城のお仕事着になってしまうので、紺色に襟元がスクエアーカットされ生成りレースを施してもらい、ウエストを太めのリボンで結ぶデザインに落ち着きました。

どさくさに紛れて洋服を贈れたグラント様は終始ご機嫌でずっと私の手を握っています。

デザインが終わり後はマスク作りをグラント様と見学し、部屋に戻ることになりました。


戻る途中に文官さんが来てグラント様に急ぎのサインをお願いしたいとの事。私は護衛騎士さんが居るので、ここで失礼しようとしたけどグラント様が許してくれない。結局グラント様の執務室が近いので立ち寄ることになりました。


本当に近かった様で数分しか歩いていません。部屋に入れていただきソファーで待たせてもらいます。

グラント様はデスクに座り書類を確認してサインをしています。

やっぱり働く男性はかっこいい。特にメガネ男子のグラント様とデスクはベストマッチ!ここにノートパソコンとスマホがあれば完璧です。

そんな事を思いながら眺めていたらグラント様と目が合った。目が疑問符になっているので


「働く男性はかっこいいですね」


と何気なく言ったら、口元に手をやり横を向いてしまった。照れて居ないでお仕事して下さいね!文官さんが待っていますよ。

書類を受け取った文官さんが退室したら宰相補佐付きの従僕さんがお茶とケーキを持って来てくれた。


『ん?チーズケーキ!それもスフレチーズケーキだ!フィナンシェと並ぶ私の大好物!』


目の前のグラント様が小さく笑っています。 


「貴女は分かりやすいですね。エレナ嬢に好物を聞いておいてよかった」


知らない間にリサーチされていたようです。そんなの関係ない!チーズケーキは正義です!


楽しくお茶とケーキをいただき大満足していたら、目の前にいたはずのグラント様が横に移動しています。手を取られ真剣な表情で見つめてきます。 


「…何か?」


「先ほどマスク作りを見学した際に楽しそうに針子と会話する貴女を見ていた胸が温かくなりました。

普通貴族令嬢は使用人には話しかけたりしません。貴女は身分関係なく色んな者と話をされる。

厨房の者が手紙をもらったと喜んでいたと聞いています。騎士たちは挙って貴女の護衛を志願しているそうです。

貴女の素晴らしさを知る者が増えるのは大変嬉しいのですが、慕うものが増えそうで素直に喜べない。

あの愛妻家の第2騎士団のクレイブ殿が貴女を褒めてばかりで、私は嫉妬でおかしくなりそうです。

私が嫉妬に狂った時は止めて下さいますか?」


「…どうやって止めたらいいのでしょうか?“目を覚まして!”って平手打ちでもしたらいいのでしょうか?でも私背が低いから台に乗らないと手が届きませんね…どうしましょうか…」


真剣に答えたのになぜか笑われた。いたって真剣です!私。


「でもいつまでもこのままでは駄目なんですよね・・・でもですね皆さんのお心は嬉しいけどね…

知り合って日が浅い私に好意を向けてくれるのが良く分からないのと、戸惑ってどうしていいか…

いっその事他の方を好きになってもらった方が気が楽な気もするし…」


「・・・貴女は残酷だ。貴女をこんなに欲している私に他の女性を選べと言うのですか⁈私は不快ですか!」


「いえ!グラント様を不快に思った事は無いです。ただ少し積極的過ぎます。…でも“ぎゅぅ”されると温かいし安心するので好きかも…」


「それって…」


グラント様の雰囲気か変わりました。真剣でいて少し怯えている様にも見える。

少し震える手で私の両頬を優しく包み込む。

このシュチュエーション前にもあっあ気がする…

グラント様か囁く様に


「お嫌でしたら突き飛ばして下さい」


やっぱりキスしようとしてる!


「他の人が居るのに…」

「人払はしてあります。私だけを見て下さい」


そう言えば人の気配が無い。いつの間に!私がケーキに没頭していた時⁈



グラント様とキス…嫌じゃ無い気がしない事もない?もー分からない…

いっそのことしちゃった方が分かるのかもしれない!多恵!ウブなティーンじゃないでしょ!


グラント様が綺麗なお顔近づき目を閉じた。

唇に触れるだけのキス。なんだろう…ドキドキよりほっこりする感じだ。

結果は嫌では無かった…

お読みいただきありがとうございます。

グラント様を受け入れた?多恵。恋愛も少し進みそうな予感…

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