ボリス
事件がやっと収束します。
「ボリスなぜ妖精王である俺にも知らされて無かったんだ」
ボリスって誰?
『リリスの命よ。詳しくはリリスに聞いて』
どうやら大鷲さんが”ボリス”らしい。
ケニー様は最敬礼しフィラに挨拶をしていたら、第2と第3の騎士が大勢やって来て地面で伸びているレオン皇太子をはじめ手下達を拘束し連行して行く。
「私はベイグリー公国の皇太子だぞ!この様な扱いただで済むと思うなよ!直ちに薬草の取引は止めてやる!私はそこのケニーに騙されたのだ、父上に書簡を送ってくれ!」
まぁー何て悪人らしいセリフ。
超絶怖い顔をしたクレイブ副団長がレオン皇太子を縛り上げ、冷気を放った表情のヒューイ殿下が連行していきます。
『あっ!どさくさに紛れてヒューイ殿下がレオン皇太子を蹴てる!』気持ち分かるよ…滞在中散々振り回されていたもんね…
少し遅れてサリナさんとグラント様が来た。サリナさん泣いちゃてる!ごめんなさい!
グラント様が私に触れようと手を出したらフィラが跳ね除けた。疲れているから揉めないで!
「ケンカ…しないで…」
辛うじて出る声で諌める。2人は気不味そうに目を逸らした。結局フィラに抱き上げられ右手はグラント様に握られた。
ふと前を向くとトーイ殿下とケニー様が向き合っている。徐にトーイ殿下がケニー様の頭を叩いた!
「いたいよ!」
「心配させやがって!お前普段から奇行が多いから裏切りを信じたわ!この馬鹿が…」
「殿下…好奇心旺盛と言って下さい」
2人は笑い合っている。良かったね殿下親友を失わなくて…
安心したら眠くなって来た。体が重い…陛下とイザーク様に顛末を聞きたいのに視界がぼやけて来た…
今寝ちゃうとまた寝過ぎて…しま…う。
額に柔らかい感覚? 「ゆっくり休め」
次は頬が大きな何かに包まれた?「良い夢を…」
ここから意識を手放した。
目を覚ましたら真っ暗な部屋で羽根の絨毯の上で寝ていた。ここは…女神の台座のこっち側だ!って事はリリスに会えるの⁈
起き上がり辺りを見渡すがリリスは居ない。
どうしていいか分からず立ち尽くす。暫くすると背後に気配を感じる振り返る。
そこにボリスが立っていた。大鷲のボリスは威圧感あるのに視線が優しい。なんか母を思い出す…
『多恵。リリスとイリアが貴女に感謝している。2人とも今力が弱く直接話す事が出来ないから私が代弁するわ』
今回の事件はベイグリー公国の王から協力要請もあったが、第2女神イリアからもあったらしい。
一つ目は妖精王の世継ぎ問題。二つ目は世界征服を目論むレオン皇太子。
『世界征服って!中二病か?』思わず心で突っ込んだら、ボリスが笑っている様に見える。
『レオンは浅慮でありながら気は強く、己を万能だと思っている。原因は彼を王にしたい王妃の教育』
あるあるの話だなぁ…
『しかし彼は才がない。側室を母にもつ1歳違いの第2王子の方が優秀で次第に周りは第2王子を次期王に望んだ。焦ったレオンは功績をあげる為にかなり強引に外交をし、対外的に反感をかっている。
その外交した1国にチャイラ島がありそこの産物に目を付けたの。
チャライラ島は女神の加護を受けない島。箱庭には妖精王がいて妖精と妖力の均衡を図り、自然は安定する。しかし加護の無いチャライラは妖精が自由勝手するので、作物や生物が異常発生したり枯渇したりする。今回も虫が異常発生しチャライラはレオンに助けを求めた。
何の策もないレオンは近郊の箱庭に探りを入れ、アルディアに女神の乙女がいる事が分かり、妃に迎え利用する事を思い付いたわけ』
察知したイリアはリリスに警告し、妖精王にも伝え力添えする様に動いてくれた。
並行してベイグリー王もアルディア王に協力を要請し、レオン皇太子の廃嫡を画策した結果こんな大事になったそうだ。
レオン皇太子に付いていた浅黒の男はチャライラの豪商の息子で、レオン皇太子がチャライラ島を支配した後に、島の王になる約束して協力していたらしい。
今回アルディアにかなりの密偵が潜伏していた様で、計画は陛下とイザーク様と宰相直属の暗部の者にのみ知らされていた。だから殿下やフィラが知らなかったんだ。
ボリス曰く『妖精王は人の様に嘘を吐いたり欺く事が出来ない。そうの妖精に近いわ』
『…て事は私に向ける好意は本心⁈』
『そうよ。妖精王が貴女に向ける心は本物よ』
あ…ボリスは聖獣だから心の声聞こえるんだった!
恥ずかしくて赤面する。
『てんもリリスから知らされて無かったの。だからあの時貴女を守る為に強引に姿を現した。私の姿を見てキョトンとしていたわ。でも時すでに遅く貴女は力を失い、レオンに連れ去れる事になってしまった。計画ではあの場でケニーと私が貴女とレオンを会場の外に運び、アルディア王と第1騎士団が捕縛する予定だった。
てんが先走ったので予定が狂い、少しの間でも貴女を不安にさせてしまったわ。謝罪します』
ボリスが頭を下げて謝罪されお受けした。
『てんはまだ幼く経験不足。貴女を守る意思は強いけどまだまだね。長い目でみてあげて』
『勿論です。いつも側に居てくれて心の支えになってくれてます』
ボリスは瞳は慈愛に満ちている。”お母さん”って呼んでいいですか⁈
『今から話す事は貴女を怖がらせるかもしれない。しかし知っていて欲しいの。第2女神イリア第3女神リリス、第4女神アリアの箱庭は比較的近いので、多恵の存在は知られている。第1女神ミアと第5女神カノの箱庭は遠くまだ知られていない。しかし時期知るところとなるでしょう。
そうすればレオンの様な輩が貴女を狙う事も出て来る。我らリリスの箱庭は貴女を守ります。だから信じて欲しい』
『でも妖精王が困っているから私に話が来たんだですよね⁈と言う事は私を狙う箱庭の住人は困っている事ですよね…』
困っている人を助けなくていいのかしら…
『妖精王は特例にあたるわ。妖精王の暴走は女神にも止めれないし、暴走後の修復にはかなりの神力を使う。今のイリアにはその力が無い。第2女神の箱庭存続に関わるからリリスが許可したの。人の問題はそこの女神が異世界人を召喚すればいいのです』
なるほどね…でもまたこんな風に巻き込まれるのは勘弁して欲しいです。
『これはリリスからのお願い。妖精王も妖力のキャパオーバーまで日が無いの。もって7、8年で後5年もしたらこの箱庭に影響が出だすわ。
それまでに妖精王を受け入れてあげて欲しい。私が感じたところ妖精王は気持ちは得られている気かがするけど⁈違う?』
ボリスは優しいだけで無く鋭い!思わず赤面する。
『気を許していると思います。でもまだまだ問題が多くてフィラに向き合えない。フィラを受け入れたら他の事が疎かになりそうで…無責任な事したくないんです』
ボリスは翼を広げて私を包み込んでくれた。柔らかいボリスの羽根と温かさに泣きそうになる。
『多恵は真面目ね…だから皆んな貴女を愛するのね。大丈夫よ。フィラの懐は深いから貴女を待ってくれるわ。いい女は男を待たすものよ!』
ボリスの優しさにマジで泣いちゃいました。
『そろそろ戻りなさい。皆んな貴女の目覚めを待っているわ』
ボリスがどんどん遠くなって来た。あー目が覚める…
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