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大鷲

お読みいただきありがとうございます。

私の頭上で睨み合いが勃発している。

助けて欲しくてクレイブ様を見たら苦笑されていて助ける気はない様で静観している。

って言うか身分的に口を出せないのだろう…


扉が開きヒューイ殿下が来てくれた。思わず殿下に視線で助けてを求める。苦笑しながら間に入って二人から解放してくれた。


ヒューイ殿下は何か言いたげに見つめてくる。訳が分からず殿下を見ていたら、申し訳無さそうにナタリー様の挨拶を受けて欲しいとのお願いでした。

もちOKです!何なら私からお願いしたい位です。


殿下は嬉しそうに扉に向かい開けたら、お人形さんの様な令嬢が入って来た。殿下にエスコートされ目の前にナタリー様がきて綺麗なカーテシーをされ挨拶をお受けしました。その後事件の謝罪をお受けして、マスクの話になります。今日は時間が無いから後日打合せをする約束をすると、ナタリー様が他の婦人や令嬢も誘っていいか聞いてきた。どうやらナタリー様はお茶会に積極的に参加して、そこでマスク作りをお手伝いいただける方を増やしていた様です。今現在20人程協力を了承いただいたそうです。

あれ?甘やかされた令嬢じゃ無かったけ?

ヒューイ殿下が誇らしげに


「あの事件後、ナタリー嬢も周りの皆んなも変わりました。それも良い方に…多恵殿のお陰です」


「私は何もしていませんよ!助言ときっかけを作ったに過ぎません。皆さんが自ら動いた結果です」


「多恵様!お姉様とお呼びしてよろしいでしょうか⁈」


ナタリー様がキラキラしたお顔で迫って来ます。

ナタリー様の後ろで満面の笑みを浮かべたグラント様が見えます。ナタリー様の姉?…ナタリー様とグラント様は兄妹…『ん?』


『△□×◯〜!』心の中だけで叫んだ私を褒めて欲しい!そんなのOKしたら妹公認になりグラント様を選んだ事になってしまわない⁉︎

…ちょい待って!レオン皇太子の真珠は死ぬほど嫌だったけど、ナタリー様の姉様呼びそこまで嫌だと思わなかったよ?なんで?


フリーズしている私をよそにナタリー様は兄のグラント様を売り込んできます。今はやめてほしい…


「もういいか?時間だぞ多恵行くぞ」


フィラが側に来て腕を差し出してエスコートを促す。そう言えば遠くで6刻の鐘の音が聞こえている。ナタリー様に再会の約束をし晩餐会の会場へと急ぐ。


私とフィラの前に第2の騎士さんが先導し後ろはサリナさんとローラさんが居てくれる。

フィラが「わかったから待て!」と急に大きい声を出すもんだから驚いた。


「多恵。妖精達が加護を与えたいらしい。妖精を呼んでみろ」


フィラの指示どおり妖精に会いたいと心で願うと、私とフィラの周りは妖精だらけになった。

妖精は色々話しかけて来て、良い晩餐会をと私の頬やつむじに口付けをする。

口付け受ける度に体が温かく感じる。


「お前たちもういいだろう⁈」フィラが手を振ったら妖精達は去って行った。


サリナさんが化粧とドレスを最終確認してくれ、会場に入場します。めっちゃ緊張するよ!


『妖精王フィラ陛下、女神の乙女多恵様ご入場でございます』


会場の視線が集まり緊張し軽い貧血になる。フラつくとフィラが腰を支えてくれ、”俺がいる”と頬に口付けされる。会場からため息と悲鳴があがる。

フィラの琥珀色の優しい瞳に見つめられ落ち着いて来たのに…次の瞬間正面にいるレオン皇太子と視線が合う。あの人の微笑み胡散臭い!視線がねちっこいなぁ!もう!見ないで下さい。

『あー近づいて来るよ』腰が引ける。フィラの手があるから下がれない。


レオン皇太子は前に来て丁寧に礼をされ名乗られます。手を取られ口付けをされました。アカン…寒気する。頑張って顔を作りご挨拶した私を褒めてサリナさん!


会食が始まる。私の右にフィラが座りその横にアーサー殿下。私の左にレオン皇太子でその横に陛下が座った。飲み物が用意され乾杯音頭を陛下が務められ、レオン皇太子とグラスを交わした時に何か囁かれた。周りの音で何言われたか分からず首を傾げたらウィンクされた。嫌な気しかしない…


食事が始まると矢継ぎ早にレオン皇太子から質問が飛んでくる。嫌だから適当に相手すればいいのに、日本人気質で無下な扱いが出来ず真面目に答えてしまう。食事の手が止まっているとフィラが食べろと注意して来てお父さんみたいだ。


最後のデザートが出ていただこうとした時、レオン皇太子に爆弾を投下された。


「多恵殿の美しい黒髪に似合うと思ったのですが、真珠はお気に召されませんでしたか⁈」


「素敵な真珠ありがとうございます。お恥ずかしながら首元がかぶれてしまい、つけれなかったのです」


皇太子が首元に触れようとした時に、フィラが怒りを含んだ声で…


「許しを得ず触れるのは失礼ではないか!」


「申し訳有りません。美しい多恵殿の首元を私が贈った真珠があれば美しさが増したのにと、残念に思い許しも得ず触れてしまうところでした」


「多恵は我が番だ。気安く触れるな!」


フィラは無表情で冷たい視線を皇太子に送り、皇太子は動じず熱を持った視線を送って来る。

2人に挟まれ大好きなチーズケーキも美味しく感じない。フィラの冷たい視線に負けずに皇太子は


「この後ダンスがあります。お相手お願いできますか⁈」


「私、こちらに来てから習ったのでまだ習得出来ていず、お相手出来るレベルでは有りません。レオン様の恥をかかせてしまいますから、どうぞ他の令嬢のお相手を!」


「初々しいですね。自慢になりますが私はダンスは得意なのでしっかりリードしますよ!貴女に恥はかかせません」


“初々しい”ってオヤジか⁉︎何言っても引いてくれない…フィラはじめ伴侶候補の視線が痛い…


「では1曲だけお願いします」

「初めのダンスは俺だぞ!」

食い気味にフィラが主張している


「勿論でございます」皇太子は作り笑顔をする。



会食の後、一旦控室に戻り化粧直しとお手洗いに行き一息吐きます。


「多恵さん大丈夫ですか?」


「精神を使い疲れました。アプローチが凄すぎてお手上げです」


「あとダンスで終わりです。イザーク様からダンス後は退室していいと許可をもらっているので、すぐにお部屋に戻りましょう」


大きく頷くとサリナさんは苦笑する。


『たえ よくないもの ちかくに いる』

『なっなに?それ!』

『だいじょうぶ フィラも わかっている』

『どこにいるの?』

『いやな けはい だけ』

『フィラ そのまま いい』


てん君の不吉な発言に不安が増す。

文官さんが呼びに来た。不安で思わずサリナさんを見たらファイトポーズをされた。行くしかないようだ…


『てん君。お願いね!』

『てん たえ まもり だいじょうぶ』


一抹の不安を抱えたまま会場に戻ることになった。



会場に着くとすぐにフィラ及び伴侶候補の皆さんが集まっていた。皆真剣な顔をしている。どうやらフィラが皆に“良くないもの”を話しているようだ。目が合うと微笑んでくれるけど殺気立って怖い…


「多恵心配するな。守るから!」


「ありがとう。頼りにしています」


会場に音楽が流れファーストダンスを陛下と王妃様が躍ります。やはり王だけあって迫力が違います。私のダンスは幼稚園のお遊戯の域をでません。ダンスが終わると本来ならアーサー殿下ですが今回は私とフィラが躍ります。フィラにエスコートされホールの真ん中に進み組ます。フィラは小声で…


「安心しろ!お前に美しさに見とれダンスは誰も気にしていない!俺に委ねろ」


「う…うん?」


なんか素直に喜べない…


踊りだすと意外に踊れた。一度フィラの足を踏みかけたら一瞬ほんの少し体が浮いた気がして踏んだ感覚が無い。顔を上げてフィラを見たらウィンクした。何かしたな…

取りあえず無事ダンスは終わりさがる。

直ぐにサリナさんが果実水を持って来てくれ一息ついていると、早速レオン皇太子がこっちに来る。


「多恵。ダンス中は大丈夫だと思うが嫌な気配がずっとしている。妖精と俺とで監視しているから安心して踊ってこい」


そんな事言われて安心できるか!!


「多恵殿。お相手いただけますか⁈」


目の前に超絶男前のレオン皇太子がいる。本当は断りたいが・・・


「よろしくお願いします」と差し伸べられた手に私の手を重ねた。



レオン皇太子にエスコートされフロア中央に向かいます。レオン皇太子の手は冷たく余計に緊張する。


『たえ こいつ いやな やつ』

『この人が“良くないのも”なの?』

『ない でも におい する』

『マジで! わぁ!』


音楽が始まり皇太子に強引にリードされ一歩目を出した。皇太子のリードは強引なところがあるが、本人が自信あるだけの事はある。へたっぴな私が次のステップに移行できるようにリードしてくれ、いつも踏んでしまう所が問題なく踊れた。少し余裕が出てきて顔を上げたら皇太子と目が合う。


「やはり私の妃は貴女がいい。リリスの箱庭が落ち着いてからでいい。私の元に来てくれ」


「こちらの世界は素敵な女性がばかりです。レオン様の相手は私には務まりませんわ」


「また謙遜を。こんなに愛らしくそれに博学だ。今この世界に貴女以上の女性は居ない」


「私はまだ伴侶を決める気はありませんのでお断りします」


ダンスが終わりに近づいた時に皇太子は何を思ったのか、私の首元のリボンを解き取った。

急にリボンを取られ身震いすると、首元に指を這わし耳元で囁く


「まだ少し赤いですね…むしり取るほど私の真珠はお嫌でしたか?」


「なっ!」


まだダンスは終わっていないのに、ぐっと引き寄せられ強く抱きしめられる。


「貴様!多恵を離せ うっ!」


誰かがフィラに大きな布を掛けた。嫌な予感が…あれは鉄の布?!


妖精王フィラは封じた。多恵様をこちらに!」


聞き覚えのある声がする。会場とテラスをつなぐ大きな掃き出し窓にケニー様と大きな鷲がいる。あれは聖獣なの?


『たえ ごめん しんどい がまん』

『え?何を我慢するの?』


てん君が遠吠えをすると左手から全身の力が抜けていく感じがする。体に力が入らない意識はあるが言葉が出ない…まるで金縛りにあった様だ。

ぐったりした私を皇太子が抱き上げる。


「これがリリスの“守り”の聖獣か!予想より大きいな…ケニーこの聖獣を何とかしろ。我々は多恵殿を連れて行く」


目の前にいるのはてん君?大きい空色の獅子が大鷲と対峙している。四方から誰かが私を呼んでいるけど、ごめんなさい返事する力が無い…。怖いまた拉致されるの?フィラ守ってくれるんじゃないの⁈


私を抱えて皇太子が足早に廊下を進む。

またまた拉致され多恵。

何処に連れて行かれるのだろう⁈

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