夜着
いつも寝てしまう多恵。元の世界ではショートスリーパーだったのになぁ
温かい…心地いい…誰かが撫でている…大きな手だフィラ?グラント様?アーサー殿下?キース様?
何の匂い?漢方の様な…瞼に柔らかい感触がする
これは夢?わか…らなぃ…
ゆっくり意識か浮上して天井か見えた。
あー久しぶりの知らない天井だ。
起き上がり薄暗い部屋を見渡すけどやっぱり見覚えない。とりあえず部屋の外を確認しよう。
扉を開けてみたら男前が勢揃いしている。
「多恵様!その様な格好で!」
ケイティさんがショール持って走って来る。
その様なって?ケイティさんにショールを巻き付けられ寝室に押し込まれる。
ふと姿見を見ると夜着を姿の私が映っている。
『あ?何これ!』
いつもの夜着と違い露出度が高い!鎖骨が完全に出てて胸は辛うじて隠れている状態で脚はうっすら見えている!こんな夜着持ってない!
唖然としているとケイティさんに厚手のガウンを着さされた。
「ケイティさん状況が分からない。ここ何処?今何刻なの?」
「今は7刻前で状況説明は後ほど殿下がなさいます。皆さんお待ちです。お着替えする時間がありませんのでこのままで」
先程の部屋に連れて行かれる。
部屋にいるのは
フィラ、アーサー、ヒューイ、トーイ殿下とグラント様、キース様です。相変わらず美男子達だなぁ…
お誕生日席の1人掛けのソファーに座らされます。
すぐにケイティさんがお茶と軽食を用意してくれました。
「多恵殿。今日は済まなかった。レオン殿との接触を避けていたのに会う羽目になり申し訳無い」
フィラ以外の皆さん頭を下げられた。
「不測の事態だったし皆さんには善くしていただいているので、謝らないで下さい。それよりここ何処ですか?」
「・・・」大変な事になっている。あの寝室はアーサー殿下の妃の為の部屋で、今いる場所はアーサー殿下私室の居間。説明するアーサー殿下は嬉しそう。ヒューイ殿下とトーイ殿下は申し訳無さそうで、後の3人は不機嫌だ。
ヒューイ殿下の説明によると、作業場の帰り遭遇した不審者はレオン皇太子の下僕で表向きは城内で迷子になった事になっている。
しかし捕獲した騎士さんによると訓練された騎士の様な身のこなしだった様で恐らく密偵の類。
私の後をつけて部屋を確認するつもりだったのだろう。もう正体バレているって事⁈一応赤髪のウィックに眼鏡をして変装して居たんだけど下手だった⁈
やはり寮では万全の警備は無理だと判断され、王族の私室に滞在する事になった。
誰の部屋に滞在するか話し合った結果アーサー殿下の妃用の部屋に。ヒューイ殿下もトーイ殿下も婚約者がいらっしゃるから無理もない。
アーサー殿下は疲れている様なのに満面の笑みを浮かべている。
仕方ないから部屋は使わせてもらいますが、妃になるかは話が別ですからね!
この後、フィラから妖精王の世継ぎ問題は私の妊活の助言で解決出来るからレオン皇太子の要求は拒否できる事に。明日カクリー侯爵家からエリザベス嬢の乳母が来る事になったと報告があった。
気のせいかフィラ以外の殿方が照れている様子。
「…!えっと医学的知識で夜の事情ではないからね!誤解しないでくださいよ!」
部屋の隅に控えるケイティさんが残念な顔をしています。あーもぅ!顔が熱い…
咳払いをしてトーイ殿下がケニー様に探らせたレオン皇太子の目的について報告されます。
思わず身震いしグラント様を見てしまった。グラント様は微笑み唇が”大丈夫”と伝えてきます。
少し安心してトーイ殿下の話に耳を傾けます。
妖精王の世継ぎの他にベイグリーの属国になりつつあるチャイラ島で大量に発見された黒い軽石に困っている。異世界の知識で有効活用したくて乙女と繋がりを持ちたい様だ。
黒い軽石?何だろう?黒曜石は軽くないし…黒くて軽くて石みたいなモノ…
もしかして石炭?ならば活用法が分かれば格段と技術が上がる。でも…前にリリスが『進み過ぎた文明は毒にしかならない』て言っていた。
石炭を燃料にしたら私の世界みたいに温暖化や空気が悪くなるかもしれない。このキレイな箱庭の自然が壊れる。
それに強欲皇太子✖️利己主義チャイラ人は危険しか感じない。きっとリリスもイリアも望んでいないだろう。これはお口チャックだ!
目下の課題は明後日の晩餐会を無難に乗り切ること。エスコートは妖精王のフィラがしてくれるから大丈夫だけど、接触が有るとするとダンスの時。
「まだ踊れないから無理ですは通りますか?」
部屋の皆んな首を振ります。分かっているけど皆んなで否定しないで…図太い私でも傷付きます。
話がひと段落し各自雑談を始めた。私は夕食を食べてないので軽食をいただきます。具沢山のミネストローネが美味しくほっこりしていたら、その様子にフィラが熱い眼差しを向けてくる。
恥ずかしいから見ないで!思わず膝を反対に向けたら今度はキース様と目が合った。キース様は何だろうあの視線は…何か可愛いモノを愛でる感じだ。
また顔が熱くなる。思わず
「見ないで下さい。食べれません!」
そうすると扉前に控えていたポールさんが何故か謝って来て、一斉に避難を受けていた。
あれ?ポールさんも見ていたの?
食事を再開し付け合わせのハーブのサラダを食べていたら、不意に寝ていた時に香った薬草の様な香りを思い出し、アーサー殿下に
「アーサー殿下。寝室に薬草の香りがしましたが、安眠効果とかあるのですか?」
“ガタ!”勢いよくヒューイ殿下が立ち上がり控えていたクレイブ様と寝室に向かう。慌ててケイティさんが止めたが、緊急事態だと押し通った。
私は意味が分からずサンドイッチ片手に固まる。
緊急事態って何?
次話でまた多恵が精神的にやられます。




