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針子

真夜中の倉庫に誰が来たのでしょう

入って来たのはグラント様と見覚えのある騎士さん。誰だっけ?…

あー!召喚の日に警護にいた第2騎士団の…ん…

ここまで出てる…


「副団長のクレイブ様だ!」


グラント様は眉を顰めクレイブ様は驚きながら挨拶されます。


本来人目があるから皇太子がいる間は会わない予定だったが、ケニー様の不可解な行動に私がやられた事により、この深夜に人気の無いこの場所で会う事になりました。


グラント様は私の元に足早に来て私の頬に手をあて視線を合わせます。グラント様の澄んだ菫色の瞳を見ていたら安心して震えも治まってきました。

落ち着いたのを確認しそっと抱き寄せてつむじ口付けを落とした。


サリナさんが椅子を2脚を向かい合わせ用意し部屋の隅に控えてくれ、クレイブさんは入口前で外を警戒。


グラント様は私を椅子に座らせ向かいに座ります。

グラント様は手を取り優しく微笑んでくれる。繋いだ手は大きく温かく強張った体か解れていく気がした。


「サリナ嬢からの文を読みました。トーイ殿下に確認した所、ケニー殿には多恵様の居場所は伝えてい無いとの事。最近あまりいい話を聞かないケニー殿に不審を抱かれたヒューイ殿下が内密にケニー殿に監視を付けていますが、レオン皇太子が入港してからは、何度か監視を撒き姿を消しています。多恵様が目撃された時間は丁度監視を撒いた時間と同じです」


「フィラがレオン皇太子とケニー様が密会しているって言っていました。ご存知ですか?」


「はい。しかしそれは陛下や殿下からの指示で秘密裏に皇太子の思惑を探る為です。しかし不可解な行動が多く我々も理解に苦しんでいます」


「グレーですか?」


「はい。忠誠心と愛国心の厚い男ゆえ信じたい」


落ち着いた事で色々疑問が出てきたので、グラント様に質問する事にした。


「そもそもなぜ薬草を輸入に頼っているのですか?リリスの箱庭に薬草は自生していないのですか⁈」


「・・・妖精王フィラから何もお聞きしていませんか⁈」


「確か“薬草の件は自分にも責任があるとは言っていましたが、内容までは詳しく聞いていません」


「お聞きでなら私からお話出来ませんので、妖精王フィラにお聞きください。元々はこの箱庭にも薬草は自生していて自給自足出来ていました。薬草はレックロッドに多く自生しています。しかし我が領地で発生した流行病で多く解熱作用のある薬草が必要になり不足する事に…。困ったアルディア王は一番近い第2女神のイリアの箱庭のベイグリー公国に商談持ちかけたのです。その際に交渉役をカクリー侯爵家が担いました。強欲なレオン皇太子相手に交渉は難航し補佐を務める為に薬師の知識があるエリザベス嬢がベイグリー公国に向かったのです。そこで妖精王ロイドに見初められ、妖精王ロイド番になることを条件に薬草の輸入が叶いました。レックロッドの薬草がこのままだと我が王国はベイグリー公国の属国に成り下がる。レックロッド帝国と妖精王フィラとの関係回復を箱庭の住人は望んでいる。レックロッド帝国に妖精の加護が再度あればベイグリーなどに頼る必要はないのですから」


「・・・」


色んな所でつながっているんだ・・・まずフィラにレックロッドとの事を聞かないといけない。

リックさんはケニー様がリズさんを売ったって言っているけど苦肉の策だったのだろう。ケニー様の明るい笑顔が痛々しく思う。


いつも隠さず冷静に話してくれるグラント様に感謝。彼は信頼できる人だ。


「落ち着きましたか?」


「ありがとうございます。ちゃんと眠れそうです」


「残念だ…眠れないのなら一晩中貴女の傍にいれたのに…」


グラント様は繋いだ手を強く握ってくる。ふとグラント様を見ると疲れた顔をされています。疲れているのに私の為に人目を避けて会いに来てくれたんだ。なんだろうこの感じ…感謝?感動?


立ち上がり徐にグラント様の頬にキスをした。


「へ?…ごめんなさい!何か頑張って下さっているグラント様を見ていたら私に何か出来るかなぁ…って思ったら無意識に…キス…しちゃって…ごめんなさい。私ったら何してんだろう!」


恥ずかしくて繋いだ手を解こうとしたら、立ち上がったグラント様に抱き寄せられた。

びっくりしてじたばた藻掻いてると


「嬉しくて…すみません。暫くこのままで…」


艶のある声が耳元でして赤面する。


「閣下…多恵様をお離し・・・くっ」


止めようとしたサリナさんをクレイブさんが手で制した。思わす私もじっとしてグラント様が納得するまで大人しく彼の腕の中にいます。

フィラもそうだけど男性の体温は高いから抱きしめられると心地いい…

暫くするとグラント様の腕が緩んで解放してもらいました。


「ありがとうございます。疲れが一気に無くなり後3日は徹夜できそうです」


「やっやめて下さい。ちゃんと寝て食事取って下さい」


グラント様の頬をさすりながら「少しお痩せになりましたか⁈倒れないで下さいね。皆も…私も困りますからね」


彼は私の手の上に自分の手を重ね「はい。貴女の為に…」小さく呟いた。


扉がノックされミリアさんが入ってきた。

倉庫の周りの安全を確認できたので部屋に戻ることになりました。この倉庫でグラント様とお別れをして部屋に戻ります。

部屋は念の為、当初の真ん中部屋から一番奥の部屋に移動しそちらで寝る事になりました。

グラント様と話しをして落ち着いたから、意外に直ぐに寝付け朝まで熟睡です。




2刻の鐘の音が聞こえて目覚めた。今日から働きます。


『たえ あさ げんき』

『てん君おはよう!今日からお仕事するんだ!』

『たのしい?』

『うん!』

『てん わからない でも たえ うれしい いいこと』


新たに調べた子供サイズのマスクサイズのメモと裁縫道具を用意しているとサリナさんが朝食を持って来てくれました。

今日は“きゃー!!”ホットケーキです。テンションあげあげです。

食後は身支度を整えミリアさんが来てくれるのを待ちます。ノックの後、濃紺のお仕事着のミリアさんが来ました。うわーやっぱり美人は何着ても似合うなぁ…羨ましいです。


部屋でレオン皇太子の外出の確認待ちをしています。暫くするとカリナさんが帰ってきてレオン皇太子が妖精国へ出発したと報告してくれました。

これで安心して作業場に行けます。


ミリアさんと二人で勤め人用廊下を移動します。

作業場に着くと皆さんマスクを作ってくれています。やっぱり職人!手が早くて見惚れちゃいます。早速ケイトさんに子供用マスクのメモを渡すと、針子さんに指示して早速試作を作り上げます。

私は作業場の一番奥でミリアさんとのんびりマスクを縫います。ミリアさんは針仕事の経験が無いようなので、メモのサイズに布をカットする作業をしてもらいます。

静かな作業場で黙々と作業しあっという間に4刻になりました。針子さんは皆食堂で昼食を取りますが、私は多くの人と接触しない方がいいようで、作業場にサリナさんがお弁当を持って来てくれ奥の休憩室でミリアさんと食べます。

何がって言われたら分からないけど楽しい!

休憩も終わり昼からの作業に入ります。また黙々とマスクを縫っていると廊下が騒がしいぞ?急ぎのお仕事ですか?

侍女のエレナさんが作業場に駆け込んで来て開口一番


「多恵様。すぐここを出で寮にお戻りを!」


「へ?何で?ごめんエレナさん意味が…」


また廊下が騒がしい。

男の人が言い合っているようです。いや~な予感がする…こうゆう予感は大抵当たるのだ


「ここが針子の作業場か!」


薄水色の長髪をなびかせ超絶美丈夫が入って来た。作業場の針子さんが溜息を吐き熱い眼差しを向けています。


っで!貴方だれ?


お読みいただきありがとうございます。

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