4.千種みかん、登場③
仕事をしながら書いているので不定期です。申し訳ありません。
「な、何が俺をそこまで駄目にしていったんだ…………」
「阿久比と付き合えなかったから」
「えっ?」
「学生時代に阿久比と付き合えなかったから、未来の高蔵寺は平日昼間に公園でブランコに乗る人間になった」
「う、嘘だろ?」
「嘘じゃない。大マジだよ」
俺が15年後ニートなのは阿久比さんと付き合えなかったのが原因…………。
「…………じゃあ今のままだと」
「確実に15年後は独身の自宅警備員」
「そ、そんな……………………」
突然の希望がない真っ暗な自分の将来について聞かされ、落胆し机に肘を付け頭を抱える。
だって阿久比さんとは高校に入ってからまともに話したことすらなく、輝いている阿久比さんを遠くから眺めていることしかやっていない。接点や共通の友達もいない。
ここから付き合うことなんて…………不可能に近いだろう。
父さん、母さん…………迷惑ばかりかける息子でごめんなさい。
「もう…………ダメなのか」
「駄目じゃないよ」
「えっ?」
「そのためにマブダチの私が高蔵寺を未来から救いに来た」
「み、みかん」
みかんの言葉に胸を打たれる。いかん、泣きそうだ。
「頼むみかん。阿久比さんと付き合うにはどうしたらいいんだ!? ぜひ教えてくれっ! 俺にできることは何でもするから」
額が痛くなるくらい机に擦りつける。
俺の先の暗い未来を変える方法を知っているのはみかんだけだ。年下とか関係なく、きちんと俺の誠意を見せないといけない。
「それは…………」
「そ、それは?」
「わからない」
「ん? 待て待て待て。えっわからない? どういうこと?」
さっきまであった空気とは明らかにガラッと変わった。
「哀れな高蔵寺を救おうって勢いだけで来たから作戦とか方法とか何もない」
「俺のために来てくれたのは嬉しいが、ものすごい行動力だな」
「ついでに言うと本当に勢いだけで来たのでこっちで生活するにあたっての衣食住の当てもない」
「今度からはもう少し計画的に行動しような」
「善処する。だから高蔵寺の家に泊めてほしい」
「…………何日くらいだよ」
助けてもらう訳だし一ヶ月くらいなら……。
「2、3年くらい」
「すいません。未来へお引き取りいただいてよろしいですか」
動物を飼うじゃないんだぞ。いきなり14歳の女の子を家に連れていって住まわせたいなんて親に言ったらどんなことを言われるだろうか。シミュレーションしてみよう。
『警察に行くぞ』
『110番するわよ』
『Go to the police』
…………良い方向には転がりそうにないな。
未来からはるばる俺を助けに来てくれたみかんには本当に申し訳ないが、お引き取り願おう。
「ほらもう帰るぞ…………あれ? あ、足が動かない…………はっ!?」
犯人の方を見てみると頬杖をついてこちらを見ていた。
「高蔵寺の家に泊まらせてくれるって言うまでここから帰さない」
「こ、この野郎…………」
舐めやがって。超能力が使えるからって何でも思い通りになると思うなよ。こんなものはな不意討ちじゃなければ打ち破れるんだよ、見とけよ!
「ふっっっぎぎぃ……ぅく………はあぁぁぁ…………」
ダメだ、ピクリとも動かねえ。まるで両足をコンクリートで固められたみたいだ。
「ふふふ無駄だよ。選択肢は一つしかないよ高蔵寺」
「く、くそっ!」
みかんの野郎、俺が首を縦に降らない限りこの拘束を解かないつもりだな。
ニヤニヤしながらこちらを見ているみかんが机に置いてある呼び出しボタンを押した。
こいつ…………何する気だ。
「はーい。いかがなさいましたか?」
呼び出しボタンを押したので店員さんが俺たちの席にやって来た。
「すいません。お会計をしたいのですが」
「それでしたらレジまで伝票を持ってきて頂けたら大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。じゃあ行こう高蔵寺」
そう言うとみかんだけが席を立つ。俺は立つことができないので座ったままだ。
「…………お客様?」
「どうしたの? 高蔵寺も早く立ちなよ」
いつまで経っても席を立ち上がらない俺を不思議そうに見ている店員さんとその様子をニヤニヤしながら見ているみかん。
こ、この野郎…………。
「……高蔵寺、もしかしたら体調が悪いのかな? すいません店員さん、救急車を呼んでーー」
「い、いや大丈夫だっ! めちゃくちゃ元気だからっ!!」
「えー? 本当かな??」
「本当だっ! だ、だから早く“一緒”に家へ帰ろうなみかん」
「うん。一緒に家に帰ろう」
この空気に耐えきれない自分の精神的弱さを恨むぜ。父さんと母さんには何て説明しようか…………
『クールでカッコいい美人なあの娘を惚れさせたいっ!~恋愛チキンの俺は好きな人を惚れさせるために、未来からきた超能力少女の力を借りる~』読んでいただき本当にありがとうございます。
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