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景観の楽園  作者: 野毛井 九九菜
第1章 行方不明の少女
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8 : 待人 来ず

Take2

「ガゼルも色々いるけど、例えば、トムソンガゼルの最高速度は時速約80kmだよ」


「そうか・・・、ありがとう」


 ぶっ飛ぶ前に、興梠(こおろぎ)が教えてくれた。

 しかし困ったな。俺そんなに速く走れねぇよ。頑張って走った例えとしては、あまりにも速すぎる。

 ということで、今度はミ―アキャットの様な走りでぶっ飛ぶことにした。ガゼルと同じく、詳しくは知らないが。っていうか、足が速いのかすら知らない。知識量としてはガゼル以下である。

 では――、


「待って待って待って待って!!」


「うっひゃー!」


 今度は嬉しそうだった。

 やっぱり分かっているのと分かっていないのでは違う。


「待って待って待って待って!!」


「ああ! 待つだけじゃなく、舞って、俟って、魔ってやる!」


「2つ目まではいいとして、3つ目は何だよ!」


 魔ってやるって・・・・一体何をするつもりだ!


「っていうか、えっ!? 興梠、お前知らないの?」


「知らない? 知らないも何も、何の話をしてんだよお前。私はまだ、話の流れが理解できていないんだが。途中下車どころか、電車にすら乗れてない」


「俺がしたいのは、女の子の話だ」


「ん、女の子? 幼女への愛を、お互い語り合おうっていうのか」


「・・・」


 何言ってんだこいつ。

 そもそも俺は、ロリコンではない。もう一度言おう、ロリコンではない。


「ちなみに私は幼女が嫌いだ。ついでに言うなら幼男も」


「急にそんな告白されても反応に困る! っていうか幼男って何!? 陽南中学校のこと?」


 宇都宮市立 or 岐阜市立


「だから・・・俺が言いたいのは、お前を探していた女の子のことだよ」


「ああ、ゴミ捨て場の人ね」


「え・・・なんで知ってんの?」


「だって平井さんが・・・」


「そのネタまだ引きずってるのかよ!?」


 いや、平井さんはもういいとして、本当に、どうして知っているのだろうか。

 平井さんの現実味が強くなっていくばかりである。

 

「で? 私がその女の子を知らないことの、何がおかしい?」


「・・・」


 そもそも始めからおかしかったのだ。

 興梠がその女の子を知らない前提で話が進んでいるじゃないか。

 ここに来た本当の理由を思い出せ――


「そういう風に言うってことは、まだ、その女の子は来てないんだな」


「うん、まぁ女の子・・・は来てないな」


「・・・女の子、は来てない?」


 興梠の話し方に、少し違和感を感じた。


「いや、だって平井さんが・・・」


「平井さんネタはもういいんだよ! 早く本題に入らせてくれ! 今回の話、もともと800字程度で終わる予定だったのに、もうこの時点でもう1300字だ! 500字オーバーなんだぁぁぁ!!」


「字数稼ぎはお手の物さ」


「褒めてねぇよ・・・」


 ここまで平井さんネタがくると、女の子は平井さんでした!、っていうオチがありそうで怖い。


「興梠、おかしいと思わないのか? 俺がその女の子に会ったのは、“今朝”なんだぞ」


 そう。俺が部活を休んでまでここに来た理由は、女の子と興梠の会話を手助けするため。

 今思うと、経験者ぶっていた自分が情けないが、こうなった以上、俺の判断は正しかったのではないだろうか。


 日が沈み始め、赤い光が境内を照らす。

 もう一日は終わろうとしていた。


「お前を探していたあの女の子はどこにいる」


「・・・」


 探すものは探される。

 彼女は今、一体どこに。

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