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景観の楽園  作者: 野毛井 九九菜
第1章 行方不明の少女
6/29

6 : 神社へ

7月18日(金)放課後 学校にて


5分後


「はぁ、はぁはぁ・・・」


 はっきり言うと、俺は何とか机の破壊を防ぎ切った・・・自らの体を犠牲にして。

 俺たちの激しい戦闘のせいで、クラスのみんなは逃げていってしまうし、もう無茶苦茶である。

 しかし・・・


「で、どうして部活を休むんでっか(ですか)?」


 まだ難は去っていないようだった。

 俺への糾弾をやめない半野。その態度でつい、答えに窮してしまう。


「いや、まあいろいろあってな・・・」


「ん~?」


 はっきり言うと、あの少女が興梠を探していた理由を知りたい、というのもなくはないので、何とも言えなかった。 


「いや、いろいろあるって・・・全然理由になってねえん(ないん)ですけど」


 理由になってねぇ・・・!?

 おっかしいな~、敬語なのに怒りが丸出しで聞こえる。

 

「そ、そうだなぁ。あっ、家だ。家の用事だよ。ほ、ほら、明日から夏休みだろ? 徹夜で帰省する予定だからさ、今すぐ帰らないとまずいんだよ・・・」


「7月に帰省ですか・・・本当にそうなんデスカーン?」


「う、うん。7月に帰省・・・ってデスカーン!?」


 かんおけポケモン


「まぁ、そういうことだからごめんな。大会も近いことだし、明日は出ることに・・・」


「明日?」


「じゃなくて・・・2日間帰省してるから、明々後日(しあさって)には部活に出るよ・・・」


「はい。では明々後日、先輩の顔が見られることを楽しみにしておきらり()す」


 こうして、明日からも引き続き部活に行く予定だった俺の生活は、自らの見苦しい言い訳によって、白紙と化してしまった。


             ◆


同日 放課後 神社にて


「やあ、石黒。遅かったじゃないか」


 神社に着くと、いかにも待ちくたびれましたというような顔をした興梠(こおろぎ)が、お賽銭箱の上に座っていた。

 この罰当たりめ・・・。


「色々あってな・・・。というかまぁ、仕方ないだろ。中学生だからって、お前みたいな暇なヤツばかりとは限らないんだよ」


 もう夏休みだし、中学生にとっては忙しい時期である。


「私のことを暇人って言うなよ、石黒。私は暇だから辞書を読んでいるんじゃない。好きで辞書を読んでいるんだ。暇つぶしと趣味を一緒にしないでもらえるかい?」


 不満そうな顔で興梠が話す。

 人生を辞書に捧げているこいつと比べたら、趣味を暇つぶしに使うことなんて全然マシだと思うのだが・・・、そこんとこはどう考えているのだろう。大人として。


「あと、お前がここに来るのが遅くなったことで、私は非常に困っているんだけれど、責任は取ってもらえるのかな?」


「・・・ん? 責任?」


 俺は、毎日神社に行くという約束を興梠と交わしたわけではない。

 興梠は、俺の行動をとやかく言える立場ではないはずだった。 


「はぁ、・・・石黒、お前は気付いてないかもしれないが、お前が遅れることで、私だけでなく近所の人にも迷惑がかかるんだぞ」


 堂々と座って話し続ける興梠。

 もう一度言うけど賽銭箱の上だぞ。堂々も何もあったもんじゃない。


「迷惑? 一体、どんな迷惑だっていうんだよ」


 興梠に迷惑がかかるのは別にどうでもいいのだが、近所の人ともなると、聞かないわけにはいかなかった。


「石黒。私がストレス発散のために、お前と雑談をしていることは知っているだろ?」

 

「・・・・・・・・・ん!?」


「どうした? 石黒。もう一度言うぞ。私がストレス発散のために、お前と雑談をしていることは知っているだろ?」


「ストレス発散・・・? はぁ?」


 そんなこと知らんぞ。初耳だ。

 見たことも聞いたこともないし、感じたことも考えたことすらない。

 

 まるで知っていることが当たり前のように話さないでくれ。

 

「なんだお前。1年間も私の元へ通っているくせにそんなことも知らなかったのか。なら説明が必要だな」


 やっと興梠がお賽銭から降りた。

 神社の鐘を鳴らすためのひもにつかまって降りていたため、罰当たりなのには変わりないのだが。


「私はストレス発散のために、お前と雑談をしているんだ」


「俺はストレス発散機だったのかよ!!」


 衝撃的過ぎるわ!!!

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