6 : 神社へ
7月18日(金)放課後 学校にて
5分後
「はぁ、はぁはぁ・・・」
はっきり言うと、俺は何とか机の破壊を防ぎ切った・・・自らの体を犠牲にして。
俺たちの激しい戦闘のせいで、クラスのみんなは逃げていってしまうし、もう無茶苦茶である。
しかし・・・
「で、どうして部活を休むんでっか?」
まだ難は去っていないようだった。
俺への糾弾をやめない半野。その態度でつい、答えに窮してしまう。
「いや、まあいろいろあってな・・・」
「ん~?」
はっきり言うと、あの少女が興梠を探していた理由を知りたい、というのもなくはないので、何とも言えなかった。
「いや、いろいろあるって・・・全然理由になってねえんですけど」
理由になってねぇ・・・!?
おっかしいな~、敬語なのに怒りが丸出しで聞こえる。
「そ、そうだなぁ。あっ、家だ。家の用事だよ。ほ、ほら、明日から夏休みだろ? 徹夜で帰省する予定だからさ、今すぐ帰らないとまずいんだよ・・・」
「7月に帰省ですか・・・本当にそうなんデスカーン?」
「う、うん。7月に帰省・・・ってデスカーン!?」
かんおけポケモン
「まぁ、そういうことだからごめんな。大会も近いことだし、明日は出ることに・・・」
「明日?」
「じゃなくて・・・2日間帰省してるから、明々後日には部活に出るよ・・・」
「はい。では明々後日、先輩の顔が見られることを楽しみにしておきらりす」
こうして、明日からも引き続き部活に行く予定だった俺の生活は、自らの見苦しい言い訳によって、白紙と化してしまった。
◆
同日 放課後 神社にて
「やあ、石黒。遅かったじゃないか」
神社に着くと、いかにも待ちくたびれましたというような顔をした興梠が、お賽銭箱の上に座っていた。
この罰当たりめ・・・。
「色々あってな・・・。というかまぁ、仕方ないだろ。中学生だからって、お前みたいな暇なヤツばかりとは限らないんだよ」
もう夏休みだし、中学生にとっては忙しい時期である。
「私のことを暇人って言うなよ、石黒。私は暇だから辞書を読んでいるんじゃない。好きで辞書を読んでいるんだ。暇つぶしと趣味を一緒にしないでもらえるかい?」
不満そうな顔で興梠が話す。
人生を辞書に捧げているこいつと比べたら、趣味を暇つぶしに使うことなんて全然マシだと思うのだが・・・、そこんとこはどう考えているのだろう。大人として。
「あと、お前がここに来るのが遅くなったことで、私は非常に困っているんだけれど、責任は取ってもらえるのかな?」
「・・・ん? 責任?」
俺は、毎日神社に行くという約束を興梠と交わしたわけではない。
興梠は、俺の行動をとやかく言える立場ではないはずだった。
「はぁ、・・・石黒、お前は気付いてないかもしれないが、お前が遅れることで、私だけでなく近所の人にも迷惑がかかるんだぞ」
堂々と座って話し続ける興梠。
もう一度言うけど賽銭箱の上だぞ。堂々も何もあったもんじゃない。
「迷惑? 一体、どんな迷惑だっていうんだよ」
興梠に迷惑がかかるのは別にどうでもいいのだが、近所の人ともなると、聞かないわけにはいかなかった。
「石黒。私がストレス発散のために、お前と雑談をしていることは知っているだろ?」
「・・・・・・・・・ん!?」
「どうした? 石黒。もう一度言うぞ。私がストレス発散のために、お前と雑談をしていることは知っているだろ?」
「ストレス発散・・・? はぁ?」
そんなこと知らんぞ。初耳だ。
見たことも聞いたこともないし、感じたことも考えたことすらない。
まるで知っていることが当たり前のように話さないでくれ。
「なんだお前。1年間も私の元へ通っているくせにそんなことも知らなかったのか。なら説明が必要だな」
やっと興梠がお賽銭から降りた。
神社の鐘を鳴らすためのひもにつかまって降りていたため、罰当たりなのには変わりないのだが。
「私はストレス発散のために、お前と雑談をしているんだ」
「俺はストレス発散機だったのかよ!!」
衝撃的過ぎるわ!!!