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景観の楽園  作者: 野毛井 九九菜
第1章 行方不明の少女
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3 : ゴミ捨て場の少女

「ZZZ・・・」


「・・・どうすればいいんだ俺は」


 ゴミ捨て場で寝ている少女を見つめながら、俺は茫然と立ちつくした。

 なにせ、こんな意味不明な状況は初めてなので、本当にどうすればいいのか分からない。


「うわっ、ホントだ。女の子が寝てるね。ゴミに埋もれてるけど臭くないのかな・・・」


 ゴミ捨て場に近づきながら、どうでもいいことを心配する半野。

 いかんいかん、後輩もいるんだしな。ここは先輩としてビシッと行動せねば。


「い、いったんこいつを外に出すか。ずっと放置していくわけにもいかないからな」


「うん、そうだね。見たところ傷はないし、しっかり息をしてるから動かしても大丈夫だよ」


「有能だな」


 俺がボケっとしている間にそんなことを・・・。


 後輩を尊敬しつつ、半野と一緒に少女を外に出した。


 半野より少し低いくらいの身長だな。12歳くらいか? それに高そうな服も着ている。貴族? いや、どこかの金持ちの娘か・・・。


「私たちもずっとここにいるわけにもいかないし・・・、ただ寝ているだけなんだったら、早くこのチビを起こそうか」


「チビってオイ・・・。いきなりどうした、この女の子に喧嘩売ってんのか?」


「思ったより可愛い顔をしてたからイライラしてる」


「そんな無茶苦茶な・・・」


 お前も十分小さいんだけどな。


「まぁ、起こすっていうのには賛成だ。体でもゆすってみるか」


 少女の肩をつかみ、体を左右にゆすった。


 グラグラグラグラ


「・・・」


 全然起きねぇな。


「お~い! 起きろ起きろ~!」


 グラグラグラグラグラグラグラグラ


「・・・」


 あれ?


「・・・オイ半野。こいつ、もしかして死んでんじゃねぇの?」


「はい? どう見ても人間でしょ。頭に十字架でもついてるの?」


「神殿じゃねぇよ!」


「あ~、貴族のお屋敷のことか」


「寝殿でもねぇよ!! 死んでんじゃねぇの、って俺は言ったんだ! デッドだよ、dead!!」


「そんなに怒らなくてもいいじゃん。それに、息はしてたから死んではないよ。ほら、ちゃんと寝息もたててるし」


「ZZZ・・・」


 確かにこいつ、寝てはいるんだよな。思ったよりも寝起きが悪いだけで。


 さて、どうしたものか。このまま肩をゆすり続けていたら、2人とも遅刻してしまうぞ。


「なんなら私が起こそうか?」


「えっ、お前が起こすの? お前に任せるとよくないことが起きそうだから、俺としては、極力それを避けたいんだけど」


「よくないことが“起きそう”っていうのは、このチビを“起こす”、の“起こす”と掛けてるの?」


「どこまでもポジティブだな、お前は・・・。そして敬語を使え」


 っていうか、まだチビって言ってんのか。心の小さいやつだな。


「ため口に戻しても注意されなかったから、大丈夫だと思っていたんだけどな。いや、思っていたんでどけどね(ですけどね)


「で? お前はどうやって起こすつもりなんだよ。聞くだけ聞いてやる」


「早起きの最強アイテム~。ジャカジャカジャカジャカジャカジャカ・・・」


 ためが長いな・・・。めんどくさい。


「ジャカジャカジャーン!! 目覚まし時計を使うのですだ(んです)!!」


 目覚まし時計・・・?


「ちょっと待って半野。どうして登校を終えたはずのお前が、ポケットの中から目覚まし時計を出しているんだ? もしかして、持ってきたのか!?」


「いや、よく授業中に居眠りしたくなるから、授業が終わる時間に目覚ましをセットしておこうと思って」


「居眠りがバレバレじゃねえか!」


 まぁ、ここに目覚まし時計があるのは都合がいい。早速使わしてもらうことにしよう。


「よし、じゃあいくぞ。せーのっ!」


ビビビビビビビビビビビビッ!!!


「うっ、すごくうるせぇ! なんだよ、この目覚まし時計は! ただの近所迷惑になってるぞ! でも、これならこの女の子も・・・!」


ビビビビビビビビビビビビッ!!!


「うるさ~~~~~いっ!!!!!」


バンッ!


「「!」」


 目を覚ました! そして目覚まし時計を止めた!

 ありがたい。俺もう鼓膜が破けそうだったんだよな。


「はあ、はあ、はあ。お前たちだな! せっかくの眠りを邪魔したやつらは!」


 ・・・起こしてやったのにひどいこと言われるな。

 寝起きが悪い子供たちを起こすお母さん方は、こんな気持ちだったのか。


「何が眠りの邪魔だ! もう朝なんだよ。早く起きろねぼすけ!」


 さっきのにイラっと来たのか、半野が怒り出す。


「朝? あ、ホントだな。私はそんなに疲れていたのか。昨日の私、偉い偉い」


「・・・」


 自分で自分を褒めていやがる。


「お前達が起こしてくれたのか。迷惑をかけてすまなかった、ありがとう」


「いや、それはいいんだけど・・・。一体何があったんだよ。普通、ゴミ捨て場で寝ることなんてないだろ」


「あぁ、昨日の夜から人探しをしていてな。徹夜で探したんだが見つからずに、そのまま寝てしまったんだ。じゃあ、私は今日もそいつを探しに行くから、さよなら」


 そのまま立ち去ろうとする少女。


「オイ! ちょっと待てよ。誰を探しているのか教えてくれ。ひょっとしたら、力になれるかもしれん」


 せっかく起こしたんだから、ついでに手伝いでもしてやろうとか、そんな気分だった。

 いつもの俺ならすぐに学校に行くはずだから、珍しい。案外、半野が迎えに来てくれたことを嬉しく思っていたのかもしれない。


まぁ、この行動は裏目に出るのだが・・・。


「そうか? じゃあ、名前だけ教えるよ」


 少女がこっちに振り返った。 


興梠(こおろぎ)


「!?」


「興梠という女を探している」


「・・・・・・」


 知り合いだった。

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