25 : 楽園
3日遅れました。すいません。
「楽園。それは人の愛が結晶化したものだ」
「結晶化・・・」
はて、理科の実験か何かだろうか。
開始早々、俺は話に追いつけなくなった。
「愛が結晶化するっていうのは、具体的にどういうことなんだ?」
「ん~、いい質問だね。だけど説明が難しいから、無視して話を進めてもいいかな?」
「諦めんな。もっと頑張ってくれ」
前回、楽園のことを教えよう! とか言っていたのはお前じゃねぇか。
統治者が質問を放棄してどうする。
「じゃあ石黒君くん。まずは水の入ったビーカーを想像してくれ。何も溶けてない純粋な、真水の入ったビーカーを」
「・・・OK、想像したぞ」
「人が何かを愛すると、ビーカーの中に愛の欠片が溶けていく。もちろん、ちょっとやそっとの愛じゃあ全然足りないけれど、仮に大量の愛が溶けると・・・」
「と、溶けると・・・?」
「溶けきれなくなった愛が塊として出てくるんだ! バーン!」
「・・・」
さすがにその効果音はおかしいだろ。
ビーカーが爆発してしまっている。
「で、その塊が楽園ってわけ。分かったかな?」
「んー・・・」
分かるような、分からないような・・・。
俺は、欄干という名のガードレールに寄りかかった。
「結局、楽園って何なんだ? 行方不明になるものなのか?」
「なるよ。だって楽園は世界だもの」
「???」
ちょー混乱。
「あー、ちょっと急だったね。順を追って説明しよう」
「・・・頼む」
「例えば! 興梠君は辞書が好きだろう? だから、その思いが爆発すると楽園ができる」
「そうだな。そこまでは分かる」
問題はそのあとだ。
そのあとが分からない。
「興梠君が創った楽園は、辞書のためだけに創られた世界なんだ」
「辞書のためだけ?」
「そう。大量の辞書であふれかえっていると思うよ」
「大量の辞書・・・」
死んでも行きたくないような場所だな。
しかし、あの辞書マニアにはピッタリのように思える。
札束プールならぬ、辞書のプールに入ってそうだ。
「さっき、大量の愛って表現をしたけれど、実際、楽園を創るぐらいの愛なんて、もはや愛というより欲求なんだよね。楽園という形でその欲求を叶えることで、精神を安定させてるっていう感じ?」
「精神安定剤・・・か」
楽園と名付けて美化しているだけで、思ったよりも危ないところらしい。
綾星は3日以上そこにいると聞いたが、本当に大丈夫なのだろうか。
「大丈夫大丈夫、安心してよ。ほとんどの楽園では普通、人は死なないんだ」
「そうなのか? だったらいいんだけど」
「まあ、百聞は一見に如かずと言うように、自分で見た方が1番いいよ」
「・・・」
「では橋世界、景観の楽園にー! レッツg――プツッ。ツー、ツー、ツー、」
また、電話が切れた。
次回の予定は活動報告へ!




