表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
景観の楽園  作者: 野毛井 九九菜
第2章 橋世界
23/29

23 : 集合

 1日遅れました。すいません。

「やあ石黒、おはよう」


「おう興梠(こおろぎ)、おはよう」


「今日はいい天気だね」


「ああ、快晴だな」


「ところで、朝の良い気分を害させてしまうことになるけれど・・・遅刻だよ」


「うるせぇ、このホームレスが」


 俺はこの女、興梠に呼び出され、仮屋橋を訪れていた。

 時刻は9時15分。15分遅れである。


「どうしたんだ、遅刻なんてらしくないぞ? お前は時間に厳しい男だと思っていたんだが」


「いや、予定では9時に着けるはずだったんだよ。ただ、ちょっと不備があってな」


「と言うと?」


「待ち合わせに選ぶくらいの橋だからさ、俺はてっきり、もっと大きい橋を想像してたんだ。で、今日の朝、『真珠(まだま)市 仮屋橋』と検索してみたら全然出てこない。とはいえ、神社の近くに川はあったから、上流から順に橋巡りをし、4つ目の橋でようやくお前を見つけたってわけだ」


 それで、15分遅れ。

 自転車は使わず歩きだったことを考慮すると、中々がんばった方ではないだろうか。


「へえ・・・災難だったね」


「誰のせいだと思ってんだ」


「言っとくけど、私のせいじゃないぞ? 昨日にちゃんと、神社から出て左に行くと、すぐに見つかるって教えたからね」


「それじゃあ分かりにくいんだよ・・・」


 神社からって、100m以上あったじゃねぇか。

 踏切も渡ったんだぞ。そんなに遠くとは聞いてない。


 しかもこの仮屋橋、長さが3mと小さく、遠目で見ると橋であることすら分からないくらいだった。


「すぐに見つかるわけあるか。そうやって何でもかんでも、“近くて便利、セブンイレブン”みたいに、言ってんじゃねぇ」


「“近くて便利”というよりは、“近くて便利なことが多い”の方が案外正しいんだろう。ここから最寄りのセブンイレブンまでだと、5分以上かかるしね。ちなみに、昼食は用意してきたのかな?」


「え、昼食? まあ念のため持ってるけど」


 姉ちゃんが作ってくれたお弁当である。

 姉によると、「我が弟よ。お姉ちゃん特製、愛情たっぷりお弁当だ。私のことを思い出しながら食べてくれ♡」とのことだった。

 出かけると朝聞いてから、準備なしで素早く完成させたところを見ると、さすが天才と言わざるを得ない。


「それは良かった。わざわざ買いに行くとなると、時間がとてももったいない。ただでさえ時間がおしているから、できる限り無駄なことはしたくなかったんだ」


「っていうことは、今日は雑談をしないのか」


「いいや、するよ」


「するんかい」


 無駄なことはしたくないんじゃなかったのか。


「オイオイ、雑談を無駄って言うなよ。私はけっこう楽しめてるんだぞ?」


「お前のことなんて知るか。俺が楽しくないって話だ」


「またまた~、本当は辞書が嫌いなだけなんだろ?」


 興梠が挑発するように辞書を開く。

 そしてその間から、スマートフォンを取り出した。


「・・・」


 やべぇコイツ。スマホを栞代わりにしてやがる。

 しかも辞書の栞に。


「はーい。じゃあ石黒、こっち向いてー」


「?」


「1、2の3・・・ホイッ!」


「えっ!?」


 スマホが宙へ放り投げられた。

 俺はとっさに、手を伸ばしてスマホを捕まえる。


「おー、ナイスキャッチ」


「ナイスキャッチじゃねぇよ。川に落としたらどうするんだ」


 忘れているかもしれないが、ここは小さな橋の上だった。


「そんなことより、ほら。電話がかかってきているぞ」


「ん、電話?」


 ブーブーブーッ・・・


「ああ・・・電話ね」


 言われてみると、確かにスマホが震えていた。

 俺は電源を入れ(パスワードは設定されてなかった)電話に出る。


「ちなみに興梠、これって誰からかかってきてるんだ?」


「そりゃあもちろん、統治者ちゃんからに決まってるだろ?」


「・・・」


「トーチちゃんからのお電話だ。早く話をしてやりなさい」


「えー」


 朝の良い気分が害された。

 次回は、×6月25日 → ○7月2日 の予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ