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景観の楽園  作者: 野毛井 九九菜
第1章 行方不明の少女
17/29

17 : 驚愕、困惑・・・からの憤怒

 1日遅れました。気を付けます。

「赤の他人をわざわざ助けてやるような、義理も義務も私にはない」


「・・・」


 興梠《こおろぎ》の言動を一部始終目にした俺は、目をカッと開き、金魚のように口をパクパクさせながら、その場で固まった。


 えっ・・・えぇぇっ!?


 マ、マジか、コイツ!

 12歳の女の子を、グチャグチャに言い負かしやがった! ケチョンケチョンに踏みつぶしやがった!

 見られなかったぞ! トーチへの配慮が、優しさが会話のどこにも!!


 いや、確かに正論だよ!

 興梠の言っていることは確かに正論だけれども、それが一番人を傷つけるのだと、お前は知らなかったみたいだな!


 もしかして、わざとやったのか!? わざとなのかー!! えぇっ?


 ふざけんなよ! ただの辞書マニアかと思ったら、中身はとんだ化け物じゃねぇか!!


 てっきり、鮮やかな大人の対応を見せてくれるものだと期待していた、数秒前の純粋な俺を返せ!!


 ・・・固まっている割に、心の中は元気だった。


 傍《はた》から見ると俺は、文句を口に出して言えない、ただのチキン野郎なのかもしれないが、話に全然関係のない、一般の人である以上、興梠に文句を言える立場ではなかった。


〈 関係者以外立入禁止 一般の方々はご遠慮ください 〉


 というわけで、日頃の鬱憤うっぷんも含め、自由にいろいろ言わせてもらおう。


 ・・・心の中で。


「・・・」


 バーカ、バカバカバァーカ!


 興梠のアホ! くそったれ! 変態辞書マニア!!


 そもそも“コオロギ”って何だよ! お前は、バッタ目コオロギ科コオロギ亜科の昆虫じゃねぇだろ!! 改名しやがれっ!


 いつも俺を暇つぶしの雑談相手に使いやがって・・・、こっちは迷惑してんだぞ!


 1日の雑談を15分としたら、えっと・・・1年は365日だから・・・カキカキ(筆算中)、1年で5475分。


 5475分・・・


 は? 91時間!? ウソだろ、4日以上じゃん!

 我ながら何やってんだよ! 俺はアホなのか!?


 これを機に、雑談のペース配分を考えないと、もう体がもたないぞ。

 せめて2日・・・2日に1回くらいで、雑談の調整を行わないと・・・じゃない。


 いや、俺が1人で反省してどうする。


 今すべきなのはトーチの話だ。興梠にいじめられた、かわいそうなトーチの話だ。


 ほら見ろ興梠! お前のせいで、トーチが泣き出し・・・


「・・・」


 てない?


「?」


 うつむいていたトーチが、顔を上げる。


「とりあえず・・・さっきの君の質問に、答えさせてもらう」


 その顔に涙は一切なく、冷静な瞳がじっと、興梠を見つめていた。


 なるほど。

 どうやら泣き出しそうなのは、俺の方だったらしい。


 興梠の言動に驚き、戸惑い、怒っていたのが、まさか俺1人だけだったとは・・・。


 グスン・・・


「なら、じっくり聞かせてもらおうか。その答えとやらを――」


 興梠は再び辞書を置いた。

 次回は5月8日の予定です。

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