2.
【優しきサンタクロース】
この一年、良い子にしていたらサンタクロースからプレゼントを貰える。
サンタさんは夜中にやってきて、煙突から入って靴下の中にプレゼントを置いていく。だけどその姿を見る事はできない。
サンタクロースと子供達との関係は、その家ごとにそれぞれ違うと思う。
そもそもクリスマスをやらない家もあるし、最初からサンタさんの正体をバラしている家もある。
僕の家の場合。
サンタクロースは大人だけにしか見えない存在だと、教えられていた。
いつか、サンタクロースの正体を、クリスマスイブの夜に枕元にプレゼントを置いていく素敵な人が誰なのかを、無垢な子供は知ることになると思う。
ある一定の年齢を過ぎ、ある日その真相を知った時、その子の心はどう変わっただろう。
どのようにしてバレてしまうのかは皆違うと思う。
冬休みに入っているから、意外と学校で真相を知るケースは少ない。
案外、年上の兄弟から知らされる事が多かったんじゃないかな?
僕の時はそうだったよ。
それでも完全に親が仕組んでいたイベントだったと理解するのは実は遅い方で。
なんと僕は中学1年になるまでサンタクロースは実在すると思い込んでいた、ピュアな子供だった。
それも呆気なく、終わりがきた。
クリスマスイブの、ワクワクしながら眠った夜を。クリスマス当日の、ドキドキしながら起きた朝は、もう二度と味わえない。
プレゼントの配給元から告げられたのだ。
「めんどくさくなった」と。
12月24日―――よりも二週間ほど早い時期、母とデパートに買い物に出ていた僕は、あるCDショップの前で3000円を手渡された。
「これは何?」と聞く前に母は言った。
「お兄ちゃんが好きなバンドのCDを買いに来たんやけど、あんたもついでだから選んでおいで」
「いいと?誕生日じゃないのに?」
僕の誕生日は11月。プレゼントにはゲームソフトを買って貰っていたのだ。
一体何のご褒美だと思った。店には散々クリスマスソングのBGMが流れているのに、鈍感にも程がある。
でもこの時までは僕は信じていたから。
サンタクロースという、ヒゲのお爺さんの事を。
「何言っとん。クリスマスプレゼント」
「え?」
「あんたが欲しいもの、中1にもなったし全然分からんのよ。もうわざわざ24日に渡さんでもいいやろ?」
母は笑っている。
逆に僕はハテナ顔だった。
「あんたの為に25日まで待たんといけんって、お兄ちゃんが嫌がっとるんよ。あの子の分も、あの子が選んどるし」
「え?サンタが置いてくれとるんやないと?」
あの子とは、5歳離れた僕の妹である。
「それ、本気で言いよると?」
「え、いや…」
母があまりに呆れた口調で言うものだから、僕はそうだとは言えなくなってしまった。
それでも流石に13歳にもなれば、薄々は気づいていた。
サンタクロースの正体は、両親だってね。
でもそれはあくまで他の一般家庭の話であって、僕の家に現れるサンタクロースは本物であると僕は信じ込んでいたから、かなり面食らった。
母にこれ以上呆れさせるのも何だか馬鹿にされているようで嫌だった。
だから僕は、母に話を合わせるしかなかったのだ。
「そんなん子供じゃあるまいし」
「良かった。その年でまだ信じとるんかと思った。あの子ですらとっくに卒業しとんのに」
そんなの初耳だった。
「いい加減、面倒臭かったけね。お母さん達も早く寝たいし。朝、あんたらうるさいし」
そうカラカラ笑う母は普通で。
僕が今の今までサンタクロースを信じていただなんて、つゆにも思っていないだろう。
めんどくさいの一言で終わった僕の心は晴れないまま欲しくもないCDを何とか選ぶのに苦労して大変だったのを覚えている。
これは今でもそうなのだけど、僕は余りテレビを観ず、芸能人や歌手にも興味が殆どないからだ。
祖母の好きな演歌を選ぶのも何か違う気がする。クラシックは習っていたピアノで聞き飽きていたから選択肢にもない。
散々悩んで選んだ一枚は、70年代のアニメ主題歌全集だった。
「アニメもゲームも、そろそろ卒業せんとね」
あの時代、いわゆるオタクはある事件が世にセンセーションを巻き起こしたのをきっかけに、親世代からは懐疑的だったのだ。
それでも知った曲はそれくらいしかなく、迷った結果なのだと文句を言うと、翌年からプレゼントは図書券になったんだっけ。
もうクリスマスプレゼントなんて要らない、と言えないところがまだ子供だったんだなと今なら思う。
そんなこんなで、僕は中学1年の冬、メルヘンの世界から卒業した。
だけどその年齢まで頑なにサンタの存在を信じ続けていたのには訳がある。
あれは僕が幼稚園の年長か、もしくは小学一年生だったか。
妹が幼く、ずっと母に抱っこされてた頃だから、多分そこら辺。
年齢は曖昧だけれど、その日、クリスマスイブに体験したとある不可思議な現象が、僕をいつまでも子供でいさせる理由になったのだ。
そう、僕は信じ込まされていた。
優しき、サンタクロースによって。
その日、僕は不機嫌だった。
早熟な兄はいつもつるんでいる友達の影響で、いち早くメルヘンの世界から脱却したらしい。
それでサンタの存在を、夜中にこっそりプレゼントを忍ばせてくれる両親なのだと、僕に暴いてしまったのだ。
それを証拠に、戸棚の一番高くて奥、子供が手の届かないその場所にそれはあった。
へへんと踏ん反り返る兄と、星がキラキラと散りばめられた緑色の包装紙に包まれた、明らかにどう見てもプレゼントにしか見えない物体。
僕にとっての兄は、絶対的な存在だった。
常に威張っていて乱暴で、色んな事を知っている物知りでぐいぐいと先導する兄に逆らう事は微塵もなく、泣かされても苛められても、健気にその背に懸命に付いていくだけの無力な弟こそ、僕だったのだ。
僕はプレゼントを見上げながら、ただ愕然としていた。
兄が言うのなら、それは本当の事なのだろう。
だけど、心が追いつかない。
例年、クリスマスの朝は一年で一番わくわくして、僕が大好きな朝だった。
12月も後半。ツンとする寒さに身を縮こませながら、まだ夜も明けていない暗い部屋の中、必死に暗闇に目を慣れさせながら手を伸ばして枕元を漁る。
すると小ちゃな靴下の下に、大っきなプレゼントを探り当て、僕の眠気は完全に吹き飛ぶのだ。
団地の狭い寝室。家族5人が全員並んで眠っているから物音は立てられない。
だけど一度覚醒した目はもうギンギンに見開いていて、僕は我慢できずに布団の中でプレゼントの包装紙をピリピリと破るのだ。
そうこうしている内に兄も参戦し、二人でヒソヒソと笑いあいながらプレゼントを開ける。
中に入っているものが何であろうと僕は嬉しかった。
兄とわくわく感を共有しながら朝を迎えるこの日を、僕は最高に楽しみにしていたのだ。
子供には見えないサンタクロースにお礼を言って、良い子でも悪い子でもなかった一年だったけど、当たり前のようにサンタさんがプレゼントを夜中に置きにくるんだと思っていた。
今年も、そうなのだと。
「そんなの、お父さんが買ってくるんだぞ。そんなの信じちゃって、お前馬鹿じゃないと?」
戸棚のプレゼントはまさにそうだといわんばかりに鎮座している。
僕はそれを見て愕然とし、それから荒れた。
最初は泣いて泣いて、めちゃくちゃ泣いた。
僕を騙していた、、、最も楽しみにしていた朝を失ったこのもやもや感をどう表現していいのか分からず、めちゃくちゃ泣いた。
お父さんも、お母さんも。
あんなにニコニコしてサンタさんをお迎えしようねと言ってたのに、ぜんぶ嘘だったんだ!
我が家では、サンタクロースは子供には見えないと言われていた。
イブの夜になると、実はその辺にウロウロしてて、お腹が空くからとお菓子を摘むのだそうだ。
たまに父や母が誰もいない場所に話しかけていて、翌日にはちゃんと用意したお菓子やおつまみも無くなっていたから、本当にそこにいるんだと思っていた。
でもそれは両親のただの演技で。
すっかり騙された僕は、訳が分からず戸惑う母に当たってしまった。
余計な事をって、僕の泣く理由を知った母に兄は怒られていたけど、図星だから兄を怒るのだと更に僕は荒れてしまう。
「ユウ、サンタさんのお歌うたおうか」
「いらない!」
「ユウ、一緒にサンタさんの靴下選ぼうか。大きいのがいいね」
「そんなの、意味ないやん!」
「ユウ、お母さんと唐揚げたくさん作ろう?ユウもサンタさんも好きだもんね」
「いやしないサンタが食べるもんか!」
母は懸命に僕を慰めるも効果は薄い。
何より僕を騙していた、子供と思って馬鹿にしていた母本人が取り繕うものだから、益々納得がいかなかったのだ。
そのイライラは泣くだけに収まらず、ついには物にまで怒りをぶつける羽目となる。
ターゲットは、居間のテレビの横でピカピカ光りを散らすクリスマスツリー。
クリスマスの二週間前に、家族みんなで和気あいあいと飾り立てたそれは、もうゴテゴテしい程にまでに様々な物がくっ付いている。
「こんなの、あったってしょうがないやん?どうせサンタなんかおらんのやし、意味ないもん!」
「おい!」
兄が止めるのも聞かず、飾る時あんなに楽しかったそのゴテゴテを乱暴に掴んでは放り投げ、雪に見立てた白い綿毛も手でぐしゃぐしゃにしてゴミ箱に捨てる。
泣きながら、そんな事をしている方が意味もないんだけど、とにかく僕は悲しくてイライラして、もはやサンタが存在しないという事実よりも悲しさの方が優ってしまって、怒りの矛先は家族そのものに向いていた。
楽しいのも偽物。
誰も僕を裏切っていないのに、一人で裏切られたと癇癪を起こして。
おそらく僕は、楽しかった家族の団欒を壊されたのだと思ったんだろう。
サンタという存在の元で、共通の一家のイベントを過ごす時間を、サンタがいない事実で完全否定されたのがどうしても許せなかった。
ついには母の逆鱗に触れ、手痛いげんこつを食らってしまうのだけど。
母に叩かれて益々癇癪は激しくなって、僕の泣き声に釣られて妹まで泣き出して、このきっかけを作った兄もコテンパに叱られて泣いて、母も堪らなかっただろうね。
せっかくのクリスマス前日。
本当だったら母の料理を手伝って、兄とケーキを取りに行って、この日は早く帰ってくる父がケンタッキーを買ってきてくれて。
とてもいい一日になるはずだったのだ。
なのに、僕の所為で雰囲気はぶち壊しだ。
午前中、散々泣き腫らした僕は部屋の隅にバリケードを作って蹲っていた。
いつもは一緒に買い物に出掛けるのに、母はむっつりした顔をして一人で行った。
元凶の兄は友達の家まで遊びに行くし、妹はせっかく張り巡らせたバリケードを破壊する。
「やめてよ!」
「うーあー」
バリケードといっても、家中の本を積み上げただけのものだ。
狭い団地に僕の部屋なんてないから、僕は一人になりたい時はよくこうして和室の角にバリケードを作る。
「やめてったら!」
「たーあー」
母も妹を連れて行けばいいのに。
昔は今と違って、子供だけに留守番を任す事は当たり前だったんだ。
だからといって、怒ってる僕に面倒を見させるってどうなの。
妹は体当たりで本のバリケードを崩していくし、居間はぐちゃぐちゃになったクリスマスツリーがあるから行きたくない。
テレビを観ようにも、否応なくクリスマスの話題しかやってないから見たくもない。
サンタなんかいないのに、なんでクリスマスなんてものがあるんだろ。
ほんの小さな子供だった僕にはそんな浅はかな考えしか浮かんでこなくて。
崩されては積み上げ、また崩されては妹をコタツの中に押し込んでを繰り返していたら、泣き疲れかいつのまにか僕は眠ってしまった。
目を覚ました時、和室のバリケードの中にいたはずの僕は居間のコタツの中にいて。
父を除く家族3人が、お昼ごはんを食べていた。
「あ、起きた。うどん食べる?」
優しく僕に問う母はいつもの通りで、買い物前にあれだけ怒らせてしまったのにと、テレビの横のクリスマスツリーを見る。
何もかも悪い夢だったらいいのにと思ったけれど、僕がめちゃくちゃにしたツリーはそのままで、母が僕の分のうどんを茹でに台所に行った隙に戸棚を見たけれど、やっぱりあのピカピカ包装紙のクリスマスプレゼントはまだそこにあった。
げんなりする。
朝の出来事は夢じゃなくて、本当。
サンタさんがいない事も、本当。
またムカムカしてきたけど、どれだけ一人百面相をしてもお腹は空くから嫌になる。
これで、ご飯なんて要らない!って突っぱねる事ができれば、僕の怒りの度数も分かってもらえるだろうけど、それでもお腹は空いたんだからしょうがないと思う。
くたくたのうどんを食べ終わった後は暇だった。
いつもは食べたらすぐに遊びに行く兄は家にいて、なにかと僕に構ってきた。
乱暴者で、すぐ手が出る苦手な兄。だけど、僕はどんなに邪険にされようとも兄の後ろを尻尾のようについて回る。
兄は僕の見本であり、手本であり、指針でもあった。
そんな兄は僕が付いてくると凄く嫌そうな顔をしていたけど、今日はいつもの調子ではなく、逆に僕に構わないで欲しかったのに、ああだこうだと喋りかけてくるのだ。
「消しゴムで遊ぼうや」
「いや、遊ばない」
「なんでそんなに怒っとるん?サンタがおらんってオレが言ったけ?」
「……」
「ユウ、違うって。サンタは大人にしか見えんって言ったんよ」
兄の口調は優しい。気持ちが悪いくらい。
「嘘。お兄ちゃん言ったやん。あそこのプレゼント、お父さんがソゴーで買ってきたやつって」
ソゴーとは、僕らの住む町からバスで45分ほどの総合デパートの事だ。
屋上に小さな遊園地があって、レストランもある。
欲しいものは全部そこで揃うけど、人混みが苦手な両親はなかなか連れて行ってくれない場所だ。
「確かめた?」
「うどん食べる前に見たもん。あったよ、プレゼント」
「もっかい見てん、ないから」
「嘘!」
慌てて戸棚を開ける。
最初に飛び込んでくるのは緑色の掃除機。それからホウキ。
何段もある棚の中には細々した物が入っていて、薬とかもあるから子供は開けたらいけない戸棚。
そのてっぺん、ごちゃごちゃした一番上に、星がピカピカした派手な包装の四角いプレゼントがあった。
「え?」
はずなのに。
プレゼントが、そこにない。
「な、ないやろ?」
「なんで!?」
うどんを食べる前に見たときはそこにあった。
うどんを食べ終わってからまだ1時間も経ってない。
兄はずっと僕と一緒にいるし、母は昼食の後は台所から出てこない。妹はコタツの周りをひたすらぐるぐる回っている。
その間、この戸棚に触った人は誰もいないのだ。
勿論、誰か訪ねてくる事も、出て行った音もない。
「お前がうどん食ってる間に取りに来たんだってよ」
「だれが?」
「だから、サンタ」
配達途中でプレゼントを一個落としたサンタクロースが、父に頼んで預かってもらっていたのだと兄は言うのだ。
そしてクリスマスの前日、それを取りに行くと。
サンタは子供には見えない。
兄にも見えなかったが、母と誰かが喋っているのを見たらしい。僕がうどんを啜っている最中に!
「おかしいやん?オレたち3人おるのに、プレゼントは一個だけやったやろ?」
「え…あ、そう、かも」
言われてみたらそうだった。
僕が見たのはそのプレゼント一つだけ。
兄弟は3人いるのだから、3つないとおかしい。
それに僕は午前中、怒りに任せて家中の至る箇所を家探ししたのだ。
サンタがいない証拠を、他にも見つけたくて。
3DKの僕の家。
収納なんてたかが知れてる。
僕の知る限り全部見た。そして、戸棚の1つだけのプレゼント以外は、何も見つからなかった。
「お母さん!!」
僕は台所の母の元へ駆ける。
「サンタが来たって、ホント?」
しかし母は何も言わなかった。
「お母さん?」
食卓にはたくさんの料理が並んでいる。
僕の大好きな唐揚げも、大きなお皿にドカンと乗っている。
兄の好きな海老フライも、妹の好きなポテトも。
イブを彩るささやかなご馳走。
何日も前から準備に勤しんでいた母の気持ちを、僕は一時の感情でぶち壊してしまった。
料理なんかいらない。
サンタなんかいないのに、何を祝うのさ。
こんなの、美味しくもない。
こんな言葉で、心にもない事を僕は叫んだ。
サンタがいない事に、母の料理を貶す事の理由にはならないのに。
「ごめんなさい、お母さん」
僕はいたたまれなくなって謝った。
「ごめんなさい。サンタさんいなくていいから、お母さんのご飯、夜に食べたい」
「いいんよ、ユウ」
母が無言だっのは、父が好きな伊勢海老グラタンの盛り付けを一生懸命にしていたからだったみたいだ。
「それに、サンタさんがおらんって誰が言ったと?」
「お兄ちゃん…」
「お兄ちゃんにも見えないのに、どうして分かるん?」
そう言われてみればそうだ。
僕が見たのは戸棚の消えてしまったプレゼントと、兄の友達から聞いたという又聞きのみなのだ。
兄とて子供。子供に見えないサンタクロースがどうしていないと言い切れるのだ。
それに、戸棚のプレゼントは忽然と消えたのは、どう説明する。
「サンタさんはおると?」
「大人にしか見えんけど、おるんよ。あんたも大人になったら、分かる」
「そうなんだ!」
「だからね」
母は僕の肩を抱いてくるっと回し、居間へと追い立てる。
そこには兄と、ツリーを飾るモールを咥えた妹。
「お兄ちゃんと一緒に、あんたが壊したそれを直しといで?」
「うん」
「おう、早くやろうや。お父さん帰ってきたら怒られる」
無理やり引きちぎられた飾り。白い綿毛はあちこちに飛んで、てっぺんの大きな星はゴミ箱だ。
見る影もないツリーは僕がやってしまったというのに可哀想で、早くどうにかしてあげたいと思った。
それに、この惨状を父に見られた時はお終いだ。
サンタがいようがいまいがお構いなしに、僕の所業に激怒してぶっ飛ばされる。
機嫌が良くてそれ。
機嫌が悪ければ夕ご飯抜き。最悪、外に出される。
「わかった」
散らばったオーナメントをかき集め、一からツリーを飾り立ていく。
当たっちゃってごめんなさいと、心の中で思いながら。
「それ終わったら、お母さんを手伝ってね。サンタのお菓子、まだ用意しとらんから」
「うん!」
僕の気持ちは、大分晴れた。
完全には―――とまではいかなかったけど。
それでも僕は純粋にクリスマスイブの夜を楽しもうと思ったのだ。
心の奥底に、疑いモヤモヤとした気持ちを隠しながら。
福岡のうどんはくたくた。