09話 異世界では浴衣が十二単に
サスペンダー → サスペンション(2018/10/25ご指摘いただいたため修正)
エヴァをなでくりまわした後、頭を切り替えて出立の準備をする。当面必要なものだけだけどね。
ここで作ったもの、作りかけのもののほとんどをおいていく。
やっぱり廃墟になっちゃうのかなぁ。今後この国は内戦必至だし。多分戻れない気がするし。
「でも、よし、行こう!」
アルマ達が待つ馬車に向かう。
そして流れるようにエヴァに勇者パーティが乗ってきた馬車に誘導された。アルマ君達は敵が乗ってきた馬車で出発する準備をしている。
「なんで私こっちなの?」
ちょっと恨みがましくいってみる。
「なんでって、敵の馬車を持って行くのは当然でしょ?」
さすがにそこはわかるよ。
この世界では落とし物は拾った人のものだし、のざらしになって放置されているなら当然拾う。
それが馬車なんて貴重品ならなおさらね。
「じゃあ私たち4人が2人ずつ乗るのもわかるでしょ」
「……わかります」
さっき襲撃されたばっかりだしね。エヴァを一人にするなんて考えられないし。
「では、メノスに急ぎましょう」
そういうとエヴァは当然のように馬車の後部に向かっていきましたコンチキ。
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馬車は順調に青草に挟まれた街道をすすんでいる。途中の休憩でする馬のお世話もするけど、彼らに怒られずにできた。前やっていた時は3割馬蹴られてたからなぁ。
「いい子だね君達はー」
目の前で小石混じりの道を進む馬達を褒めてあげる。今は手が届かないから後で多めになでてあげよう。
「思えばあなた達が召喚されてから、この国もずいぶん変わったわね」
斜め後ろで幌の中から外を眺めているエヴァの声がきこえてきた。
最初は何を思ったのか後ろの方にいたけど、結局話し相手が欲しかったのかこっちに来た。
「そうだね、みんな色々やったみたいだからね」
座っている椅子を軽く叩く。とりあえず真っ先に馬車にサスペンションをつけてくれた佐々木君には感謝だ。
私以外にも勇者クランに入らなかった人も少数だけどいた。
そういった人達はクランの人達がやらない細々とした所でこの王国の技術革新に貢献している。
「王都で今流行していたのはユカタね。ちょうどあの辺りに咲いているヒュドラ草の花の柄を着た子達を夜会で見かけたわ」
浴衣かー、そういえば鞠子がお裁縫上手だったなぁ。
「浴衣作りは友達が上手だったよ。おばあさま仕込みでささっと数日で作ってくれてね? 着付けも完璧だからお祭りの時は着付け教室みたいになってたなぁ。後輩の子たちに囲まれて……ずるい」
鞠子が”役得よ”と余裕の笑みで返してきたのを思い出した。かわいい子達の着付けって……くっ。
エヴァがなんか顔を引きつらせながら訊いてきた。
「……ええと、ユカタを数日で仕立てられたのその転移者の子? あの薄布を十二枚重ねたドレスが数日?」
それは魔改造されすぎなんじゃないかな? 伝統にうるさい鞠子以外の誰かがやったんだろうな……
熟練した人なら一日で浴衣がつくれるそうです。
作者は浴衣作りに挑戦したとき、厳つい反物(? をもっていったら
「目が詰みすぎ、あなた作業着でもつくるつもり?」
みたいな事をおばあちゃん先生に言われました。
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