26話 波瀾万丈のはじまり
「最初に断罪されたのは南方の伯爵だったかしら。あまりにあっけなくておぼえてないの」
そこからシータの波瀾万丈な百生物語が始まってしまった。
淑女も化け物もどこかに消えて、目の前にいるのはただの元日本人のケイコ(本名)だ。
「許嫁がいた深窓の令嬢だったのに勝手に青年伯爵が惚れてきて、第一夫人が手を回して私をはめた、だったかしら。とにかく修道院にはいったら人生が終わるのは侍女達から聞いていたから修道院に向かう船から身を投げたの」
「それはアグレッシブ過ぎじゃないですかね」
映画とかでも見る、馬車から転がり落ちるのも大概だと思うけれど、レベルが違う。
船からダイブするなんてさすがに監視役の人もあっけにとられただろう。
あるいは世をはかなんで自殺したとでもおもったんじゃないかな?
「南の海は暖かいから意外と大丈夫よ。それに近くに漁師の舟がみえたから、無謀というわけでもなかったし」
十分無謀だと思う。
漁師に助けられたケイコはその後漁村を拠点に冒険者をしていたらしい。深窓の令嬢からのまさかのジョブチェンジだよ。
「ムラを襲撃から守っているうちになしくずしにね。元々魔法学校にいた頃のパーティーポジションは射手だったからソロでも十分やっていけたの」
ケイコは遠い目をしてうたうように過去をつむいだ。うーん、ここだけならまだ令嬢なんだけど。語ってる中身がなぁ。魔物討伐ばっかりだからなぁ。
「ムラでの居場所もできて楽しく暮らしていたわ。私を海から助けてくれたスミスさん、その娘のソニアちゃん、酒場のダナエ姐さんに薬屋のエリザベスおばあちゃん。他にもたくさん。仲の悪い人はいなかったわね」
しばらく群島の海賊を潰した話などをまるで見た目通りより幼い少女のように楽しげに語っていたケイコだったけれど、だんだんと元気がなくなった。
今の彼女はまるで年老いた猫のようにけだるげだ。
「私はムラを発展させるために、無人島の開拓に乗り出したの。みんなが止めるのも聞かずに一人でね」
一人で行ったのは仕方なかったのかもしれない。話を聞いた限りだとムラの外で魔物とまともに戦えたのはケイコだけだったみたいだし。
「いくつかの島はムラと行き来するための海路もできたし、成功といって良かったの。そしてセイレーンの島にたどりついた」
セイレーンは半人半魚の姿をしてさえずるように歌う事で知られている。
そして逆に言えばそれくらいしか情報がなく、いまだに魔物とも精霊ともわかっていない。端的に言えば今も昔も危険極まりない。
「近づけば二度と帰れないセイレーンのテリトリーに行くよく気になったね」
「偶然よ。わたしだってセイレーンが岩礁で歌っていれば回避したわ。比較的広い島で食料を探していて、森を抜けたら彼女らの集落に入ってしまったのよ」
過失というか、運が悪いとしか言いようがない。
「友好的な彼女達は集落を去ると言った時、宴を催してくれたわ」
「え、そうなの? コミュニケーションもとれるなら魔物じゃなくて普通にいい亜人じゃない」
「ええ。食事の途中で死ぬ間際までいい笑顔でいてくれるくらいにね」
毒殺!?
まだしばらくケイコ(シータ)のターンが続きます(絶望)




